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オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第3章 深謀短慮、豈図らんや。
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第15話 立つ鳥跡を濁さず



「そう言えばお主、戦斧を取り返したんじゃなかったか?」


 セリスに言われてふと思い出す。変異種の奴からドントの戦斧を取り返したんだった。


「まぁ、戦利品は、返却の必要はないですけどね」


「ん~。でも俺、戦斧なんて使わないし。ドントも喜ぶなら返すよ」


「そうね。ノート君は今のところ、拳闘しか使ってないし、剣を使うならショートソードや、ナイフなんかの方がいいんじゃない?」


「あぁ、()()()ナイフなら使っているからな。俺は前衛だから動き回れる方がいいし」


「そうですね。中衛がシェリー、後衛がセリスさん。私が斥候と前衛ですから、バランス的にはいいですね」


「後は、()()が欲しいぐらいね」


 今は、俺達バラバラで戦ってるけど、パーティで考えると、攻撃主体だからな。バランスは良いが守備が甘いよな。まぁ、ほぼ瞬殺しているから意味はないけど。


「お! こっちに、旨そうな串焼きが有るぞ!」

「ノートさん、食料はどんなものを、買っておきます?」


 屋台と店が混在する通りで、皆とあれこれ言いながら食料を買っていく。


「後は素材が欲しいな。鉱物関係は何処だろう?」


 俺がそう言って周りを見回していると、セリスが声を掛けて来る。


「ノート、ここではお前の欲しい素材は見つからんと思うぞ」

「え? どうして?」

「ここはまだ町にもなっていない村じゃろ。ならば生活に必要な物以外は恐らく全て、エクスか他の街に送る方が()()()じゃからな」


 その話を聞いて、なるほどと納得する。


 この村は未だ成長過程だ。高価な素材をここで消費するより、売って拡張に廻す方が村の為になる。


「そうだな。食料を買ったら戦斧をドントに返して、出発しよう」



◇  ◇  ◇



「おお! 正に俺の戦斧! じゃ、じゃぁもうオーク達は」

「あぁ。討伐したよ。…魔石見る?」


 破砕の戦斧のリーダー、ドントはまだ治癒院に居た。


 彼は仲間を逃がすときに、戦斧にありったけの魔力を込めて変異種に、投げつけた。そのせいで両腕の筋が断裂したそうだ。ヒールでは治り切らずに、現在もリハビリ入院中らしい。


