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ナンパなんてしてないでクエスト行ってこい!  作者: 星願大聖
激闘! 滅階級モンスター討伐戦
60/130

〜火山龍の足止め・それぞれの蹂躙戦〜

〜火山龍の足止め・それぞれの蹂躙戦〜

 

 火山龍ヴォルカディーユの頭部に濃霧が漂う。

 作戦が始まり、霧の幻影が火山龍に幻を見せていた。

 

 「忍びの娘! 準備は整ったぞ? さっさとせんか!」

 「命令無用。 すぐに口を閉じさせてやる」

 

 ラオホークは腰に刺していたキセルを取り出すと、手の上でくるくると回しながら目を閉じる。

 羅宇に竹が用いられた長尺の煙管を手にしたラオホークに、朧三日月は興味深げな視線を送る。

 

 「なんじゃお主、タバコを嗜む趣味があったのか?」

 「これは杖だが?」

 

 どうやらキセルの形をした杖だったようだ、後ろでずっこけそうになっているぺんぺんには目もくれず、ラオホークが周囲に紫色の煙を充満させる。

 

 「念のため全員口元を布で覆え」

 

 その場にいた全員が袖や衣服の裾で口元を覆う、するとラオホークが作り出した紫色の煙は濃霧の中に消えていく。 それを目視したくりんこんは、作戦開始の合図を告げる紫の花火を上げた。

 火山龍の頭部を挟み込むように両側に展開していた冒険者たちからも、了解を告げる紫の花火が上がる。

 数舜後、火山龍は大きな咆哮を上げる。 その咆哮を聞いた一同が、濃霧から視線を逸らさずに状況を見守る。

 数秒後、巨大な岩同士が衝突したような、空気を切り裂く打撃音が響いた。

 

 「今じゃ!」

 

 朧三日月の掛け声を合図にフェアエルデが地面に手を置く。

 火山龍の顎の下にあった岩盤が折り畳まれるようにせり上がり、正面から火山龍を挟み込んだ。

 バタンと大きな音を上げた瞬間、くりんこんは地面に杖を立てた。 そして呪文を唱え始めると同時に、彼女の背後からシュプリム、夢時雨が駆け出す。

 

 霧が晴れ、火山龍の頭部が目視できるようになると、その顎全体を塞ぐようにセメントで固められた口元が明らかになる。

 突然毒の煙を吸い込まされ、口を開けなくなった火山龍の首は大蛇のように畝り、激しく暴れている。

 ちらりとそれを確認したシュプリムと夢時雨は一瞬の隙を見て火山龍の黄金色の目に飛びかかった。 シュプリムが薙刀を振り、夢時雨は籠手を眼球にめり込ませる。

 

 「うっげ〜! 時雨グロっちいぞ!」

 

 後ろからパイナポの悲痛の声が上がる。

 そして両目から血を噴射した火山龍は動き回らせていた首を地面に投げ出し動かなくなった。

 

 「た、倒したのか?」

 

 ぼそりとぺんぺんがつぶやく。

 

 「まだ油断しないでください! 全員集まって臨戦体制を継続!」

 

 クルルの号令でシュプリムと夢時雨がすぐに戻ってくる。

 一同、息を呑みながら火山龍を見守っていると、火山龍の後方から全員の頭に直接響くような声が聞こえてくる。

 

 『全員退避! 急いでください! 脱兎の如き撤退を! 火山龍の頭部に超強力な魔力反応あり! 後方の冒険者たちも急いで遠くへ!』

 

 ぷぷるんの超音波で、辺りにいる冒険者全員に聞こえるよう出された指示。

 それを聞いたパイナポはクルルを肩に担いで全速力でその場から離れる。 他の冒険者たちも有無を言わせない速さでその場から全力で離れていった。

 パイナポに肩で担がれているクルルは後ろを向いているため、火山龍に視線を向けて青ざめた。

 

 「口の周囲が赤く………もしかして、ブレス? 竜種特有のブレスが来ます! 全員伏せて!」

 

