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ナンパなんてしてないでクエスト行ってこい!  作者: 星願大聖
激闘! 滅階級モンスター討伐戦
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〜火山龍の足止め・ショータイム〜

〜火山龍の足止め・ショータイム〜

 

 火山龍ヴォルカディーユの背中から延々と燃え盛る炎が生きているかのようにうごめき、冒険者たちを襲おうとする。

 しかしその炎をかき消すように水の塊が衝突して相殺する。

 

 「火山エリアは水分が少ないわね、これではお肌が乾燥してしまうわ?」

 

 レイトの後ろではスライムのような水の塊に、体を投げるように寝転がる少女が退屈そうにつぶやいた。

 彼女は華嘉亜天火かかあてんか、金ランクの女性冒険者だ。

 低い身長に似合わず、高圧的な態度で火山龍を見下ろす青髪の小人族。 その海のような青い髪をいじりながら再度背中から吹き出す炎に向けて手をかざす。

 

 「しつこいわね?」

 

 手をかざすと散開していた水が一か所に集まり、水龍のようになり炎に一直線に伸びていく。

 

 「この距離であの精度で水を操作するとは………♩ 末恐ろしい能力だ♫」

 

 レイトたちが火山龍を目視しているのはおよそ一キロ程度の距離だ。

 その距離の中、気だるげな表情で華嘉亜天火は炎を鎮火し続けている。

 火山龍の足をセメントで固めてからの時間はおよそ一時間弱。

 

 「あの程度の炎なら問題ないわ? 最も、マグマなんかが出てしまえばさすがの私も手に追えないけれど………」

 

 途端に華嘉亜天火は真剣な表情に変わる。

 

 「具体的なタイムラグは把握してるのかしら?」

 「いいや、およそ四時間前に一度撃ったっきり撃ってこない♫ このまま何も起きなければいいのだけどね?♩」

 

 レイトはうっすらと瞼を上げて、暗闇に溶け込み戦闘中の冒険者たちに視線を送る。

 火山龍の足元では、セメントで固め切れなかった足を破壊するために戦闘を続ける冒険者たちがいる。

 レイトは耳を押さえて不安げな表情をする。

 

 「嫌な旋律だ、このままでは終焉の宴はもうすぐかもしれない」

 

 

 

 セメントで固められなかった足はバタバタと動き回っている。

 右後ろ足に向かった銀河ギャラクシーとぷぷるんは、動き回る足に必死にしがみついていた。

 

 「おいまだかバカ女! もう動き回られるせいで平衡感覚が狂いそうだ、酔ったかもしれん!」

 「もしかして、私の魅力に酔っちゃったって言いたいけど、恥ずかしくて正直になれないんですか! もう! ぎんがさんったら! 正直になって下さい!」

 

 頬をひくつかせる銀河。

 

 「私がもし吐きたくなったら、遠慮せずに貴様の頭にぶちまけてやる」

 「調子に乗ってすみませんでした、エコーはもうすぐ終わるので我慢していただけると助かります」

 

 銀河とぷぷるんが足にしがみついている理由は、超音波で骨を振動させているからだ。

 皮膚が硬いモンスターでも内部は脆い、そのためぷぷるんの超音波で火山龍の骨に振動を加え、一番弱い周波数を探しているのだ。

 しかし火山龍は巨大な足をバタバタと動かしているせいで、銀河の武器に騎乗したままピッタリと張り付くしか無いのだ。

 足元にしがみついては踏まれかねない、近くにいた冒険者たちも今は退避している。

 

 「ギャラ………ぎんがさん吉報です! 周波数発見しました! 後五分もこうしていれば火山龍の足の骨を粉砕できそうです」

 「おい待て、今なぜ言い直した。 わざとだろ? わざとなんだろう? 貴様、この戦いが終わったら覚えておけよ?」

 

 わざとぎんがと言い直したぷぷるんをジトーッと睨む銀河。

 

 「そんな! 熱い視線を向けないでくださいぎんがさん。 戦いが終わったら、ゆっくりと時間をとってあげますから………」

 「………おえぇぇぇぇぇ!」

 「ちょっ! 嘘ですよねぎんがさん! あっ! いや! ギャラクシー様! 紳士なあなたは、可愛い女の子の頭に吐瀉物としゃぶつぶちまけるなんてしませんよね?」

 

