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〜水神龍討伐戦・予想外の巨影〜

〜水神龍討伐戦・予想外の巨影〜

 

 意気投合したキャザリーとセリナが話し続けていたせいで、不貞腐れたキャリームは一人静かに飲み物を三杯も飲んでいた。 結局勝手に話が進み、韻星巫流インポッシブルが水神龍討伐に参加することになった。

 

 翌朝、冒険者協会前に集まる水神龍レアウディーユ討伐のメンバーたち。

 予定時間の二十分前に到着したキャリームは、すでに待っていた冒険者たちを見つけて慌てて駆け出す。

 

 「初めまして! シャエムー・グードゥ殿! 私、不可能を可能に変える男! 韻星巫流(インポッシブル)と申します! 私もあなたと同じ宝石ランクを目指す冒険者でございます! 今回のクエストであなたの戦いぶりを参考にさせていただく次第でございますので、どうかよろしくお願いします!」

 「私のことは、グランドファーザーと呼べ」

 

 漆黒の鎧で全身を覆った大男はつらつらと一人で話し続ける韻星巫流に、一定の間隔で同じことを何度も言い続ける。 しかし韻星巫流はめげずに………否、自分の世界に入り込んでしまっているのだろう。

 回り始めた舌は車輪のように回転し続けている。

 

 そんな二人を見て、あたふたしながら駆け寄っていくキャリーム。 困り眉で二人の間を右往左往する彼女の後ろに、三人の冒険者たちが近づいてくる。

 

 「ありゃ〜。 グランドファーザーが韻星巫流君に絡まれてるよ」

 

 貂鳳が自分の頭に着いているお団子を触りながら呟く。

 

 「貂鳳、気にしすぎだ。 今日も可愛いから安心しろ」

 

 髪型を気にしている貂鳳を横目に、龍雅が呆れながら呟く。

 

 「だって虎宝君が『いつもより団子でかくないか?』とか言ってくるから! 気になっちゃうじゃん!」

 「えっ? 俺のせいかよ!」

 

 突然罪をなすりつけられた虎宝が驚いて声を上げた。

 

 「私のことは、グランドファーザーと………」

 

 そんな言い争いをしている最中も韻星巫流はシャエムー・グードゥに語り続けている。

 

 「キャリームさん! シャエムーちゃんはどこ?」

 

 シャエムー・グードゥに語りつつも貂鳳の一言を聞いていたのだろうか、韻星巫流は眉を歪ませる。

 

 「貂鳳殿、お久しぶりです。 私、不可能を可能に変える男。 韻星巫流です。 シャエミー・グードゥ殿なら私の目の前にいらっしゃいますぞ? ……つかぬことを伺いますが、シャエムー・グードゥ殿と会うのは初めてでしょうか? 私の認識違いでなければ、キャリームさんと港町の冒険者協会へ彼をスカウトしに行く時、あなた方は同行していたはずですが?」

 「こら、貂鳳は少し黙ってろ! 失礼した韻星巫流。 貂鳳は寝起きで頭が回っていない。 彼女の言動は気にしないでくれ」

 

 貂鳳の口を塞いだ龍雅が韻星巫流から目を逸らしながら答える。

 

 「そうなのですか、貂鳳殿は少し面倒な方なのですね? しかしご安心を! 私はたとえどんな………」

 「あんたにだけはめんどくさいとか言われたかぁないわぁぁぁ!」

 

 早朝の王都に、貂鳳の怒鳴り声が響いた。

 

 

 

 数分後、キャザリーも合流した。

 キャリームたちはまだ顔を見せないラオホークをソワソワしながら待つ。

 

 「約束の時間まであと五分ですけど、ラオホークさん遅いですね? 本当に来てくれるのでしょうか?」

 「いるぞ?」

 

 時計を確認するキャリームの背後に、突然現れたラオホークが耳元で囁く。

 

 「うぇあぁぁぁ! ラッ! ララララララオホークさん! いつの間に!」

 

