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ナンパなんてしてないでクエスト行ってこい!  作者: 星願大聖
果ての荒野での異常現象
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〜果ての荒野の異常現象・思わぬ再会〜

〜果ての荒野の異常現象・思わぬ再会〜

 

 くりんこんさんは銀ランク冒険者で、見た目は黒髪ショートカットで背もそんなに高くない。 お目目もくりくりだし愛くるしい見た目をしている。

 しかしなぜだろう、物凄い姉御オーラを出している。

 

 あのフェアエルデさんや王消寅オウケストラさん、そしてこの私までもがひと言怒られただけですぐに正座して猛省してしまうほどだ。

 見た目は美少女、中身は鬼軍曹と言ったところか。

 

 「あの、セリナさん? 何か失礼なこと考えてたりしないですよね?」

 

 ジト目を向けてくるくりんこんさんに、私はびくりと肩を揺らし………

 

 「いえ! この私! 非常に猛省している限りでございます! サー!」

 「サー! じゃないですよ! 全く反省してないじゃないですか!」

 

 また怒られてしまった。

 私たちは今、果ての荒野の拠点奥に案内されている。

 この拠点のカフェスペース的な休憩所だ。

 

 たくさんの豪華に彩られたテーブルがずらりと並ぶ中、奥の方に顔見知りの三人組がいる事に気がついた。

 私は久々に見つけた自分の担当冒険者の三人組をじっと見ると、リーダーである少女がこちらを振り向いた。

 

 「げっ! なんでいるんですの?」

 

 などと小声で言いながらテーブルに伏せて身を隠そうとする偉そうな態度の少女。

 太めの縦ロールを頭頂部で括ったミルキーベージュの髪がものすごく目立っている。

 とりあえず、彼女のぼやきがしっかり聞こえた私は足音を殺し、速やかに彼女の背後に接近する。

 

 「『げっ!』 ってなんですか『げっ!』 って。 久しぶりの再会なのに随分なご挨拶じゃないですか羅虞那録ラグナロクさん」

 

 耳元でささやく私、羅虞那録さんはビクッ! と肩を揺らし、椅子から転げ落ちる。

 

 「何でもかんでもないですのよ! いきなり耳元で囁くなんてどうかしていますわ! なんなんですかあなたは! あなたと関わるとロクでもない事頼まれるから怖くて夜も眠れなくなりますのよ! あなたが来ると知った時は、寝耳に水でしたわ!」

 

 羅虞那録さんの座るテーブルの前には、彼女が肌身離さず持っていることわざ辞典が置いてある。 ちなみに四六判だ。

 一体どこで手に入れたのやら、無駄にことわざを使いたがる高慢ちきな不思議ちゃんだ。

 

 「ねぇねぇお姉ちゃん! 寝耳に水だって! 寝てる時に水かけられたら、私怒っちゃうよ?」

 「違うわよおれんちゃん! 水をかけられるんじゃなくて、ぽとぽと水を垂らされるのかも! それだったら驚いて起きるだけですむわ! 水をかけられたら髪の毛も濡れちゃうし、そんなひどいことする人いないわよ!」

 

 まあ、ことわざを言うたびに彼女のパーティーメンバーの二人は必ず反応する。 分かりきっている流れだ。

 両隣に座っているオレンジのマッシュボブの方はおらんげさん。 本名はおれん。

 向かいに座るあっぽれさんの妹で、好奇心旺盛な子供みたいにいつもはしゃいでいる。

 

 おらんげさんの姉があっぽれさん。 本名はりんこ。

 二人とも第四世代だから命名はキャリーム先輩だ。 ちなみに二人とも金ランクだ。

 言いたい事は分かる、英単語をローマ字でそのまま読むな! なんて無粋なことは言わないでほしい。

 

 キャリーム先輩いわく『逆に可愛らしいと思わない! そう思うわよね? ね?』と、困り顔で言っていたから、彼女にもっと英語の勉強をさせようとした私はそっと英語辞典を机の奥に封印したのだ。

 ちなみに姉のあっぽれさんはワインレッドのマッシュボブ、髪型は分け目までまるっきり一緒だが、双子ではない。

 

