〜宝石ランククエスト・女王蜘蛛討伐〜
〜宝石ランククエスト・女王蜘蛛討伐〜
俺は物心ついた頃から落ちこぼれと言われ続けてきた。 兄であるクローゼ(閻魔鴉)に才能を全て持っていかれた劣等生。
そんな文言、嫌気がするほど聞いている。
ガキの頃俺を劣等生とか言ってきたやつは片っ端からボコボコにして、親によく叱られた思い出ばかりだ。
兄はいつもすねている俺に声をかけてくれた。
「弟! 俺は知ってるぞ。 お前は俺なんかよりすごくなる男だ! だからあんな奴らの言葉気にするな!」
優しい兄はいつも俺を気にかけてくれていた。
ガキの頃から冒険者を夢見ていた俺たちが冒険者育成学校に入学したのは当然の事。 入学後も劣等生と言われ続けたが、俺は周りの言葉に耳を貸さないことにした。
優しい兄のため、俺にできるのは……天才である兄の背中を追い続けることだけだ。
魔法の適性が炎だとわかり、俺たちは魔法の練習をするようになった。
天才だと言われている兄はすぐに魔法を習得した。 しかも黒い炎を出した、周りの奴らはかっこいいとか言って大騒ぎだった。
俺も炎を出すことができたが、よく見かける赤い炎だった。 兄が黒い炎なら俺は白い炎が出せればかっこいいのに………
そう思った俺は、兄が寝た後こっそり起きて毎日のように魔法の練習をするようになった。
魔法だけじゃ勝てないと思って筋トレもした、素振りもした、走り込みだって絶やさない。
走りながら魔法で炎を出して、腕立てしながら炎を出して、素振りしながら剣に炎を纏わせて………
もっと熱い炎を、誰にも負けない炎を、もっと熱く。
熱く、熱く、熱く———何もかも燃やし尽くす熱さを追求して練習した。
そうこうしていくうちに炎の色がどんどん黄色くなっていった、もっと続けたら白くなった。
けれど、どんなに熱い炎を出したとしても兄と魔法の勝負をすれば、黒い炎に自分の作り出した炎が飲み込まれる。
たとえ何年かかったとしても、兄に勝てる日が来るまで俺は諦めない。 兄が作る炎が、この世に存在しないはずのスゴイ炎だったとしても決して………
「努力の………天才か」
静寂の中、自信溢れる瞳で極楽鳶は凪燕の背中を睨み続けていた。
隣にいる閻魔鴉は今にも泣き出しそうな顔で二人を見守っている。
すると凪燕は気まずそうな顔で後頭部をポリポリと掻きながらゆっくりと振り向いた。
「あのね、白髪くん。 めっちゃカッコつけてるところ悪いけどさ、とりあえず最後まで話聞いてくれない? いや、めっちゃかっこいいと思うけどね? 今それ言う雰囲気じゃないよ?」
徐々に頬を赤らめ、恥ずかしそうな顔で笑いを堪える極楽鳶。
後一歩で泣いていたであろう閻魔鴉はキョトンとした顔になってしまった。
「ちょっ………なにこの空気。 いや、ごめんほんと。 そんなつもりじゃなかったんだよ? だからその顔やめてくれる? なんか俺が悪者みたいじゃん」
罰の悪そうな顔でそっぽを向く凪燕、しかし『コホンッ!』 と咳払いをして真剣な顔に変わる。
「君は最初、自分を平凡な才能しか持ち合わせていないと言ったね? なんでだい? まさか、魔力での競い合いは兄としかしていないのかな? 他の炎魔法を使う冒険者と訓練はしたかい?」
凪燕の質問の意図が読めないのだろう、双子は揃って首を傾げる。
「魔力を燃料にする黒い炎と魔力で作った青白い炎。 その二つをぶつけたとしても、黒い炎がいつも残る。 だから君は兄の黒髪くんの方がすごい。 ———そう錯覚しているんじゃないかな?」
凪燕は真剣な顔つきでゆっくりと極楽鳶に歩み寄った。
