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ナンパなんてしてないでクエスト行ってこい!  作者: 星願大聖
激闘! 滅階級モンスター討伐戦
61/130

〜金ランククエスト・八頭蛇討伐〜

〜金ランククエスト・八頭蛇討伐〜

 

 時は遡り、火山エリアの戦場。

 火山龍は目を潰されていたため、なんとかブレスからは逃れることができたクルルたち。

 しかしブレスから逃れたにもかかわらず、そこに立ち尽くすクルルたちは呆然とした表情で高台を見上げ続けていた。

 

 「レイトさんからは………まだ花火が上がらないわね」

 

 ぼそりとつぶやくキャザリー。

 

 「俺様は、まだ諦めねぇ! すぐに無事か確認に行くべきだ! クルル嬢! 俺様を行かせてくれ!」

 

 パイナポは勢いよくクルルに詰め寄った。

 力任せに握っている拳はプルプルと震えている。

 

 「もちろん今からあのクソモンスターを倒さなきゃいけないから人手が足りねえのはわかってる! けど放っておくことなんてできねぇんだよ!」

 

 パイナポの怒鳴り声が火山エリアに響き渡った。

 彼の叫びを聞いたぺんぺんは、震える肩に優しく手を置く。

 

 「ここにいる全員が、お前と同じ気持ちに決まっている。 俺からも頼む! クルルさん、彼女たちの無事を確認に行かせてくれ」

 

 全員の視線がクルルに集まる。

 

 「もちろんお願いします。 彼女は火山龍の足止めに最も活躍した超優秀な受付嬢の上に………私たちの仲間です! パイナポさん———彼女を、助けてください!」

 

 パイナポに深々と頭を下げるクルル。

 それを見ていた冒険者たちの、こわばった表情が少しだけ緩む。

 

 「あったりめぇだ! 絶対に無事を確かめて白い花火を上げっから、火山龍は頼んだぜ!」

 

 パイナポが冒険者たちの方に振り向くと、有無を言わさずに全員が頷く。

 ———その時だった。

 

 「どうしたんだい?♪ みんな揃って随分と深刻そうな顔をしている♫ 何か問題でも発生したかな?♩」

 

 背後からオカリナの音と共に聴き慣れた声が聞こえてきた。 驚愕の表情で、恐る恐る振り返る冒険者たち。

 そしてその視線に違和感を感じ、小首をかしげるレイトがそこに立っていた。

 

 「おやおや?♪ みんな揃って深淵を覗くような眼差しを私に向けているけど、何があったんだい?♫」

 「レイトぉぉぉ!」

 

 いつも通り、一通り喋り終わったレイトがオカリナを吹いていると、涙で顔がぐちゃぐちゃになったクルルが勢いよく飛びついた。

 

 「よかっだ! 本物よ! 本物のレイトだわ! お化けじゃないのね!」

 「ちょ! まっ! ピュ♩ヒュ♫ 痛い! 痛いよクルルさん! ピュ♩ウゥ♬ ちょ、首が………ギブギブ♩ ポヒュ♫ヒュ♬」

 

 オカリナを吹いている最中に首をホールドされたレイトは間抜けな音色を奏でながら顔を青ざめさせる。

 

 「あっ! ごめんなさいレイトさん!」

 

 慌てて離れたクルルは心配そうな表情でレイトを見つめていた。

 

 「いやぁ。 危うくクルルさんに討伐されるところだったよ♪ 一瞬、極彩色ごくさいしょくの川が見えた♪」

 

 冷や汗を垂らしながらオカリナを吹くレイト。

 そしてその背後から巨大な水塊にふん反り返りながら座る、小人族の少女が現れる。

 水塊は浮遊したまま移動しており、まさに女王の凱旋と言っても過言ではない雰囲気を醸し出している。

 

 「この私がそばにいたんですもの、無事に決まっているじゃないの」

 「華嘉亜天火かかあてんか! お前も無事だったか!」

 

 珍しくまともに話すフェアエルデ。

 

 「ええ、あのブレスの直前に水を噴射して移動したわ? まぁものすごい水圧で移動したから魔力は大量に消費してしまったけどね。 無事を知らせる花火を上げたのだけれど気がつかなかったかしら?」

