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〜武闘大会決勝・戦闘狂の競演〜

 〜武闘大会決勝・戦闘狂の競演〜

 

 ぺろぺろめろんさんのさよならスラッシュはいとも簡単に止められた。 さらに流れるように懐に入り込んだ貂鳳さんの斬撃が銅鎧を弾けさせる。

 

 ぺろぺろめろんさんは宙を舞い、地面に叩きつけられたが……


 目を爛々と輝かせている。 心の底から楽しそうに、ワクワクしている子供のように目を輝かせているが、同時に殺気に近い闘気を振り撒いているので笑顔がとても邪悪に見える。


「それにしても、あのさよならスラッシュを普通に止めますか。 貂鳳さんは筋金入りの化け物ですね」

 

「普通に? お嬢さん、あれはかなりの上級テクニックだよ?」


 ぴりからさんが眉を歪めながら教えてくれた。

 

 彼女の説明によると、どうやら今の一瞬で起きた事はとんでもなくハイレベルな攻防だったらしい。


 まず、全く見えなかったがぺろぺろめろんさんが斧を振りかぶった瞬間、振り抜く手前の一番力が弱いタイミングで貂鳳さんは剣を斧に当てていたらしい。 そして剣を当てたまま、ぺろぺろめろんさんのパワーを相殺し続けていたとか。


 動きが早すぎて、姿を捉えた時には剣で斧を受け止めているように見えたが……

 

 受け止めたのは一瞬で、そのままぺろぺろめろんさんの力を殺さず、反転しながら懐に潜り込み、斬撃を仕掛けていた。 そうなると先程の銅鎧を破壊した際に加えられた威力は相当なものだろう。


「僕も原理は詳しく知らないけどねえ、遠心力や体重移動、重心移動を駆使して相手の力の流れを殺さずに利用していると話で聞いているよ?」


 貂鳳さんの戦闘技術が卓越しているのは分かった。

 

 私が説明を聞いている間にぺろぺろめろんさんは立ち上がり、貂鳳さんを指差す。


「うち、今の一瞬でてんてんの弱点分かっちゃったもんね!」


 その一言に貂鳳さんは苦笑する。


「まあ、口で言うのは簡単だよ? 試してみようか?」


 くいくいと手招きする貂鳳さん、それを見たぺろぺろめろんさんはニヤリと笑う。


「はい、まずてんてんの弱点その一! てんてんはパワーがないから相手の力を利用する。 つまり自分から仕掛けられない!」


 その言葉を聞き、眉を歪める貂鳳さん。


「その二! うちのさよならスラッシュ止めるのにかなり複雑な動きをしていた事から、次のうちの攻撃はカウンターできないと思う」


 一瞬沈黙し、ニヤリと笑いながら口を開く貂鳳さん。


「さすがね、ぺろりんちゃん。 どんな面白い攻撃してくるのかな?」


 挑発的な言葉でぺろぺろめろんさんを煽っている。


「と、言うわけなんで! てんてんからは攻撃してこないと分かればじっくり時間使って、ものすごいのお見舞いするから! 場外に吹っ飛ばされないように! よろ!」


 そう言ってぺろぺろめろんさんは、大斧の重さを利用してその場でくるくると回り出す。


「ば、ばかっ! ぺろりんそれは人間相手に使っちゃだめ!」


 隣で見ていたすいかくろみどさんが慌てて止めようとする。

 

 元々のパワーがすごいのに、そこにさらに遠心力を乗せるなんて……考えたくない。


 しかしぺろぺろめろんさんはくるくる回りながらゆっくりと貂鳳さんに近づいて行く。

 

 心なしかぺろぺろめろんさんの周囲に弱い竜巻のようなものがうっすら見えてくる程の勢いでくるくる回る。

 

 ……目が回らないか心配だ。


「どっ! どどどっ! どうしようセリナさん! あれはよくぺろりんが特注のハンマーに装備を変えて鋼鉄兵器をおせんべいみたいにしちゃう『おせんべいハリケーン』なの! あんなの普通の人間に当たったら……あぁ! まずい! 止めないとてんてんがお煎餅になっちゃう!」


 青ざめるすいかくろみどさん。

 

 よくぺろぺろめろんさんが納品するペシャンコの鋼鉄兵器はあれを食らっていたからなのか。 それに特注のハンマーはいつ作ったんだろう、たまに見かけるめっちゃゴツいやつがそうなのかな?