 服装が若干違うのだが、全体的な色味で見分けをつけた方がわかりやすい。 しかし私の背後にいた双子が驚愕の表情で駆け寄ってきた。

 こりゃあ面倒な事になりそうだ。

 

 「兄! 大変だ! こいつら、俺たちとキャラ被ってるぞ!」「落ち着け弟! あいつらは女だし、服装もぴりからみたいだ! 俺たちはハンサムな格好だからギリ被ってないぞ!」

 

 キャラ被りの定義とは? と聞きたいところだが、面倒な事になる前に早々に退散しようとする私。 しかしそうは問屋が卸さない。

 

 「何ですのこの貧相な二人組は? もしかして格下のくせに私たちに喧嘩を売っているのかしら?」

 「なんだと!」「誰が格下だこらぁ!」

 

 案の定羅虞那録さんが噛みつきに行った、この人はいつも他の冒険者とトラブルを起こす。

 強すぎる故にずっと一人で冒険していて、みんなから煙たがられていた彼女を口喧嘩でボコボコにした思い出が懐かしい。

 などと思い出に浸っている場合ではない、とりあえずこの場を収めなくては。

 

 「羅虞那禄さん、この二人はここまで私を護衛してきた冒険者です、あまり攻撃的な口調で絡まないでくださいね?」

 

 双子さんのことを自分を護衛してきた冒険者だと説明すると、羅虞那録さんは双子さんを値踏みするようにじっと見つめる。

 

 「あなたはこの二人を担当しているのかしら?」

 「ええ、結構付き合いも長くて、かなり信頼してますよ?」

 

 隣で極楽鳶さんが天に登りそうな笑顔で立ちくらみでもしたかのように倒れそうになっていたが、とりあえず今はシカト。

 

 「ふぅん。 まあ、あなたが認めた冒険者なら腕は立つって事なのかしらね? 私は金ランクの羅虞那録よ? 言葉遣いと態度には気おつけなさい格下ども」

 

 今のセリフ、そっくりそのまま返してやりたいところだが、立ちくらみ?して倒れそうな極楽鳶さんを必死に押さえている閻魔鴉さんは全く聞いていない。

 羅虞那録さんは無視されたことに腹を立てて勢いよく立ち上がったが、ここで鬼軍曹登場だ。

 

 「ちょっと! 何長々と世間話してるんですか! いいからこっち来る! ハリアーップ!」

 

 鬼軍曹くりんこんさんの怒鳴り声には流石の羅虞那録さんも萎縮していた。

 私は双子さんの襟首を掴んでくりんこんさんの元に引きずっていく。

 ようやく騒ぎが収まり、ゆっくり座ってことの成り行きをくりんこんさんから聞く事になった。

 

 始まりは数ヶ月前、武闘大会が終わり、朧三日月さんが帰ってきた頃だという。

 シャエムー・グードゥさんという宝石ランク冒険者が討伐した両断蟷螂コプマットが、突然動き出したのが最初の事件らしい。

 当時、襲ってきた両断蟷螂の頭を切り落とし、油断していたシャエムー・グードゥさんは死体になっていたはずの両断蟷螂に胴体から真っ二つにさよならスラッシュされたらしい。 念のため言い直すが、要は上半身と下半身が真っ二つになったと言うことだ。

 

 幸い、シャエムー・グードゥさんはすぐに傷を再生?して、動きだした両断蟷螂を細切れにしたらしい。 しかし、真っ二つになっても生きているというシャエムー・グードゥさんの能力の方が気になってしょうがない。

 

 なんでも漆黒の鎧の下からは、血すら出なかったらしい。

 一体どう言う体の作りをしているのだろうか、宝石ランクはやはり恐ろしい。

 

 そんなことはさておき、その後死体が動くと言う事件は徐々に増えていったらしく、今では倒したモンスターはほぼ全て動き出してしまうから、討伐するときは細切れにするしかないらしい。

 こうなると問題が発生する。

 

