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六話 会合でよー。

 今回も短めですが……中身は濃いです。




 やって来ました比叡山。ここには有名なお寺がある。まぁ、お寺群と言った方が正しいのだろうが。


 てっきり人間のお寺だと思っていたんだけど、そうではなかったみたい。いや、人間もいるそうなんだけどね。ごく少数なんだってさ。つまりこの寺の坊主は大体が妖怪って事になる。


 ……お前ら、なんで頭を剃ってないんだよ。なんでフサフサなんだよ。しかもシャギーまでいれやがって。


 許さない。僕は絶対に許さないからな!




 ◇



 比叡山に侵入者あり。そのもの素手にてアヤカシを退治せしめん。名をば『頭光指殺少年』と名乗りけり。


 お洒落な坊主を軒並み地に沈めし童子は他の観光客の迷惑にならないよう死体を運搬。丁度工事中のお堂に死体を引きずり込み隠匿した。


 それを眺むるは『なんかエロい尼』と『異邦人』、そして『バカ笑いするお椀』なりけり。



「ふぅ。一仕事終えたあとの森林浴は気持ちいいね」


 頭光指殺少年はスッキリと晴れやかな顔で深呼吸した。お堂の外は山である。森林だね。緑の匂いが肺に染みる。げふー。


 一仕事終えたハゲ……素敵なナイスガイ中作君は本堂の階段に腰掛けちょっと一休み。


 そのすぐ近くには震える尼と呆れる金髪少年。そして笑いすぎて地面に落ちたお椀がいる。


 尼は青い顔をしていた。それも当然。多くの妖怪があっという間に倒されたのだ。一人のイカれた……怒れたハゲによって。


「……ねぇ、私、刺客を連れてきた感じになってない?」


「なってますね。まさか妖刀関係無しでここまでやるとは……」


「楽しかったねー」


 お椀だけは満足気である。彼だけはずっと笑って見てたので多分そういう関係だったのだろう。妖怪も人間関係が複雑なんだねぇ。


 急な展開でよく分からない事になってるので一応説明しておこう。


 中作君達はエロい尼の案内のもと、一際大きなお堂に案内された。その入り口、仁王が見下ろす門の所で事件は起きたのである。


 お洒落な坊主がお出迎え。それも十人以上。誰もハゲてない。


 中作君は脳内天使と脳内悪魔が、共にぶちギレる音を聞いた。


『……殺るぞ』


『ああ、殺ろう』


 そういうことになった。



 斯くして少年は『頭光指殺少年』に変身してお洒落な坊主を全員倒したのである。ここは妖怪達の大本山。一撃で倒せぬ坊主もいたが、そういう奴は連撃で仕留めた。


 巨大な猿に化けた坊主もいた。


 そんなの関係ねぇとばかりに突っついた。猿のツボはアンコールワットで学習済。むしろ楽勝だった。


 そして死体は工事中のお堂に隠した。なんか工事中なんだよね。文化財保護?


 中作君にとっては隠す所が沢山あり都合が良かったので万々歳である。


 そして一仕事終わったので一休み中。


 というのが、ざっとまとめた経緯となる。


 なお、黒づくめのお姉さん達にも死体運搬を手伝ってもらったので今夜は怖くて仕方無い中作君である。


 すごいな、中作君。なんでそんなに手慣れてるんだい? 海外暮らしの経験だね。



「ふー。さて、帰ろうか」


 森林浴に満足した中作君がお椀達に声を掛ける。まだお昼には早いけど、山を降りたら湯葉でも食うべかーと彼は本気で考えていた。京都に来たのだ。やはり外せないよね。あれってつまりは大豆だから京都全く関係ないけどさ。


 中作君の中では比叡山の観光は終わっていた。見るべきものは見た。殺るべきものは殺った。そういうことである。


 でも他の人は……まぁこうなるよね。


「待ちなさいよ! あんたカチコミしに来たの!?」


 エロい尼『辛口』怒る怒る。坊主をツンツンしてた時は震えて見てるだけだったのに、今はもう怒る怒る。真っ赤な顔で怒っているが、金髪少年の後ろに隠れて怒っているので迫力は全然ない。


「……ふっ。これも修学旅行の醍醐味だよね」


 中作君。まだ血に酔いしれていた。


 修学旅行先で他校の生徒と血みどろバトル。そして観光地に出禁となるのだ。その学校がね。後輩たちは、いい迷惑だよねー。ははは。


 まさか自分がそんなことをする羽目になるとは思ってなかった中作君。でも、仕方無かったんだ。だって天使と悪魔が合体して天魔になったんだもん。


 後悔はしていない。


 そこには、己の信条を貫き、やりきった男の顔をするハゲがいた。


 青春してんなぁと中作君も驚きである。


「凡人にはこれから開かれる会合に出てもらうからねー。さっきの奴等は反妖刀派だから、ぶちのめしても問題無い奴等なのー。むしろグッジョブー」


「……なんか利用されてるなぁ。流石妖怪」


 よじよじと自分の体に登ってくるお椀に中作君も一本取られた感じである。


 実際の所、今回の会合は妖怪達の中でも意見が割れていた。


『妖刀の封印を』


『妖刀の消滅を』


『持ち主ごと火山にぶちこめ』


 そんな意見が実は大多数を占めている。


 実際に切られたものや、その寸前まで行ったものは、逆に妖刀との共存を訴えるのだが、それは極々少数意見である。


 まぁ妖刀に狙われた妖異の大半は切られて消滅してるので生き残りは数える程になるのも当然ではある。


 お気楽極楽を旨とする日本の妖異も自身を消滅させる存在は怖いらしい。


 かつては全ての妖異を殲滅せんと荒れ狂っていた妖刀である。今は大丈夫なの? 大丈夫じゃないよね? だって奴だよ?


