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オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第2章 王都への道は遠く
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第7話 瘴気石と戦闘狂



「セレス様、瘴気石とは?」


 シェリーが、当たり前のように聞く。


『言わば、魔石の()()()だな。作り方は反吐(ヘド)が出るが』


「…それはどう言う?」

『魔石に吸わせるんだよ。…命を。(むご)たらしく殺してな』

「…それは、拷問的な、意味でしょうか」

『それもある…あれは、()()の作るものだ。()()を殺すのだから』


「「「……な!?」」」


 絶句する。幼子を生贄にして作る? モンスターの石を?


《ノート!!抑えろ!》

 は! マズイ。どうにも、子供関係が絡むと、抑えきれなくなる。


『それに関しては、我も()()だ。此処にいる皆も()()()()ちだ』


 セレス様にそう言われ、顔をあげると、視線がぶつかった。


「ゴメンね、俺の世界で【子は宝】って言う例えが有ってさ…どうしても、ダメなんだ」

「良いんですよ。ノートさんはそれで」


 ふわりと、キャロが背中から抱きしめてくれる。


「良い例えだな。…子は宝か。…確かに未来は()()()()()()だしな」

「ノート君にしては()()()


「しかし、それでは今回の事は、人為的な物という事に…」

「ですね。まさか! 帝国が?!」

「シェリー? なにか──」

『違う…瘴気石などと言う、狂った物を()()()()は、()()しかない』


「…それは?」



 ──…ヒストリア教皇国だ。



「「「そんな?!」」」

「なぜ、あんな鎖国しているような国が?」

「いえ、厳密には鎖国はしていません。ただ、流入も流出も、無いだけです」


 カークマンの話しを、シェリーが否定する。


「そ、そうだったか? いや、そんな事より何故、そんな国がこんな、東の果てに?」


『…あの国は、ほぼ全ての国に、間諜が入り込んでいる。恐らくは、サラの件か…』


 そう言いながら俺を見る、セレス様。


「…俺ですか」

『その二つ以外、考えられんな』


「…クソったれが。何で直接俺に来ないんだよ! 周りを巻き込みやがって!」


『それこそ奴らが狂って、腐っている証だな』

「何て下種な…」


「と、とにかく、今はスタンピードが先だ。住民の避難準備もある」


 カークマンはそう言って優先事項をどうするか、話そうとする。


「失礼します!」

「何だ!?」

「は! 斥候部隊、戻りました!」

「通せ!」


「失礼します。東端、開拓村、西渓谷三カ所の現況を、報告します」


 戻った、斥候の人は三人。彼らは次々に、様子を伝えていく。


「…そんな、オークが、五十に、ゴブリンが、リーダーと…」

「えぇ。それに、西の渓谷が一番()()()。まさか、()()()が居るなんて」

「あそこには、村がある。渓谷の橋が落ちれば孤立してしまう。」


 斥候と、シェリー、カークマンたちは皆、苦虫を噛み潰したような顔で地図を睨む。


「じゃぁ、東端と開拓村は、セリスさんとキャロに、お願いしていい?」

「はい! もちろんです」

「ぬフフフ! デストロ~イ!!」


「…お前達、何を言って──」

「俺は、渓谷に向かいますね」


「ちょっと待って! さっきから、貴方達は何を言ってるんですか?」


 シェリーが怒気を滲ませて怒鳴る。


「あぁ、怒らないでよ。()()()()()だけ、この二人なら、数は()()()()から」

「だから! 根拠もなしに、何を…その武器はなに?」

「俺が作った、()()()()()。セリスさんは、対多数。キャロには、近中距離対応武器。」


「それで俺は、()()()()()()対応」


「…やっぱ、こいつ等おかしい」


 失礼な事を言うカークマンを無視して、話を進める。


「兎に角、その三カ所のモンスターは、俺達が対処する。皆は、避難指示と、戦闘範囲への()()()()を徹底してほしい。特にセリスさんの(そば)は、()()()から」


