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ナンパなんてしてないでクエスト行ってこい!  作者: 星願大聖
激闘! 滅階級モンスター討伐戦
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〜星ランククエスト・火山龍討伐〜

〜星ランククエスト・火山龍討伐〜

 

 日が登り始めた頃、私たちは火山エリアの拠点に到着した。

 ここに来る途中、鬼羅姫螺きらきらぼし星さんは馬で先に果ての荒野に向かってもらい、とある冒険者パーティーに援軍に来てもらうよう頼んでおいた。

 

 援軍に呼んでもらう予定だったのは私の担当の金ランク冒険者三人のパーティーだ。

 彼女たちは性格に難はあるが反則級に強い、きっと火山龍討伐でも大活躍してくれるはず!

 そう、思っていたのだが………

 

 「おー! あんたがセリナさんか! 俺は凪燕(なぎつばめ)! 一応担当はクルルさんだ、火山龍討伐にこき使ってくれ! よろしくな!」

 「おや? 君は二年前くらいに金剛獅子オルリオンに襲われていた駆け出し冒険者か? 私の助言通り受付嬢を目指していたのか。 久しいな、大活躍している受付嬢がまさか君だったとは驚きだ」

 

 なんだこれ?

 私は慌てて鬼羅姫螺星さんに視線を送ったが………

 

 「ねぇ〜! もしも〜し! セリナさんたいへ〜ん! きらりん気絶しちゃってるよ〜? 立ったまま白目剥いちゃってるみた〜い」

 

 そんなぺろぺろめろんさんの呼びかけを聞いてさらに混乱する私。

 

 「あ、あの〜。 私が彼に応援を頼んだのは、金ランクの羅虞那録ラグナロクさんたちだったと思うんですが………」

 

 なぜ宝石ランクの凪燕さんと、伝説の星ランクである紅焔さんがいるのか。

 全く状況がわからない!

 

 「彼が拠点に来た時にちょうど私たちもいたからな、滅界級モンスターが出たと聞いたので私たちも駆けつける事にした。 私たちが行くと知ったら羅虞那録は『あなた方が行くなら私は、必要ないわね? 薬も過ぎれば毒となる、と言うもの』とか言って果ての荒野に戻ってしまってな。 すまない、驚かせてしまったかな?」

 

 申し訳なさそうな顔でペコリと頭を下げる紅焔さん。

 つーかこの人、二年前と変わってないどころか余計綺麗になってるんですけど!

 緊張して言葉が出ない。

 

 何せ全冒険者の中にたった一人しかいない星ランク冒険者だ、一言で言うと英雄ですよ?

 私みたいな一般庶民が口聞いていいんですかね!

 

 「ううむ、なぜみんな私と話すと固まってしまうのかな?」

 

 困った顔で私をじっと見つめる紅焔さん。

 まずい、このお方の困った顔は狂おしいほどに美しい。 違うそうじゃない!

 

 「あ! すいません! 星ランクであり英雄………いや、勇者? いやいやそんな言葉で片付けていいお方ではない! もっと神々しい言葉はないのか!」

 「え? 英雄だなんて勿体無い言葉は使わないでいただきたい! 普通に話してくれていいから!」

 「ぎゃっはっはっはっはっは! よかったなぁ紅焔! みんなお前のこと尊敬しすぎて固まってただけだとよ! そこの小人の男の子もきっと同じ理由で白目剥いてんだぜ?」

 

 あたふたとする紅焔さんを見て腹を抱えて笑い出す凪燕さん。

 彼もかなり有名な冒険者で、韻星巫流いんぽっしぶるさん同様全属性を扱うのだが、全属性持ちとは思えないほど巧みに魔法を使いこなすのだ。

 三人しかいない宝石ランクの中でも最強と言われている。

 

 「ねぇセリナさ〜ん! 羅虞那録さんたち来ないの〜? うち、喋ってみたかったんですけど〜」

 

 緊張して全身汗びっしょりな私に軽いノリで声をかけてくるぺろぺろめろんさん。

 しかしそんな彼女を見た瞬間、凪燕さんはぴたりと笑い止み、訝しげな表情で視線を送る。

 

 「ん? やっぱりそうだな。 お前、同類だろ?」

 

 なんのことかさっぱりわからない私は小首を傾げていたが、凪燕さんの問いかけにぺろぺろめろんさんが普通に答えた。

 