 キャリームは驚いて尻餅をついてしまう。

 忍びのような装い、紺色の髪を頭頂部で括った金ランク冒険者のラオホークは、何事もなかったかのように真後ろで立っていた。

 

 「最初からいた」

 「いたなら声かけて下さいよ………」

 

 キャリームは困り顔で立ち上がりながら、臀部についた汚れをはたき落とす。

 

 「何はともあれ全員揃ったようね。 さぁ早く行くわよ!」

 

 顎で王都の正門を示すキャザリー。

 

 「なぜ貴様が勝手に指揮をとっている?」

 

 龍雅はそんなキャザリーに首を傾げながら視線を向けた。 キャザリーは龍雅の視線に対して、居心地悪そうな顔をする。

 そしてなぜかキャザリーの周りをうろうろ歩き始めるラオホークに全員の視線が集まった。 怪しい行動をしているラオホークは、残念そうな顔で呟く。

 

 「キャザリー、いつものぺんぎんはどこだ?」

 「は? 私、あの子はクエストには持っていかないわよ? 汚れたら嫌じゃない!」

 

 ラオホークは肩を落としながら正門に向かって歩き始めた。 みんな首を傾げながらラオホークの背中を目で追う。

 ちょうどそのタイミングでたまたま冒険者協会前にやってきた冒険者が駆け寄ってくる。

 

 「あれあれ〜! キャリームさんたち、なんかのクエストに向かうんすか〜?」

 

 金色の髪を頭頂部で括り、身長よりもかなり長めの太刀を背負った少女が何食わぬ顔で声をかけてくる。

 

 「鈴雷か? 早いな」

 

 そんな彼女に龍雅が声をかける。

 

 「今日は姉さんたちお休みするみたいっすけど、いつも通りの時間に起きちゃって暇だったんすよ〜!」

 「は? なんでこの時間に起きる必要あんのさ?」

 

 意味がわからないと言いたそうな顔で虎宝は肩を窄める。

 

 「毎朝姉さんの家まで迎えに行くんすよ! 姉さんの家の前で待ち伏せしてないと、逃げられちゃうんす! そんな事よりこれから何処か行くんすか? 私も行きたいっす!」

 「え? まぁ今から水龍討伐に向かいますが、鈴雷さんも来てくれるのなら心強いです! ぜひお願いします。 それと鈴雷さん、毎朝ぬらぬらさんの家の前で待ち伏せするのはやめて下さい。 だから最近ぬらぬらさんは目の下に濃いクマを作ってたんですね………」

 

 こうして飛び入り参加した鈴雷も含め、水神龍討伐メンバーが揃う。

 

 宝石ランクのシャエムー・グードゥ

 金ランクの龍雅、虎宝、貂鳳、ラオホーク

 銀ランクの韻星巫流

 鋼ランクのキャザリー、鈴雷

 

 計八人のそうそうたるメンバー。

 キャリームが手配した馬車に乗り込み、これより海岸エリアへ現れた水神龍を討伐に向かう。

 

 

 ☆

 海岸エリアまでの道中、なぜか一体もモンスターと遭遇しなかった。

 不自然にモンスターの死骸が道中に転がっているため、訝しみながら辺りを警戒する冒険者たち。 しかし、キャリームや龍雅たち三人は何か理由を知っているかのように、一切動じてはいなかった。

 

 「モンスターの死骸が転がっていますね。 この辺りに何か危険なモンスターでもいるのでしょうか? 水神龍討伐の前に危険なモンスターと戦うことは避けたいですが、例え危険モンスターと戦う事になろうと、不可能を可能に変えるこの私が………」

 「韻星巫流さん安心して,これはシャエムー・グードゥさんが私たちを安全に海岸に向かわせられるように辺りを警戒してくれてるだけよ?」

 

 貂鳳が呆れながら韻星巫流の長い口上を遮る。

 

 「私のことは、グランドファーザーと………」

 「なるほど、そういう事ね?」

 

 例に従って決められたセリフを言うシャエムー・グードゥの言葉を遮り、キャザリーが何かを理解したかのような口振りで辺りを見回す。

 

 「なるほど、これが噂のぜんまいファミリーか」

 