 そんな感覚が未だに妖怪達の間に残っている。


 へーい、妖刀マンゴスチーン!


 と笑い飛ばせる豪気な妖怪は、ごく僅か。


 それこそ古参の妖怪ぐらいなものらしい。


 だからこそ会合は開かれた。


 妖刀を見極める為に。そしてそれよりも重要なのが妖刀の『持ち主』を知るためである。


 ヤバイものをヤバイ奴が持ってたらとんでもなくヤバイよね。


 つまりヤバヤバー。


 だから見定める。妖刀の持ち主の性質を。性状を。その魂を。


 妖異にとって脅威となるのか。世界にとって害悪となりうるのか。そもそも本当に人間なの? 実はエイリアンちゃうの? とかとか。


 なのに初手からカチコミを仕掛けた中作君である。既に手遅れ感がすごーい。



「やっちゃえ、やっちゃえー!」


「うはははは! 我は頭光指殺少年なるぞー!」


 本堂にずかずかと乗り込む悪ノリ二人組。関係者立ち入り禁止の看板を蹴倒して進むヤクザ者である。


 板張りの廊下をズンドコ進むハゲとお椀。勿論靴は履いたまま。なんたるヤクザで外道なのか。心なしか歩き方もヤクザっぽい。


 そしてヤクザ達は奥のお堂までたどり着いた。


 畳の敷かれたお堂には会合の準備に追われる妖怪達で……まぁ酒盛り中だった。わざわざ畳を敷いたらしい。いつもは板張りなのにね。


 酒が入っているので人間に化けている妖怪は居なかった。みんな本来の姿で楽しく酒盛りである。


 それなんて鳥獣戯画?


 ならば良しと中作君とお椀は顔を見合わせる。


 ここに悪ノリコンビの完全結成であった。


 そこからは酷かった。

 

 畳の敷かれた大広間は大混乱に陥った。そもそもお堂の中は妖怪だらけなのでカオス満天だ。


 妖怪だらけとはいえ、その姿は動物系が大半を占めていた。なんか動物園の様相である。


 それを眺める『頭光指殺少年』はニヤリと笑う。動物ならばお手のもの。むしろ楽勝であると。


 妖怪なのに阿鼻叫喚。死屍累々。イタチやアナグマ等の獣系妖怪はハゲにより瞬殺され、物体系の妖怪、ぬりかべさんはツボを刺激されて粉になった。大丈夫、死んでない。多分ね。


 ハゲの頭が光る度、悲鳴があがる。妖怪達の悲鳴が止まらないのだ。古今稀に見る大惨事がお堂の中で起きていた。


 パッと見、ハゲによる動物虐待である。


 あまりにも異質。あまりにも大胆。妖怪に怯まず、むしろ笑いながら攻め入るその姿は鬼神の如し。


 その姿はかつて妖怪達が見た光景に酷似していた。


「やべぇ! あの野郎、晴明の生まれ変わりかよ! やってることがそっくりじゃねぇか!」


 真っ黒なイタチが叫ぶ。そしてハゲに捕まり犠牲となった。


「やめてぇぇぇ! 私はショタの坊やにしかこの身を許さ……うきゃー!」


 真っ白なウサギも叫ぶ。当然襲われ犠牲となった。


「この性犯罪者どもめっ! この頭光指殺少年が貴様らの性根を少しだけ弄くってくれるわ! 具体的には脇腹特効を植え付けてやるー!」


「ぎゃー! 俺は幼女につつかれたーい!」


 大きなヒグマもいた。勿論殺られた。ハゲに容赦という言葉は通じないようだ。


 お堂の中は阿鼻叫喚ではあるが、グロくはなかった。うん、涙とヨダレと……まぁ色々出たけど、血は一滴も出なかったね。


 ハゲによる妖怪大本山無血制圧ここに成れり。


 やりつくしたね。うん。間違いなくやりすぎた。誰か止めてよー。

 


 ◇



 比叡山、その奥の奥にある『奥の院』にて。



「……なんでうちが攻められてんの?」


「分かりません。中々に愉快な所有者のようですね」


「いやいや、おかしいって。なんでここが人間に攻められてんのよ。国も手出し出来ない禁域よ、ここ」


「そんなことは関係無いのです。あれも『安倍』と同じ匂いがしますから」

 

「安倍かよ! また安倍かよ! あそこの家系は頭おかしいっての!」


「……あのー。私、その安倍なんですけど……頭おかしい安倍の真理亜なんですけど。とりあえず売られた喧嘩は買いますね。こんきち! ほねほねぇ! この尼をぶち殺せぇ!」


「「あいあーい!」」


「ちょっ! 曇天たすけあぎゃぁぁぁぁ!」


「……安倍をなめすぎですね」



 比叡山の『奥の院』は、そんなことになっていた。


 ここに頭光指殺少年が来るまであと少し。


 運命の邂逅まであと少しである。



 あ、ルビ振るの忘れてた。


 既に何度も出てきてるこれ。『頭光指殺少年』の読み方は『あたま、ひかりて、ゆびで、ころすぜ、ボーイ』となる。それが正式名称なんだけど……ま、好きに呼んでくれたまえ。


 そんでもって場面は大きく移る。なんと次の日の朝になる。



 つまりは朝チュンスタートだ! 



 誰と誰がチュンチュンすんのか気になるよねー?


 うっへっへっへっへ。


 と、下世話な感じに引っ張った所で次話へと続く。




 朝チュン……いえ、なんでもないです。はい。


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