第13話 俺達の冒険は、これからだ!
打ち切りじゃないです!
《…宜しいのですか?マスター》
右肩に戻って来たシスが、ぼそりと俺に呟く。
「ん? あぁ、今はこれでいい。すぐにどうこうする気はないよ」
《…そうですか》
実際、これ以上彼らを責める気にはなれない。
──…よくよく今考えてみれば、色々辻褄が合う事もあるしな。この訳分からん程のチートや身体…年齢も。…人生やり直すには十分だ。お詫びの意味が込められてるんだろうな…。
──イリス様…ずっと苦しんで居たんだろうなぁ。
神様なのに、たった一人の人間の為に…。
マリネラ様や、他のみんなも…世界の為に、犠牲になって。
はは、それは俺もか…まぁ今は良いさ。
地球でのことは気にかかるけど、全部もう過去の事だ。
そう…既に流れた時の結果だ。それよりもこれからが大事。
テンプレならば、俺達の冒険は、これからだ! だしな。まさにこれからだよな。まだ領都にすら着いてないんだから。
「フフ、ノートさん、やっと笑ってます」
不意に、キャロルが隣でそんな事を言う。気づけば、俺は笑っていた。
「あぁ。だってさ、まだ始まったばっかりじゃん。人生が終わったわけでも、旅の終着点に着いたわけでもない。これからだなって思ってさ」
「…そうね。まだ、一つ目の村に、移動しただけだものね」
シェリーが、現実を言う。
「じゃな。モンスターの件もあるし、やる事は山盛りじゃ」
セリスは早くも、狩りモード。
《これからは、私もサポートに入りますので、盤石です》
「「「……怖いです!」」」
シスに皆で突っ込みを入れて、何故ですか? と冷静にキレられている時、離れた場所に神達は集まり、それを眺めていた。
「…結局は、あ奴の性根に救われた…のじゃな」
「そうだなもうあれは、健二でも零士でもない、ノートなのだろう」
「…フム。我等も、改めていかねばな」
「…ノート君…」
「マリネラ姉様…」
「…貴方は、いつもそうでした。…救われているのはいつも私…いつか、全てを話せたら…その時こそは、私を責めて下さい…」
「…管理者イリスよ。其方もいつか、報われなければな…」
《…全てはマスターの幸福の為。私はそのための存在ですから》
「ん? 何か言ったかシス?」
《いいえ。それよりも、所用を済ませましょう》
「え、あ、あぁそうだな。お~い、皆さん!」
全員で合流して円卓を再度作ってもらって、皆で話し合いをすることになった。
当初の問題であったシスの事や俺の記憶の事などが、片付いてしまったので、本題はこれからの俺自身の動向や、シスの事に話しは移っていった。
「では、シスはそのゴーレムに常駐するという事になるのか?」
《現状ではそうなります。既にマスターとのリンクは、確立されていますので、
常時モニターは可能です。》
「…え? おい、常時は困る! プライベートは必要だ!!」
そうだ! そんな事されたらキャロやシェリーとイチャイチャ出来ないじゃんか! そればっかりは、絶対嫌だ! 断固反対する!!