 腕を組みながらぼそりと呟くラオホーク。

 

 「私のことは、グランド………」

 「ねぇねぇラオホークさん! ぜんまいファミリーって何?」

 

 もはやシャエムー・グードゥの発言など誰も気にしない様子で、鈴雷が口を開く。

 

 「シャエムー・グードゥは謎の能力で分身する。 おそらくその分身が私たちの周りを巡回して馬車に近づくモンスターを狩っている。 その上シャエムー・グードゥは不死だ。 胴体から真っ二つになってもすぐに再生する」

 

 ラオホークの説明に目を丸くする鈴雷と韻星巫流。

 

 「はっ? えっ? 不死身なんすか? なんすかそれ! やっばすぎっしょ!」

 「不死ですと! そんなもの反則ではありませんか! シャエムー・グードゥ殿は不可能とされる不死の能力を使うと言うことは、不可能を可能にしてしまうのですか!」

 

 キャザリーは驚く二人の言葉を聞いて、呆れたようにため息をつく。

 

 「あんたたちバカ? 不死身なんてあり得るわけないじゃない。 それにそいつの能力、多分分身じゃないわよ?」

 

 キャザリーの発言に眉を歪ませるラオホーク。

 

 「私は果ての荒野で彼が両断蟷螂に真っ二つにされているところをこの目で見ている。 嘘はついていないつもりだが?」

 「そこの木偶が不死身なのは当然でしょ? あらかた本体は戦闘時、鎧の中から出てどっかから魔力を飛ばしてるんでしょ?」

 

 首を傾げながらキャザリーに続きを促すラオホーク。 しかしキャリームと龍雅たちは突然あたふたとし始める。

 

 「そ、そんな事よりキャザリーちゃん! 水神龍退治に何かいい策はあるかい?」

 

 額から汗を滲ませながら虎宝が問いかける。 キャリームたちの慌てようをちらりと伺い、キャザリーはなにかを悟ったように鼻を鳴らす。

 

 「水上での戦いになるなら、キーマンは鈴雷とシャエムー・グードゥさんね。 韻星巫流にはトドメを頼むと思うけど、あなた私の言うように魔法を操れるかしら?」

 

 韻星巫流に視線を向けるキャザリー。

 途中で話を遮られたラオホークが少し眉を歪めるが、それ以上声をかけることはなかった。

 

 「私がトドメですか? 私は全属性持ちのハズレ冒険者ですぞ? そのような大役は宝石ランクのシャエムー・グードゥ殿や、金ランクの方々こそふさわしいと………」

 「あなたバカじゃない? この中で最も強くなる可能性があるのはあなたよ? 風属性を得意とする全属性持ち、これ以上強い条件が揃った冒険者はいないでしょ?」

 

 キャザリーの一言に無言になる一同。

 

 「そ、そういえば昨日セリナとも似たような話をしてましたね。 失礼でなければ、根拠を聞いてもいいですか?」

 

 キャリームはメモ帳を取り出しながら問いかけた。

 向かいに座る韻星巫流は、何も答えられず目を見開いたまま固まってしまっている。 今までハズレだ残念だと散々言われ続けていたため、『一番強くなる可能性がある』などと言われたことは一度もない。

 自分が自分を否定してしまっている彼にとって、キャザリーの言葉は理解が及ばないのだ。

 

 「じゃあ聞くけど、あなたたちは五属性の中で最強だと思う属性はなんだと思ってる?」

 

 キャザリーの問いかけに対し、鈴雷が元気よく手をあげる。

 

 「雷っすよ! 姉さんは闘技場で最強っすからね!」

 「いやいや、炎だろう? 星ランクの紅焔さんは火属性だからな」

 

 鈴雷の回答に異議を唱える虎宝。

 キャザリーは二人の回答に対して、肩を窄めながら鼻で笑う。

 

 「魔法の威力だけなら火属性は最強と言われるわね、雷は瞬発力が突出しているわ。 だけど五属性の中でも最強とは言えない。 ヒントをあげるわ、人間が生きるために必要なものはなんだか考えてみなさい?」