「いいかい、炎の色は温度によって変わるんだ。 そして君は紅焔の群青色の炎をもう見ているね? 君の炎の色と、紅焔の出す炎の色………比べてみたらなにか気がつかないかな?」
うっすらと口角を上げて双子に背を向け、凪燕は巨大な白い繭と向き合った。
「さて双子くん。 これから僕たちはあの繭の中であぐらかいてるモンスターをぶっ倒しにいくわけだけど、問題点が山ほどある」
流暢に語り始める凪燕の話を、双子と王消寅は黙って聴き始めた。
「まずは間合いだ、ちょうど僕たちは奴の間合いの外にいる。 その長さは驚異の二百メーター。 王消寅の話だと速度はそんなに速くないけど切れ味が驚異的、近づくためにはこの攻撃をどうにかしないといけないんだけどね……」
「お手上げだ 僕の能力 向いてない あいつの攻撃 マジ超厄介」
「ちなみに僕もあの攻撃を防ごうとすると、あいつの元に辿り着く前に魔力が枯渇する。 そこでだ」
「俺たちの」「出番な訳か」
双子は腕をまくりながらそれぞれ剣を構えた。
「つまり作戦は」「こういうことだろ?」「「俺たちが道を切り開く!」」
「心強いねぇ。 俺と王消寅は後ろから追いかけていくから、しっかり守ってくれよ?」
「頼んだよ 今は君たちが 超頼り」
二人の声かけと同時に、双子は刀に炎を纏わせ思い切り振り抜いた。 蒼炎と黒炎の炎の斬撃が繭に向かって飛んでいく。 双子に向けて飛ばされていた糸は炎に焼かれて霧散していく。
斬撃が作り出した道に、全員同時に駆け込んだ。 双子の後に続きながら、凪燕は眼球運動で周囲の様子を確認する。
「いや、こりゃ参ったね」
「ここ一体 一歩間違えれば ミンチだね」
斬撃を連続で放ち続ける双子の後に続きながら冷や汗を浮かべる凪燕と王消寅。
「どういうことだ?」「順調に進んでるぞ?」
「まあね、君たちはこの糸を防ぐ手段があるからいいけど、俺たちだけではここを突破するのは厳しそうだ」
「なんたって あいつの間合いは すでに死地 蜘蛛の巣絡む ワイヤートラップ」
二人が言うように、凪燕が間合いだと判断した直径二百メーターの中は、すでに切れ味が鋭い透明の糸が無数に張り巡らされている。
双子が炎の斬撃で作り出した道から一歩でも外に出れば、一瞬にしてミンチになってしまうほど緻密に糸が交差している。
「これさ、透明な糸だけじゃなくて他の種類の糸も混ざってるね」
凪燕がそう呟くと、双子の正面から巨大な大岩が放り投げられた。
「魔力で編んだ糸だと」「燃やされるから」「大岩の質量で」「潰しにきやがったか!」
岩の大きさは一軒家を超える大きさ。 流石の双子もこのサイズになると一刀両断はできない。 咄嗟に足を止めた双子の隙間から、王消寅が指揮棒を伸ばす。
「笑わせる この程度なら 怖くもない」
王消寅が伸ばした指揮棒から衝撃波が走ると、迫りくる大岩に巨大なヒビが入る。
「竜巻は 大岩ですら 吹き飛ばす」
目の前に迫っていた大岩が爆散する。
「すっげぇ!」「なんだ今の!」
「圧力砲だろう? 多分密閉した障壁魔法の空間に大量に空気を入れた空気爆弾だ。 ラオホークもよく似たような技使うよね。 障壁魔法が上手に使える冒険者なら、威力がやばいし結構手軽に作れるんだよね、あれ」
「それよりも 次の攻撃 気をつけて」
王消寅に言われ、全員が砕け散った岩を一瞥すると、岩の一つ一つが重力に逆らうようにその場に止まった。
砕かれた岩は一つ一つが落下することなく、四人を取り囲むような位置に移動する、不自然すぎる軌道。
「ありゃあ、ぶった斬る糸じゃなくてくっつける糸に変えたのかな?」
