第15話 初夜
メールに気づき、礼拝堂で祈りを捧げた途端に、精神だけを神界に引き揚げられた。転生してから色々あって、ドタバタしては居たけれど、何かあったのか?
「どうして、呼ばれたんですか?」
神様連合勢ぞろいする中、イリス様だけが微妙な面持ちだった。
「あ、あのイリス様? どうかしましたか?」
声を掛けて見ると、初めて俺の存在に気付いたように、顔を向ける。
「え? あ! い、いえ。特に何もありません。今回お呼びしたのは、エギルと、エリオスが、精神面のアップデートと、肉体の整合性を、確認したいとの申し出が有りました。後は直接感想をと、思いまして…」
「そうだよ~ん。お姉さんは、ちょっと怒ってるんだからね」
マリネラ様が、割り込むように、入ってくる。
「え? 何の事です?」
「サポートするからいつでも連絡してね。って言ってたのに、全く連絡してこないんだもん」
「は? もしかして、連絡しなかったからって事?」
ぷ〇きゅあ顔で、ほっぺをぷくっと膨らませて、上目遣いで睨んでくる。やべぇ、何じゃこのプリティちびっ子神様は! ヤバイ! 庇護欲がガガガ!
「あぁぁぁあ! ごめんね! おいたんが悪かったぁ!」ガバァ!
”バチィッ!” ”みぎゃ!”
「アハハハハ! 相変わらず、ノリがいいねぇ君は」
「いてて。いやいや反則でしょぅ、あの顔は。オッサンホイホイですからね」
「えへへ。じゃぁ、これからは、こっちで、降臨しようかな」
やべえ! 地母神が幼女で、降臨! 見たい!
「…マリネラ、駄目ですよ」
あ、イリス様のダメが出ちゃった。はぁ~。にしてもマジ綺麗だなぁ。
「ノートよ。それで、どうなのだ? 魔術や、創造で何か不都合は出たか?」
エギルが、次いで声を掛けて来る。
「え? え~、特にこれと言っては…と言うか、何でも出来過ぎて、悩む? 感じかな」
「フムフム…制約があった方が、良いのか?」
「ん~そうじゃないんだけど、一々、やり過ぎだって言われるのが面倒」
「…成る程、やはり常識が問題か…」
「あぁ、そこかもね。やっぱり文明が異質過ぎて、俺の常識が通じない」
「フム。一考の余地ありだな」
そう言って、エギルは黙考を始める。
「さてノート。今、お前の肉体は此処に無い。だが、各種サーチは掛けられるので、この架台に横になれ」
そう言ってエリオスが、俺を寝台の様な物に乗せる。
「良し。今から各サーチとメンテ、序にアップデートも行う。記憶は止まるが問題ない。気付くのは下界になるだろう。何かまだ聞きたいことはあるか?」
「…聞きたいと言うより、お礼かな。皆さん本当にありがとうございます。地球で生きた人生よりも、何倍も濃い経験が出来ています。まだまだ、これからあると思うから、今まで以上に頑張ります」
皆が頷いてくれたので、安心して横になる。
「では、始める…**** **** **@*ーー」
文言の途中で、俺の意識は途切れて行った。
「意識の中断を確認……イリス様、やはりこ奴は魂魄を分割させています」
「…やはりそうですか。事象変動による、増加効果…それで、この者の魂魄は?」
「…追補完されております。恐らくは並列思考の弊害かと」
「…まさか、そちらに特異点の能力を?」
「いえ、スキルにその様な兆候は見えません。内包したままだと考えるのが妥当でしょう。並列思考もまだ、細分化されていません」
「…そう。では現状、そちらに手は出せないのですね」
「はい。起きた事象ですので、既に閉じています。あちらは、あちらで完成しています」
「分かりました。エギル、彼のスキルに制約をかける事は出来ますか」
「可能です。ただこれは初めての事ですし、彼の想像は我等を凌駕しているのも事実。都度の修正が必要かと」
「…ですか。お願いします。事象増加など、我等神の領域。人の身で成せば、神化してしまう。彼にはそうなって欲しくありません」
「…解りました。マリネラ、セレス・フィリアにこの件、伝えておいてくれるか」
「はい。必ず」
「…では、この者の魂魄、元の場所へ──」
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ふと、意識が覚醒する。礼拝堂で跪いた状態。
(戻ってこれたんだ。良かった)
顔をあげ、振り返ると微笑んだシスターが居た。
「いかがでした?」