 「「「「「え?」」」」」

 

 冒険者たちは一斉に華嘉亜天火に視線を寄せる。

 

 「え? って何よ、あっちで花火が上がったのを見なかったの?」

 

 華嘉亜天火が指を刺したのは高台とはほぼ逆方向。

 それを確認した冒険者たちは、一泊おいてため息をついた。

 

 「なんだ、盛大なため息などついて、何か問題でもあったか?」

 

 ため息をついたタイミングで銀河ギャラクシーとぷぷるんも合流する。

 

 「ギャラクシーさん! ぷぷるんさん! 先程は助かりました! あなた方の指示がなければ、ブレスに気付くのが遅れてしまっていたはずです! あなた方もご無事で何よりです!」

 

 礼儀正しく頭を下げるくりんこん。 銀河はものすごく満足したような表情で頷く。

 

 「うむうむ! くりんこん! お前はなんて礼儀正しく、なんて心が綺麗な冒険者なのだろう! 気にするでないぞ! お前のようなすばらしい冒険者を救うためだからな!」

 

 銀河は名前を間違えられなかったため、ものすごく上機嫌だった。

 あたかも自分が危機を知らせたかのような口ぶりの銀河を、ぷぷるんはジトーっと睨みつける。 そんな二人を見て首をかしげるくりんこん。

 少し離れて銀河たちを見ていたフェアエルデは、ニンマリと笑いを我慢しながらくりんこんの肩に手を置いた。

 

 「おいおいくりんこん! かわいそうだろうが! ちゃんとぎんがって呼んでやれオンエアで。 じゃないとこいつの存在意義が皆無になるタイム」

 「フッざけるなよフェアエルデ! いいかげん私も手が出るぜ? せっかくまともな冒険者いるのに、なんて無意味な崖っぷちに! このクソライムしか踏めぬ脳なしの愚昧め! この私がすぐにボコボコにしてオーバーキル!」

 「ぬあ! こいつ! 強え! 一瞬で『クソライム』と『オーバーキル』『なんて無意味』と『崖っぷちに』、さらに『脳なし』に『愚妹』をかけて、その上俺の名前の『フェアエルデ』に『手が出るぜ』で踏んでやがる! 只者じゃねえ!」

 

 喧嘩を始める銀河とフェアエルデの間で困った顔であたふたするくりんこん。 しかしそんなくりんこんは放置され、一方では作戦会議が始まっていた。

 

 頭の回転が速い鋼ランク冒険所のキャザリー、そして受付嬢のクルル、レイトがこの後の立ち回りを話し合う。

 そして意気揚々とレイトを探しに行こうとしたパイナポは、みんなに忘れられ、遠くでポツンと立ち尽くしながらそんな冒険者たちを羨ましそうに傍観していた。

 

 

 

 「火山龍の足止めは充分成功したと思っていいでしょう。 これから各拠点に散らばる冒険者たちを集めて討伐にあたります!」

 「レイトさんの担当区域は全て終了しているものね。 ここから近いエリアを担当してる樽飯庵や龍雅たちも終わっていてもおかしくないわ?」

 

 キャザリーの発言を聞き全員がこくりと頷く。 足を切断されブレスを吐いた火山龍はじっとその場に倒れたままな動くことがなかった。

 討伐にあたる決断をしたクルルは黒い狼煙を上げる。 今は夜明け前で辺りは明るくなり始めたため、合図は狼煙に変わったのだ。

 その場にいた冒険者たちが狼煙を挙げたことを確認し、討伐にあたろうとした瞬間。

 火山龍に動きがあった。

 ぷぷるんが駆け出そうとした冒険者たちを必死に止める。

 

 「火山龍に動きがありました! なに? これは……… 背に背負ってる火山から魔力が溢れて。 ———マグマを纏っている?」

 

 ぷぷるんの言葉を聞き、全員が耳を疑う。

 

 「マグマを———纏うだと?」

 

 ぺんぺんは汗を垂らしながら聞き返すが、ぷぷるんはごくりと喉を鳴らす。

 