 

 キャザリーの問いかけを聞き、全員が熟考し始める。

 数秒後、何か閃いたかのように龍雅が口を開いた。

 

 「食べ物か? お腹が空くと力も出なくなる、だがそれと最強の属性になんの関係がある?」

 「龍雅さん、人間は飲まず食わずでも三日は生きてられるのよ? 私は生きるために必須なものは何かって聞いてるの」

 

 龍雅は顎をさすりながら思考し直す。 しかし何か閃いたキャリームが、恐る恐る口を開く。

 

 「酸素………? なら最強の属性は、空気を操ることができる風?」

 「さすがナンバーワン受付嬢ね、百点満点よ? 宝石ランクの王消寅オウケストラさんは風の単体魔法を使ってる。 彼が突っ立ってるだけで周りのモンスターが次々と息絶えるのは、彼が周囲の酸素と二酸化炭素の濃度を操っているからなの。 頭の悪い奴らは無色透明な毒のガスを操ってると思い込んでたみたいだけどね? 風魔法も使わずに、ラオホークさん並みに毒を操れる冒険者はいないわよ。 私が思うにこの世界で最強の毒は二酸化炭素、あなたは障壁魔法と炎の特性を生かしてそれを風属性なしで操っている。 はっきり言ってかなり尊敬するわ?」

 

 ラオホークは炎と水属性を合成して煙を操る能力者。

 彼女は炎で酸素を燃やし、二酸化炭素を大量に作りそれを障壁魔法で覆うことで猛毒を閉じ込めた空間を作り出す。 そして相手に勘付かれないよう煙で隠しているのだ。

 ラオホークは無意識にやっていたのだが、キャザリーに褒められて僅かにほおを緩める。

 

 「う、うむ。 ありがとう」

 「ちなみにキャザリーちゃん! 風属性が最強ってことはわかったけど、韻星巫流君が最強だって言ったこととなんの関係があるの?」

 

 貂鳳はキャザリーに問いかける。

 

 「は? まだ分かんないの? この世の現象には全て理由が存在する。 火を燃やせば二酸化炭素が、磁石に電流を流せば磁力が、水を風で冷やせば氷が出来る様に、魔法の威力が低かろうと属性の組み合わせ次第では小さな魔力で超強力な現象を起こせる。 全属性が使えると言うことはそう言ったありとあらゆる現象をほぼ全て使いこなせるのよ? その上、韻星巫流は全属性の中でも風属性が得意。 私が言いたいことわかったかしら? 彼の魔法には、無限大の可能性を秘められてるのよ?」

 

 韻星巫流に視線を集め、絶句する一同。 その中でも韻星巫流は、見開いていた瞳から一筋涙をこぼした。

 それを横目に見て動揺し始めるキャザリー。

 

 「なっ! なんで泣いてるのよ気色悪いわね! 私は事実を言っただけで………」

 

 言葉の途中で急に立ち上がり、キャザリーへ向かって跪き頭を下げる韻星巫流。

 

 「さしでがましいお願いですが、あなたが嫌でないならどうか私に魔法の知識をご教示いただきたい。 私は今まで自分がなんの取り柄もない平凡な男だと、心のどこかでは思い込んでいました。 ですが、あなたの言葉を聞いた今は………心の底から力が込み上げてきています」

 

 ものすごい気迫で僅かに頭を上げ、真剣な眼差しでキャザリーを見つめる韻星巫流。

 韻星巫流の眼差しを受け、キャザリーはあたふたしながら両手をフルフルと振りながら顔を真っ赤にする。

 

 「セ、セリナさんに昨日頼まれてるから! 言われなくても教えるわよ! だからその、頭を下げるんじゃないわよ!」

 

 韻星巫流はゆっくりと元の席に座り直し、座りながらもう一度深々と頭を下げる。

 

 「感謝いたします、師匠」

 「師匠はやめなさいよ! 小っ恥ずかしいじゃないの!」

 

