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オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第3章 深謀短慮、豈図らんや。
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第4話 会敵キャロル



 朝の鳥の声が聞こえ、何気なく目を開けて宿の鎧戸を開ける。 


「あぁ、朝日が黄色い…腰が()()()()だ…」


 昨夜も、ハッスルし過ぎてしまった…振り返ると美女二人が、あられもない姿で熟睡している。…うん、頑張ったよ俺。


「ン…ウン…おはよ、ノート君」 

 シェリーが、気怠く挨拶してくる。


「ンぅぅぅうん…あ、ノートさん! おはようございます!」

 うん。キャロは朝から、元気いっぱいだ。


「二人共おはよう。さぁ支度して朝ご飯にしよう」


 食堂に入ると、セリスが既に食事を始めていた。


「おう! こっちじゃ! 女将さん! 三人も来たんで用意を頼む! 儂はお替りを!」


「は~い! 直ぐにお持ちします」

 

 全員揃って食事をしながら、討伐をどう進めるか話し合う。


「片っ端から、デストロイじゃな」

「いやいやいや、それはダメだ。まずは森に入ってから、瘴気石の痕跡探しと、周りの探査をする。サーチは俺が出来るから、周辺の精査を二人に頼みたい」


「「はい。了解です」」

「むぅ…儂はぁ?」

「うん、向こうに着いてからでいいんだけど、少しの間、セレスに代わってもらいたいんだ」

「はぁ?! 何でじゃ!?」

「ちょっとね、どうしても確認しておきたいんだ」

「何を?」

「今は言えないよ。それにちゃんとセリスには暴れて貰うつもりだし。だからお願い、時間はかからないから頼むよ」


「…ホントか?」

「ああ、勿論」

 そうして了解を貰って、皆で北の小屋へ向かった。


「おはようございます」


 小屋には、昨日会ったヘイゲルと若い兵士が不寝番をしていた様で、眠そうな顔をこちらに向け、手を挙げる。若い兵がキャロルとシェリーに見惚れていたが、ヘイゲルに言われて、入出帳を持ってこさせ、サインをする。


「じゃぁ、行ってきます」

 そう言って、森側への扉を皆で出て行く。


「…隊長、綺麗な人達ですねぇ、あのハーレム野郎、羨ましいぜ」


「…馬鹿か。あの三人全員ミスリルランクだぞ。()()()()()()()()()()()()()()。極めつけが、()()()()()()だ。お前そんなのと居たいか?」


「……()()()()! マジ無理ゴメンナサイ…死にます、見逃してください」

 千切れんばかりに首を左右に振り、情けない声を出す若い兵士。


「…それを普通に連れてる、()()()()()()()ってなんの冗談だよ」


 ヘイゲルは、彼らが出て行った扉をじっと見つめていた。



 ガサガサと音を出しながら下草を踏みしめ、索敵サーチでマップを見ながら進む。今はまだ森の浅層。モンスターの気配はなく、獣や偶に魔獣が散見されるだけ。


「フム…特にめぼしい異常は見当たらんのう。ノートはどうじゃ?」


「…こっちも異常なし…獣が引っ掛かる程度だな…キャロ達はどう?」


「…そうですねぇ。特に異臭もないですし…通常の森の雰囲気ですね」

「…えぇ。魔獣自体もウルフが散見される程度ね」


「う~ん。サーチ範囲を拡大、半径二百を五百に変更…を! 中層入口辺りまで行ったな。モンスターの影…三いや、五確認。オークだね。」


「ふん。()()()()()じゃな。で、瘴気溜りのあった場所は?」


「おそらく、その先だね…あ、二体追加。コレは…待ち伏せ?」


 ミニマップに展開された状況を確認すると、敵影は全部で七体。中層に入って直ぐに三体が居る。その左右に分かれて動かないのが二体。そして三体の奥、中層の奥側に二体。


 まるで三体を囮の様に布陣している。確実に上位個体が居る。こちらの所在もバレてる。


 ドントの会敵した変異種か? それともそれ以上の? 考えを纏めていると、シェリーから、声が掛かる。


「ノート君! 中層のオークってあれじゃない?」


 見ると三体は大げさに動きながら、こちらに向かって威嚇していた。


 ”ゴォォァァァアアア!” ”ブゴォォォォオオ!”