 「ん? もしかしてあんたもなの? どこ出身よ?」

 「天空の集落だ。 お前は?」

 「うちは南〜。 まさか同族に会えるとは思わなかったよ〜、ちょっと話さない?」

 

 二人の会話を聞いていたすいかくろみどさんもそそくさと近づいてくる。

 

 「ぺろりんその人同族なの? 私は東出身だよ〜! その話うちも混ぜて〜」

 「別にかまわないよ? 火山龍を討伐したらゆっくりと話ししよう」

 

 凪燕さんは嬉しそうに二人に笑顔を向けた。

 

 「凪燕たちはなんの話をしているんだ?」

 

 私と同じく首を傾げていた紅焔さんが、今一番聞きたいことを代わりに聞いてくれた。

 

 「「「こっちの話だからお気になさらず!」」」

 

 えぇ〜? 聞いて欲しくないならこんなところで話すなよ〜。

 とは思ったものの、軽い口調の三人がビシッとそんなことを言ってくるものだから、私たちは勢いに負けて何も聞けなくなってしまった。

 そんな微妙な空気が流れた瞬間にメル先輩が駆けてきた………包帯ぐるぐる巻きだけど、メル先輩だよね?

 

 「セリナちゃん! 来てくれたの? 蜥蜴兵レザルソルーダの蹂躙戦に行ってたんじゃ?」

 「蹂躙戦なら半日で終わって日帰りで帰ってきたんです、帰ってきたら協会に誰もいなかったから焦りましたよ? まぁ事情はガルシアさんからある程度聞きましたよ? 彼もかなり大怪我でしたが、べりっちょべりーさんが治してくれました! 今は他の皆さんと武器の手入れしています!」

 

 ここに来るまでの間、ガルシアさんに簡単に状況を聞いた、だからメル先輩が大怪我してしまったのは知っていたが、こんなにも包帯ぐるぐる巻きだとは思わなかった。

 

 「ああ、この包帯気になる? えっと、これはちょっと………」

 

 メル先輩は困った顔で縮こまってしまう。

 すると後ろから血相を変えて走ってくる、殴るヒーラーこと銀ランク冒険者の神怒狼夢シンドロームさんがチラリと見えた。

 何か問題が発生したのかと身構える私。

 

 「あぁぁぁぁぁ! メルさぁぁぁん! 私は悲しぃぃぃ! 少し目を離した隙にどこかに行かれてしまうなんて! まだ怪我は完治していませぇぇぇん! 絶対安静にしていてくださいと何度も言っているじゃないですかぁぁぁ!」

 

 ………なるほど。

 

 「あ! あの! 神怒狼夢さん! 私もうどこも痛くないですって! なんで涙目なんですか! あっ! また鼻水垂らして! 男の子なんだからしっかりして下さい!」

 

 とっても心配性らしい神怒狼夢さんをあやすメル先輩はお母さんのようだった。

 呆れた目でそんな二人を見ていると、拠点の扉が勢いよく開かれる。

 

 「メルちゃん! すぐに来て!」

 

 そこにいたのは疲れ切った表情で、肩で息をしているクルルちゃん。

 

 「クルルさん! 何か問題発生ですか?」

 「火山龍の傷が治って進行を再開した上に、全身にマグマを纏ってしまって近づけないの! お願い、知恵を貸して!」

 

 火山龍の進行が再開した?

 その発言を聞いて拠点内にいる全員が深刻そうな表情になる。

 状況を詳しく聞きたいと一歩前に出た私は、クルルちゃんとばっちり目があった。

 するとクルルちゃんは信じられないものを見たような目で私を凝視する。

 

 「———セリ、ナ? セリナなの?」

 「はいはいセリナです。 突然で申し訳ないですが、まだ来たばかりなので詳しく状況を聞いてもいいですか?」

 

 私はいつも通り答えたはずなのだが、クルルちゃんは前触れなく急に滝のような涙を流す。

 それを見た私は激しく動揺する。

 

 「よがっだ! セリナが来てくれたなら、もう安心だわ! 知恵を貸して! あの火山龍を止める方法がどうやっても見つからないの!」

 

 クルルちゃんは滝のように流す涙を拭おうとはせず、動揺する私の手をがっしりと握りながら真っ赤な目で懇願してくる。

 私はそんな彼女の姿を見て、深呼吸し、心を落ち着かせ、決意を固める。

 

 「無論、ぶっ飛ばす気できましたから! これまでの戦闘で気づいたこと、起こったことを詳しく教えて下さい!」

 