 火山龍の塞がれた口元が淡いオレンジに発光していた。 そして口を覆っていたセメントがドロドロと溶けていく。

 直後、巨大な口を開けた火山龍の口にはオレンジ色の光の塊が現れ、その塊からオレンジの光線が勢いよく射出された。

 頭部付近にいた冒険者たちはスライディングするように身を屈める。

 全員が身を屈めた瞬間、しゃがんだ冒険者たちの頭上をオレンジの光線が横切った。

 辺り一体を薙ぎ払うように放たれたオレンジの光線は、火山エリア周辺の巨大な山々を溶かし、真っ二つにしている。

 ふと、くりんこんは高台に視線を送った。 目線を送った高台は跡形もなく無くなっている。

 

 「高台が……… レイトさんと華嘉亜天火さんは無事なんですか!」

 

 くりんこんの叫びが夜空にこだまする。

 全員が息を呑みながら立ち上がり、高台に視線を送るが………

 高台があったはずの場所からは、無事を知らせる花火は一切上がる気配がなかった。

 

 

 

 真夜中、王都から南方に位置するの蹂躙戦を指揮する銀ランク冒険者の樽飯庵ダルメシアンは頭を抱えていた。

 

 「樽飯庵さん! 鬼人ガルユーマです! 五体出現しました!」

 

 彼らが任された南方の平原エリアは範囲が広く、かなりの時間を要してしまっていた。

 キャザリーが制圧した森林エリアの次に通過が予想されるこのエリアは、その広さを利用して最悪の場合に備えた大きな砦を作る予定となっている。

 

 「おいおい、勘弁してくれよ。 昼寝する暇すらねぇじゃねえか」

 

 樽飯庵はやる気のなさそうな声で呟き、鬼人が出現したと報告があった方角に視線を送ると、松明の光が閃光のように駆けて行くのを目にした。

 樽飯庵は目を擦ってその光を追うと、松明は一直線に鬼人に肉薄して、瞬く間に鬼神の両肘から先を両断した。

 

 「は? なんだ今の? あんな強い冒険者ここにいたか?」

 

 目を疑う樽飯庵。

 両肘から先を両断された鬼人は怒りながらその冒険者を蹴ろうとするが、頭部に片手剣が飛んでくる。 避けられずに眉間に突き刺さり、膝から崩れ落ちる鬼人。

 倒れる鬼人の隣に立っていた冒険者にもう一人の冒険者がゆっくりと歩み寄っていく。

 

 「鬼人の腕両断するなんて、さすがです」

 「何言ってんの。 仕留めたのはどるべりんだろ?」

 

 二人は背中合わせのまま言葉を交わす。

 

 「あ、あれは………とっ、ととトトとーてむすっぽーん殿!」

 

 何かに怯えたような声を上げる樽飯庵。

 彼は木枯月の序盤に行われた武闘大会で、とーてむすっぽーんに一方的にボコボコにされてからトラウマになってしまっているらしい。

 他の冒険者は呼び捨てにするが、格下のとーてむすっぽーんにだけは『殿』をつけるようになり、冒険者協会ですれ違うたびにびくりと肩を震わせるようになったとか………

 

 「あれは鬼人殺しだ! とーてむすっぽーんさんたちが応援に来たぞ!」

 

 キャリーム担当の鉄ランク冒険者たちが一気に活気づく。

 そして一瞬で討伐された鬼人の元に、残り四体の鬼人が近づく。

 

 「どるべりん、一体任せていいかな?」

 「何言ってるんですとってぃさん。 二体やらせて下さいよ?」

 

 とーてむすっぽーんはニヤリと笑い、地を蹴り正面から接近していた鬼人に飛び掛かる。

 同時にどるべるうぉんは先ほど投げた片手剣を、足元に転がっている鬼人の頭から引っこ抜いた。

 

 まず、とーてむすっぽーんが肉薄することを悟った鬼人が棍棒を振り上げるが、振り上げたその腕にどこからともなく飛んできた氷柱が刺さる。

 たまらず武器を落とした鬼人は次の瞬間、頭から真っ二つに両断された。

 

 「まずは一匹」

 

 返り血を浴びながらとーてむすっぽーんが底冷えするような声音でつぶやく。

 一瞬の出来事に口をあんぐり開けて見守る樽飯庵と鉄ランク冒険者たち。 しかしもう一体の鬼人がとーてむすっぽーんに飛び掛かってくる。

 とーてむすっぽーんはもう一体が振り下ろしてきた棍棒を余裕の笑みを浮かべながら紙一重で交わすと、棍棒を持つ腕を一瞬で切断した。

 