「で、でっか…こ、これがあの変異種の魔石。」

「そう。でこっちがキングオーク。」


 二つを同時に並べて見せると、破砕の戦斧の面々は口をあんぐり開けて、声を失った。


「うははは。その変異種はノートがほぼ瞬殺じゃったぞ。なにせ、殴り倒しておったしの」


 それを聞いたメンバーは、同じ表情のまま俺から距離を取る。


「いやいや、アンタ達にそんな事しないからね。引かないでね」


 引き攣った笑い顔で、コクコク頷く戦斧の面々。


≪仕方無いでしょう。彼らは実際の変異種と対戦しているのです。そして負傷してまで、逃げたのですから。それを単独で撲殺したなどと聞けば、こうなります≫


 シスが念話で微妙に傷つくことを言ってくる。ちくせう。


「ま、まぁ、そういう事でオークはもう居ないから、早いとこ怪我治してこの村の事頼むよ。俺達はもう出て行くからさ」


「え? そうなのか?」

 ドントがどうして? と言う顔で聞いて来る。


「あぁ。元々ここで依頼とかする気は無かったんだよ。領都の辺境伯様に呼ばれててさ。ここは道中の補給で寄っただけだったんだ。」


「そうだったのか、申し訳ない。俺達が不甲斐無かったせいで…」

「ばあか! そんなの関係ない。それに、丁度欲しかった魔石も手に入ったしね」


 その後、幾つか話をして、治癒院を出る。


「あら、今日もお祈りですか?」


 教会の入り口には、エリーが立っていた。

「こんにちわ。いえ、今日はお見舞いです」

「おや、そうでしたか。祈りの方はしないのですか」

「はい。今から出発ですから」


「…そうですか、それは残念です。…ではごきげんよう」


 そう言ってエリーは、そのまま教会の中へと入って行った。


「意外とあっさりしてますね。次は何処へ? とか聞いて来るかと思いました」


 キャロの質問に、そうだなぁと思っていると。


「彼女は、別に深くかかわっている訳じゃないんじゃない? ただの、

動向を探っていただけとか。」

「フム。現地調査員じゃな。自分の管轄だけで行動するって奴じゃろ」


 シェリーと、セリスがそんな風にキャロに話していた。


 現地調査員…いわゆる草って奴か。相手国に移住し生活をして、その地になじみ、場合によっては結婚したりまでして、現地人になり切る。


 ずっと国の為に働き、場合によっては全てを欺き、裏切ってまで。死んでも帰れず。ただただ、国の為に。


 俺には出来ない事だな。()()()()どころの話しじゃない。



 ──…何気なく教会を見あげると、尖塔にいた大きな鳥が羽ばたいて飛び去って行く──。


 ()()()()()()()()()()()()() ()と言う(ことわざ)を思い出していた。


 …誰でも自由を求めぬものはない。籠の中の鳥でもいつかは出て、広い自由の天地に飛び立とうとしている。


 ──…彼女もいつか、飛べればいいな。


「ノートよ。何を黄昏れておるんじゃ」

「へぁ? いや、別に」

「そう? 何か、空を見上げて何か考えていたわよ」

「何か飛んでたんですか?」


「あぁ、あの尖塔からさっき、大きな鳥が一羽……」


 俺の言葉に皆が空を見上げるが、もうそこに鳥の姿はなかった。


「ん~どこじゃぁ? 見当たらんぞ」

「あぁ、もう見えないな。……それじゃ、そろそろ行こうか」

「そうですね。今度はノートさんの運転で、お願いします!!」

「はいはい。あ、どうせなら二人も()()すればいいじゃんーー」



 ──ワイワイと四人で話しながら、駐車場へと向かった。




*********************************




「おや、もうこの村を出て行くようですね。次の()()()は聞いておられます?」


「いや。何も聞いてはいない。…もういいだろう、これ以上巻き込まないでくれ」


「そうですか…困りました…いえ、構わないのですよ。ええ、私は構わないのです。ただ、上はどう判断するのか。それは私には()()()()()()ので」


 村にある総合会館の小さな会議室の一つで、二つの影がそんなやり取りを交わしている。一方は外套にフードを目深に被り、その姿は判別できない。もう一人は冒険者ギルドのギルドマスターだった。


「な! それは()()()()()じゃないか! アンタたちの指示通りに危ない橋を渡ったんだぞ! 行き先まで調べろなんて聞いてない!」


「フフフ。これは失礼しました。ですが今申したように、私に権限はないのですよ」

「…クッ、き、貴様、()()()のか? この俺を!!」

「これは異なことを。私はこれでも()()()ですよ。騙すだなんてとんでもない」


「もういい! この事は報告する。本部ではなく直接辺境伯様に──!」


 最後まで言い切る事なく、ギルドマスターはその場に(くずお)れる。


「グゥ…ガァ、き、きざ、ま…」

 胸を刺し貫かれ、息も絶え絶えになりながら、それを行った相手を睨む。


「いけませんねぇ、とてもいけません。…貴方は只の駒なのですよ。それが勝手に動いては盤面が変わってしまうじゃないですか。…やれやれ、これでは次のギルドマスターは、苦労しますねぇ。…この村は、大丈夫でしょうかねぇ」


 倒れた彼を見下ろしながら、そんな事を言いソイツは徐に袋を取り出す。

「ふぅ。()()する身にもなってほしいものです」


 ”シュボン”と言う音と共に袋に吸い込まれる遺体。床に流れた血溜りさえも消えて行く。


「よし。奇麗になりましたね。…ふぅ、それにしても()()()()()()ですか。…怖い名前です。お近づきにはなりたくないですね」


 そう言って、外套の者は、教会の尖塔を眺めていた。



()()()の報告は飛んだみたいですね。では私も行くとしましょうね」




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