 慌てふためくぷぷるんの声は、虚しく夜空にこだました。

 

 

 

 「で、これを高速振動させろとか言うのか? ロンリーナ?」

 

 目の前にある巨大なコンクリートの剣を、呆然と見上げるシュプリム。


  「チッちっち! 『言うのか』に『ロンリーナ』をかけるのはダメダメのダメビートだぜ? 俺だったら『言うのか、理由は?』とかで次のビートに繋ぐぜ?」

  

 得意げな顔で人差し指を小さく左右に揺らすフェアエルデ。

 そんな二人の様子を見ていた虞離瀬凛が困り顔でくりんこんに耳打ちする。

 

 「あの方はいつもああなのですか? 彼もドコサヘキサエン酸が足りないかも知れません、魚を大量に摂取させることをお勧めします」

 「私も聞きたいんですけど、シュプリムさんってもしかして空気読めないですよね?」

 

 二人は呆れ顔でこしょこしょと話している。

 それもそのはず、急にシュプリムを連れてバタバタともがいている左の前足に向かったフェアエルデは、くりんこんにセメントで巨大な剣を作るように指示したのだ。 できるだけ片刃で切れ味が良くなるようにとだけ告げて。

 

 「こんなに大きいと、振動させるのに多大な魔力を使うぜ。 降臨荒れる犯罪者三刀流」

 「もっと真面目に考えろよ〜。 お前センスあるんだから磨けばひかるぜ! 進化英才系!」

 

 キメ顔のフェアエルデを無視して恐る恐るコンクリートの巨大な剣に手を添えるシュプリム。 すると巨大な剣は振動音を発し始める。

 同時にシュプリムの額には大量の汗が滴る。

 

 「あ、いけた! けどきっちい! ぴょんきち!」

 「『ぴょんきち』はバットなライムでアンノウンだぜ? もっと思考を回転させるんだ!」

 

 きつそうな顔で剣を持ち上げようとするシュプリム。

 

 「しかも重くて持ち上がんねえ!」

 「おい! リリックはどうしたんだ! 諦めんのはまだ早え、俺たちならば三冠達成!」

 「ふざけてないでとっとと助けてあげて下さいよ!」

 

 体を左右に揺らしながら片手で耳を覆い、もう片方の手で何かをスクラッチするような行動をしているフェアエルデに、くりんこんは小さなセメントを投げつける。

 すると投げられたセメントをひょいとかわしながらコンクリートの剣に手をかざすフェアエルデ。

 

 「持ち上げる必要はねえ、無問題もうまんたい! お前は振動させるのに集中してな! シャルウィーダンス」

 

 フェアエルデが手をかざした剣は重力を感じさせないような動きで浮かび上がり、持ち上げようとしていたシュプリムも自然と宙に浮かぶ。

 

 「ぬお! なんだこりゃ!」

 「俺は大地を自在に操れる。 地形変更、岩を持ち上げる、岩の中の物質を解析して別々の成分に分けるとかな。 そのセメントは大地の中に存在する成分でできてるのがほとんどだ。 魔力を大量に使っちまうが宙に浮かせて振り回すことも可能、ライカ覇王。 足りねえ分の力は空中でお前が力入れて振り回してくれ、左前足の脇の下をぱっくりぶったぎっぞ、急な進行!」

 

 浮き上がった剣は真っ直ぐに火山龍の脇の下に飛んでいく。

 急な展開にちんぷんかんぷんなシュプリムも、剣が動いた瞬間本能的につかの部分をがっしりと握る。

 

 「空中では踏ん張れないぞ! あれではまともに振りかぶれん!」

 

 虞離瀬凛は焦りながらフェアエルデに視線を送ったが、フェアエルデはニッと白い歯を見せる。

 

 「足場なんぞ、大地を操るこの俺に心配する必要あるか?」

 

 その言葉と同時に空中に砂が集まっていき、火山龍の脇の下に小さな足場ができる。 その足場を一瞥したシュプリムは目つきが変わる。

 フェアエルデはシュプリムの表情を確認した瞬間パチリと指を鳴らす。

 

 「イッツ! ショータァァァァァイッ!」

 

