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オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第3章 深謀短慮、豈図らんや。
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第7話 情報開示



「大丈夫ですか! ()()()!」

「あぁ、ごめんごめん。ちょっと掠っただけだから、()()()



 ──街道の移動中に突然、野盗の集団に襲われた。



 商隊の護衛の代わりに、馬車に乗せて貰ってすぐだった。

 

 流石に、連戦続きで集中が欠けていたのも有ったのだろう。前方の集団に気をとられて、後方の木立に紛れた弓兵を見逃してしまっていた。


「オフィリア! 後ろの弓を頼む!」

「はぁい! ロックショット!」


 後方は、メンバーに任せておけば大丈夫だろう。俺はすぐさま馬車から飛び降りて、前方に居る野盗を鑑定する。


「えぇと…ありゃ、こいつ等帝国の仕込みじゃんか、教皇国が作らせたのか」


 鑑定結果は、全て帝国軍の兵士だった。敗残兵にしては身綺麗すぎる。


「アンタらその恰好じゃ野盗には見えないぞ。狙いは俺達か? 帝国の軍人さん」


「…な!? 何を言うか! 我等は物取り! 荷物を置いて、其処に跪け!」


「…はぁ~。物取りなら、人は見逃すのが普通でしょ? 何で殺すの?」


「ウッ…ヌググ、ぅ、うるさい! 顔を見られているんだ! だからひゃ──」


 ”ザスッ!!”

 そう言いかけて、頭目らしき男の首が飛ぶ。


「あ、セスタぁ…口上まだ終わってないぞ、って生き残りは?」

「む…そこに一人いるぞ」


 言われて彼が示した方を見る。


「…は~、()()()。ダイジョブか? まだ死なないでくれよ」


 唯一生き残った男は四肢を切り落とされ、目は既にうつろだった。



◇  ◇  ◇



 ──…勇者としてこの世界、イリステリアに降りて既に5年が経っていた。


 ──異世界転移。


 物語で聞いていたライトノベルの定番世界。なろうで散々読んでいた。まさか、実際起こるなんてこれっぽっちも考えなかった。別に社会が嫌いだった訳じゃない、彼女だってちゃんと居た。


 全てが順風満帆とは言わないが、青春と呼べるくらいはエンジョイしてたのに…。

 

 ある時、彼女が言ったんだ。今度、山に花を見に行こうって。


 その為の唯の下調べだった。わざわざ電車で二時間かけて、慣れない山を登ったのに、其処にあった穴を覗いただけだった。そうしたら穴の中が光った。ビックリして滑り落ちた。気づくと目の前に恐ろしい程の美人が居て、俺に言って来た。


「どうか、この世界を救ってください!」

「いや、意味わからんし!」


 彼女の話は、結構長かったので要約するとこうだった。


 この世界、イリステリアは大神(おおかみ)が創った。彼女は只の()()()だと言う。


 そして、『世界の素は創ったので、この本参考にしてなんか()()()()にしてね』と言われたらしい。大神、超胡散臭い。因みにその本、思いっきり()()()だったし。


 それでも彼女は頑張った。超頑張った。マジ偉い! 足りない部分を補うために他の神やら、精霊なんかも創造して。何とか形になった頃、大神がまたやって来た。


『ごめんだけどさ、チョッとこの神此処に居させてあげて』 

 そう言われて、受け入れるしかなかった。



 そうしたらその神が、勝手に地上に降臨しちゃった。もう訳分らん。



 ソイツは地上で()()()()()()()()をほざき出し、ヒューム以外を迫害しだした。どうやら人間種はヒューム以外もいるらしい。獣人とかエルフとか…マジか!


 そのせいで色んな迫害や、差別、非道が行われて瘴気? がわんさか溜まり出したらしい。それに侵されると、獣は魔獣化して凶暴になり、果てはモンスターなんかも生まれてしまった。そのせいで、世界が混沌(カオス)化していった。


 しかし、管理神である彼女たちはその地上には降りられない。ただ独りの管理者、生命を司るグスノフが頑張っていたが、彼も地上には直接降りられないので疲弊していった。


 そうしてとうとう心が折れた。現在彼は引き篭もって居るらしい。


 これでは、世界が崩壊する。考えた末に出した答えが()()()()()()()()()()()()。地球と言う世界の健全な高校生を呼ぶことだった。


「…大神の与え給うたこの書物。これに縋るしかもう私にはなかったのです。…どうかお願いです! ()()()も勿論お渡しします。この世界、イリステリアをお救い下さい。【ソウマ・ケンジ】さん!」


 そうして俺は彼女イリスに(ほだ)され、当時考え得るチートを貰ってこの世界に顕現した。降りた世界は、エルス・テルアと言う小国。この国は種族差別もなく、辺境に有った為に被害自体が少なかった。だが、おかげでかなり苦労した。知らなかったよ、この世界の大きさが地球の十倍以上のデカさだなんて!


