表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第3章 深謀短慮、豈図らんや。
71/266

第9話 豈図らんや



《…気絶した?》

「はい…瘴気溜りを確認した後、個別行動中に突然昏倒した様です。その後何やらスキルを使用した模様でして、そこは確認できませんでした」


《………。》


 魔導通信機の向こうで、何人かの溜息の様な落胆の様な、声なき声が届く。


「…申し訳ございません。こちらも、彼の者のスキルを警戒しておりました故、あの様なスキルには対応できませんでした」


《それはどういった、スキルなのだ?》

「はい、結界が張られたのは確認できました。その後、竜巻の様な物がそれを取り囲み、周囲に荷重を拡散、誰も近寄れなくなった模様」


《竜巻を伴う結界? という事か?》

「…一概には…どちらかと言えば、竜巻と荷重拡散が攻防一体しているような」

《…そうか、で、災厄達はどの様に?》

「彼女たちは距離を取ってただ見ているだけでした」


《分かった。今後も気取られぬ様、監視を続けてくれ、定期連絡も忘れぬ様》

「はい、仰せのままに」


 魔導通信機に嵌め込まれた、魔石の輝きが消え通信の完了を確認する。


「…ふぅ~。お偉方との通信は、肩が凝りますねぇ…あ、すいませぇん、終わりましたぁ」

「…終わったなら、早く出てってくれ」

「はいはい。あ、お代はいつも通りにしておきましたので、ご心配なく。では」


 ギルド会館を出ると日は既に落ち、食堂や飲み屋からの喧騒が聞こえて来た。


「さて、戻ってお仕事しましょうね」



 ──…影はそのまま、通りの闇に紛れて行った。




*******************************




「…やはり、()()のスキルを使うか」

「フム…だが聞けば、全ては既存の組み合わせであろう? ならば対処も容易では?」

「…問題は威力だ。災厄の魔女が見守っていたという事は、抑えられなかったとも言える」

「……。」

「とにかく、監視は続行させる。努々短慮は起こさぬ様に。」


「「「御意…」」」


 切れた通信機の魔石を外しながら、ルクス・ハイデマンは釘を刺し、部屋を後にする。


 部屋に残ったのは、三名の男達。


「…()()()()()()は違うのか」

「おい、その事はどちらも口にするな。他言無用を忘れたのか」

「しかし、何故皆東端の辺境なんだ…しかも、変事の際に()()とは」


「…卿もそう思うか、私もそこは思う所だ。まるで悪はこちらと言わんばかりに」


「然り。この世界の神は、何を基準にその様な者を遣わせるのだ? この世界はこの世界の者で、取りしきれば良いのに。まるで我らが、なにも出来ぬ赤子のような()()…度し難い」


「マキャベルリ公には悪いが、あれもアレだ。結局かき回して逃げ戻っただけ。シンデリスで、獣でも集めておけばよい物を。余計な物を見つけよって」


「まぁまぁ。身内で揉める必要はあるまい。宰相殿はお考えがあるのでしょう。故に、間諜(くさ)をわざわざ動かしてまで、ヒストレスの【石】まで、使わせたのです。…時間は稼げたでしょう。次の事も動いています。そちらに期待しましょう」 


 そう言って三人の男達も部屋を出て行く。扉が閉まる瞬間、影が揺らいだが、気付く者は居なかった。



「…好き勝手、言ってくれる。所詮は烏合、囀るだけの能無しが」


 影は、小馬鹿にしたように言い、闇に飲まれていった。




*******************************




《………!》

「…どうしたのですぅ? ハカセちゃん」

「ん? なんだ、何かあったのか?」


 エクスの冒険者ギルドのマスターの部屋で、サラはセーリスと精霊術の修業中だった。


《あ、いや。何でもない》

 ハカセはノートに頼まれ、サラの傍に付くことになった。セレスとは、距離に関係なく話せるし、ノートとも通じている。何か起こった際には、すぐ連絡が付くのだ。それは契約によって出来た絆のおかげ。魂で二人は繋がっている。


 ──…ハカセは違和感を感じていた。


 契約者であるノートの魂。それに何か揺らぎ? の様なモノが起きている。微弱では有るが、定期的にそれが起きる。昨日まではそんな事なかったのに。気にはなる、だが向こうにはセレス様が居る。何かあれば、連絡があると思い、気にしない様に意識を切り替える。


《大丈夫だ。ほら、制御に集中しないと》


「ふぇ?」

 ”ポン!!”