 「それだけではありません、切断されたはずの左の前足が………ものすごい速さで再生しています。 その上、纏ったマグマがセメントを溶かしているので、拘束されていた足も動き出しました。 私が超音波で粉砕した足の骨も治り始めてます。 火山龍、進行を再開するつもりです!」

 

 ぷぷるんの一言で、上がり始めた冒険者たちの士気は………急激に下がる事になった。

 

 

 

 朝日が上る直前、南の沼地エリアでの八頭蛇ユイルクセルパ討伐戦は激化していた。

 先陣を切った樽飯庵が巨大な水の泡を作り出し、八頭蛇の首を三つ包み込んだ。

 これにより毒、土、炎を操る首が無力化され、いまだに泡に包まれた三本の首は苦しそうにもがき続けている。

 

 「八回殺さねばヤツは死なん、残り五回だ」

 

 冷酷な声で呟く龍雅と共に並走するのは貂鳳、とーてむすっぽーん、どるべるうぉんの前衛四人。 全員が龍雅の問いかけにこくりと頷き、四方に散った。

 八頭蛇の首はそれぞれ散らばった前衛たちから目を逸らすまいとうねりだす。

 しかし額に紫の宝石を埋めた首だけは、中心に残って細い舌をチョロチョロ出しながら辺りを見渡している。

 

 「ほう、どり〜みん先生の言った通り、中心残った一本が全体の司令塔だな。 虎宝、つぶせ」

 「あいよ〜、ちゃーんと魔力貯めてたからね〜。 さ〜て八頭蛇君。 ———痛いから我慢しろよ?」

 

 龍雅の合図で、ものすごい魔力を込めた矢を射出する虎宝。

 前衛を目で追わずに、中心から全体を見渡していたのは雷を操る首。 その首に向けて一直線に矢が飛んでいく。

 たまらず回避を試みようとするがすでに遅い。 ものすごい速さで射出された虎宝の魔力矢は無慈悲に八頭蛇の首を貫いた。

 

 それを合図に飛び掛かる前衛四人。

 龍牙が飛びかかったのは額に黄緑の宝石を埋めている首だった。 大きな口を開きながら龍雅を威嚇すると、大地から無数の植物が伸びてくる。

 そして伸びてきた植物から生える無数の太い蔓が龍雅を襲う。 鞭のようにしなりながら無数の蔓が襲い掛かるが、龍雅はいとも簡単に全ての蔓を避け切ってしまう。

 そして一瞬で八頭蛇に肉薄した。

 

 「私が相手でなければ、今の蔓は避けられなかっただろうな?」

 

 龍雅の槍が八頭蛇の首を串刺しにした。

 龍雅に続いて貂鳳も、いつの間にか八頭蛇の首を切り落としていた。

 

 「さっすがどり〜みんちゃん! 八頭蛇の首を見て操る属性を把握したら、相性がいい相手に全員をぶつける。 単純だけど最も効果的な方法だね!」

 

 よりどりどり〜みんに向けてビシッと親指を立てた貂鳳の背後に、巨大な八頭蛇の首がドスンんと音を立てながら落ちる。

 額に真っ青な宝石を埋めた八頭蛇の首はだらんと舌を出し、切断面からじわじわと血を流していた。

 そんなグロテスクな背景を見ていたよりどりどり〜みんは、とりあえず顔を引き攣らせながら親指を立てて返す。

 残る首は氷と風のみ。 氷を担当するとーてむすっぽーんは、ゆっくりと歩きながら飛んでくる氷柱を全て紙一重でかわす。

 

 「どり〜みんちゃんと嫌ってほど氷魔法の訓練したからな。 水飛沫を氷に変えて射出してるんだろ? 攻撃までのためが少し遅い。 歩きながらでも余裕で避けられる」

 

 いとも簡単に降り注ぐ氷柱を全てかわしたとーてむすっぽーん。 接近された八頭蛇は、魔法が効かないと悟り噛みつこうと首を伸ばす。

 しかし伸ばしてきた首もひょいとかわしながら、とーてむすっぽーんは勢いよく大剣を振り上げる。

 