 クルルちゃんがこんなになるほどに火山龍は厄介なのだろう。 私はクルルちゃんを安心させるため強い口調で答える。

 そしてそれを聞いた冒険者たちの目がキラキラと輝き出した。

 

 「私も協力しよう、作戦会議に参加してもいいかな?」

 「じゃー俺はみんなと装備の確認してくるわ〜」

 

 紅焔さんと凪燕さんのその一言で、メル先輩とクルルちゃんも二人の存在にようやく気がつく。

 メル先輩とクルルちゃんもかなり驚いていたが、作戦会議に参加したいという紅焔さんを連れ、私たちは先ほどまで火山龍と戦闘していたという冒険者たちの元に向かった。

 

 

 

 冒険者たちは簡易テントを立てて待っていてくれた。

 火山龍は大きすぎるために目視できるが、既にかなり遠くにいる。

 あのペースならおそらく三〜四時間後には沼地エリアの拠点に到達してしまうだろう。

 

 確か沼地エリアは龍雅さんたちが指揮していたはず、拠点にも火山龍と戦っていた冒険者の中にも姿が見えないが、もしかしてまだ戦闘中なのだろうか?

 そんな私の疑問を晴らすように、もう一人の受付嬢がこの場に現れた。

 

 「蹂躙戦は全て滞りなく終わったわ、もたついてごめんなさい」

 

 悔しそうな表情でテント内に入ってきたのはキャリーム先輩だった。

 

 「そんな顔しないでくれキャリームさん♩ おそらく君の担当エリアに何かしら問題が発生すると踏んで私は急いで蹂躙戦を終わらせたんだ。 最も、金ランクの三人にかなり無理をさせてしまったから褒められたことではないと思うけど♫」

 「あなたのいう通りよ? 沼地エリアに八頭蛇ユイルクセルパが出たらしいわ? でもここまでもたついたのは私の力不足が原因よ。 だって蹂躙戦で上級モンスターが発生する可能性を考慮できなかったのは他でもない私だもの。 この失態は結果で挽回させてちょうだい」

 

 八頭蛇ユイルクセルパそんなやばいモンスターが出たというのか! これはまた厄介なことになってしまった。

 まずは八頭蛇を迅速に討伐して沼地エリアの守りを固めなくては………

 などと考えているとキャリーム先輩が私に頭を下げてくる。

 

 「セリナ、感謝するわ。 あなたの担当冒険者たちに助けられたわ。 八頭蛇は既に討伐済みよ! とーてむすっぽーんさんのパーティーが駆けつけてくれなかったらこんなすぐに討伐することなんてできなかった。 本当にありがとう」

 

 直角に腰を折って、深々と頭を下げているキャリーム先輩を見て、私は思考が停止した。

 ………え? とーてむすっぽーんさんが八頭蛇討伐に参加した? っていうか既に討伐済みとか言ってなかった?

 

 「あ、あの! キャリーム先輩! 私まだここに駆けつけてきたばかりで状況が全くわかんなくて………とーてむすっぽーんさんが八頭蛇討伐で活躍したって聞こえたんですけど。 彼らはまだ銅ランクと鉄ランクの四人パーティーですよ? まさかそんな………いや、彼らならあり得るかもしれない」

 

 急に冷静になる私。 そんな私を見てオカリナを吹くレイト。

 彼女は空色の瞳を覗かせて真剣な表情で発言した。

 

 「今はそんなことよりも火山龍の対策について話すべきだ。 結果で挽回するんだろうキャリームさん。 私たちがこれまで戦った時の状況、気づいたことを全て話す。 みんなで知恵を合わせてこれに対処しよう。 特例でキャザリーさんにも来てもらっているから、キャザリーさんも遠慮せず発言してくれ」

 「も、もちろんよ?」

 

 腕を組んですまし顔をするキャザリーさん、多分あの子………かなり緊張してるな。 さっきからずっとあのポーズで固まっているのがいい証拠だ。

 そしてレイトとクルルちゃん、たまにキャザリーさんの発言でこれまでの戦いを聞いた。

 

 今はマグマを纏った状態の火山龍が傷をほぼ全回復して進行開始したらしい。

 噴火攻撃は初めの一回だけ、他にも超高温のブレスに硬い皮膚と火炎攻撃。

 