 キャザリーの甲高い声が馬車から響き渡った。 そしてこの時、誰も気づいていなかったが、キャザリーの話が始まってから数分間。

 漆黒の鎧を纏ったシャエムー・グードゥは、一言も発していなかった。

 

 

 ☆

 目的の海岸エリアに到着したキャリームたちは、水神龍の目撃情報があった海域に向かうために戦艦の手配をしていた。

 海上での戦いは、水の魔石を埋め込んだサーフボードのような板に乗って行われる。 搭乗する冒険者の魔力操作で自由自在に海上を移動できる便利アイテムだ。

 

 他にも海中で戦闘できるように風の魔石で空気を作り出す潜水服など、用意するものがたくさんあるのだ。

 主に戦艦に必要な道具を詰め込み、冒険者たちは戦闘時サーフボードで移動する。 キャリームたちは手分けして討伐に必要になりそうなものを用意して、戦艦に詰め込んでいた。

 キャザリーが指示する元、必要な道具を詰め込み終わると拠点を出て海を渡り始める。 冒険者たちは彼女の指示をきちんと聞き、言われたものを詰め込んではいたが、中にはなぜこれが必要なのだろうか? と思われるものもたくさんあった。

 道中の魔法講座のこともあり、誰も疑いや抗議の声を上げることはなかったが、首を傾げながら荷物を積み込んだ。

 

 海を渡り始め数分が経つ。

 見張り台からキャリームが遠見の水晶版を覗いていると、何やら浮かない顔をし始める。

 

 「水神龍を発見したんですけど……おかしいわね、なにかしら。 水神龍が何かと戦ってる?」

 

 キャリームの呟きを聞き、虎宝は眉間にシワを寄せながら自前の水晶版で同じ方向を見た。

 

 「は? なんだこりゃ! 帝王烏賊グランカルマルまでいんじゃねえか! もしかして水神龍と縄張り争いでもしてんのか!」

 

 虎宝の一言に、息を呑む冒険者たち。

 

 「え? 虎宝君、今なんて言ったの?」

 「水神龍と帝王烏賊が縄張り争いしてやがる。 キャリームさん、流石の俺たちでも一度に上級モンスター二体の相手は武が悪いぜ?」

 

 歯をきしらせ、戸惑いながらもなんとか打開策を考えるキャリームだが、咄嗟の事で動揺してしまい彼女は何も指示を発することができなかった。 悔しさのあまりぎゅっと拳を握りしめる。

 

 ———こんな時、セリナやレイトさんならきっとすぐ打開策を思いつく。 けど私にはそんな知識もない。 なんて無力なのかしら、こんな私がナンバーワンだなんて………恥ずかしすぎてぐうの音も出ないわ。

 

 心の中で、一人愚痴をこぼすキャリーム。 しかしそんな彼女のそばに、小柄でフードを被った女の子がトコトコ近づいていく。

 

 「キャリーム様! このパーティーには宝石ランクがいるんです! 何も恐れずに前を向いて下さい!」

 

 驚きながら振り向くキャリーム。

 

 「シャエムー・グードゥさん? どうしてこんな人目のつくところに?」

 

 シャエムー・グードゥと呼ばれた小柄な少女は、フードの下からくりくりとした瞳でキャリームをじっと見上げた。

 

 「あの冒険者様方は、きっとあたしの醜い姿を見ても………(さげす)まないと思いました! 全属性持ちの方を差別せず、能力に対して正当な評価をしてくださる方々です! きっとあたしの事も、正当な評価をしてくれるはずなんです!」

 

 そう告げると、シャエムー・グードゥと呼ばれた少女はまぶかにかぶったフードを外した。

 全身緑色の皮膚と、ギザギザの尖った歯。

 自分の身長よりも伸びた若草色の髪を編み込んだ小さな少女は、慌てふためく冒険者たちの前に歩み寄り、堂々とした態度で声を上げた。

 

 「自己紹介が遅れて申し訳ありません! あたしがシャエムー・グードゥ本人です! 水神龍と帝王烏賊が争っていて皆様が手が出せないなら! 帝王烏賊はあたしが一人で討伐して見せます!」

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