 シュプリムは見事に足場に着地し、渾身の一振りをお見舞いする。

 すると火山龍は声にならない叫びをあげた。

 

 「え? ………ウ、嘘でしょ?」

 「シュプリムは、空気は読めませんが攻撃力に関しては冒険者の中でもトップクラスです。 何せ、あの鋼鉄兵器すら両断してしまうほどですから」

 

 彼らの目の前に巨大な何かが落下し、黙々と砂煙を上げる。 顎が外れんばかりに口を開けるフェアエルデとくりんこん。

 にっこりと微笑んだ虞離瀬凛はぼそりとつぶやいた。

 

 「やはりお前は最強のアタッカーだよ、空気は読めんがな………」

 

 コンクリートの剣の重さに耐え切れず、尻餅をつきながら着地したシュプリムの背後には、脇の下から綺麗に両断された火山龍の脚が横たわっていた。

 

 

 

 クルルは混乱していた。

 

 「は? シュプリムさんが火山龍の足をぶった斬ったですって!」

 

 野営のテントの中で大声を上げて狼狽する。

 彼女は担当冒険者たちに守られ、火山龍の噴火による衝撃から逃れていた。

 現在はメルの担当冒険者が代わりに彼女を護衛している。

 

 「いや、斬ったというか、両断したと言うか………わしもこの目で見たわけでは無いですからなぁ。 だがあの若造ならやりかねん」

 

 朧三日月(おぼろみかづき)とシュプリムの担当はメルだ。

 同じ担当を持つ冒険者には仲間意識が芽生えやすいため、朧三日月はシュプリムの活躍を聞き得意げな顔をしていた。

 

 「朧三日月さん! あなたも前線に向かって下さい! 今こそ畳み掛ける絶好の好機です!」

 

 クルルは朧三日月の肩をがっしりと掴む。

 

 「わしの火力ではお役に立てるかわかりませんが、煙幕を張っている忍び娘の手助けくらいはできましょう?」

 「ぜひお願いします! 私もすぐに前線に向かいますので、先に向かって下さい!」

 

 朧三日月はクルルの指示を聞き小さく頷くと、闇夜の中に消えていった。

 

 「私の担当する冒険者はみんな優秀なんですよ、クルルさん?」

 

 急に声がした方向に視線を送るクルル。

 するとそこには全身に包帯を巻き、神怒狼夢シンドロームに肩を預けるメルがいた。

 

 「私は悲しい、私の治癒では意識を保っていただくのが限界。 それに前衛にもかかわらず治癒に回り続ければならないこの現状。 同じ担当を持つ仲間であるシュプリムが快挙を上げたと言うのに、私はなんと無様なのか!」

 

 悔しそうに下唇を噛む神怒狼夢。

 彼は噴火の衝撃で前衛冒険者たちが吹き飛ばされた直後、持ち前の能力で火山龍に攻撃をし続けて即座に自分を回復し、前衛でダメージを負った冒険者全員に治癒をしては火山龍にダメージを少しづつ与え続けた。

 彼は自分以外のものに与えたダメージに比例して魔力を吸収できる。 いわゆる殴るヒーラーと呼ばれる冒険者だ。

 

 いまだにメルやクルルの担当する前衛冒険者が戦闘を継続できているのはほぼ彼の功績なのだ。

 さらに前衛をある程度回復した直後は、クルルの指示で後衛の冒険者たちが運ばれた拠点に急行し、その辺の下級モンスターを切り刻んでは重傷者や回復士を優先的に治癒させていた。

 奇跡的に死者が出なかったのは彼の治癒能力があったからだ。

 

 「神怒狼夢さん。 悔しそうな顔はやめて下さい。 あなたの働きに不満を告げるものがいると思いますか? 考えただけでも恐ろしいです、あなたがいなかった時のことを考えると」

 

 クルルは優しく微笑んで神怒狼夢に頭を下げる。

 下げた頭をあげないまま、クルルは悔しそうに下唇を噛み締めた。

 

 「何も考えずにメルちゃんに攻撃の指示を出したのは私です。 この惨状は私の指示にミスがあったせい。 攻められるなら私一人であるべきだ」

 

 キュッと拳に力を入れるクルル。 そんなクルルに気まずそうな視線を送る神怒狼夢とメル。

 数秒後、クルルが急に頭を上げ、決意のこもった眼差しを二人に向けた。

 

