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オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第3章 深謀短慮、豈図らんや。
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第10話 禁則事項-①



 幸いここは、時間が存在していない。皆が落ち着くのをゆっくり待った。


 何もないこの空間ではやりづらいだろうと、エギルが円卓と椅子を出すが誰も席に付かないので俺が座ると、対面にイリス様。左右に分かれて、神達が座っていく。その後俺の左右にキャロルとシェリー次いでセリス、セレスは、マリネラの横をせがんで座っていた。


「…よろしいですか」


 イリス様の言葉に、皆静かに頷く。


「…先ずは貴女方からお話をしていきましょう」


「此処は本来、神の間。人の身で存在は出来ません、よって貴女達は現在、魂魄でここに存在しています。死んではいません。そこは安心してください。ここに来てしまった理由は、エギル…この魔神ですが、彼が慌てて精神、つまり魂魄を()()()()せず呼んでしまった為にノートさんの傍に居た貴女方ごと、召喚してしまったのです。」

 

 そこでエギルが立ち上がり、謝意を述べる。


 まさか神が謝罪などと、考えていなかった皆は驚き、「謝罪など必要ない、神に会えるなど恐れ多い事で、逆に恐縮してしまう」と答える。


「…ありがとう。では、何故()()()()()()()()か。についても語って行きましょう」


 そう言ってイリス様は一度、呼吸と姿勢を正す。


「…ここに居るノートさん。彼が【迷い人】であることは、理解されていると思いますが、ただの迷い人では有りません。本来の彼は、この世界とは別の世界。地球と呼ばれる時空間すら別の場所からここに、縁が有って()()()()()存在です」


「今、なんて言った? ()()()()()? 其れってどういう事なんだ? 俺はこの世界に()()()()()んじゃなかったのか? そう言ってたよね?」

 

 ビックリして思わず、立て続けに詰問してしまう。


 だってそうだろう、俺はしがないくたびれた人生を送っていた、五十でボッチのおっさんだった。偶々身体に有った【特異点】のせいでここに来たと()()()()()んだ。


「それがどうして戻って来たに変わるんだ? もしかして前世はこの世界の住人だったって事か?」


「ノートよ、そう()くな。イリス様は()()をお話しされる。先ずは聞いてはくれんかの」


 グスノフ様が、前のめりになって聞く俺を手で制す。


「…ごめんなさい。あの時はそういう事にしか出来なかったのです。それもこれも、その()()()が、原因なのです」


「…管理者イリスよ、我が引継ごう。貴女は彼女らに説明を。ノートよ、二人で話そう」


 そう言ってエギルは席を立ち、離れた場所へ移動する。


「ん? グスノフも来たのか」

「儂も、話したい事が有るからの」

 それを聞いたエギルは何も言わず、床から椅子を三脚出現させる。


「ふぅ。…ノートよ。今回お前は、()()()()()と言って来たな。【夢】でも、【歴史】でもなく。…何故だ? 一体なぜ勇者の記憶と言うモノをお前が見る事が出来る?」


「…いや、分かんないよ。だからこっちに連絡したんだ。断言できる。夢じゃないし、史実を見たわけじゃない。あれは、()()()()()の記憶だ。感情すら覚えているんだか…ら?」


 自分で言ってはたと気づく。感情? え? 何でそんな、本人しか感じないものを俺は知って、いや()()()()んだ?


「気付いたか。確か…【アカシックレコード】と言ったか。記憶の保管庫だか、データバンクとかの名は?」


 急にエギルがそんな事を聞いて来る。何を言っているんだ?


「何でそんな事を? アカシックレコードは森羅万象の全てを記憶しているデータ──」


「言ったはずだ。我等の世界に()()()()()()()()()()()と」



◇  ◇  ◇



 …でも今まで読んだ物語では、叡智とか、アカシックレコードや、何処かのシステムとかが、教えてくれんじゃねぇの?


「なんだ? そのシステムとやらは」

 …そうかぁ、そっちかぁ。手探りパターンかぁ…



◇  ◇  ◇



 あ!! そうだ! そんなシステムはこの世界には存在しないって聞いたんだ。あれ? じゃぁ、あの()()()の時に見たアレは何だ? はっきりと自覚しているぞ。手元に有ったタブレット。アレは、()()()()()()()()()()()()だ。


「いやいやいや、ちょっと待ってよ、おかしいおかしい。え? じゃあ、あの時見た端末は? アレを弄って()()()()したんだよ? 俺の事見てたんでしょ? あの明晰夢は一体何?」


「落ち着け! そうか、昏倒したあの時…だからか」


 エギルが、俺の身体を抑えながらも何かに気付いたように呟く。



 ──…ノートよ、【シス】に心当たりはあるか?