 鳴き声の様な、咆哮のそれが木々に反射し、ビリビリとこちらまで響く。大柄な体躯。身の丈は二メートルを優に超え、でっぷりとした腹は脂肪と言うよりは筋肉の塊。四肢は張り、立ち木をへし折ったこん棒の様な物を振りかざして、俺達を()()()()()


「はは! 煽ってるつもりかな?」


「どうするんじゃ? ここからなら余裕でビーム砲が撃てるぞ?」


「待って下さいセリスさん。今潰せば逃げるだけでしょう」

「…そうね、指令役を見つけないと…」


 そこで、マップに反応を見つけた。


「居た! 北北東に三百五十。結構デカい奴だな…遠見(ズーム)…あれ…は」


 すぐにスキルで確認する。すると其処に居たのは三体よりも遥かに大きい、体長は四メートル近く、肌の色も通常オークよりもくすんだ、暗い色のオークがこちらを見据えていた。


「でけぇ。そこの奴らの倍近い図体だ。あれが変異種か?」

「え? 倍の大きさなんですか?」

「…待って! それは変異種じゃないわ。体色は?」

「え? あぁ、くすんだ茶、焦げ茶色? みたいだな」


「「「キングオーク!」」」

「え?! じゃぁ変異種はどこ──」


 ”ブゥゥゥゴォォォォォォォオオオオ!!”


 先程のものとは比べ物にならない程の咆哮に慌てて耳を塞ぐ。そうして、声の方を見る。


 体長は三メートル程だが、四肢の張りや肉体の形がオークでは無かった。体色は、赤みを帯びている。


「あれが変異種か!? 豚顔のオーガじゃね?」


「いえ、間違いなくあれが変異種です。でもなぜ同時に?」

「じゃなぁ。キングがおるのにそれに従わんのか?」


「…おそらく、それだけの力を持っているんでしょう。…もしかして、群れとはぐれ?」


「え? 瘴気溜りは一つって聞いたよ。なら、群れとしては一つなんじゃないの?」


 俺がそう聞くと一瞬セリスが黙って、セレス様に代わる。


『…もしや、石と別に瘴気溜りを利用したのかもしれん』

「は? ってか、え? 急にセレス様、なんで?」


『瘴気溜りは元々有ったのだろう。そこに瘴気石も使った。まず通常オークが産まれ、数を増やし昇華してキングが。そこに反応して、瘴気石のオークが変異種になった。それが現状最も考えられる最適解だな。その証にキングたちは、あの場所を動かぬ。あそこに、瘴気溜りが有るはずだ。逆に、変異種は動き回っている』


「へぇ。あ、じゃあどう動く? 一番強いのは俺が相手するよ」

『フム。ならばお前は変異種に当たれ。我はキングだ、二人は残りのオークを!』

「「了解です!」」


 ”ザザッ!”

 二人は一瞬で、オークに向かっていった。


「ゴーレム展開!」

 セレスが走りながら叫ぶ。


「俺も行きますか…あ、セリス…拗ねるかもなぁ…」


「シェリー! 私は囮を潰すわ! 先に潜伏をお願い!」

「…了解、右から潰していくわね!」


 言いながらシェリーは、右の木へ飛び上がっていく。


 ”トン、タッ! トン!”

 小気味よく枝に自らの体重を乗せて跳ねる様に飛び移っていく。


「さぁ! アンタたちは私が相手しますね!…はぁッ!!」


 キャロルは掛け声の下、三体のオークへ突進していき直前でその身を前転宙返り! 中天で捻りを加えて、真ん中のオークの首を掴んで、捩じり切る。


 圧倒的な握力と、瞬発力。


 ”フギャァ?” ”ブギョオ?”

 左右のオークは、ただ見ているしかできない。


 憐れ、首を失ったオークはその場に膝から頽れる。


 ブシャアと大げさに噴き出すオークの血、堪らず二体は後退りながらキャロルを探すが、動きが緩慢だ。


「フッ!…ハッ!」

 彼女は着地と同時に首を投げ捨て、もう一体の背後へ回り込む。


 対面のオークが気づき、振り上げたこん棒を叩きつけるが、キャロルは廻り込んだオークの足を、ナイフで一閃! 筋を断ち切る。


 ”フゴォオ!”

 叫んで切られたオークは倒れかける。そこには丁度、もう一体の振りかぶったこん棒が落ちて来る。


 ”グジャァァア!”

 顔面を潰され、頭蓋から脳みそを撒き散らしながらその場に倒れる二体目のオーク。


 ”フ? ブギャアア??!”

 思わずパニックに陥る三体目。こん棒を手放し、きょろきょろと周りを見て指示を貰おうとするが、キングは見当たらず、不意打ちにと隠れていたはずの仲間の援護もない。

 

 ふと、自分の影に何かが重なる。見上げたそこには、綺麗な笑顔の敵の切っ先。


 ”ブギュッ”

 眉間から脳を貫通、後頭部へとナイフは突き抜け、オークの意識はぷっつり消えた。



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