 次の瞬間、とーてむすっぽーんの背後に八頭蛇の首が宙を舞った。

 後方では樽飯庵が悶絶しながら「超クールだぜぇ! とーてむすっぽーん殿ぉ!」などと騒いでいる。

 

 そして残る首は風を操る首だけとなる。 額には濃い緑の宝石が埋め込まれている。

 よりどりどり〜みんは額の宝石を確認して対峙する冒険者を指示した。

 ここには観察眼に優れるとーてむすっぽーんがいたため、宝石の見分けは容易たやすかった。

 あとは前衛冒険者たちと相性が良くない首を樽飯庵の泡に封じさせ、司令塔として中心で辺りを見回す首を狙撃する。

 

 司令塔が氷だった場合はどるべるうぉんは下がる手筈になっていたが、司令塔は雷だったため彼は一番相性がいい風と対峙している。 そして睨み合うどるべるうぉんと八頭蛇。

 先に動きを見せた八頭蛇は、どるべるうぉんを放置してあらぬ方向にかまいたちを飛ばしてきた。 かまいたちが飛んだ先ではかん高い金属音が響く。

 どるべるうぉんはそれを予測していたかのように駆けだす。

 

 「言っておくが、本命は私じゃない!」

 

 どるべるうぉんはそう呟きながら片手剣を二本投げる、すると八頭蛇はすぐに投げてきた片手剣をかまいたちではたき落とした。

 次の瞬間、空からものすごい速さで何かが落ちてくる。 落ちてきたのは氷で作られた巨大な剣だった。

 氷の剣はまるで狙って落とされたかのように真っ直ぐ八頭蛇の首に落ちる。 氷の剣を首に落とされ、ほぼ首が取れかかっている八頭蛇は、ピクリとも動かずに地面に伏した。

 それを確認した瞬間、初めにかまいたちが撃たれた場所で能力を解いたどろぱっくが現れる。

 透明化を解いて急に現れたどろぱっくは、使い慣れない大盾を重そうに担ぐ。

 

 「作戦大成功ですね?」

 

 呆れた顔でどるべるうぉんに視線を送るどろぱっく。 視線を向けられたどるべるうぉんは肩を窄めていた。

 風の首を倒すよりどりどり〜みんの策は三重に用意されていた。

 まず、八頭蛇相手にどろぱっくの透明化は意味をなさない。 奴らは熱を探知して攻撃を仕掛けるため、姿を隠していても気づかれる上に真っ先に狙われて攻撃されるだけなのだ。

 

 だからこそ、よりどりどり〜みんはどろぱっくに大楯を持てせて透明化を指示した。 透明化することで必ず初撃を誘える、囮として最初に狙われる彼に大楯でかまいたちを防げという指示だったのだ。

 そしてその隙にどるべるうぉんが首を落とせればよし、首を落とせなかったとしても、熱探知の範囲外である空の上から、氷の剣を持って待機したぷらんくるとんが氷の剣を落とせばよし。

 それでもダメなら、よりどりどり〜みんが氷魔法で首を貫く手筈になっていたのだ。

 

 トドめに氷の剣や氷柱を選んだのは、氷なら熱探知に引っかからないため八頭蛇は死角からの攻撃に気づかないからだ。

 得意げに鼻を鳴らすよりどりどり〜みん。 そして空から声高に可愛らしい女の子の声が聞こえてくる。

 

 「あーはっはっはっはっは! 鉄ランク舐めんなよこんのクソ八頭蛇! この首を打ち取ったのはぷらんくるとん! と仲良しの鉄ランク二人組と、どり〜みん先輩が作った氷の剣なのです! まぁ私一人が討ち取ったわけではないってことだから、私だけを褒めなくてもいいのです! 上級モンスターの首を打ち取ったぷらんくるとんを! 別に! 褒めなくても! いいのです!」

 

 いかにも褒めてほしいとでも言いたいかのように空の上で高笑いをするぷらんくるとん。 そんな彼女を見上げながら龍雅はつぶやいた。

 

 「彼女たちは本当に鉄ランクなのか? 鋼ランク並み、いや。 それ以上に心強いではないか」

 