凪燕が苛立った口調で呟くと、砕けた岩が一斉に四人に襲いかかる。 四方八方から降り注ぐ拳大の岩の流星に、四人はそれぞれ対応を余儀なくされる。 しかし、臨戦体制に入った凪燕は慌てて閻魔鴉の首根っこを掴んで低くしゃがんだ。
バランスを崩した閻魔鴉は「グヘッ」と呻きながら臀部を抑える。
「何すんだ凪燕!」
「しゃがまなきゃ 切り裂かれてたよ 今頃ね」
岩の流星群を突風で吹き飛ばしながら忠告する王消寅。 しゃがみ込んでいた凪燕はさらに苛立った声音で声を上げる。
「ぬあぁちくしょう! 双子くん、二人は繭の方から飛んでくる糸を対応してくれ! 岩は俺たちがどうにかする!」
頷きながら極楽鳶は蒼炎の斬撃を繭に向けて放つ。 慌てて立ち上がった閻魔鴉もそれに続いた。
「しゃらくせえな、一気に終わらせてやる」
凪燕は荒い口調で真上に指を伸ばす。 すると凪燕の指先に漆黒の丸い物体が出現し、それが天高く飛び上がった。
「知ってるかい? 物質が集まれば集まるほど重力は強くなり、やがて強くなった重力は周囲の物質を無差別に吸い込んでしまう。 星一つなくなるほどに物質が濃縮された時、光すら逃げ出せなくなるほどの圧倒的な吸引力が生まれるんだ。 正確には、落ちていると表現した方が正しいけどね。 僕が作り出したこの球は、その現象を簡易再現した特別性さ!」
飛び上がった黒い球を中心に、大気がぐにゃりと曲がる。 周囲の物質を無理やり吸い込むような異常な光景を前に、双子は思わず目を丸くした。
「一体何が」「起きてやがる!」
「しゃらくさいからね、こんな子供騙しな岩の流星群。 一気に掃除してやることにした」
凪燕は上げていた手を、空気をキュッと握りつぶすように閉じた。
不自然に散らばっていた岩も全て黒い球に吸い込まれていき、やがて周辺にあった砂埃や空気すらもその球にものすごい勢いで吸い込まれていく。 双子と王消寅も黒い球の吸引力のせいで、髪の毛や服がバサバサと暴れ始める。
「ちょっちょっと!」「これやばくないか!」
「凪燕 こんなところで 奥の手か?」
「安心しなよ、自滅するようなポカはやらかさないさ」
凪燕が歪な笑みを浮かべながら手を叩くと、黒い球を震源にしたかのような巨大な揺れが発生し、同時に黒い球は弾け飛んだ。
「はい、これで岩の流星群は完封した。 とっととあの面倒なやからを始末して、クライマックスといこうじゃないか」
凪燕は機嫌が良さそうな顔で先を促そうとしたのだが、
「凪燕、悪いお知らせだ」「さっきのスゴイの、何回も出せたりする?」
双子が顔を引き攣らせながら進行方向を顎で示す。 二人が顎で示した先には……
「大きいね さっきのよりも 大きいね」
「あのさー。 僕さっきの技で魔力半分くらい持ってかれるんだよね。 っていうか冷静に考えればそうだよね。 ただ岩ぶん投げてるだけなんだから、低コストで何発も打てちゃうよね」
先ほど飛ばされた大きな岩を一回り超える巨岩が前方から飛んできた。 その光景を前に、凪燕は死んだ魚のような目で肩を窄ませた。
☆
巨大な白い繭が地下に隠されていた。 その中には女性の姿を錯覚させる容貌の大蜘蛛がいるらしい。
緻密に作られた繭の僅かな隙間を縫って、レミスさんがその姿を確認した。
上半身は髪の長い美しい女性を思わせる姿、しかし下半身は黒と紫の縞々模様をした巨大な蜘蛛らしい。
未発見のモンスター、今回の戦いの規模的に確実に宝石ランクに分類される。 発見した私に命名する資格があるとするなら………
「この世界風に、【女王蜘蛛】とでも命名しましょうか」
私の命名とともに、くりんこんさんがごくりと喉を鳴らした。
「あなたってまともなネーミングできたんですね。 よかった、しましま蜘蛛子ちゃんとか命名されなくて………」