《…マスター、何か勘違いされてませんか? 私は、マスター自身でもあるのですが。ですのでマスターとのリンクが確立した今、全ての情報は私と共有されています》
「ファ?! じゃ、じゃぁ、俺が今考えていた事も?」
≪これは念話だ。勿論全て共有しているさ。でも心配は無用だぞ、性別を決めたのも俺だしな。人格が増えるのを懸念した結果だよ、元は同じ俺なんだ。気にするな≫
突然、シスが俺の声で喋り始める。
…お、俺なのか? マジで…じゃあ、イチャイチャの事とかごにょごにょの事も…。
≪勿論お前と、同じ気持ちだ。モフモフは正義!!≫
「イエス!! モフモフパラダイス! イエア!!」
「なんじゃ!? おい、アレは何じゃ?」
「…さぁ? キャロル…なにかわか…あぁ、何となく想像ついた」
セレスとセリスが、何やら言ってるが、この際無視だ。
「…おい、ノート。一人で話されると分からん」
「へぁ? あぁ…いや、ゲフンゲフン…まぁその、コレは良いんです」
「…フム、まぁ別に構わんが。それで、結局どう運用していくのだ?」
「あぁ、先ずはメールとチャット機能はシスに統合するよ。そうすれば、俺に何かあっても、連絡が取れるからね。あと──」
そう言う感じで、シスの使い方や旅を続けることなどを話していった。
「…じゃぁ、やっぱりこっちでは地上の動きってのは、監視していないと…」
「…出来ない。と言う方が正確だな。我等神は基本的に地上の民の手助けをしない。それは、全てが等しく神の愛し子だからだ。故に天災でも起こらぬ限り、干渉しないのだ。」
まぁ確かに、神が細かい事に干渉していたら、発展もないし差別の助長にもなるか。
俺みたいな、イレギュラーは別だろうし、精霊王が、地上には居るしな。アレでも、王は王だろうし…今の世界は、文化も文明もまだ未熟。
まぁ、やれることは何でもやって行くとしますか。…元ブラック企業のサラリーマンの底力、舐めんなよっと。
「…じゃぁ、これで大体決まったな。そろそろ戻ろうか」
「「「はい」」」
「え~、儂はもうちょっと居たいのう」
「ブゥ…姉様~セレス寂しいですぅ」
それを聞いたマリネラは苦笑し、グスノフは頬を赤らめる。
「こら、わがまま言わない。それとグスノフ! 俺のイメージが崩壊するから赤くなるな!」
「む、い、いや、コレは違うんじゃよ!? あの、その、な?」
「なに、支離滅裂になってんだよ」
「ヌハハハハ! 良いではないか、老いらくの恋。うむ、よいよい」
「…何を言っとるんじゃ? この筋肉団子は? 儂はちょっと、身体を切り開いて中身を──」
「解剖すな!! このおバカ!」
そこでセリスが本音を漏らす。
「…儂は、貝になりたい…」
あ~あ…落ち込んじゃった。
「ま、まぁ、グスノフの事はこちらで何とかします。エギル皆を元の場所に」
「あ、あぁ、分かった。ではノート、また何かあればいつでも連絡を」
「了解。ぼちぼち頑張るよ。イリス様、マリネラ様も、また会いましょう」
◇ ◇ ◇
ふと目を開けるとそこは、暗い礼拝堂の中だった。
「あ、戻った」
「良かったです」
「くぅうう! もう少しじゃった…あれ?」
三人も、無事戻ったようだ。…あ、セレスは?
「セレス様は? 神器の中?」
「…どうやら、その様じゃな」
ふう。向こうでの時間経過が無いから、ちょっと変な感じがするな。あ、そう言えばシスはどこだ?
≪現在不可視化状態で待機中です≫
そっか、戻ったらボディの素材決めないとな…。皆で、エリーに声を掛け、教会を後にした。
「本当に祈りだけでしたね…では報告書に、敬虔な方と付け足しておきましょうね」
俺達が出て行ったドアを見ながら、エリーは一人笑顔で告げていた。
◇ ◇ ◇
宿で食事をとり、全員で部屋に集まる。
「…結局、石の事やモンスター達の事、分かりませんでしたね」
「まぁ、そこはしょうがないな。神は誰の味方でもないんだから」
「…フム、石の存在など神は知っているじゃろう。外法では有るが、元凶を潰さねばならん。そこに手出しが出来んのじゃろう。それを考えれば、おのずと答えは見えて来る」
「…どういう意味だ?」
「…やはり、ハマナス、ですか?」
さっき、食堂で話していた事か…ハマナス商業連邦の介入。闇ギルドの暗躍、陰謀論に聞こえなくもないが、逆に考えればしっくりも来る。でもそうだとすれば、教皇国はどこまで裏で繋がってるんだ?
「あくまで仲介…物資の提供。お代はそこから見える情報…ってところかの」
「…全ての国の出先機関、情報のるつぼ…はぁ~腐ったミカンは何処までも腐るねぇ」
「「「ミカンってなに?」」」
おうふ!…説明には時間がかかりました。
「酸味のある甘い果物…いつか食べてみたいです」
「そうね。そういうのを探して巡る旅ってのもいいかもね」
「おお! それ、賛成じゃ! ノート! 儂も一緒にその旅、行きたい」
「分かった分かった!そうだな、色々ごちゃごちゃが終わったら、グルメを探して世界を巡るってのは定番だしな。考えておくよ」
結局、モンスターの事や間諜なんかの話は途中から、食い物の話しに代わり、夜は更けて行った。
≪ピピ…宿周辺に敵影感知無し≫
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