 そしてちらりと後方に目線をやると、氷柱が四本飛んでくる。 飛んできた氷柱は鬼人に全て突き刺さり、二体目の鬼人も地に伏した。

 

 「鬼人三体を………一瞬で? 嘘だろ? あの方は本当に銅ランクなのか?」

 

 目を見開いて驚く樽飯庵、しかし鉄ランク冒険者たちは別の方向に視線を向けたまま騒ぎ続けている。

 

 「なんだあれ! 投げたダガーを殴って飛ばしたぞ!」

 「いや違う! 俺が見た時は蹴っていた!」

 

 樽飯庵は首を傾げながらも騒ぐ鉄ランク冒険者の視線を追う、すると目に映ったのはダガーが滅多刺しになっている鬼人がちょうど倒れるところだった。

 

 「何がどうなってああなった! あいつはどろぱっくの相手だったどるべるうぉんか! あいつも化け物だったのか!」

 

 騒ぐ鉄ランク冒険者と同じく、目を輝かせる樽飯庵(銀ランク)。

 しかし鬼人が倒れた直後、どるべるうぉんの背後にもう一体の鬼人が駆けてくる。

 

 「「「あっぶなーい!」」」

 

 樽飯庵たちが思わず叫ぶが、駆けてきた鬼人に矢の雨が降り注ぐ。

 たまらず両腕で頭部を庇う鬼人。

 

 「チェックメイト」

 

 どるべるうぉんはそう呟きながら片手剣を勢いよく投げた。

 投げられた片手剣は吸い込まれるように鬼人の胸を突き刺し、鬼人はばたりと倒れてしまう。

 唖然としていた樽飯庵たちの拍手と歓声が上がり、驚いてそちらに視線を送るとーてむすっぽーんたち。

 そしてとーてむすっぽーんに歩み寄ったよりどりどり〜みんと、空からふわりと降りて来た少女はは樽飯庵を同時に指差した。

 

 「あ! 樽飯庵さんじゃないですか!」

 「とってぃ先輩にボコされてた銀ランク冒険者なのです!」

 

 指を刺された樽飯庵さんは肩を窄める。

 

 「ひどい覚えられ方だなぁ、お兄さん泣いちゃうぜ?」

 

 困った顔をする樽飯庵にとーてむすっぽーんが近づいていく。

 

 「樽飯庵さん、お久しぶりです! ちょうど近くでクエストをしていたので、拠点の岩ランク冒険者たちからここで蹂躙戦をしていると聞き応援に駆けつけました! 僕たち四人もあなたの指揮下に加えさせていただきます!」

 

 礼儀正しく頭を下げるとーてむすっぽーんにあたふたしながらたたずまいを直す樽飯庵。

 

 「こ! こちらこそ! とーてむすっぽーん殿にご助力いただけるとは光栄の極み! 是非ともこの私をこき使って下さい!」

 

 勢いよく直角に腰を折る樽飯庵。

 そんな樽飯庵を見て鉄ランク冒険者たちはコソコソと耳打ちをしている。

 

 「樽飯庵さんってあんなキャラだったっけ? もっといつも怠そうでやる気ない人だったよね?」

 「いってやりなさんな、あの人武闘大会の後から鬼人殺しさんに怯えてるみたいだぞ?」

 

 頭を下げながらも、こしょこしょ話す鉄ランク冒険者たちに鋭い視線を送って黙らせる樽飯庵。

 そんな様子を見ながら、困った顔でポリポリとこめかみを掻くとーてむすっぽーん。

 

 「あの、指示をいただけませんかね? あとはどのあたりを蹂躙するんですか?」

 「とーてむすっぽーん殿にお手を煩わせるわけにはいきません! いくぞお前ら、鬼人殺し殿のパーティーに遅れをとるな!」

 

 その後、一気に士気が上がった樽飯庵たちは、駆けつけたとーてむすっぽーんたちと協力し、ものの数分で蹂躙戦を終わらせた。

 

 

 