 「討伐効率も悪くなる上に、素材の買い取りはできなくなるから収入も減る。 冒険者協会の経済も回らなくなる上に冒険者たちの懐も寂しくなる。 その上魔物の素材が取れないと言うことは、今後の冒険者はみんな魔物の素材を加工した鎧や武器を装備できなくなると言うことですね」

 「お察しの通りです、だからふざけてる暇なんて微塵もありません。 早く解決しましょう! ほら先輩! 何あくびしているんですか!」

 

 つまらなそうにあくびしているフェアエルデさんが肘で小突かれてびっくりしている。

 実際これは深刻な問題だ、ラップバトルなんかしてふざけてる場合ではなかった。 結構ガチで反省しています、まる。

 

 果ての荒野で取れる魔物の素材は、上級モンスターも中級モンスターもかなり素材がいいため高値で取引される。 なぜなら王都周辺のモンスターと比べると一回りくらい強いからだ。

 王都にいる銀ランク以上の冒険者たちは果ての荒野で討伐された上級モンスターの素材を加工した武具を身に纏っているくらいだ。

 

 レミスさんの弓だって果ての荒野で討伐された金剛獅子オルリオンの骨でできている特注品だ。

 これ以上果ての荒野で討伐されたモンスターの素材が取れなくなると、装備品の手入れすらできなくなってしまう。

 

 「とりあえず現場を見せてください、さっき凪燕さんや朧三日月さんの戦闘は見ましたが、彼らはすでにモンスターを粉微塵にしてしまってたので検証のしようもなかったんですよ。 まあ、大方予想はつきますが、確証するための情報が欲しいです」

 「え? 予想ついてるってほんとですか?」

 

 くりんこんさんは私が熟考していた間に、いつの間にかフェアエルデさんにチョークスリーパーをかましている。

 顔を真っ青にして苦しそうにくりんこんさんの肘をタップしているフェアエルデさんはさておき、私は考えついた予想をあらかた話してあげる。

 

 「一つは他のモンスターによる魔力操作。 凪燕さんは相手が使う魔法の仕組みが分かれば封じられましたよね? つまり他の場所から遠隔操作されてる場合、この能力で魔法を封じるためには実際に魔法をかけてるモンスターを探す必要があります。 二つ目、物理的に操作されている説。 この場合は虫が寄生する、糸で操られる、ツボや筋肉をなんらかの力で刺激されて勝手に動くなどさまざまな方法があります」

 

 ふむふむと、フェアエルデさんを解放したくりんこんさんはあごを撫でる。

 

 「私が確認したいのは二つ。 死体はずっと動き続けるのか、元々その死体が持っている魔法を使用した能力を使えるのか。 この二つです。 なぜなら物理的な操作なら、死後硬直が始まれば自然と動かなくなります。 魔法的な操作ならおそらく死体になっても能力を使ってくるでしょう。 能力を使ってくるとわかれば後は操ってる本体を探すだけですから簡単に解決できるでしょう?」

 

 無言でうなづくくりんこんさん。

 しばらく机をじっと見ていたかと思ったら、急に机をバシンと叩きながら立ち上がる。

 

 「あなた! なんでそんな優秀で素晴らしいのに、あんなふざけたりしてたんですか! ほんっと台無しじゃないですか!」

 「しょ、しょんなこと言われても〜………」

 

 人差し指を合わせながらモジモジしてかわいこぶる私。 しかし鬼軍曹くりんこんさんは可愛らしい仕草には騙されなかった。

 

 「そんなかわいこぶっても無駄です! 海側の当直見張りの華嘉亜天火かかあてんかさんが今から見張り地点に向かうらしいので同行しますよ! 先輩! いつまでむせてるんですか! 早く準備して!」

 

 かわいそうにフェアエルデさん、鬼軍曹にお尻を蹴られながらキビキビと準備させられている。

 私はそんなフェアエルデさんを眺めながら、コーヒーを啜った。

 

 

 ☆

 「で、なんでこんな大所帯になっちゃったんですか?」

 

 私はゾロゾロと背後についてくる冒険者たちを呆れながら見渡す。

 

 「私はね 暇だったんです この時間」

 