「ちょっとくりんこんさん、さっき私一発ビンタされたので、お返しされても文句言われないはずですよね?」
腕まくりしてくりんこんさんに近づこうとする私をレミスさんが羽交締めする。
「セリナさん! こんな年はもいかない子にラリアットなんてしちゃだめです!」
「失礼な! ラリアットはパイナポにしかしませんよ!」
ギャアギャアと喧嘩を始める私たちを呆れた顔で見守っていた華嘉亜天火さんが、不意に背後に視線を送った。
「あら? お片付けはもう終わったの? 意外に早かったわね?」
華嘉亜天火さんが急に口を開いたため、揉み合っていた私たちは同時に彼女の視線の先を追った。
「………なんの喧嘩だ?」
「あっ! あの! セリナ様、くりんこん様! 喧嘩はよくないと思うのです!」
呆れた顔で私たちをじっと見ているラオホークさんと、慌てて駆け寄ってくるシャエムー・グードゥさん。
シャエムー・グードゥさんのテクテク走る姿が非常に愛らしい。
心なしかテクテク走るシャエムー・グードゥさんの後ろ姿を、ラオホークさんがうっとりした目で見ている。
なんか、考えているであろうことが目でなんとなくわかる………通報した方がいいのかな?
お巡りさん! シャエムー・グードゥさんの後ろにいるクノイチ風の美女、ロリコンデス!
などとは言えずに、渋々私たちは休戦協定を結んだ。
☆
「一歩遅かったな」
くりんこんさんと私でことの成り行きを話すと、ロリコン疑いのクノイチことラオホークさんがボソリとつぶやいた。
「あたしたちもあの辺りに敵が潜んでいることを危惧して、セリナ様にお伝えしにきたのですが………まさか地下に潜んでいるとは」
シャエムー・グードゥさんが悔しそうな顔で巨大な繭を睨みつける。
「しかしあんな巨大な空洞、一体どうやって?」
レミスさんが首を傾げながら繭を観察し始めた。
すると今まで黙っていたフェアエルデさんがレミスさんの隣に歩いていく。
「十中八九、地堀虫を使って掘らせたんだろうな? でも本体見つけたんだからビックチャンス!」
うむ、フェアエルデさん、会話中もさりげなく韻を踏むとは素晴らしいお手前だ。
満足そうに頷く私の顔を、隣でくりんこんさんが凝視していることに気づき、急いで咳払いをする。
すると、繭に向かって突進していた凪燕さんたちに巨大な岩が投げ飛ばされた光景が目に入る。
「な! なんですかあれ!」
「巨大な岩よ、見ればわかるでしょ?」
華嘉亜天火さんがしれっと呟くと、今度は飛んでいった大岩が粉々に破壊される。
遠身の水晶板でその光景を見ていた私は、驚いて目を丸くする。
「王消寅さん、とんでもないですね!」
「ちょっと待ってくださいセリナさん! なんか、あの岩変ですよ?」
くりんこんさんに言われ、私は破壊されて粉々にされた岩を見てみる。
「ん? なんでしょうかこの意味わからん現象」
砕けたはずの岩が落下せず、時が止まったかのように静止していた。 しばらくすると、その岩の破片は四人を囲うように移動し、弾丸のようなスピードで射出される。
「あの、セリナ様、すぐに援軍に向かった方がいいのでは?」
「違いないな。 よしシャエムー・グードゥ。 私がおぶってやろう、乗るといい」
「ダメですよシャエムー・グードゥさん! そのロリコンは危険です!」
「おい、誰がロリコンだ!」
ラオホークさんから細目を向けられ、シャエムー・グードゥさんは困ったように苦笑いを浮かべている。
すると降り注いでいた岩の流星群が、掃除機で吸われているかのように一箇所に吸い込まれていく。 なんだあの、吸引力が変わらないただ一つの黒い球は?