「わきゃぁぁあ!」


 制御が不安定になった術が暴発し、サラはその場にコロンと転がる。


「痛いですぅ」




*******************************




「おや、こんばんわ。どうされました?」


 教会の入り口で、エリーと出会う。


 時間はもう食事時、街灯の無いこの村で、周りは店の灯り以外は真っ暗だ。当然、教会に灯りはない。そんな闇の中、俺達四人は教会の入り口に来た。


「夜分にすみません。どうしても今お祈りをしたくて。入っても構わないでしょうか?」



 一瞬きょとんとした表情を見せたが、エリーは快く中へ入れてくれる。


「…光を」

 魔術を行使し、部屋を照らして歩を進める。


「有難うございます。ろうそくを持ち合わせていませんでしたから、助かります」

「…いえ、こちらが押しかけていますから、気にしないで下さい」


 そんな話をしながら、礼拝堂へ到着する。


「…では、私は部屋へ戻ります。出る際はまたお声がけください」


 そう言って会釈を一つしてから、()()()()()()で廊下を戻っていった。


「…灯りが急に無くなっても問題ないんですね」

 キャロルが、ポツリと呟いた。


『ノートよ、我等はどうして居ればよいのだ?』

「…その椅子にでも座ってて。すぐ済むから」


 俺は一人、祭壇に近づき、跪いて手を合わせる。そうして、目を瞑った瞬間だった。


「あ!」

「え?!」

「なんだ」


 ──…後ろで三人の驚く声が聞こえた…。



◇  ◇  ◇



「…困りました」


 ふと気づき、目を開けると眼前には六柱の神が整列してこちらを見ている。だが視線は何故か俺の後方…さっきの声といい、まさかと思って振り返ると。


 ──…()()がそこに立っていた──。


「あ、あ、あぁ、あの、こ、こ、ここははは…」

「ま、まさか、わたしたちまで」

「ふぉぉぉぉおお! ()()()()がおられるじゃないか!」

「…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ! マリネラ姉様ぁぁぁああああ!!」


 キャロとシェリーは慄いて、セリスはすっげぇ喜んでいる。


 ……が、あの()()()()()()()はなんだ? マリネラに突撃してしがみ付いてるが。


「あ、あぁ済まない。慌てて呼んでしまった。いまもど──」


「いいえ、構いません。彼女達にはこの際きちんと話しておきましょう」


 エギルが召喚失敗を謝り、戻そうとしたのをイリス様が制した。


「姉様姉様! ()()()は頑張ってますよ! 一杯一杯頑張ってます!」

「はいはい。分かっていますよ。いい子いい子です」なでなで…


「「「セレス様!!!?」」」


 ──三人同時に声が出た。


「…ぶぅ、なによ。私の()()()()姿()はこれよ。精霊に()()なんかある訳()()じゃない」


 言われて納得するが、いつもの言動と余りに離れたその行為。


「…い、いや姿ではなく、なに甘えん坊さんになってんだ?」

「ムカ! 誰のせいでこうなったと思ってんのよ! このエロバカ!エロガキ! エロ魔王!」


 ”プチン!”

「何だと、このちびっ子精霊!! エロエロ言いやがって! 俺はエロだが、()()()()だ! 悪いが、つるペタ幼女にゃ、興味がない! だから、そこは安心しろ!精神だけだと、()()()()()()みたいだな! あははははははは!」


「な! な! ヌグググギギ…ムキャァァアア────!」


 切れたセレスがこちらに向かって飛びかかってくるが、途中でエリオスが立ちはだかる。


「ぬははは! 元気な事は良い事だ! だが今は暫し待て。管理者の話を聴け」


 そこで、ここが何処だか思い出す。


「あ、そうだった。ここには、話を聞きに来たんだ…キャロ、シェリー大丈夫?」

 気付くと二人はずっと伏せたまま。震えて固まり動かない。


「「お、お、恐れおおおおおくくてててて、見れままましぇん!」」


 おうふ…そりゃそうか。って、セリスは?


「なぁなぁ、いいじゃろ? ()()()()だけ。()()()()だけじゃから。大丈夫だって、な、な。すぐじゃ。すぐ()()()から」


「お前は何を言ってるんだぁぁぁぁああ!? 相手はグスノフ爺さんだろうがぁぁああ!」


「わ、儂、そんなの()()()じゃから…ポッ」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁあああ! そこで赤くなんじゃねぇぇええ!」


「…困りました…ふぅ~」


 イリス様ぁぁぁあああ?!






最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、


ブックマークなどしていただければ喜びます!


評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!


ランキングタグを設定しています。

良かったらポチって下さい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