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オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第3章 深謀短慮、豈図らんや。
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第19話 メスタ君とゆかいな仲間たち②



 言われた意味が分からずに思わず変な声で返事をすると、シェリーがため息を漏らしながら教えてくれた。


「どうやら子爵家が直々にここへ謝罪に来たらしいわ。今、下に使いの者が来ているそうよ」



「あぁ、そういう意味か。…それでなぜ俺達にまで?」


「…セリスさんへの謝罪が、本命だそうです」


 ──キャロルが、追加の情報をくれる。うん、実に面倒くさい。そう思って渦中の本人を見ると当のセリスも同様みたいで、ものすごく顔に出ている。


「…どうするんだ?」

「受けぬわけにはいかんだろうな…それこそ()()()じゃしの」

「そっか…じゃあ、終わるまで俺達は待機ってこと──」

「何をバカな事を言っておる。全員で行かねばならんに決まっておろうが」


 ……うへぇ、やっぱりそうなるのかぁ…ヤダなぁ、貴族。会いたくないなぁ。


「で、時間は?」

「…はい。もちろん、ご都合の善き時にとの事でございます」

 部屋に来たメイドさんは、申し訳なさそうにセリスにそう告げる。


「了解した。朝餉(あさげ)を頼んだ故、終わってから時間を伝えに降りるでな。ついでと言っては何だが、その子爵の略歴や為人(ひととなり)などの資料をもってきてくれる様、支配人に頼んでおいてくれ」


「畏まりました…度重なるご不便、何卒ご容赦くださいませ。」


 そう言って、メイドさんは深く頭を下げてから下がって行った。


「ふぅ、()()()()()()になっちゃったなぁ」

 リビングのソファにもたれ掛かり、誰にともなくつぶやいた。


「巻き込んで済まんの…じゃが、あの状況は流石に()()()()()()()

「あぁ、その事は全然いいんだよ。逆にセリスのおかげで丸く収まったから。…でも、あれだろ? 資料を持ってこさせるって事は、相手の事を知る必要が出て来たって意味なんだろ?」


「ん、あぁ。今頃あ奴らはギルドにも廻っておるじゃろう。ならば、下手な情報が渡る可能性も出る。もし()()()()()()だった場合、()()()()()()()


「なら息子のあれは、()()()を掛けて来たと?」

「ないとは言い切れんな。でなければ儂らの()()()に来た()()が分からん」

「…確かに言われて見ればそうよね。私達の食事が始まって直ぐと言う()()()()()的にも、丁度だったし」


 シェリーが、俺達の考えを補正するように入ってくる。


 ……だとすれば厄介だ。いったい何の目的で? 疑念が次々湧いて来る。


「目的は何なのでしょうか? これでは只の時間稼ぎにしかなりませんし、もし足止めが目的だとしたら、どこかで何かをまた起こす気なんでしょうか?」


 キャロルが的を射た質問をする。そう、足止め自体が目的なのか。


 狙いは別にあるのか。全く意味が分からない。


 皆が黙って考え始めた時、ドアがまたノックされた。


「朝食をお持ち致しました」




********************************




 宿に向かわせた使いよりも早く、セリス様の周りの者の情報を集めに行かせた下男が戻って来て、家令のアレフにメモを手渡す。


「し、子爵様…これを」

 家令のアレフが、慌てた様子で受け取ったメモを持ってくる。


「…これは、事実なのか…」

「は! 先程、冒険者ギルドに()()をさせました。間違いございません」


 聞けば、彼らがこの町に着いたのは昨日の夕刻前。四人で身分カードで入町した。この事は庁舎に居る者から言質が取れた。その際分かったのは名前と性別のみ。


『ノート、男性』『セリス、女性』『シェリー、女性』『キャロル、女性』の四人パーティ。


 彼らは真っすぐ冒険者ギルドに直行し、そこで木漏れ日の宿の紹介状を貰ったと言う。


 ──…聞いた事が有る。確か、高位の冒険者には滞在時の心証を良くさせる為に高級宿の斡旋をしていると。彼らは高位の冒険者。そこで確認を取らせに行ったのだが。


 ノートはプラチナランクの冒険者。その上魔技師、薬師と錬金師の()()がゴールドランクと言う。


 そしてキャロル、シェリーは、ミスリルランクの最高位。元エクス冒険者ギルドの受付嬢。……炎熱と冷笑と呼ばれる二つ名持ち。…そしてセリス様は言わずもがな…そんな四人がパーティとなっていたなんて。


