33話 エーヴァは僕の婚約者
盛り上がる私たちを見てバーツ様が微笑む。それを見て動揺してしまった。
「あ、バーツ様すみません。つい」
「いいよ。それにこの場でも様はいらないから」
「はい」
うふふとディーナ様が笑っていた。それを見て元護衛騎士現婚約者が「ディーナ様、お顔が」と窘めている。ディーナ様は美しい顔のままだけど?
ごめんごめんと笑い合ってるからいつもの会話なのだろう。
「バーツ、エーヴァ。今回の銀細工、今までのと全然違うでしょ」
「そうですね。縒っていても違いを感じます」
「新しい銀で作った銀細工に名前を付けてくれる?」
「え?」
総称をつけてくれないか、ということらしい。
確かに売り込むには名前がある方が効果的だ。いわゆるブランド力。これが手に入るのは大きい。
バーツ様に視線を送ると頷かれた。
銀細工の今後にとっても影響力があり意義のあることだ。私も名づけに含まれているのは驚きだけど、せっかくの機会をの逃すのはもったいない。
「分かりました。ループト公爵令嬢の提案、承ります」
「二人でいい名前を考えますね!」
「うん、任せた。じゃあ私たちは行くね。行く先々で宣伝しとくから」
「ありがとうございます」
有言実行の早いディーナ様のおかげで次から次へと銀細工について聞かれる。
宣伝もいい具合にできているし、アクセサリーが好きな夫人方からは後々注文の手紙をいただけるところまでこぎつけた。
そしてやっとこの沢山の人々の中から顔を合わせることに成功する。
バーツ様の御両親にだ。
「バーツ、珍しく社交界に来ていると聞いた」
「……ええ、先日ぶりです」
「お前の新しい銀細工、随分評判のようだな」
おっと。ツンツンしている中に銀細工に興味を示した発言が見えた。これはチャンスだ。
「貴方方には新しい銀細工の価値は分からないでしょう」
バーツ様がぶった切ってしまう。
違う。会話が必要なはずなのに。
エスコートしてもらっていたバーツ様の腕を小さく引くと、すぐに気づいて顔を私の方に下げてくれた。
「バーツ様、今は好機です」
「え?」
「これだけ多くの方々に新しい銀細工に興味を持ってもらいました。ディーナ様もいらっしゃる。ここは御両親にも銀細工を知ってもらうチャンスなのでは?」
少しの沈黙の後、「だからエーヴァ、今日」と囁いた。
私の意図する、家族と会話してみたら作戦がバーツ様に知られたようだけど気にしない。
むしろ察してもらえたらバーツ様もそこまで感情高ぶらず向かいあってくれるかも。余計なお節介だとしてもバーツ様の御両親の言葉を聞いた以上、もう一度ぐらいチャンスがあってもいいと思った。
「しかも連れ立っているその娘は何者です?! あの現場にいた娘なのでしょう?」
今日は多少なりともまともな衣装をしているようですけど、と言われる。今日の衣装って元々結構値が張るのでまともで間違いない。
というか、御母様できれば穏便にお願いしたいんだけど!
「良い衣装を着ても平民は平民でしょう。バーツ、貴方は本来公爵家の人間。相応しい娘を連れなさい」
「エーヴァを侮辱しないでください!」
バーツ様が激高する。
私の為に怒ってくれるのは嬉しいけど、冷静に話し合ってほしくてこの時と場を設けた。さすがに炎上はしてほしくない。
一瞬冷静になっていたのも束の間だった。
「エーヴァは一緒に銀細工を作ってくれる。銀細工師である僕を受け入れてくれた」
「女性で職人?」
ありえないという表情をした御母様を見てバーツ様は続けざまに叫んだ。
「エーヴァは僕の婚約者だ! これ以上言葉を改めないなら相応の対応をする!」
「え?」
「え?」
御両親と私が同じ反応。
そしてバーツ様だけ言ってやったぞみたいな表情になっている。
「婚約者?」
返事してないんですけど?!
たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。
エーヴァは好きな人に結構フィルタかかるんですよね~なのでシャーリー・バーツ・ディーナあたりは常に美しく格好良くうつってると思います(笑)。
そして斜め上にぶっ飛んだバーツ。私の小説ではこういうノリは通常運行ですね!




