最初に。
列車は、様々なものを乗せて走る。人や貨物はもちろん、未来や夢やロマンスやら。古今東西、題材としたもの、名場面としたもの、そんな小説や歌は山とある。『雪国』しかり『蜜柑』しかり、『深夜特急』とか。
さらに言えば、其々の人生にも電車は深く根付いている。発車のベルの音とかも、聞いたら当時の心が戻ってきたりする。先日の東日本の新幹線メロディが変わるニュースでも、多くのコメントがついていた。それだけ、記憶や思い出と直結している。
恩田陸の『3月は深い深淵の底』という作品でも、電車が印象的に出てくる。夜の寝台列車で、女性二人が話し込む場面。読んでいるだけで、真っ暗なガラス窓に映る二人の影や揺さぶる振動が伝わる。小声で話す二人の姿が、文間から伝わってくる。その場面が、私はとても印象的で。そして何故か寝台列車に憧れを持ってしまった。別に夜更けの電車の中で語り合う友もいないのに。
一度でいいから乗ってみたいな、と。
しかし、である。寝台というのは昨今の効率化によって姿を消しつつある。その一方で、一泊ウン十万円の豪華観光列車なら、ある。でも庶民が乗れない。
と、思ってたんですよ。コロナ禍前までは。ステイホーム時期に動画サイトで旅画像を漁っていて初めて知ったのは、日本で唯一定期運行している寝台列車『サンライズ』。毎日定時に東京と島根県出雲市駅を結んでいる、鉄道ファン垂涎の電車。
これだ。これしかない。
よし! 乗ってみよう!
家族に話し、背中を後押しされ、さてチケットを取ろうとして気づく。
鉄道ファン垂涎のチケットを取るのは難しいんじゃね? 私、旅行行く時は旅行会社のツアーか家族に丸投げだったんじゃね?
旅の超初心者であり極度の方向音痴の私がどうなるか、記憶として書いときます。同じく寝台列車に憧れがある方の参考になれば幸い。
次回 明日の木曜日 4月6日に更新予定です。