 「だからこそ! レイトさんに頼りっぱなしになるわけにはいかない! 自分のミスは自分で取り返す! セリナにいつも言っている事なんだから、私が実行しないと格好がつかないわ!」

 

 クルルは火山龍との戦闘が激化している前線に足を向ける。

 

 「メルちゃんは怪我がきついと思うけどここをお願い。 あなたが立っているだけで、他の冒険者たちの指揮は段違いに高くなる、だからここで体を休めつつ、傷ついた冒険者たちのケアをお願い! 無理を言っちゃってごめんね。 神怒狼夢さんは彼女の護衛を!」

 「お任せ下さいクルルさん! メルさんは私が全力でお守りしますとも! 道中お気おつけて下さい!」

 「クルル先輩、どうかご自分を責めないで下さい! あなたは今までみんなのミスをカバーしてくれていた! 腑抜けだった頃の私を文句も言わずに支えてくれていた! 私はあなたへの恩はまだ返し切れていない、ですからどうか、無理はしすぎないで下さい!」

 

 クルルは振り向きながら、困った表情で小さく頷くと、夜中の火山エリアを駆け出した。

 

 

 

 夜中の火山エリアで、皮膚を焼くような熱気に耐えながらクルルは走っていた。 松明と発光虫がぼんやりと光る戦場に向けてひた走る。

 現在、火山龍は左前足を切断され、右前左後ろ足をセメントで固められ身動きが取れない状況。

 畳み掛けるなら今しかない、そう確信したクルルは自らの判断ミスを振り返る。

 

 (失態だ、みんなに顔向けできない。 相手の情報もわからないまま迂闊に魔法攻撃を仕掛けたせいで冒険者たちはかなりの人数が大怪我を負ってしまった。 神怒狼夢さんやレイトさんがいなければ今頃取り返しのつかない状況になってたな………)

 

 ぼんやりとそんなことを考えていると、背後で突然爆発音が響く。

 驚いたクルルは、立ち止まらずに後ろを振り返る。

 

 「あらあら? クルルさんじゃない。 今から戦場に向かうところかしら?」

 

 そこにいたのは水色の長い髪を縦ロールにガッチリとセットした少女。

 

 「キャザリーさん? なぜここに?」

 

 ゆっくりと速度を落として立ち止まったクルルは、背後に現れたキャザリーに目を向ける。 足元には下級モンスター、角兎ラピコルヌが腹の辺りを破裂させて横たわっている。

 キャザリーは真っ赤なハート型のハンマーを肩に担ぎ、気だるげな視線をクルルに向ける。

 

 「蹂躙戦が片付いたから援軍に来たのよ? 他にも数人いるけどね」

 

 ギャザリーは嫌そうに振り返ると、後ろからは三人の冒険者がやってくる。

 

 「ぺんぺんさんたち? って事はセリナも!」

 「あぁわりぃ。 セリ嬢は朝イチで山間エリアに蹂躙戦に行っちまっててな、たまたまこのドンマイ女と居合わせた俺様たちしかいねぇ」

 

 パイナポは気まずそうに答える。

 

 「それよりクルルさん、あなたは今から火山龍の元に向かうのか? 護衛も兼ねて同行しよう」

 

 ぺんぺんは左手を頬に当て、薬指と小指の間からキリッとした瞳を覗かせている。

 謎のポーズに戸惑うクルルを一瞥した夢時雨がため息をついた。

 

 「ぬいぐるみに喋るキャラじゃなくなったからって、いちいち変なポーズは取んなくていいんだぜ?」

 

 一応臨戦体制に入っている夢時雨は、強めの口調でぺんぺんを諭す。

 

 「ていうかあなた、さっきその可愛いぬいぐるみに話しかけてたじゃない?」

 

 眉を歪ませながら呟くキャザリー。

 

 「む? 可愛いぬいぐるみ? キャステリーゼ二世が可愛いからと言っても、お前には渡さんぞ?」

 「別にいらないわよ! バカにしてるの?」

 

 腕を組んでそっぽを向くキャザリー。

 

 「どんま〜い!」

 

 そんなキャザリーに半ニヤケで声をかけるパイナポ。

 キャザリーは顔を真っ赤にしながらパイナポに掴みかかる。

 