 

 などと思いながらも、気になることを聞いてみた。


「ぺろぺろめろんさん、目が回って手元が狂ったりしたら怖いですね」


 悲惨な事を考えて額から汗が滴り落ちる。

 

 すると青ざめていたすいかくろみどさんが、急に真顔で『何言ってんのこいつ?』みたいな顔を向けてくる。


「ぺろりんはあの技完成させるために平衡感覚鍛えてるから、目は回らないし」


 ……なぜ急に冷静になる?

 

 私たちがそんなやりとりをしている間に、小さな竜巻を起こしながら接近していくぺろぺろめろんさん。

 

 その光景を目の前に、貂鳳さんは冷や汗を垂らす。


「これは、まずいね! 先に認めちゃう。 これはカウンター絶対無理!」


 ぺろぺろめろんさんが勢いよく放った斧を、その場で宙返りしながら回避する貂鳳さん。

 

 空中姿勢は美しく、まるで体操選手を連想させるような宙返り。

 

 それと同時に自分の剣を豪快に振られた斧に少し触れさせ、その衝撃を利用して空中で体を高速回転させる。

 

 着地と同時に剣を振り下ろす。

 

 ぺろぺろめろんさんのお煎餅ハリケーンとか言う必殺技の威力を少しだけ利用した斬撃は、回転していたぺろぺろめろんさんの肩鎧を砕く。


 しかし、一切気にもとめないぺろぺろめろんさんは、そのままもう一回りしてその巨大な斧を貂鳳さんに向ける。

 

 咄嗟に剣を斧に軽く触れさせながら横に大きく飛んで回避する貂鳳さん。


「着地直後で自由に動けないからって、回避するのにもぺろりんの力を利用した?」


 大きく飛んで回避するために足りないパワーを、ぺろぺろめろんさんから借りたのだろう。 ひとっ飛びで五〜六メーター近く距離をとっていた。

 

 しかしぺろぺろめろんさんの攻撃はまだ終わっていなかった。

 

 回転を終わらせると同時に何かを放り投げる。

 

 放り投げた何かは貂鳳さんの腰鎧を粉砕して無くなった。


「今、何か投げましたよね?」


 後ろでよりどりどり〜みんさんが首を傾げる。


「あれは多分、最初に壊された銅鎧の破片だね。 子猫ちゃんは、ぬらぬらの影響でも受けちゃったかな?」


 苦笑しながらぴりからさんが答える。

 

 砕けた腰鎧を見て、ゆっくりと顔を上げる貂鳳さん。


「まじかぁ〜。 ほんっとぺろりんちゃん……最高すぎるよ!」


 貂鳳さんの口が三日月のように歪む。

 

 その歪な笑顔を見て背筋が凍る。

 

 いつも思うが、戦闘狂の人が心から戦いを楽しんでいる時の笑顔は本当に怖い。


「どうするてんてん? このままじゃ、負けちゃうよ!」


 ぺろぺろめろんさんが地を蹴り突進すると、力に耐えきれなかった足元が砕ける。

 

 突進してくるぺろぺろめろんさんの攻撃を受け流そうとしていた貂鳳さんは、巨斧に剣を触れさせた瞬間顔色を変える。


 貂鳳さんはカウンターをせずにただ斧を弾き後ろに下がるが、ぺろぺろめろんさんは下がる貂鳳さんに追撃を仕掛ける。

 

 目にも留まらぬ速さでお互いの武器がぶつかり合う。

 