 またこの人は、よくもまぁそんなポンポンと五・七・五のリズムで会話ができるもんだ。 逆に感心してしまう。

 

 「まあ、せっかく担当の受付嬢がはるばる果ての荒野まできたんだから、ついてってあげてもいいかなって思っただけですわよ! 悪縁契り深しってことですわね!」

 「ねぇねぇお姉ちゃん! ちぎっちゃったら切れちゃうって意味とおんなじだよね? ちぎり深しっていうのは深くちぎっちゃうってことかな?」

 「おれんちゃん、今の言葉の意味はね? 悪い縁は根本まで深〜くちぎってしまいなさいって意味だから、あなたの予想は正解よ!」

 

 いや全然チゲ〜よ、何意味不明な解釈してんだよこの果物姉妹!

 私はため息をつきながら華嘉亜天火さんのそばに早歩きで寄っていく。

 すると浮遊する水の塊にふんぞり返って座ったまま移動している華嘉亜天火さんは、近寄った私の顔をチラリと見る。

 

 「随分と人気者ね? あなたここに来るの初めてだったわよね?」

 

 羅虞那録さんほどではないが、この人も結構高慢ちきだ。

 まあ小人族は子供扱いされないようにこう言う態度の人が多いからこちらはあまり気にならない。 しかも火山龍《 ヴォルカディーユ》討伐戦の時、この人は自分の身を犠牲にして仲間を守ろうとしていた優しい人だと言うことを私は知っている。

 あのクソアマ(羅虞那録)と比べると月とスッポンだ!

 

 「火山龍討伐戦以来ですよね? 私のこと覚えていてくれたんですか?」

 「当然よ。 いやでもあなたって目立つじゃない?」

 

 嫌味ったらしくそんなことを言いながら、水筒からマイストローを伸ばしてチュウチュウと飲み物を飲む優雅な華嘉亜天火さん。 しかしそんな優雅な時間はすぐに終わることになった。

 

 「セ! セリナさん! あれ! 誰か戦ってますよ!」

 

 目のいいレミスさんが真っ先に気がついて指を刺す。

 すかさず私は遠見の水晶でレミスさんの指先を追った。

 するとそこに映ったのは………

 

 「あれは、確かラオホークさんと………そんな、嘘? ———でしょ?」

 

 まさかの敵影に動揺して水晶版を落とす私。

 隣でレミスさんも全身に鳥肌を立てながら呟く。

 

 「あれは、月光熊リュヌウルス。 こんなところでまた遭遇するなんて………」

 

 

 ☆

 私たちは戦闘中のラオホークさんの元に全速力で駆け出した。

 

 「何をそんなに急いでいるのよ! 急がば回れっていうじゃない! 落ち着くのですわ!」

 「ねぇねぇお姉ちゃん! 急いでるのに回っちゃったら意味ないよね!」

 「おれんちゃん、きっと今のはこういう意味よ! 急いでいるからこそ、足を車輪のように回すのよ? ほぉーらこんな感じよ!」

 

 ちょ! お前ら黙れ! って言いたいところだが、あっぽれさんあれどうやってんだ?

 漫画やアニメみたいに足を車輪のように回してやがる、後でやり方教えてもらおう………

 って違う! 今はそれどころではない!

 

 数ヶ月前私は月光熊討伐の指揮をとったことがある、あのモンスターは危険すぎる!

 一人で戦っていい敵ではない、その上果ての荒野にいるモンスターはかなり強くなっている。

 急いで応援に向かわなくては!

 

 「おい! _M__C_セリナ! お前マジで落ち着けよ! 相手はたかが月光熊(♫♫♫)だ、全力坂(♫♫♫)登る程急ぐ必要はねぇ(♩♩♩♩♩♩)、堂々と向かえキングの座で(♩♩♩♩♩♩)!」

 

 こんな時にふざけてる場合では………

 

 「先輩! きっとセリナさんはあいつで実験する気です! ラオホークさんがあいつを細切れにするのを防ごうとしているのでしょう!」

 

 は? くりんこんさんの解釈が意味不明な方向に………

 

