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51話 王陛下へ謁見

 謁見はスムーズだった。

 あちらから呼び出しているのだから当然だけど、最近は国の立て直しで忙しく謁見時間に呼ばれないことも多いとアリスから聞いている。

 落ち着いたのか、この案件が余程急務なのか、どちらかだろう。


「よく来てくれた」


 形式的な挨拶を済ませ、王陛下を見上げる。


「早々に本題に入ろう。書状の通りだ。先日の議会でネカルタス王国との関係を深める為、婚姻が最適ではと意見が出た。そしてフィーラ公爵令嬢が候補に挙がった」


 ネカルタス王国の特使パサウリス・スカシ・アピメイラ公爵も来るらしいのだけど遅れているようだ。

 なので先に私たちに意向を確認する。とはいっても断られるとは思っていないだろう。

 けど、断らないといけない。私はもうどうするのか決めたのだから。

 御父様が私に視線を送り、その後陛下の前に頭を下げた。


「陛下、此度の娘への婚姻の打診、辞退させていただきとう御座います」

「……辞退?」


 周囲に立つ政務関係の人間たちがざわつく。見た顔もいるけど、第二王子派の姿はどこにもない。こっち関係は清算できているのね。


「理由を聞きたい」

「娘は今、ドゥエツ王国のティルボーロン伯爵と婚約をし、婚姻が間近なのです」

「ドゥエツ……」


 王陛下の視線が御父様からバーツ様へ移される。バーツ様が頭を下げ、王陛下へ挨拶をした時、どこかで「銀細工の」という言葉が耳に入った。それは王陛下も同じだったようだ。


「三国間で保護している伝統工芸の銀細工師筆頭が貴殿か」

「はい」


 ディーナ様の名前も聞こえ、下手に何も言えないといったニュアンスの言葉も聞こえた。さすがディーナ様、影響力が強い。

 バーツ様はディーナ様に保護され才能を見出され筆頭になった。そう簡単にバーツ様を追い出すことはできない。


「陛下、娘はグング伯爵と婚約破棄後、ドゥエツ王国領地リッケリに訪問し、銀細工をティルボーロン伯爵より学びました」

「銀細工を……」

「娘は銀細工師になれる素質もあり、近く公に認められます。娘とティルボーロン伯爵との婚姻は三国間の文化の架け橋になり、ドゥエツ王国との関係にも良い影響を与えると考えております」


 ドゥエツ王国とはシャーリー様の件で揉め、第二王子の暴走の件でもディーナ様に借りがある。

 ネカルタス王国との密接なパイプ作りも必要だろうけど、三国ドゥエツ・ソッケ・キルカスの友好関係は最重要課題だ。セモツ国との戦いで同盟を結ぶことがいかに重要かはソッケ側も良く分かっただろうし、他の国に自国が劣っていることも陛下は分かっているはず。

 となると、第二王子が暴走して宣戦布告したこと、先の戦争の最たる原因であるシャーリー様の義妹の件を鑑みれば、私とバーツ様の婚姻を認めた方が外交的に体裁がいい。


「……ふむ」


 王陛下もそれはよく分かっているようだ。

 ネカルタス王国との強固なパイプ作りと天秤にかけ悩んでいる。


「王陛下、発言の許可をいただけますか」

「……よい」


 フィーラ公爵令嬢の意向も聞きたい、と王陛下が積極的に私に聞きたがった。

 これはチャンスだ。


「申し上げます。私はこちらのティルボーロン伯爵との婚姻を希望し、ネカルタス王国特使パサウリス・スカシ・アピメイラ公爵閣下との婚姻はお断り申し上げたいと存じます」

「……」

「先程、父からもありました通り、私は銀細工師になります。ディーナ様の推薦もありますので確実かと」


 わざと"ディーナ様"と砕けた言い方をした。これは私とディーナ様、ひいてはドゥエツ王国と親密になっていることを匂わせている。ディーナ様、利用してごめんなさい。私、なにがなんでもバーツ様と結婚したいんです、と心の中で謝罪しといた。ディーナ様が怒るとも思えないけど。

 けど私の言葉は効果があったようで、周囲が親しい仲なのかとひそひそ言っているのが聞こえた。ちょろいわね。

たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。

パッパ、なんだかんだエーヴァのフォローしまくってくれてて汚名返上頑張ってる。そしてちょろい周囲(笑)。

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