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〜宝石ランククエスト・水神龍討伐〜

拝読ありがとうございます!

この章からは少しオマケエピソードを執筆していこうと思っています。

時期は火山龍討伐の少し前にさかのぼり、キャリームちゃん率いる冒険者たちの大冒険となっています。

セリナさんは冒頭に少しだけしか出てきませんが、セリナさん以外の冒険者たちがどのように戦っていくのかを書いていきますので、それぞれの受付嬢の強みをわかっていただけると幸いです。

〜宝石ランククエスト・水神龍討伐〜

 

 キャリームは受付カウンターにぐったりと座りながら机に突っ伏していた。

 彼女のそばには一枚のクエスト用紙。 そこにはこう書かれていた。

 

 ———水神龍レアウディーユの目撃情報あり。 至急討伐隊を結成し、目標を討伐せよ。———

 

 水神龍【レアウディーユ】海岸エリアに生息する上級モンスターでその強さは宝石ランクに部類される。 月光熊と同じレベルの強敵なのだ。

 浮かない顔で頭をのっそりと上げたキャリームがぼそりとつぶやく。

 

 「水神龍なんて、金ランク冒険者最低でも五人はいないと無理よ」

 

 そう呟きながら冒険者協会を見渡す。

 時刻は夕方、もう時期今日のクエストを終えた冒険者たちが協会内に帰ってくる時間帯だ。

 彼女の担当でかなり名の知れている三人パーティーはすでに帰ってきていた。 食堂エリアで食事をする準備をしているらしい。

 

 料理人たちは冒険者が提供する食材で即席料理を作ってくれるのだ。 現在、その三人は何を食べるかで揉めている。

 

 「俺はなんでもいいから早く決めてくれよ〜?」

 

 椅子に寄りかかりながら呆れた顔をしているのは虎宝こほう

 風魔法を自在に操る狙撃手だ。

 黒髪を頭頂部で括った美男子だが、喋り方や振る舞いがどことなく気だるそうな印象を与える。

 

 「肉を食べよう、冒険者たるもの力とエネルギーは必須だ。 肉に炭水化物。 これは基本中の基本だぞ!」

 

 机を叩きながら立ち上がったのは龍雅りゅうが

 女の子だが、髪も短い上に話し方も男前なためよく男に間違えられる。

 雷魔法を使う槍使いで、瞬発力は冒険者の中でもトップクラスだ。

 

 「龍雅ちゃんはお肉ばっかり食べてるから男の子に間違えられるのよ? この前女子トイレで言われてたでしょ!『あの、ここは女子トイレですよ?』って! もっと女の子らしいのを食べなさいよ! 今日はピザよ! ピザったらピザなんだから!」

 

 ピザを食べたがっているのは貂鳳てんほう

 モデルのような体型で、特注したチャイナドレスのような形の服を装備している。

 水魔法の身体強化で、相手の力を利用したカウンターを得意としている。

 

 「女子トイレの話は今関係ないだろう! 君は女の子らしさを大事にしているようだが、その戦闘服のスリットはきわどすぎるぞ! もっと慎みを持て!」

 「これはセクシーに見せるためじゃなくて動きやすさ重視だもん!」

 「嘘をつけ! この前鏡を見ながらスリットの入り方を入念にチェックしていたのを見たぞ!」

 

 龍雅と貂鳳はくだらない言い争いをしているが、慣れているかのような態度であくびしながら二人を見守る虎宝。

 そんな三人の元にトボトボと歩み寄ってゆくキャリーム。

 

 「なんでもいいですけど、肉を使ったピザにすれば万事解決だと思いますよ?」

 

 ジトーっとした瞳で二人を交互に見るキャリーム。

 言い争っていた二人はその一言で一瞬フリーズしたが、数舜後に二人は肩を組みながら料理人の元へと向かっていく。

 