 「なるほどね? なら、私の水圧ジェットでぶっ飛ばすわよ!」

 「ちょ! え? なに勝手に意味不明な解釈を! ちょっと待った華嘉亜天火さん! 私絶叫系苦手で………ぎゃあぁぁぁぁぁ!」

 

 華嘉亜天火さんは私を小脇に抱えて、ふんぞり帰って座っていた水塊から水をジェット噴射してしまいました。

 

 

 ☆

 ラオホークさんが煙で月光熊を覆っている。

 火山龍戦でも見た能力だ、あの能力は炎と水の合成魔法で水を蒸発させてできた蒸気を自在に操る能力。

 以前彼女は煙の壁で覆った空間内の酸素を燃やして、大量の二酸化炭素を煙の中に閉じ込め、その煙の塊を火山龍に飲ませるという大役をになっていた。

 

 二酸化炭素は猛毒だ、月光熊に飲ませる事さえできれば倒すことはできるはず、しかし奴は意外と動きも良く簡単に動きを封じたりはできないだろう。

 その上結構用心深い。

 

 華嘉亜天火さんと私は二人で先行し、ラオホークさんと月光熊が戦う戦場に追いつくことができた。

 水圧ジェットの移動は早すぎて正直もう二度とごめんだ、しかしそんなこと言ってられない。

 急いでラオホークさんに助太刀しなければ!

 

 到着して早々、華嘉亜天火さんはラオホークさんへ気だるげな表情で語りかける。

 

 「ラオホーク? 手助けは必要?」

 「いらん。 もう終わる」

 

 ………は?

 もう終わる? と言ったのか? たった一人で戦っていたのにも関わらずなんでこの人はこんなにも余裕な表情なのだろうか?

 

 「そう。 ………ああ、言い忘れてたわ。 死体はできるだけきれいな状態にしてちょうだい。 ここにいるセリナさんは死体が動く原因を突き止めにきているの。 爆散させちゃダメよ?」

 「………そういうことは早く言え。 もう遅い」

 

 二人の会話についていけず、あたふたとする私。

 

 「ごめんなさいセリナさん。 結構飛ばしてきたつもりだけど間に合わなかったらしいわ?」

 

 余裕そうな表情の華嘉亜天火さんに、ついつい首を傾げてしまう。

 

 「あら? そういえばあなた、ラオホークが本気で戦ってるところ見たことなかったわね。 あいつは金ランクの中でも最強と言われているわ? 宝石ランクに今最も近い冒険者よ。 月光熊の相手なんて朝飯前だわ?」

 

 耳を疑う発言を聞き、動揺した。 しかしそんな私などお構いなしに、目の前にモクモクとと広がっていた煙が徐々に一箇所に収縮していく。

 

 「彼女は煙を………いや、正確に言えば水蒸気を操る能力よ? 強すぎるからこそ一時期、炎と水が使える冒険者たちがみんな揃って彼女の真似をしようとしていたの。 けれど誰も再現できなかった。 なぜなら彼女の本当にすごいところは、魔力を操るスピード。 一瞬で大量の水蒸気を作り上げ、障壁魔法を巧みに使って、大量の水蒸気を一瞬で圧縮する。 そして気化熱を利用して圧縮した水蒸気を瞬時に水魔法で冷やすことで、閉じ込められた敵には外から急激な圧力がかかる。 その圧力の強さに障壁魔法は耐えられなくなり………」

 

 一箇所に収縮された煙が月光熊と同じくらいの大きさになった瞬間、そこを中心に強烈な破裂音が響く。

 

 「中にいるモンスターごと押し潰してしまうの。 一撃必殺の圧殺。 どんなに皮膚が硬くても、圧縮された空気の力にはかなわないものね?」

 

 耳を塞ぐ私に、生臭い水が大量に降りかかる。

 大きな音に驚いて目を閉じていた私は、恐る恐る目を開けて自分の体を見て見ると………

 

 「う、うわァァァァァァァァァァァァぁぁぁぁァァ!」

 

 私の身体中に、月光熊の血と肉片が大量にこびりついていてた。

 急に胃が苦しくなった私は、我慢できず口から虹のモザイクがかかった物体を吐いた。

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