「はい、精一杯のお礼と日々の感謝を」
「そうですか。また何時でもどうぞ。此処は誰にでも開かれていますので」
そう言って、二人で来た道を戻っていった。
「アマンダさん、皆も! また、会いましょう!」
「おう! 今日はありがとうな。」
「いえ、教会でちゃんとお祈りも出来たし、こっちが助かりました」
「はは。そうかい。そりゃ良かったよ。ちび共もあいさつ!」
「「ノートお兄ちゃんまたねぇ!」」
「はぁい! カサンドラさん達もまた!」
「はい。その時はよろしくお願いします。」
そうして、俺は一人教会を離れて行った。
「…ノート君…また、必ずや、お会いしましょう…フフフ」
後ろ姿に掛けられた声は、俺に届くことは無かった。
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「それで、教会に?」
「うん。いやぁ、カサンドラさんには、びっくりしたけど、孤児院としては、良い所だった」
「そう言えば、カサンドラ、あの孤児院に行ったんだったわね」
「お主は、子供に甘いからのぅ、ヘンな事はしておらんじゃろうな?」
「してねぇよ。てかあそこのちび共は、たくまし過ぎた。カサンドラさんの濃さに負けた」
「カサンドラさん、確かに色々強烈ですからね。」
「そっちはどうだったの? セリスさんの引き渡しとかは?」
「…ん? 儂か? 問題なかったぞ、長い間世話になったからの。家主も涙を流して居ったよ」
「へぇ、仲良かったんだね」
「「……セリスさん…」」
キャロとシェリーが、微妙な返事をする。
「ん? 何か知ってるの?」
「…はぁ、実は引き渡しの後、その大家が総合ギルドに泣きついたそうで」
「え? なんで?」
「…どうやら、部屋の幾つかが、魔窟化していた様でウチに調査依頼が」
「何やってんだよ!」
「あーあーあー! 聞こえな~い! あーあー!!」
結局、最後の最後まで、セリスはお騒がせエルフだった。
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自室に戻って、一息…付きたかった。
「あ、あの二人の部屋は?」
「え? あぁ。荷物は向かいの部屋にありますよ」
「ベッドはここに運んだけどね」
俺の部屋にあった小机が無くなり、代わりにぴったりくっついたベッドが3つ並んでいた。
「へ、へぇ…で、でもこれじゃ、狭くない?」
「じゃぁ、部屋を替えてもらう? 今夜は無理でしょうけど」
「しぇ、シェリーはどんな時でもクールです」
「私も居ますよ、ノートさん」わっさわっさ。
「うん。そうだね、キャロはいっつも刺激的です」
真ん中のベッドに、強制的に座らされると左右に二人が詰めて座る。
もちろん、隙間なんてない。片方の尾は常に揺れ、もう一方は腕に絡んでくる。
…うん。これはあれだね、そうですね。いわゆる一つの初夜ってやつですね。そう考えると頭の中は、まっピンクに染まる。
ちらりと覗いた二人の瞳。キャロルの瞳は潤んでいて、頬は薄っすら上気している。
シェリーは、笑みを絶やさずに、唇がなぜか濡れている。
「…あ、あのね、二人に初めに言っておくことがあるんですけど」
「なぁに?」
「なんですか?」
同時に耳元で囁かれる…あかん! こ、こりぇは、理性が吹き飛ぶ!
「は、初めてなので! よろしきゅ、おねがいしましゅ!!」
「ウフフフ。可愛いですノートさん」
「じゃぁ、今夜からは一緒にね」
シェリーが俺に身体を寄せる、胸を押し付けながら。
キャロルは、首筋に手を添えて、唇を寄せて来る。
「…んっ…チュッ…はぁ、ノートさん大好きです」
上気し、潤んだ瞳でこちらを見ながら、甘ったるい声で、キャロルが囁き、キスを続ける。
「ンンッ…はぁ、キャロ…」
「あら、キャロルだけなの?」
シェリーがそう言い、俺の胸辺りをさわさわする。
…ビクビクビク!! ヤバァイ! それだめ! だ・め・ぁぁぁあ!
「シェ…リ…それ、は、やば…い」
「ん? クスクス…なにが?」
さわさわきゅ!
「ンひゃあ! さきっちょ!」
「ああん! もう、ノートさぁん!」
「ウフフ! ノート君」
そうして、初めての夜は、主導権握られっぱなしで更けて行った…。
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