 「さっきは悪かったな貂鳳、私はその服可愛いと思うぞ、顔が綺麗な君だからこそ似合うんだ。 私のようなガサツな女には似合わない!」

 「そんな事ないわよ龍雅ちゃん! あなたもきっちりおめかしすれば驚くほど可愛くなるんだから! もっと髪の毛伸ばしてみたらいいんじゃないかしら!」

 

 二人は先ほどまでの喧嘩が嘘のように笑顔で話している。

 そんな二人の背中を見ながら深いため息をつく虎宝。

 

 「なぁキャリームさん、これからあいつらの晩飯はあんたが決めてくれよ。 いつもあんなくだらない喧嘩してるんだぜ?」

 「流石に私もこの時間は手が離せないことの方が多いですから無理です」

 

 割と本気で頼んでくる虎宝に、キャリームは少し困った顔を向けた。

 

 「あの。 そんなことよりもわたし、虎宝さんたちにお願いがあってきたんですが、お時間よろしいでしょうか………」

 「どうせ水神龍の件だろ? やっと見つかったのか。 噂になってたから知ってるぜ? 別にいいけど遠距離攻撃が得意なやつがいると助かる。 例えばセリナさんとこのレミスって言う銀ランク冒険者とかな」

 

 虎宝はキャリームの頼み事を最初からわかっていたのだろう。

 キャリームが頼む前につらつらと条件を口にしていく。

 

 「セ、セリナに聞いてきます! 虎宝さん! 本当にありがとうございます!」

 

 勢いよく頭を下げるキャリームを横目に見て、虎宝は少し気まずそうに眉を歪ませる。

 

 「いやいや、例を言いたいのはこっちだっつーの。 頼むから頭下げんなよ。 あんたの頼みなら断るわけねぇだろ。 もっと自己評価高く持ってくれよ」

 

 明後日の方を見ながら恥ずかしそうに頬を赤らめる虎宝の元に、龍雅たちが戻ってくる。

 

 「キャリームさん、彼はこれでもあなたにかなり感謝しているのですよ。 私たちを果ての荒野に行かせないよう上に計らってくれているのでしょう?」

 「ま、まあそう言うこったから頭あげてくれ」

 

 後頭部をボリボリと掻く虎宝。

 ゆっくりと頭を上げたキャリームは嬉し泣きを堪えながらぐっと拳を握る。

 

 「セリナにレミスさんを連れてきていただくよう頼んできます! 明日の朝出発するのでどうかよろしくお願いします!」

 

 そう言って駆け出しそうなキャリームを龍雅は慌てて呼び止めた。

 

 「ああ、その前にキャリームさん! 腕の立つ冒険者は多いに越したことはないですよね? 今果ての荒野からこの街に戻ってきている冒険者がいるのですが………」

 

 龍雅の一言にキャリームは首を傾げながら振り向く。

 

 「私はそんな話聞いてないですよ?」

 「あなたも知っているでしょう? あの方は多くの人に見られるのを非常に嫌う。 宝石ランク冒険者が帰ってきたことが知れたら野次馬が寄ってくるでしょう。 それを嫌がって帰って来た事を多くのものに伝えないのです」

 

 龍雅の説明を聞いてハッとした顔をするキャリーム。

 

 「まさか………シャエムー・グードゥさんが帰ってきてるんですか!」

 

 小声で確認を取るキャリームに、龍雅は静かに頷いた。

 

 

 ☆

 全冒険者の中でも宝石ランクは三人しかいない。

 キャリームが担当するシャエムー・グードゥは最年少の宝石ランク冒険者で、さらに出身は王都の冒険者協会ではなく港町だ。

 キャリームが突然無名の冒険者を港町の冒険者協会からスカウトして連れてきたらしい。 シャエムー・グードゥは、名前以外謎に包まれている。

 

 何せその容姿は二メーターくらいの大柄な体躯で全身真っ黒な鎧で覆われている。

 そして彼は声をかけても一言しか返答しないため会話が成り立たないのだ。

 

 「私のことは、グランドファーザーと呼べ」

 

 ゲームのコンピュータープレイヤーのように、なんと声をかけてもその返答しかしてこない不思議な冒険者なのだ。

 