 王都から一番離れた最南端に位置する沼地エリア。 龍雅達の指揮するこのエリアは南の沼地、最も火山エリアに近い地点である。

 現在戦闘中の火山エリアが通過されれば、次の戦場はこの地点となる。 拠点制作自体は順調に進んでいるが、その制作状況に反して足踏み状態になってしまっている蹂躙戦。

 

 戦力の問題上、金ランク三人パーティーである龍雅、虎宝、貂鳳の三人以外は鉄ランクで固められてしまっているため、中型モンスターが出るたびに悲鳴と怪我人が出続けていた。

 夜中の沼地は特に危険で、猛毒を持つモンスターによる毒攻撃や、姿を隠すことにけたモンスターが多いため迂闊に動くことも許されない。

 

 「くっ! 私に指揮を任された以上、不甲斐ない結果を出すわけには!」

 

 その惨状を見ながら下唇を噛む龍雅。

 

 「おいおい龍雅! そんな顔すんなよ〜? 鉄ランクの皆さんも不安そうな顔してっぞ?」

 

 不安そうな表情で龍雅に視線を集めていた鉄ランク冒険者たちを一瞥し、こわばった表情を無理やり柔らげる龍雅。

 

 「すまない、少々一人で思い詰めてしまっていたようだ。 現状を聞こう」

 「百足武者ミルパルメット五体、鬼人ガルユーマ三体、双頭蛇ペルセルパ三体出現しています。 現在貂鳳さんが双頭蛇三体と交戦中です」

 

 約五時間にわたり、ぶっ通しで戦い続けていた金ランクの三人は鉄ランク冒険者たちからの要望で交代で休憩を取っている。

 現在交戦するのは貂鳳、見張りが虎宝、龍雅は作戦会議を兼ねた休憩中なのだ。

 

 「私が貂鳳と変わろう。 すぐに出る、虎宝は貂鳳と見張を変わって休憩してくれ」

 「そんな! 龍雅さんはまだ五分も休憩していません!」

 

 テントの端に立てかけてあった長槍を乱暴に掴んだ龍雅に、慌てて止めようと鉄ランク冒険者たちが集まってくる。

 しかし龍雅は困った顔の彼らを手で制す。

 

 「私はこの場の指揮を預かっている。 不甲斐ない姿を見せて士気を下げるわけにはいかないはずなのだ、それなのに先ほどは君たちに失態を晒した。 結果で挽回させてくれ」

 「ほんの少し悔しそうな顔してただけだぜ? そんなストイックになんなよ〜?」

 

 やれやれと肩を窄める虎宝を一瞥した龍雅は鼻を鳴らす。

 

 「私はこういう性分でな、皆を頼むぞ?」

 

 虎宝にその場を任せ、龍雅は地を蹴った。

 

 

 

 戦場に戻った龍雅は首の捻じ曲がった双頭蛇が三体横たわっているのを発見し、辺りを見渡す。

 松明のぼんやりとした明かりを視線の端に捕らえ、声を上げる。

 

 「貂鳳! 交代だ!」

 

 松明の光に向けて駆ける龍雅、貂鳳の姿が目に入ると同時に足元に鬼人の頭部が三つ並んでいることに気づく。

 

 「貂鳳、やりすぎだ。 君一人で全て片付ける必要はなかったんだぞ?」

 「あ、いやいや! 売られた喧嘩は買う主義だからさ! 別に無理はしてないよ! それに龍雅休憩終わるの早すぎじゃない? まだ三十秒くらいしか経ってないよ?」

 

 返り血で全身を真っ赤にした貂鳳は可愛らしく小首を傾げる。

 

 「時間感覚がおかしいぞ? 私が休憩に入って五分以上経っている。 少し休め、見張りを三十、休憩を三十とってから戻ってきてくれ。 虎宝にもそう伝えてもらっていいか?」

 「見張りと休憩を三十秒ずつだね! 了解!」

 「あ! バカ! 三十分に決まっているだろ! 疲れで判断力も鈍っているのか?」

 

 駆け出そうとする貂鳳の肩を慌てて捕まえる龍雅。

 

 「わかってるよ? じゃあちょっとだけ休ませてもらうから!」

 

 パチリとウインクをしてからその場を離れる貂鳳の後ろ姿をぼんやりと眺めていた龍雅は、眉を歪ませながら呟く。

 

 「本当にわかっているのか?」

 