 ──…いったいなんの冗談だ。こんなメンバー聞いた事が無い。


 なんだ? 彼らはどこかで戦争でも起こす気か? ミスリルランクは、騎士一個小隊に匹敵すると聞く。それが三人も居て、おまけに男は魔術と錬金まで高ランク。攻守全てが万全じゃないか。


 こんなのが暴れたら、街一つ等潰すなど造作もないだろう…終わったな。我が子爵家は儂の代までか…。




◇  ◇  ◇




 ──クソ…昨日ぶたれた頬が未だズキズキする。目は腫れているし、眉目秀麗な我の顔が台無しだ。それもこれも、あのセリスを語る下賤の者達のせいだ! 思い知らせてやる。


「遅い! 何をやっているのだ! ハンクの奴は!?」


 メスタが部屋で騒いでいた頃、彼の従者であるハンクはスラムの入り口で人を待っていた。


「…アンタが()()()かい?」


 突然背後から声を掛けられ、慌てて振り返るハンク。だがそこは丁度日陰になっており人の判別は付きにくい。


「あ、あぁ。そうだ。ここで待っていれば良いと言われた」

「ふぅん…で、幾らで誰を? それとも複数?」

「複数だ。数は四。一つに一万出す」


「…ヒュー。そりゃまた()()だねぇ、それとも()()なのかな?」

「…全員が冒険者だ」

「あぁ、そういう事…ね。ランクは?」

「確認は取れていない…が、低くはないはずだ」


 そこで、影は黙り込む。


「…おい、まさか断るとかじゃないだろうな。アンタの紹介料だけでも高かったんだぞ!」


「三万だな。一つ辺り」

「な!? それはいくら何でも暴利じゃないか!?」

「無理なら諦めてくれや。三万だって安い方だぜ。高ランクとなれば、一ランク毎に、二万付くのが相場だ」


「…クッ、なら前金で()()だ。必ずだぞ」

「はいよ、こっちも商売だ。信用は大事だからな」


 ハンクはぶちぶちと文句を言いながらも半金を渡し、その場を去っていく。影の男はそれをじっと見送ってから、にやりと下卑た笑いを残して消える。


「バカな奴だね。高ランク冒険者を相手取る()()()()()()()なんて居るかよ」


 そう言って、膨れた硬貨の詰まった袋をポケットにねじ込んだ時だった。


「フム。受けた仕事は熟さないといけませんねぇ。それがプロの矜持でしょ」

「誰だ!?」


 咄嗟に握ったナイフを振るが、そこには誰も立っていない。


「おやおや、そんなへっぴり腰では、新米冒険者にも勝てませんよ」


 耳元で声がささやかれる。…だめだ、コリャ俺には勝てねぇ。


 悟った小悪党は、ナイフを落とし手を挙げ降参のポーズをする。


「あぁ、分かったよ。あんたにゃ勝てねぇ。貰った金はアンタに渡す。それで見逃してくれ」

「これはこれは。何故に私があなたに危害を?そんな事はしませんよ。

ですがそうですねぇ…。ではこうしましょうーー」


 スラムの影で、二人の会話は続いて行く。




********************************




「では、明後日の午後。で宜しいでしょうか」

「はい。それでお伝えください。それから、宿泊の件なんですが」

「そちらに関してはご安心ください。すべて当宿で面倒を見させていただきます」

「あ、いえ、そう言う意味では無かったんですが…ありがとうございます」

「滅相も有りません。どうぞよしなに」


 ──…支配人と話を決めて、訪問は一日明けての明後日にした。


「ふぅ。貴族の面会ってホント時間掛かるんだな、なんで中一日必要なんだ?」


「慣例じゃ。()()が何事にもいるんじゃろう。儂も面倒なのは同意じゃ」

「じゃあ、どうします? 今からと明日まるまる余裕出来ましたけど」

「ノート君の言ってた、素材でも探しに行く? ここなら結構お店もあるわよ」


「そうなんだ。じゃあ、それでいい?」


 セリスを含めた全員に合意を貰い、ロビーでお勧めの店舗を聞いてみた。


「鉱物関連の店舗ですね、少々お待ちください…」


 そう言うと、メイドさんが振り向き、ぼそりと執事に一声かける。


「…はい。了承致します。お願いしますね」


「…では、私が直接ご案内します。どうぞ、宜しくお願い致します。」




 ──…何故か、メイドさんが付いて来ることになった。








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