 キャリームや龍雅たちはその理由を知っているようだが、その理由については黙秘を貫いている。

 龍雅からシャエムー・グードゥ帰還の知らせを聞いたキャリームは、冒険者協会の営業時間が終わった瞬間飛ぶように出ていった。

 

 外出から一〜二時間程度で彼女は協会に戻ると、次はセリナを探し始める。 しかし食堂には彼女の姿が見当たらなかったため、キャリームは資料室に向かうことにした。

 

 資料室の扉を開けると、中はまだ明かりがついていた。 真っ暗ではないため誰かがいると悟ったキャリームは静かに中に入っていく。

 すると突然背後からキレイな音色が響いてくる、聞き慣れたオカリナの音色だ。

 

 「資料室に何か用かな?♪」

 

 キャリームは頬をひくつかせながら振り向くと、眠ったように目を閉じた受付嬢がオカリナを持ちながら立っている。

 キャリームは心の中で思っていた。

 

 ———この人、苦手なんだよなぁ。

 「何やら不穏な空気を感じるね♫ 封印されし暗黒龍が、君の心中で暴れているかのような波動を感じるよ?♩」

 

 言ってる意味が全くわからない、と言いたそうな顔をしたキャリームが早くその場を離れようと辺りを見渡す。

 

 「ね、ねえレイトさん。 セリナどこ行ったか知ってる?」

 「セリナなら、たった今さっきぺろぺろめろんさんたちがお肉パーティーに連れて行ったよ? 恐らく行き先はいつも行ってるしゃぶしゃぶ屋だろうねぇ♫」

 

 オカリナの音色を響かせながら、セリナの行き先を伝えてくれるレイトにペコリとお辞儀をしたキャリームはそそくさと立ち去ろうとする。

 

 「待つんだ小さきカリスマよ♪ ———ちょっと、待って! キャリームさんあなたのことだよ?」

 

 レイトはキャリームをかっこよく呼び止めようとしたのだが、自分のことではないと思ったキャリームは無視して部屋を出ようとしたため、レイトは慌てて肘を掴んだ。

 

 「あ、あの〜………………まだ私に何か用ですか?」

 

 あからさまに困った顔で振り向くキャリームに、レイトは咳払いしながら再度オカリナを構える。

 

 「しき龍が南の大海に出現したと風の噂で耳にした♫ 君は今、破壊を司る邪龍を討伐する勇者を探しているのだろう? 私の担当にも、最果ての枯れた大地からちょうど帰ってきた、金色の称号を持ちし強者(つわもの)がいる。 よければドラゴンスレイヤーの称号を得ようとする勇者たちに、彼女も紹介しよう♩」

 

 ほうけた顔でしばらくの間目を泳がせるキャリーム。 おそらく何が言いたいのかさっぱりわかっていないのだが、聞き返すのは失礼かと思い必死に思案を巡らせている。

 痺れを切らしたレイトは、気まずそうな顔で言葉を言い直す。

 

 「水神龍討伐のメンバー探しをしているのだろう? 私の担当する金ランク冒険者もちょうど帰ってきている。 よければ連れて行ってくれ。 ラオホークという名の女の子だ」

 

 ものすごい低いテンションのまま早口で、要件をわかりやすく伝えるレイト。 すごくしょんぼりしてしまっている。

 キャリームもようやくレイトの意図を理解したようで、困っていた顔から満面の笑みに切り替わる。

 

 「ら! ラオホークさんを紹介していただけるのですか! 彼女がいればきっと討伐が楽になります! レイトさん! 本当にありがとうございます」

 

 急にはしゃぎだすキャリームを横目に、レイトは少し嬉しそうな顔でオカリナを吹く。

 

 「ならば話は早い! これより私たちは悪しき邪龍に終焉のレクイエムを手向けようじゃないか!♫」

 

 めげずにレイトはまたも不思議な文言を続けたのだが、キャリームは嬉しそうな顔から急に困った顔に変わり、口籠もりながら「あ、はい。 そうですね」とだけ告げていた。

 レイトは悔しそうな顔をしたまま、大人しくラオホークを呼びに行った。

 