 嬉しそうにニヤリと笑う龍雅。

 結局上級モンスターである八頭蛇は、発見からわずか二十分足らずで討伐されてしまった。

 この結果をのちに知る冒険者協会本部は、八頭蛇の討伐ランクに頭を悩ませる事になる。

 

 

 

 日が登り始めた頃、火山エリアは歓喜に震えていた。

 

 「あれが、本物の宝石ランクと星ランク冒険者なのか!」

 「オ、オーラが全然ちげー! それに思ったより若い!」

 

 怪我人の治療に走り回る岩ランクや鉄ランク冒険者たちが口を揃えて騒ぎ散らす。

 

 「おやおや〜、怪我人が多いねぇ? 君たち一体何ランクなの?」

 

 背の高い黒髪の男が近くにいた怪我人冒険者に声をかける。

 声をかけられた冒険者は緊張しながら恐る恐る答えた。

 

 「ど、銅ランクです。 戦闘時は後方に待機して前線の冒険者方の援護と伺っていましたが、火山龍の噴火攻撃は直径五キロにわたり被害を出してまして………」

 「ご! 五キロ? そりゃあ後方の君たちは油断しちゃうよね〜? 流石にそんな大規模魔法は俺でも対処できないなー」

 

 眉を歪ませながら顎をさする黒髪の男。

 隣に立っていた赤髪の女性はそんな黒髪の男に声をかける。

 

 「凪燕なぎつばめでも対処できないとなると、滅界級という話も頷けるな」

 「そういう紅焔べにほむらこそ、今回の相手火山そのものだから、まさに炎属性魔法のエキスパートだよ? 相性雨悪くない? 大丈夫?」

 

 紅焔と呼ばれた赤髪の女性は、凪燕の問いかけに対しニヤリと笑う。

 

 「ふっ、愚問だな。 実態している限り、私に斬れないわけがないだろう?」

 

 腰にぶら下がっている、さやすらついていないつかだけの片手剣をさする。

 

 「こりゃー心強いね、果ての荒野からわざわざ呼び戻されただけのことはある。 なぁ? 確か、鬼羅姫螺星きらきらぼしとか言ったっけ? お前の担当受付嬢はまだ来ないのかい? 早く詳細を教えてくれよ〜!」

 

 緊張し、額を汗でびっしょりと濡らす鬼羅姫螺星はおずおずと答えた。

 

 「も、申し訳ありませんでやんす! 俺はセリナさんから頼まれて、あなた方を呼ぶために馬で先行してきただけでやんす! なのでいつ来るかまではわからないでやんす!」

 

 直立したまま一生懸命答える鬼羅姫螺星と目線を合わせるように紅焔は屈んでニコリと微笑んだ。

 

 「緊張する必要はない。 魔力目を持つ優秀な小人族の君が私たちを呼びに来た事で、火山龍の討伐はとどこおりなく完遂される事になる。 君の働きは褒め称えられるものだ、私たちは君を責め立てることは決してないのだから」

 

 優しい口調の紅焔に見つめられ、頬を朱に染める鬼羅姫螺星。

 

 「あ、もしかしてお前紅焔に惚れちゃった? 顔だけは超綺麗だもんなぁ? でも、戦ってるところ見ると青ざめるぜ? 夢持つのはほどほどにな?」

 

 茶化すように笑う凪燕を紅焔はジト目で睨んだ。

 

 「そういう凪燕も、女の子に全くモテないだろう! お前は女性の気持ちをもっと考えて、もう少し真面目な口調で喋ればいいのだ! あとお前の戦術討論は小難しすぎる!」

 「んなこと言われてもなぁ? これが俺のスタイルだから」

 

 二人が少し口喧嘩のようなものをしただけで、周りの冒険者たちがこの世の終わりのような顔をして青ざめる。

 

 「お! お二人とも! ここで喧嘩はまずいかと思うでやん………す」

 

 怯えながら二人を止めようとする鬼羅姫螺星に二人はキョトンとした顔を向ける。

 

 「「なんでそんな慌ててるんだ?(のかな?)」」

 

 同時に視線を向けられた鬼羅姫螺星は、たったまま白目を剥いて気絶してしまった。

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