「あら? 凪燕の奥の手が出ちゃったわね。 受付嬢さん? 私、ちょっとあの子たちに加勢しにいこうかと思うんだけど」
「ならば私もいこう」
「あたしも行きます!」
華嘉亜天火さんに続き、ラオホークさんやシャエムー・グードゥさんも手を上げる。
「え? お前らいくなら俺も行くぜ? あいつらを助けんのは当然の義務で!」
「先輩行くなら私も行きますけど、そしたらセリナさんの護衛はどうするんです?」
「私もあっちに行けば問題ないのでは?」
「何言ってんのよ、まだ正面で紅焔が暴れてるでしょ? そっちの様子も見ててくれないと困るのよ」
華嘉亜天火さんに諭され、思わず眉をしかめる。 凪燕さんたちの様子を見てみると、岩の流星群をなんとか乗り越えたようだが、再度巨大な岩が放り投げられているようだった。
しかもその岩の大きさはさっきよりも一回りでかい。 それが続け様に二つ、三つと投げられている。
一体どんな仕組みで岩が投げられているのか、おそらく女王蜘蛛は何種類かの糸を自在に操っているのだろう、質量で四人を潰しにかかっている。
早めに救助に向かわせた方がいいだろう。
「なら、私の護衛はレミスさん一人に任せます! 皆さん超特急で援軍に……」
「ちょーっとお待ちになって! 急いては事をし損じると言うでしょう? 私たちの存在を忘れていないかしら?」
突然甲高い声が響き、全員がそちらに視線を送る。
「ねえねえお姉ちゃん、せいてはことをしそんじるだって! よくわかんないね!」
「そうねえ、しそんじるっていうのは自分の子孫の汗のことじゃあないかしら? 急いで何かをしようとすると、子孫が汗をダラダラ流しちゃうってことだと思うわ!」
子孫の汗って……子孫汁とでも言いたいのか? 無理やりすぎるわ!
なんて思いながら振り返り、羅虞那録さんの顔を見た瞬間に必勝法が閃いてしまった。
「あ、じゃあ羅虞那録さん以外は全員援軍で! レミスさんと羅虞那録さんだけ残ってくれます?」
「なんで私だけ仲間はずれですの!」
「仲間はずれじゃないですよ? あなたの能力でやってほしいことがあります。 あなたにしか頼れないんですよ」
私が淡々と答えると、羅虞那録さんはふんっ! とか言って腕を組んだままそっぽを向いてしまう。 しかし、彼女がそっぽを向いた先には華嘉亜天火さんたちがキョトンとした顔で立っていた。
「あら、なんでそんなににやけてるのかしら?」
「にやけてるな」
「羅虞那録様、嬉しそうです!」
「嬉しいクレイジーでも急停止。 顔歪んでんぜ? 呼んでやろうか顔面整備員」
「羅虞那録さんって、意外とお茶目なんですね」
などと言われ放題な羅虞那録さん。 援軍に向かう準備をしてるメンバーに表情を見られていたようだ。
すると羅虞那録さんの顔がどんどんりんごのように赤くなっていく。
「ど、どうしようお姉ちゃん! 羅虞那録ちゃん、セリナさんに必要とされて嬉しかったのに、素直に喜べないからにやけてもバレないようにそっぽ向いたんだよ! なのに、みんなにその顔見られちゃってるよ! セリナさんに聞かれてたら、ものすごく恥ずかしいよ!」
「しっ! 静かにしなさいおれんちゃん! 羅虞那録ちゃんがかわいそうでしょ! ここは知らんぷりしてあげるのが優しさよ!」
「やかましいのよあんたたち! 援軍行くなら早く行って来なさーい!」
羅虞那録さんの甲高い叫び声が響き、援軍部隊は華嘉亜天火さんの水圧ジェットで逃げるように飛んでいった。