 

 ☆

 ラオオークを呼びに行ったレイトにお礼を言って、キャリームはセリナが向かったと思われるしゃぶしゃぶ屋に足を向けた。 すると店に向かう途中に正面から歩いてくるセリナが目につく。

 何かをメモ帳に書きながら歩いていたセリナは、キャリームが正面から駆け寄っていくことに気づいていなかった。

 

 「セリナおねえちゃ………んん〜。 セリナ! お願いがあるの!」

 「ギヤァァァァァ! 私は何も悪いことはしていませぇぇぇぇぇん!」

 

 急に声をかけられ、驚いてメモ帳を落とすセリナと、困った顔で立ち尽くすキャリーム。

 無言で見つめ合う。

 そしてキャリームはチラリと落ちていたメモ帳に視線を落とした。


 ♡今日のキャリームたん日記♡

 ・十六時三十二分、机に突っ伏して物憂げな表情のキャリームたんいただきました!

 ・十六時五十四分、とうとうキャリームたんが動き出す、向かった先にいたのは虎宝さん………

 

 そこまで読んだところでセリナが慌ててメモ帳を拾う。 困った顔でこめかみをポリポリと掻くキャリーム。

 

 「えっと〜。 その〜。 今の、何?」

 

 動揺したせいで言葉がにごせず、結局ド直球でメモの内容を尋問するキャリーム。

 

 「今のメモ帳は落とし物だったのでやんす! 私はそれを協会に運ぶところでござる!」

 

 挙動不審のセリナをじっとりと見つめるキャリーム。

 セリナはダラダラと滝のように汗を流しながら目を泳がせる。 動揺しているせいか、彼女の語尾も色々なキャラが混ざっている。

 

 「いっや〜。 こんな落とし物誰がするんですかね〜! ほーんと変な人もいたもんですね〜! あっははははー!」

 

 気を取り直して弁明をし始めるセリナを凝視し、キャリームはため息をつきながら彼女に背を向ける。

 

 「まあいいわ、セリナにちょっとお願いがあって探していたの。 あなたが嫌じゃなければ聞いて欲しいんだけど、時間あるかしら?」

 「ありますとも!」

 

 二つ返事で答えるセリナ。

 キャリームは背を向けたままほっと息を吐き、ゆっくりと振り返る。

 

 「そしたら場所を移しましょ! この時間だから喫茶店とかは空いてないし、協会に戻って話さない?」

 

 キャリームの提案に了承したセリナは彼女の跡をついていく。 すっかり真っ暗になり、明かりの乏しい夜道を仲良く並んで歩く二人。

 数分歩いたところで教会内に到着する。 協会に戻る道すがらに水神龍討伐を任されている旨を説明したキャリームは、協会の食堂にある椅子に座っててから本題を話そうとする。

 何も頼まずに座るのは少し申し訳ないと思ったのだろう、配膳係の職員を呼んで二人分の飲み物を注文すると、早速とばかりにキャリームは本題を告げる。

 

 「私の水神龍討伐に、あなたが担当する冒険者に応援を頼みたいの。 具体的には銀ランクのレミスさんが適任だと思うわ。 あの人の視力と狙撃の技術は冒険者の中でも文句なしのトップだから」

 「あぁ、連れて行ってもらいたいのはやまやまなんですが、彼女は双子さんたちと一緒に火山エリアに遠征中でして………」

 

 気まずそうな顔でそんな事を言うセリナ。 すると二人の元に一人の冒険者が歩み寄ってくる。

 ペンギンのぬいぐるみを抱え、右目に眼帯をつけた女性冒険者。

 

 「それならあの全属性持ちの冒険者はどうかしら? 私の計算ではあいつさえいれば完壁に近い布陣をつくれるわ? 無論、この私も含めてね?」

 

 二人は話に割り込んできた冒険者へ視線を集める。

 