 しかし何故か貂鳳さんはカウンターを使わない。


「子猫ちゃんのあの攻撃……少し気持ち悪いねえ」


 ぴりからさんは斧を振るぺろぺろめろんさんの立ち回りを見て首を傾げる。

 

 私は言葉の意味がわからずぴりからさんの顔を覗き込んだ。


「あの攻撃には、インパクトがない。 通常、武器を相手に当てる瞬間に握りを強めたり、当てた瞬間にもう一押ししたりして衝撃を与えるんだ。 だがあの攻撃にはそれがない。 ただ振り回しているだけなんだ、だから貂鳳君はあの攻撃を受け流しきれなくて捌くことしかできないんだ」


 力の流れを読まれているなら、力の流れを止めなければいいと言う事だろうか? カウンター対策のため、力の終着点を決めずにただ振り回しているだけなのだろう。

 

 私は再度戦闘中の二人に視線を戻すと、曇った顔色の貂鳳さんと、目力が怖いが口元は笑っている、歪な笑顔のぺろぺろめろんさん。

 

 何度も言うが顔が怖い。


「てんて〜ん! 逃げてるだけじゃうちは倒せないよ!」

 

「当てる気がないくせによく言うね! 鎧はぺろりんちゃんの方が壊れてるし、このままじゃじり貧なのはそっちだよ!」


 お互い高速で武器をぶつけ合いながら会話する、しかし貂鳳さんの言う通りだ。

 

 相手の鎧を壊さないとじり貧になるのはぺろぺろめろんさんだ。


「当てる気がない? いつ、誰が! 当てないなんて言ったのかなぁ!」


 次の瞬間貂鳳さんの籠手が砕けた。


「あの人! 今の蹴りにぎりぎり反応してた! しかも威力を弱められた!」


 ……私は何が起きたか全くわからなかった。


「お嬢さん。 子猫ちゃんはね、武器振り回しながら蹴っただけだよ?」


 どうやら武器がぶれてよく見えないほどの速度で立ち回りながら、蹴りをかましたらしい。


「武器を捌くので精一杯だったんでしょ! 蹴りの方は間一髪で反応したみたい! でも籠手壊れるだけで済んでんのはマッジですごいよ! あの人やばやばのやばぴーなつ!」


 ……この人たち、ピーナツ好きだよなぁ。

 

 確かにぺろぺろめろんさんは闘技場を粉砕するほどのパワーを持っている。

 

 まともに食らえば鎧があってもタダでは済まない。


 むしろ木製の鎧など、あの子にとっては板チョコを割る程度の力で破壊できるだろう。

 

 なんせブチギレたぺろぺろめろんさんは、素手で鋼鉄兵器の鎧を握りつぶすのだから。 しかも片手で……


 この調子なら貂鳳さんの鎧はすぐに破壊できる。

 

 そう思った瞬間……ぺろぺろめろんさんが宙を舞った。

 

 腰鎧が粉々になっている、カウンターを食らってしまったのか?


「あの斧を捌きながら、蹴りにも対応したの? やばすぎっしょ」


 すいかくろみどさんが眉間に皺を寄せながら呟く。

 

 これでもうぺろぺろめろんさんの鎧は左肩のみ。 対する貂鳳さんは、腰鎧と左籠手を破壊されただけ。

 

 武器の重さが軽い分、鎧はぺろぺろめろんさんよりも多いため、完全に追い込まれた形になった。


「流石に同じ攻撃を何度も許すほど甘くないよ? もうその手は二度と私に通じない。 次はどうする? ぺろりんちゃん?」


 両手と首をパキパキと鳴らしながら、倒れるぺろぺろめろんさんを見下ろす貂鳳さん。


「次は、こうしよっかな!」


 相当な衝撃を食らったはずなのだが元気な声を上げながら立ち上がり、闘技場を両手で叩きつけ大きなヒビを入れるぺろぺろめろんさん。

 

 そしてそのヒビに両腕を突っ込み……

 

 彼女は驚くべき行動に出た。

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