 「どんまいって言うな!」

 

 キャザリーとパイナポが喧嘩する中、クルルはにっこりと微笑んで彼らに背を向ける。

 

 「心強い冒険者たちが来てくれてよかったです。 一緒に火山龍を討伐しましょう! 走りながら今の現状をお伝えします!」

 

 火山龍との戦いの状況を説明しながらクルル達は戦場に駆け出した。


 

   

 足三本の自由を奪われた火山龍は、地に伏せていた。

 邪悪な金色の瞳を輝かせ、冒険者たちに火炎を飛ばすが水の塊がすかさずそれを防ぐ。

 歩く事に力を使わない分炎の威力は増し、あたりには水蒸気が立ち込めているが、火炎による攻撃は未だに防がれ続けている。

 

 万が一冒険者たちに火炎が襲いかかったとしても、フェアエルデが作り出す大地の壁で見事に防がれる。

 左前足を両断した一行は頭部付近に足を向けていて、野営地点から戦場に来たクルルたちと合流した。

 そしてクルルの指示で、小山ほどの大きさはある火山龍の頭に登り、目を潰す作戦を立てた。

 しかし火山流は大きな口を開け、首をブンブン振り回し必死な抵抗をする。

 

 万が一噛まれたら一発で命を取られる、そのため膠着状態が続いてしまうかと思われた。

 しかしクルルは、そんな不安を振り払うように冒険者たちに向けて作戦を告げる。

 

 「あの口も塞いでしまいましょう! 目をつぶすのはその後です!」

 

 全員が首を傾げる。

 大きく口を開けたままの状態の火山龍は、恐らく一口で城を噛み砕くほどの大きさだ。

 それを塞ぐとなれば相応の長さのワイヤーなどが必要になる。

 

 「レイトさんの冒険者方! ラオホークさんは呼べますか?」

 

 クルルは真剣な瞳でフェアエルでとくりんこんに目線を送る。

 

 「呼べますよ? って言うか、あの人は頭部付近で煙幕貼ってたので………この距離なら名前呼べばすぐ来ると思います」

 

 くりんこんは困った顔で答えた。

 すると隣のフェアエルデは鼻を鳴らす。

 

 「あの忍び女は地獄耳の獣道だからな!」

 

 かっかっか!と笑いながら腕を組むフェアエルデ、そんな彼を困った顔で見ていたクルルの後ろ首をふわっと小さな風がなでる。

 

 「呼んだか?」

 「「「「「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」」」」」

 

 クルルの背後に急に現れたラオホークに、全員が驚き声を上げる。

 

 「いちいちわめくな。 鼓膜が破れる」

 

 無表情のラオホークは耳を押さえながらクルルを睨む。

 ごくりと息を呑んだクルルは、真剣な瞳でラオホークと向き合った。

 

 「煙を操るラオホークさんなら火山龍の口の中に有毒の煙を直接入れられるはずです! さすがの火山龍でもたまらず口を塞ぐはず。 それが無理だったとしても、ここには朧三日月さんも駆けつけています。 霧の幻影で誰かが口の中に飛び込んでいる錯覚を見せればきっと口を塞ぐはずです!」

 「なるほどな、口さえ塞がせれば俺とくりんこんドミニオンの、セメントなメメントで口を塞げるって寸法か。 成功して通せんぼうする気しかしねぇな?」

 

 クルルの言葉を聞き、ラオホークは無言で白い花火を上げる。

 レイトと連絡を取るためにぷぷるんを中継しようとしているのだ。 そしてその白い花火を目視した朧三日月も数秒で駆けつけてきた。

 クルルは後から駆けつけてきた朧三日月に作戦を告げていると、ラオホークはゆっくりとクルルに近づく。

 

 「許可が出た、やろう」

 

 無言んで頷くクルル。

 

 「パイナポさんと夢時雨さんはラオホークさんに! シュプリムさん、虞離瀬凛さんは朧三日月さんについて下さい! キャザリーさんは参謀として私の元に残って下さい! フェアエルデさんくりんこんさんぺんぺんさんは、万が一のために炎を防いだり砂鉄で援護を!」

 

 指示を受けた冒険者たちは一斉に散開した。

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