第7話 やって(と?)来ました異世界
綿と麻で出来た下着類に、ゴワついた麻生地の服。革で出来た装具類を取り付けた上着に、革と金属で作られた編み上げブーツを履く。そして、この外套、獣臭が少しする。
──そして最後に大きな蓋つき鞄を肩から下げる。
キタキタキタ!テンション上がってキマシタワー!
◇ ◇ ◇
「フム。で?何処に降ろすんじゃ?」
今、目の前には大きな地図?みたいなホログラムが展開中。何故か横には比較用?としての地球が…。
──異世界イリステリアも惑星である。星系としては所謂、太陽系惑星群とでも言おうか。太陽を中心とし、その周りを惑星が周回している。
──ただ、大きさはおかしい…。
イリステリアの大きさは、地球基準では木星程の大きさが有るらしい。確か、地球の直径が13,000Kmぐらい?だったと思う。そして、イリステリアが、142,231Km?え~と…地球がいちまん…って約11倍じゃんか?!
で、土地面積が…2521,242,000平方Km!?ち、地球は?すかさず、隣の地球儀の数値を見る。──147,244,000平方…キロって…桁が違う。
こんなデカイ土地で、剣と魔法のファンタジーって、成り立つの?移動だけでどんだけ~って日数掛かるんだよ。…あ!違うわ。記憶に有ったよ。都市間移動は転移陣、魔導船に魔導車。ファイ○ルファンタ○ー系だった。
俺的にはどっちかってぇと、スカイ○ム系が好きです──。
一人ブツブツ妄想を拗らせていると、イリス様が呼んできた
「ノートさん。決まりましたよ」
呼ばれて皆の所へ行くと、イリス様がホログラムの一部を指す。そこは、中央大陸の南東を示していた。
──エルデン・フリージア王国──。
惑星イリステリアに有る大陸で一番大きいとされる、中央大陸。その南東側に所在し、気候が温暖な王政貴族国家だ。
この中央大陸には、中央にハマナス商業連邦国と言う、各国からの出先機関で構成された大きな商業国が存在し、各国の緩衝地帯になっている西にはゼクス・ハイドン帝国が有り、南はシンデリス連邦共和国がある。
ゼクス・ハイドン帝国とエルデン・フリージアはヒュームの国。シンデリスはビーシアンの少国家群。そして、エルデンの北側にはガデス・ドワーフ国(ドワーフの国)があり、更にその北側にユーグドラシルの森(エルフの国)が存在している。
ハマナス商業連邦国の北方には還らずの森と北方絶壁連山と言う険しく切り立った山が連なり、その更に北には、異界の魔国が存在するらしい。
帝国の北側にも小さな山脈が有りその先にはヒストレス教皇国と言うヒューム至上主義の宗教国家が存在する。勿論、この世界の神は誰一人として関与していないのだが…。
中央大陸以外にも未開の大陸が幾つか存在はしているのだが、空には当然ドラゴン種が居るし、海にはサーペントやら、クラーケンがいらっしゃる。
いくら、魔導飛行船でも其処はまだまだ未開らしい。
「はい!宜しくオネシャス!」
──ですよね。まずは、王国!差別の一番少ない国と言えば!の定番!
一択ですな。
「辺境の小さな街近くに降ろします。そこでまず生活に馴染んでください。当面の金銭も鞄の財布に入っています。其処からはもう貴方の人生です。出来る手助けはしましょう。ですが、勿論それには限界もあります。賞罰などが付けば、かなり生活が制限されます。それを忘れないでください。さぁ、扉は開かれました…貴方の行先に幸多からんことを」
イリス様の言葉に呼応するように、俺の目の前には両開きの扉が現れ、すぅと、音もなく開いて行く。…先は見えなくて、ちょっと眩しい。この扉を潜ればもうそこは異世界なんだ!
期待が七割、不安が三割…。ここで足踏みしてても始まらない。よし!と一つ気合いを入れて、振り返って皆に伝える。
「皆さん!ノート行きま~す!」
──さぁ!俺の冒険はこれからだ。
◇ ◇ ◇
扉が閉まり、サラサラと崩れるように消えていく
「あ奴は…。なんともお気楽に行きおったのう」
「これで良いのです。今度こそは、好きに。楽しく生きてほしいです」
「イリス様」
呟いたイリスを労るようにマリネラがそっと近づく。
「フム。これからが愉しみだ」
少しはにかむエギル。
「ノートよ。いつか相まみえるその日まで、儂も鍛えなおさんといかな」
消えた扉を見詰めるエリオス。
「──なぁ。儂、まだ何も解ってないぞ」
皆の含みを理解できないノードは一人ブスくれる。
──チチ…チ。ん、鳥の声か?
扉を抜けた先は、下草の生い茂った広場のような場所だった。前を見ると、向こう側が透けて見える小さな林。
う~~~ん!空気が美味い。…てか、緑臭っ!エホエホ!ちょっと咽る。此処が異世界イリステリアかぁ。…緑満載だね!
