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オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第1章 落っこちて異世界
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第6話 スキル付与


「おい、今のはなんだ!どういうことだ!?」


 情報システムインストールの為、パッケージ化したものを視覚化してスクリーン上に投影しながら作業していると、突然別の何かが映った。ノードにとっては初めて見る情景だった為、訳が分からず慌てふためく。


 残った五柱は皆、苦々しい表情で、スクリーンと()を交互に見ていた。


「…()()()の正体はこれだったのか」


「やはり…こ奴は」


「そうだったんだ……ごめんね」


「──そうじゃったのか」


「はぁ~。()()()()()()。それで、この世界との()なんですね。この事は()()()()に決定します。この者に開示の一切を禁じます」


「せ、説明を…」


 訳の解らないノードだけが慌ててイリスに尋ねる。


「この者を送ってからです。良いですね」


 イリスは物憂(ものう)げに太田を見つめながら、哀しそうに呟いた。



「それにしても、気絶しましたか。トラウマか、自己防衛…もしや、()()()が!封印の鍵はそこのあたりか──」


 情報のインストール作業を中断し、魂魄(こんぱく)の状態をモニターしながら、エギルがシステムパッケージを整理している中、イリスがぼそぼそ、物騒な事を話している。それを見かねたグスノフが、彼女に近づき声を掛ける。


「イリス様、こ奴にはまだ、(つら)いんではなかろうかのう」


「──グスノフ。ですが、この()()の時は不可逆(ふかぎゃく)()()()()()。もし強制的に介入して戻せば、それに精神が耐えられません。」


 イリスはそう言って、ロジカル(ろんりてき)に考えた返答をする。


「いや、そういう事では無い。そうではないんじゃよ。これはこ奴の()()()()()()と言うことじゃよ」


「──気持ち?」


「あぁ。こ奴は少し現実逃避(もうそう)の癖があるじゃろ?恐らくじゃが、それがこ奴の精神の安定装置になっておるのかもしれん。封印したのかされたのか、それはまだ分からんが、今思い出させたところで良い方向に転ぶとは到底思えん」


「管理者イリスよ。ここはグスノフ老の言う通り、この者の資質に任せて見るのも一つの手では?」


 エギルもグスノフに同意するような意見をして来る。


「そうだの。この者の肉体(からだ)はそう簡単には()()()つかんのだ。スキルを可逆的(かぎゃくてき)に与えていけば、コイツは使いこなすだろう。さすれば、自ずと自身で克服するやもしれん」


 エリオスがダメ押しの様にイリスに告げる。


 そんな中マリネラは唯、横たわる彼を見つめ静かに涙を流すだけだった。


「─そう、ですね。理解(わか)りました。ではベーススキルを元に固有スキルへ統合。【メニュー】【創造】【空間(次元)】を与えます。…この者へ我の加護と共に」


 そう言うと彼女の胸のあたりが光りだし、3つの光球がふわりと浮かびでてくる。光球はそのまま太田の胸に吸い込まれていった。その状況をノードはぽかんと口を開けて見守っている。


「──こ、固有を3つも?!それに加護まで!」


 彼がその発言に驚愕するのも無理からぬ事だった。この世界では優れた才能や特殊な能力を()()()と呼称するが、それはあくまでベース(きそとくしゅ)スキル(のうりょく)ユニーク(こべつとくしゅ)スキル(のうりょく)までが生後に獲得可能な能力だ。故に産まれた時から持つ()()()()()はその名の通り、個別に与えられる本当の意味での神からの贈り物(ギフト)とされ、強力な物が多い。


 それに加えて加護…それは神がその者に対して行う祝福の様な物であり、加護を与えた神の司る能力に補正が掛かるのだ。


「皆、この者へ加護を」


 イリスがそう言うと、当然の様に四柱が手を翳す。


「ノード?」


「へ?わ、儂も加護を与えるのか?」


 余りの事に動く事が出来ないでいる彼に、イリスが声を掛けると、躊躇するような返事をするノード。


「私は()と言いましたよ」


 その物言いに思わずぞくりと背に冷たいものを感じる。彼女の目はそれほどに冷たく、しかし反論する余地を与えぬ程に強い意志を感じられ、言われたノードは、渋々混ざる。



 ──この者に我の加護を──。



 んん……んぁ。ここは?あぁ…ダルいぃ。なにか、何かあって、気絶したような……。ん~。いや、ただ、()()()()()()、俺──…。


 二日酔いから目覚めたような超絶だるさを纏いながら、何とか身を起こして、寝ぼけたような感覚のまま周りの状況を確認する…と目が合う神様連合。


「うひゃぁ!何?何?…あ!そうだった。おはようございます」


 目の前に並んだ神達を見て思い出す。やっべぇ、俺転生したんだった。完全に忘れてたよ。


「おはようございます。大分、身体も馴染んだようですね」


 ──はへ?


 そう言われて手元を見つめる。指を動かす…うん。自然に動く!違和感なく動き出した指に加え、寝台から降りて全身を屈伸したり、その場で駆け足してみたり……。おお!全く普通に身体が動く!


「はは!あははは!動く、動きます!ってか軽い!体が軽い!」


 そう!動いて初めて覚えるこの感覚。体のあちこちが軽い力で瞬時に反応してくれるのだ。まさに()()()()()()若い肉体のパフォーマンス!大病の経験は無かったが、それでも三十後半から走ると直ぐに息が上がり始め、四十を過ぎると、階段が辛くなった。五十で肩が回せなくなった時、本当に老いを感じて哀しかったのだ。


 それが、全て無くなった!色んな事でブーストされている分もあるだろうが、自分はそれだけ年を重ねて生きていたんだと実感する。


 感動に打ち震える俺を何とはなしに皆が見つめる中、イリス様が声を掛けてきた。


「そうですか、それは良かったです。では早速ですが太田さん、()()()()()()()()


 ──な?なにが?