 「キャザリーさん? 話を聞いていたんですか?」

 

 驚いた顔でキャザリーを見つめるキャリーム。

 

 「ええ、いつまで待ってても私に声がかからないから、私から声をかけに来てあげたのよ。 そんな面白そうなクエストに私を誘わないなんてどう言うつもりなのかしら?」

 

 腕を組んで不機嫌そうに鼻を鳴らすキャザリーに、困った顔を向けるキャリーム。

 

 「も、申し訳ないです。 セリナを探していたのですが、なかなか見つからなくて。 声をかけるのが遅くなっちゃいました」

 

 恐らくキャリームは声をかけ忘れていたのではなく、単純にメンバーとして考えていなかったのだろう。 しかしキャザリーの面子を守るために声をかけ忘れたかのような言い回しで謝る。

 それを聞いていたセリナは瞳を潤ませた。

 

 「キャリーム先輩………なんてお優しい方! こんな偉そうな口調で、生意気なドンマイ少女の面子を守るために、咄嗟に優しい嘘をつくなんて!」

 「ちょっと、セリナさんとか言ったわね。 あなた初対面のくせにいい度胸してるじゃない! あとドンマイ少女とか呼ぶんじゃないわよ!」

 

 キャザリーはガミガミと文句を言っていたが、真剣な表情に切り替わったセリナを見て口をつぐむ。

 

 「ところでキャザリーさん。 韻星巫流インポッシブルさんがいれば完璧に近い布陣になると言いましたね。 詳しく理由を伺ってもいいですか?」

 「ふふ、あなたすでに分かってるくせに聞いてるのね? もしかして私を試してる?」

 

 睨み合うセリナとキャザリー。

 

 「まぁいいわ。 あなたも分かってると思うけど、全属性持ちは天性の才能。 つまり最も強い冒険者が全属性持ちになるのよ。 あの冒険者がいれば上級モンスターなんて怖くないでしょう?」

 

 キャザリーの発言に首を傾げるキャリーム。

 

 「あの、こんな事を言うのは失礼かも知れないですが………全属性持ちは魔法の威力が分散してしまい、どちらかというとあまり戦いが得意ではない傾向が———」

 「そんな間抜けな事、一体誰が言い出したのかしらね? 私は最強の冒険者が誰かと聞かれたら、間違いなく全属性持ちの冒険者と答えるわよ?」

 

 キャザリーの真剣な表情に言葉を失ってしまうキャリーム。 それもそのはずだ、この世界で全属性持ちはハズレと言われるほど魔法の威力が弱い。

 冒険者たちの中では常識なのだから。

 

 「逆に聞くけど、魔法の威力が弱かったら何か問題があるの? あなた勘違いしてない? 魔法の威力だけが強くなるための手段だと思い込んでいるなら、あなたは魔法の本質を何一つ理解していないわ?」

 

 セリナはキャザリーの一言を聞いて鼻を鳴らす。

 

 「韻星巫流さんならお手隙なので、頼めば水神龍討伐に連れて行ってもらえますよ。 それとキャザリーさん、先ほどの無礼な言動は陳謝ちんしゃします。 あなたはかなり頭の切れるお方のようですね? 韻星巫流さんはまだ魔法の本当の強さをあまり理解していません。 あなたが嫌じゃなければ、この機会に彼に魔法の使い方を教えていただきたいのですが」

 「構わないわよ? 私が魔法教えちゃったら、きっとあの冒険者は恐ろしく強くなるわよ?」

 

 縦ロールに巻いた水色の髪を、指でくるくると巻きながら自信満々の表情でセリナに視線を向けるキャザリー。

 セリナは職員が運んできた飲み物を一口飲んだ後、ニヤリと口角を上げた。

 

 「あの人は近々宝石ランクになって、この冒険者協会の常識をひっくり返す方です。 強くなりすぎてくれないと困りますよ?」

 

 話についていけず一人置いてけぼりにされたキャリームは、ふくれっ面で縮こまりながら飲み物をずるずると啜っていた。

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