 マグマを纏い始めた火山龍に近づくことすらできなくなったレイトとクルルは、仕方なく拠点に戻ってメル先輩たちとどうするべきか話し合おうとしていたらしい。

 華嘉亜天火(かかあてんか)さんの水魔法を使っても一部のマグマを冷ますのが限界らしい。 しかも今残る全魔力を使って、だ。

 幸い最終手段としてその手は取らなかったらしい。 それが正解だと思う。

 レイトたちの話が終わり、沈黙するテント内。

 

 流石の紅焔さんもお手上げらしい。 超高温のマグマを纏われてしまっては、さすがの彼女も近づけないのだろう。

 他にも厄介なことは山ほどある。 とりあえず現状を整理しよう。

 

 一、体に纏ったマグマ。

 これがある限り直接攻撃も遠距離攻撃も効果がほぼない。

 対策としては大量に水が必要だ。

 

 二、噴火と衝撃波。

 近くにいれば衝撃波で吹き飛ばされ、遠方五キロ以上先まで噴火の被害が出る。

 この攻撃は約六時間〜八時間のタイムラグくらいと推測できる。 なぜなら最初の噴火がちょうど七時間前だからだ。 衝撃波さえどうにかしてしまえば一〜三キロ付近に接近していれば噴火の餌食にならない、衝撃波に関してはどうしたものか………

 

 三、溶岩ブレス。

 これはなんとも言えないが、おそらく食らったダメージや魔力攻撃を体内に蓄積してると推測できる。

 でなければ足を切り落とされた時点でブレスを使わなかった事に説明がつけられない。

 しかもその時後ろ足の骨も砕かれてたらしいし。

 これに関してはなんとも言えない、打たせたくないなら一撃で倒すしかないが、あの大きさのモンスターを一撃で倒すなど不可能だ。

 クルルちゃん達はこのブレスを避けている。 確実に避けられる方法があるなら、空振りさせた方が確実だ。

 

 四、全身の皮膚の硬さ。

 これはほぼ解決しているようなものだが、口の中、脇の下、関節部分や目玉は肉質が柔らかい。

 切り傷を与えるのならここら辺。

 

 五、常に火炎を操作して攻撃してくる。

 さっきまでは華嘉亜天火さんが対処していたらしいが、ブレスから逃げるために大量の魔力を消費していて、今は水分の少ない火山エリアで水を作り出すのは難しいらしい。

 水が大量にあれば、操作するのは可能だという話だが………

 

 ———いや待てよ? これ、どうにかなるな。

 

 そう思った瞬間、テント内にいた全員が私に視線を集めている事に気がついた。

 

 「セリナ? どうかしたの? さっきから何も喋っていないけど………もしかして!」

 

 クルルちゃんがおずおずと声をかけてくる。 そして全員の期待に満ちた視線が私に集まる。

 ふふ、今回ももちろんオーバーキル確定だけど………これでなんとかなるはず。

 

 「対策、思いつきました! 確認したいんですが、今あるワイヤーで一番硬いもの、爆薬の総量、足の速い冒険者と水魔法が使える冒険者。 水適性は単体が好ましいですね。 それと後は、腕力自慢の冒険者集めてくれます?」

 

 その場にいた全員が勢いよく立ち上がる。

 

 「すぐに用意させるわ! 一番硬いワイヤーは鋼鉄兵器の装甲とダイヤモンドを合成した特殊ワイヤー! これを切ったモンスターは報告にいないわ!」

 

 キャリーム先輩の元気な声が響く。

 そのワイヤーはお値段かなり高いけど、切れ味最強と言われている両断蟷螂コプマットですら切れなかったとか………

 

 「あ! あとレイトさん! フェアエルデさんと華嘉亜天火さん、それからラオホークさんの魔力はどのくらい余ってます? 特に、ラオホークさん」

 

 レイトは私の問いかけに対し、幻想的な空色の瞳をくっきりと開きながら答えてくれた。

 

 「フェアエルデさんと華嘉亜天火さんは結構魔力を使ってしまったが、一〜二時間もすればかなり回復するはずだ。 ラオホークさんは、ほぼ万全な状態だよ?」

 

 真剣な表情で告げるレイトは、オカリナを吹かなかった。

 

 「では私が考えた案を説明します。 私が考えた案はこうです………」

 

 私の策を聞いた受付嬢たちは、期待から確信に変わった眼差しでうなづく。

 これより今ここにいる冒険者は全員

 

 作戦の地———沼地エリアの拠点に向かう。

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