「名前じゃよ。この世界での名前。流石に太田 零士は使えんからのう」


 グスノフ、ナイスアシスト!名かぁ。名前、名前──。


「フム。取り敢えず、氏は要らんぞ」


 OK,エギル。今気づいたよ。サンキュー!名前……ん~~。言われて考えてみるが、名付けなんてした事も無かったから、直ぐに思いつく訳なかった。ゲームもそこまで考えなかったしな。それこそ初期名とか、【タロウ】とかだったし……。


「今の零士くんから(もじ)れば?」


 マリネラちゃん!ナイスアイディア!零士…れい、レイ


「レイト!」


 ────…。


 ぬぐぐ、えぇ安直ですよ!だって急に考えたって出てこないんだもん。…あ!零は英語で、ゼロだよな、ん~~!?あ!ノート!イギリス読み!Noughtなにもないだ!


「ノートはどうでしょう?」


 俺の発した名にその場が一瞬静まり返る。なんだ?これもダメか?


「儂と近いの」


ノード(農奴)ではないよ」


「──…良いでしょう。では、コレを」


 差し出されたものを受け取り、しげしげと見詰める。何だこのカードみたいなモノ?それはクレジットカードくらいの大きさで、薄さも重さもそれと似通っていたが、材質だけは分からなかった。


「貴方の身分証です。記憶にあるでしょう」


 言われて()()()()()()()。そうだ、この世界の人類種には産まれると神の加護によって個別認識票が身体から出てくる。それがこのカード。コレには各種情報があり、自分の名前、現在年齢、出身地、賞罰等が、記録される。改竄(かいしゅう)は勿論、偽造も出来ない。コレを各街の入口ゲートにある()()()に挿せばそれだけで、身分の証明ができるスグレモノカードだ!コイツの何がすごいって、失くならないんだよね。何しろ、体の一部なんだもん。手に持って(収納)って思うだけで、消えるように入っていく。落としても、身体から数歩離れると消えて身体に戻ってる。唯、死ぬと逆にコイツは出てくるんだよね。


 でもこれ、ステータスとかは無いし、勿論便利機能ってのもない。ホントの身分証。マイナンバーカードみたいな。


「思い出しました。はい、大丈夫です」

「そうですか。記憶のインストールも問題ないようですね…。では、スキルの確認を」


 イリス様はそう告げて俺を見る。


 ──スキル。そうだった。この世界の人間になった俺にはスキルが存在するんだ。目を閉じ、自身に問う…スキル…スキル、スキル…。


~~スキル~~

ベーススキル

身体強化  鑑定(全) 錬金  吸魔素補正 全言語理解

ユニークスキル

全魔術適正 武術見取り 異界庫(制限無し)(時間停止可能)

固有スキル

メニュー 創造 空間(次元)


 出た……。ってか鬼チート過ぎる!な、なんで?ん、続きが見えるぞ。


~~加護~~

イリス神

エリオス神

マリネラ神 

ノード神

グスノフ神

エギル神


~~****~~

*******

******

********

**********

****

*******


 ん~~?なんだこの文字化け。てか加護全員分じゃんか。なんでなんだ?冷や汗を垂らしながら、目を開ける。


理解(わか)りましたか」


「は、はぃ。ですが、あのコレって──」


使()()()()()()できてますね」


 被せてきた!え?俺、何かしなきゃいけないの?


「イリス様。混乱しておりますぞ。あぁ、おおた─…いや、ノートよ。別にお主に何を成せと云う物ではない。お主、特異点を持っておるじゃろ」


 グスノフさんが、イリス様を制して俺に話しかけてきた。


「保険じゃよ。万が一にもないと思うが、()()()が暴れては儂等も困る。じゃから、全員で加護をつけ、監視と言う面もあるんじゃよ。固有スキルを使い熟せれば、特異点への対応策も解るかも知れんじゃろ?」


 な~る。言われてみれば俺ってある意味爆弾持ちなんだった。


「ベーススキルでは、鑑定の(全)と全言語理解はお主にしか無いが、

それ以外は、この世界でありふれておる。鑑定持ちは商人等、必須じゃ。

吸魔素補正は魔術師や魔道具技師にと言う具合じゃしの。勿論ユニークスキルにしてもな。ユニークとは(すなわ)()()()()()なんじゃよ。なので、それを生業(なりわい)としておる者なら、それに沿った能力を持っておるよ。()()()()()()()や、()()()()()だがの」


 そ、そうなんだ。んじゃ、普通のチート?ってなんじゃそら。若干、訳が判らなくなりながらも、何とか飲み込んだ。


「何かアレばメニューのメール機能かチャットを使え」


 そう!コイツが一番のチートダヨネ。目の前に視界の邪魔にならない様に有る色んな項目。もう、ゲーム画面じゃん。


「了解しました。頑張ってみますので皆様これからもご指導ご鞭撻、よろしくお願いいたします」


 そう言って俺が頭を下げると、ウムウム…。と神様連合は頷いてくれたのだった。


「スキルとは技能では有るが、元は()()()なものだったのだ。この世界はお主の居た地球より何倍も広大(こうだい)だ。そして、強力な魔獣やモンスターが跋扈(ばっこ)する世界。地球的に言えば恐竜世界に、人類が同居しておるようなもの。だからスキルを存分に使い熟せ。そうすれば道は開ける」


 エギル神が俺を見ながら、しみじみ言う


「──では、装備をお渡ししましょう」


そう言ってイリス様は神様連合とわいわいがやがやしながら持ち物を渡してくれたのだった──。



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