 ポリポリと後頭部を掻きながら刺さっていた松明を引き抜き移動を始めようとする。 しかし龍雅は松明を引き抜こうとした手を止め、背後をちらりと伺う。

 次の瞬間、龍雅は一瞬で姿を消した。

 龍雅がいた場所には深々と突き刺さる百足武者の剣のような足。

 

 「なるほど、鬼人の血でモンスターを誘き出していたのか。 さすが貂鳳だ」

 

 龍雅はすでに百足武者の背後に立っていた。

 彼女の能力はぬらぬらの能力と似ているようで根本的に違う。 身体強化や攻撃に電撃を使用するが、その強さの源は魔力が尽きないことだ。

 

 彼女の衣類は角雷馬コルシュトネールの毛皮を特殊加工したもの、その毛皮は静電気を非常に起こしやすい。 空気や衣服との摩擦でナイロンやウールの三十倍の静電気を生成する、生成された静電気を魔力に変換して使用することができるのだ。

 つまり彼女は、動き続ける限り魔力が尽きることはない。

 

 ぬらぬらほどの速さではないが、常人離れした速度を体力が尽きるまで継続できる上に、電気を攻撃に使用することもできる。

 強力な静電気を意図的に発生させ、その衝撃で空中で自由自在に体勢を変えることも、槍先に静電気を発生させ、モンスターを怯ませたり麻痺させることも可能なのだ。

 

 角雷馬の毛皮を纏っている限り、接近戦で龍雅は遅れを取らない。 自然発生したエネルギーを魔力に変換できるのは、前冒険者の中でも龍雅しか確認されていない。 唯一無二の才能だ。

 敵を確認した瞬間、龍雅の腕がぶれる。 速すぎて目に追えないため、そこら中に分身しているかのような残像を作り出す。

 鬼人の血に誘き出された百足武者たちは一瞬で頭を一突きされていた。 頭部を貫かれた百足武者たちは力なく地に伏せる。

 

 「三体か、報告では五体のはず。 まぁ、仲間を殺された百足武者はすぐに集まるか、手間が省けて助かる」

 

 龍雅の呟きを聞いていたかのように百足武者が集まってくる。

 夜行性の百足武者はこの時間帯は落ち葉や岩場の影に隠れていない、活発に獲物を探して動き回る。

 そして仲間が殺されたことを知るとすぐに仲間の死骸に集まるのだ。

 

 「さて、貴様らで終わりだと助かるのだが………」

 

 龍雅は再度槍を構え、百足武者を睨みつけた。

 

 

 

 日の出前、あたりがほんのりと明るくなり始める頃、龍雅たちはテントの前でため息をついていた。

 

 「中型モンスターが以上なほど多い、百足武者が合計十三体、鬼人が五体、双頭蛇が八体もいたぞ?」

 「え? 俺は小鬼王ロワルガティットが率いてきた小鬼ルガティットの群れに遭遇したぞ?」

 

 一晩中戦い続けた龍雅たちの体は泥だらけになっている。

 虎宝は龍雅と交代した後、小鬼王が率いる小鬼百五十の群れを一人で蹴散らす羽目になっていた。

 

 「おかしくない? 流石にこんなに中級モンスターがいたのに討伐依頼がなかったなんて」

 

 訝しげな表情の貂鳳。 そんな彼女を横目でちらりと伺った龍雅は眉を歪ませた。

 彼女たとちの不安を確信に変えたかのように、遠見の水晶筒を覗いていた鉄ランク冒険者が怯えたような叫びを上げる。

 

 「あ、ああぁぁぁぁぁ! 八頭蛇ユイルクセルパです! 上級モンスターの八頭蛇が出ました!」

 

 八頭蛇【ユイルクセルパ】文字通り八本の首を持つ、小山のような体躯をした上級モンスター。

 討伐ランクは金で、角雷馬や念力猿、九尾狐と同等の強さを持つとされている。 厄介なのはそれぞれの頭から違う属性の攻撃を仕掛けてくるところだ。

 

 炎、水、氷、風、土、草、雷、毒と八つの属性攻撃を仕掛けてくる。

 炎や水、雷のブレスを同時に吐いてくる上に土や植物を操った攻撃、毒の霧や風の刃に氷柱飛ばしと戦場はしっちゃかめっちゃかになる。

 腰を抜かす鉄ランク冒険者たちに視線を送った龍雅は大声で呼びかける。

 