 おかげで魔術の修業に、二年もかかった。


 そうして、苦労に苦労を重ねて仲間を集める旅の途中で、今に至る。


「…おい、まだ生きてるか? 話せばもっと治療してやるぞ。だから話せ」


「………」

「…死んでるな」

「じゃねぇよ! セスタ! 何時も言ってるだろ! 全部はダメだって!」

「…悪、即ざ──」

「言わせないから! ぜってぇ言わせねぇよそれ!…もう、ヤダなにこの殺人狂」

「ふん、…またつまらぬものを──」

「あーあーあーあー!! もう聞こえなーい! なーんにも聞こえなーい! ぁぁぁぁわあああ!」


「どうしたんですぅ? 兄さまぁ、お耳聞こえないですかぁ?」

「オフィリア! 聞いてくれよ~セスタのバカがさぁ──」

「む! 我は、バカではないぞ!」


「何がどうしてこうなったぁぁぁぁぁああああ!? 勇者の仲間はバカだった!」


「ゆ、勇者様…だ、大丈夫でしょうか…」


 商人たちは、遠巻きに俺の醜態を眺めるだけだった。


「…おい()()()よ、異世界の話しまた教えて欲しいのだが」

「…ヤダよ、大体お前の聞きたいことは【刀】の事か、【忍者】の話しばっかじゃないか、……お前、ビーシアンの剣闘士だったよね? なんで、()()()()()()になってんだよ。おかげで、前衛また探してんだぞ。くそぅ、()()()()()()()()()()すぎる!!」


「ノート兄さまぁ、オフィリアは()()()()が、食べたいですぅ」

「…いや、今夜は無理だよ。()()()()じゃないんだから」

「…むぅ、あ、姉様…」

「は?!」

《ノート君、おひさ~》

「何いきなり来てんの、マリネラ!?」

《えへへ。ちょおっと、お願いがあってぇ、来ちゃった》

「…は~。いつになったら、中央に行けるんだよ」

《大丈夫だよ、簡単なお願いだから──》


 そんな感じで、仲間探しと神のお使いクエストは続く…。


 こちらの世界で、俺の名は『ノート(何もない)』だ。


 …染まるつもりは無かったから。…帰れることだけ考えて。


 ──この世界では何も()()、何も()()()()()()()()()()()()




*****************************




 「勇者様…我が国をお救い頂き、誠に感謝致しております。つきましては、ぜひともこの地に留まり英気を養って頂きます様──」


「誠に有りがたきお言葉、感謝します。ですが私どもはまだ、道半ば。

先ずは神の使命を果たしたいのです。全ては邪神を討って後。全ての人を救ってからと思います」


「ぉぉぉぉぉぉぉおおお!」

「流石は異界の勇者様!」

「世界の救世主!」


 城内をどよめきと、称賛の声が響き渡る…とんだ茶番だ。


 わざわざ、国王の言葉を遮ってまで…救世の旅なんて、本気でそんなの思ってる訳ないじゃんか。


 世界を旅してもう8年目…気づけば、26歳になっていた。


 何とか、半分以上は取り戻せた。チートも鬼の様に成長した。


 仲間も、大方揃ったはずだ。

 

 後は国家は国家で。俺達は中央へ。邪神と教祖をぶっ倒すだけなのに。


 ──足枷になるのは、結局人の欲なのか……クソったれ…。




*******************************




「勇者様って【ソウマ・ケンジ】って言うんだ。ってか救世の旅って、そんなに時間掛かってたのか…スゲェな、尊敬するよ」



 ──…何故だかこれが()()()()()()()観ていた。



 ──そう、観ていた。


 明晰夢…とは少し違う。気づくとソファとスクリーンが用意されていた。座って手元のタブレットを操作する、()()()()()()()()()による情報開示。


 何が起きたか理解できない。ただ、これを見ないといけないと思った。


 異界の勇者は、地球人。呼ばれた当時は高校生のリア充君。嫌々ながらも、救世主になったんだ。まぁ、当然っちゃ当然だよな。俺みたいに死んだわけでも、人生詰まんなかった訳でもないんだから。


 ふと思う。始まりは分かったけど、何故今ここまでなんだ? アカシックレコードは、何を見せたいんだ? 俺はさっきまで何をしていた? 考えていた? 欲? 業? いや…イリス…様達…


 ”ズキンッ!!” 

 ぬがっ! 頭が!


《ザザ!…異常検知! シナプス許容量が、限界値を超えています!…マス──》


 なんだ?! 今の声?!


 ”ズキン!”


 ──…ザ…ザザッ…危険領域のレベルピークです、これいじょ──ザザザ! シャットダ…リブート…ザザザザ!ピ──!









最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!


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