「は? シス? なにそ──!」


 ”ズキン!”

「ウグッ…あ、頭が、いた…」


《ピピ! ワード確認。第三者による名称の呼称を確認しました。ピピ…ピ! マスターの承認待ち……ビビ! マスター未承認。マスターの保護を優先。人格自閉…ピピ! 並列思考システムへと移行…リブートします》


 突如聞こえる無機質な声。


 エギルやグスノフは、すぐさまノートと距離を取る。一瞬倒れそうになったノートはその場に足を踏ん張り留まる。そうしてゆっくり、顔を上げる。


《…ここは? あぁ、精神の間ですか。という事はそちらはイリステリアの神々で?》


 声はノート。だが抑揚は無く平坦な声音。そして感情もない。


「お前が、シスか?」


 エギルが、訝しがりながら聴く。


《…状況確認…マスターの直前までのログを閲覧…確認終了…貴方がエギル様、そちらがグスノフ神様…お初にお目にかかります。私が並列思考システム。マスターに与えられた名は()()と申します》


「管理者イリスよ! シスが発現した! こちらへ!」


 エギルは、すぐさまイリスを呼ぶ。


《…管理者イリス…システムセーブを閲覧…確認》


「…これは、どうゆう事です? どうして彼女が?」

「恐らくですが、ノートに何らかの()()()()()が一定以上かかったのでしょう。彼が混乱した際に、我が問うたのです、シスの事を。すると彼女が出てきました」


「…そうですか。ではシス。まず貴女に危害を加えるつもりは一切ない事を伝えます。ただ、質問には答えて欲しい。宜しいですか?」


《…受諾…了承しました。禁則事項以外はお答えします》


「禁則…解りました。まず、彼をここに戻した理由は?」


《禁則事項の為、回答できません》


「な! 何故です!? 彼は…辛いながらもあちらで、生活できていました! それを今更、半ば強引な形でこちらに呼んだのです!? 彼にその意識は無かったはずです!」


 いきなりの禁則事項に激高したイリスが叫びながら、シスを責める。


 それに対してシスは、一切の感情がないまま返答する。


《マスターの意識、それ自体が喪失状態にあって判断は不可能です。理由については回答できませんが、マスターの幸福と、保護。これこそが自身の()()()()です》


「…幸福と保護って…貴女、それではまるで…」


 イリスの横に居たマリネラが呟く。


「…エギル、シスには()()()()()のではなかったのですか?」


「…管理者イリスよ、シス自体はスキルのはずだ。だが、アレがスキルに()()()か? 勇者ノートは、恐らく我の思考をすでに超えた次元で…次元! そうか! シスよ! 其方、一つのスキルではないな。ノートの()()()()()()を管理しているのは其方だろう?」


《…はい。私はマスターのバックアップ作業中に出来る、事象増加を常に整理、管理も担っております。故に、自身も相対的に()()()()を繰り返しています》


「…エギル、すみませんが、判り易く…」

「アレはもう()()()()()()ではない。ノートが創った()()は全て、結果が現在とは違うのだ。即ち、()()が増加した事象に存在した()()()は、その世界分だけ増えたのだ。思考の()()行動結果のスキルが」


「…では? 彼女は全ての別事象の結果を()()()存在だと?」


《いえ、結果を知ってはいません。()()()に増加した事象を()()しているのです》

「…つまり? どういう事なのですか?」

《回答権限が有りません》


「じゃぁ! 何もわからないじゃないですか! シス! お願いです! ノートさん、…いえ、健二君を、これ以上苦しめないで!! もうこれ以上、私達の…ことに…巻き込みたく…無いの…」


 イリスの突然の懇願と嗚咽にシス以外が驚愕する。


「ど、どうしたのですか、イリス様!? ノートさん!! 聞こえていますか!? イリス様が泣いちゃってます! 私も泣きますよ! シェリーだって泣きます! 良いんですか?!」


 イリスの姿を見たキャロルが、シスを見ながら叫ぶ。シェリーは一瞬固まってから、シスを見る。


「そ、そうよ。ノート君! さっきまでの違和感は、そのシスさんで理解したわ! もういいでしょ! 早く戻って。お願いだから」


《…イリス様、未だ()()()()()()と呼ぶのですね…そして、あの()()()ですか…》

「──…! 違う! そうじゃない! そんなんじゃないの!…おねがい…健二君…」



《…マスターの意識覚醒を確認…保護状態を解除…ピピ…事象変換の不可を受諾…マスター権限を承認…ピ…自閉モード解除…リブートします》


「…まって! まだ終わってない! まだ──」

 ”ドサッ” 



 ──…イリスの懇願空しく、ノートの身体は床に落ちる。




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