 「我々三名で討伐にあたる、君たちは安全地帯で下級モンスターの討伐を任せたい!」

 

 しかし怯える鉄ランク冒険者の中で、一人の魔族が立ち上がる。

 

 「僕もお手伝いしてはダメですか?」

 「どろぱっく? 相手は上級モンスターよ?」

 

 覚悟を決めた表情で龍雅に視線を飛ばすどろぱっく。

 彼を諭すように貂鳳は注意をしようとしたが………

 

 「さすがはどろぱっくさん。 あなたのような勇敢な冒険者が友人にいる私は誇り高いですよ?」

 

 ニヤリと笑いながら声をかけてきたのは、いつの間にか現れたどるべるうぉん。

 

 「ど! どるべるうぉんさん! なぜここに!」

 「私だけじゃないですよ? 平原エリアの蹂躙が終わったので、樽飯庵さんたちと応援に来ました」

 

 どるべるうぉんが背後を顎で示すと、ゾロゾロと現れたのはとーてむすっぽーんや樽飯庵筆頭にした南方の平原エリアを蹂躙していた冒険者たち。

 

 「手こずってんなぁ? 龍雅! 俺がちょっくら手ぇ貸してやるよ! 何せ俺らにはとーてむすっぽーん殿がついてるんだ。 ですよね! とーてむすっぽーん殿!」

 

 ペコペコ頭を下げながらとーてむすっぽーんに振り向く樽飯庵。

 

 「あ、あの………僕まだ銅ランクですし、その〜。 タメ口で気軽に声かけていただきたいんですが」

 「そんなわけにはいきません! とーてむすっぽーん殿は銅ランクなんかに収まっていいような器じゃありませんからね!」

 

 困った顔のとーてむすっぽーんに向けて、直角に頭を下げる樽飯庵。

 そんな二人を見て、龍雅は思い詰めていた表情を和らげた。

 

 「久しいな、とーてむすっぽーんによりどりどり〜みん先生。 月光熊討伐戦以来かな?」

 「先生はやめて下さい!」

 

 慌てて龍雅に詰め寄っていくよりどりどり〜みん。

 

 「え? 嘘! 先輩たちこんな大物冒険者達とお知り合いなのです?」

 

 ガミガミと怒り出すよりどりどり〜みんを見て、あたふたし始めるぷらんくるとん。

 

 「おいおい、再会の挨拶はそのくらいにしておけよ? あの蛇そろそろこっち来るぜ?」

 

 虎宝の呼びかけで全員が八頭蛇に視線を集める。

 

 「なぁ、とーてむすっぽーん。 月光熊と比べてあいつはどう見える?」

 「僕は月光熊と直接戦ったわけではないですが、あいつは柔らかそうですね? 首一本くらいならぶった斬ってやれそうです」

 

 とーてむすっぽーんの強気な発言を聞いてニヤリと口元を歪める龍雅。

 

 「それは心強い限りだよ。 よりどりどり〜みん先生? 指示を頼めるか?」

 「先生と呼ばないって約束してくれるなら、策はありますよ? 八頭蛇のことなら、だいぶ前にセリナさんから聞いた事ありますし」

 

 よりどりどり〜みんは杖を握りながら龍雅の隣に歩み寄る。

 龍雅は心躍ったとばかりに口角を吊り上げると、向かってくる八頭蛇に勢いよく槍を向けた。

 

 「三十分で片付けるぞ! すぐ討伐して火山龍討伐の援軍に向かう。 心強い冒険者がこんなにも集まったのだ、あんな雑魚など秒殺だ」

 

 龍雅の号令を聞き、大地が揺れるほどの声を上げる冒険者達。

 その中で一人、樽飯庵だけは両腕で自分を抱きながら体をくねらせていた。

 

 「『首一本くらいならぶった斬ってやれそうです』って! とーてむすっぽーん殿マジかっけぇ! くっそ痺れるぜ! おらぁ! 俺もやってやるぜぇ! ひっさしぶりにやる気が漲っちまったぜぇ!」

 

 龍雅の号令を受け、謎のテンションの樽飯庵が我先にと先陣を切った。

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