そんな感じで、一通り初感動しておく。それで?イベントは!?いきなりフラグは?
はぁ~。起きませんか。そうですか。と、油断させての!バッと振り返るが勿論、何もない。
「フッ、しゃあない。判ってるし。…地図見えてるし。行こ」
メニューにより眼前の右上には自身を中心としたミニマップが展開されている。エネミーは赤。フレンドリーは緑。中立は青。注意は黃。となる初心者安心設定だ!当然、街の方角も距離も既出済。超ヌルゲーハジマタ!って感じである。
ガサガサと下草を踏み分け、林をスイスイ抜けていく。抜けた先には前を横切る街道があった。
「ふぅ。この辺の道は、舗装?は無いか。でも随分固いな」
何かで押し固められたようなその道は幅も結構有り、広く均されていた。馬車ならすれ違えるな等と、自身の記憶にある荷馬車を思い出しながら、街道を西に向く。
「……で。俺の始まりの街はこっちだな。いざ!」
エルデン・フリージア王国、その東端にある辺境領の更に最東端の街【エクス】人口は1万弱。辺境にしては結構大きい。ここより東は開拓村や、小さな集落しか存在しない。その為、この街には周りの人や物が集まる。先ず向かうのはこのエクスの街だ。ちなみに王都は、最西に有り商業国に隣接している。どうやらこの世界の国は総ての王都が中央に寄っているみたいだ。
歩くこと小1時間、その外壁が見えてきた。
「おをっ!外壁だぁ。てか、やっと着いたぁ」
この身体、頑丈である。故にこの程度、全く休まず歩き通しでも、疲れを感じる事は無かった。なかったのだが、精神的には疲れた。結局中身は俺のままだからね。
見渡す限り、真っ直ぐの街道。周りは木々が散在しているだけ。…人っ子一人、獣一匹出会わなかったのだ。そんな、まるでピースモードのマイ○ラ状態、何が楽しい?等と一人しょうもない事を考えながら進んでいくと門が見えてくる。その脇には鎧姿の衛兵も。
「ひ、人がいる!…お~~い!」
その瞬間、俺は門に向かって走り出していた。全速力で──。
「はい。こちらの魔導器にカードを。…はいOK。次の方」
此処は辺境領最東端の街【エクス】
俺はカークマン。この街の衛兵の隊長をやっている。今日は偶々だった。隊員のハミルから立ち番のネストが腹を下したんで、午前中だけ、相番を頼まれた。この街は辺境だが大きい。故に点在する村や集落も多い。周辺の魔獣狩りに、街道整備は定期的に行い、万が一にも街に害成す物等、ここ十年は見る事も居なかった。
「た、隊長!!」
「はぁい。ここです。ん?どうしたハミル?」
慌てて走り寄ってきた、ハミルに応えながらそちらを見やると、かなり遠くの方から土煙が見える。
「ん?なんだ…土煙?!なんだ!何が向かってくる?」
「判りません!ただすごいスピードで何かが来ます!」
「いかん!ハミル!直ぐに応援を呼べ!俺は先に出る!」
俺は壁に掛けた槍を引っ掴んで、身体強化を発動、すぐさま此方に向かうモノに走り出した。
◇ ◇ ◇
「お?向こうから誰か来る?おお~い!」
鎧姿の一人がダッシュでこっちに向かってくるので手を振ってみた
「──!──…!!」
「ん?何言ってんだ?」
「人か?止まれ!おい!とまれぇ!!」
言われてなんでだろ?と思いながらもその場に止まる。
な、何だコイツは?ヒュームか?え、あんなスピードで?と、とにかく足止めを。
「お、お前は何だ?ヒュームか?」
「へ?そうですけど。」
「何用であんなスピードで此処へ来た?」
「は?スピー…ド──。」
言われて振り返ると、未だ舞う土煙と、幾つものアナボコ。はぁ。いきなりやってしまった…どうしよ──。
「あ、あはは。いやぁ、ここに来てからずっと人ってか生き物?に会わなかったもので。人を見かけてつい、嬉しくなっちゃって」
はぁ?何だそりゃ。とにかく鑑定(人)っと。目に魔力を集め、スキルを発動。
──名はノート。…ヒュームで…20歳で、賞罰は…ないな。
何だこの人?いきなり無言になっちゃったよ言い訳、苦しかったかなぁ。を?目が光っとる。
──もしかして鑑定されてる?!
人に対して鑑定を行うと、魔力干渉によって、判る。まぁ、不審者だしな。黙って受けとこ。カードの内容しか見えないんだし。
ふぅ。問題はないようだが、あの身体能力は何だ?スキルにしても速すぎるような気がする。それにコイツ、全く疲れていないようだし。
「すまんが、鑑定をさせてもらった。ノートで間違いないか?」
「はい。あ!はいこれ、カードです」
そう言って、手からカードを出し、手渡した──。
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