「…信じていいの?」

「「「もちろん!!」」」


「で、残りの四カ所は?」

「そっちは、緊急ではない。人の居る地域では無いからな」

「了解。順次廻ろう。二人共、念話入れておいてね」

「「はい。」」


 こうして、急遽斥候と、衛兵選抜隊に俺達パーティの、ミックス部隊を編成する。各村までは衛兵部隊と共に、村からモンスターまでは、斥候と一緒に。


 そこからは各自の持ち場で、と軽く打ち合わせて、出立する。


「三人共、必ず報告に戻ってくださいね」


 シェリーが、心配を隠して言う。


「ありがと。シェリーも、こっちで大変だろうけど、頑張ってね」


 キャロが微笑みながら、シェリーに抱き着く。


「…お前は、ダメに決まっておろうが。」


 クソ! せっかくのチャンスを、セリスさんに邪魔された…ちくせう。


「じゃ、行ってきます」

「宜しく頼む」


 仕方ないので、カークマン隊長に声を掛けて、部隊へ向かう。


「…馬は?」

「いや、俺は走った方が、()()()で」

「は? ま、まぁ、良いが、では出発!」


 こうして、スタンピードの討伐が始まった。


◇  ◇  ◇



「…セリスさん。それ、乗ってます?」

「ん? 乗ってるぞ」


 二人は馬に乗り、駆けているんだが、セリスは腰が浮いている。


「…浮いてますよね」

「細かい事は、気にするな。年寄りは、腰に来るんじゃ」


 そんな魔道具あるなら、私も貸して欲しいです! と思いながら、馬を走らせる。


 彼女たちが向かっているのは、街から最も近い開拓村の森。


 斥候の話しでは、ゴブリンの集団が、確認されていて、総数は百匹以上。ゴブリンリーダーらしき姿も、確認されているという。


「…キャロル嬢! この先だ! あの、岩の先に森が開けた場所が有る、

其処に、集まっているらしい」


 兵の一人が、馬で近づき教えてくれる。


「分かりました! 私達は、其処へ向かいます! 皆さんは、村へ!」

「いいか! こちらには、間違っても近づくな! 怪我では、済まなくなるからな!」


 セリスは、そう言うと、即座にゴーレムを展開する。


 ”ヒューン!” ”カチカチカチャ” ”キュイン” ”ピピピ”


 ヒヒーン!!

「あ!こら、大丈夫じゃ!」

「…何やってんですか、もう」


 兵達は、展開されたゴーレムを見て、ぎょっとして、離れて行く。

「ご、ご武運を!」


「そちらも気を付けて!」

 キャロルは、馬を落ち着かせながら、兵と別れて岩を回り込んでいく。


 岩場に到着した二人は、馬を降りて静かに、木々の合間から覗き込む。


「…居ますね。()()()()()()

()()()()()()()()をするな。…おい! あそこ!」


 セリスが、何かを見つけたのか、指さした方向を見る。


「…なにあれ?」


 ゴブリンの、集まる中心部辺りに、黒い(もや)が立ち上り、ブクブクと何かが泡立つ。


 ”ボコン!”と、泡が潰れると、そこから、一匹のゴブリンが転げ落ちて来る。


 ”ゲギャ! ギイガ、ギャガ!”

「…あれが、瘴気…ん!?」


 丁度、靄の真下、泡の立ち上る根本辺りに()()が在った。


「い、し? から出てるの? あの泡」

「…やはり、あれが、瘴気石らしいぞ」

「え?! じゃぁ、あれを()()()()と」

「…周りの魔素を取り込み続け、モンスターを産み続ける」

「じゃぁ、ノートさんにも!」

「始祖様が、ハカセに伝えた。儂らは、此処をまず潰すぞ!」

「はい!」

「先ずは、儂が攪乱する。キャロは、ここから、石を狙え!」


 そう言って、セリスは岩陰から、飛び出す。


「うはははは! ゴブリン共! しぃにさらせぇぇい!!」


 飛び出した彼女が、初弾に選んだのは、拡散型ビーム。


 ゴーレムから射出されたそれは、瞬時に花が開く様に、拡散され、ゴブリンに殺到する。


 ”ギャ?!” ”ビシャ!” “ガギャ!” ”バシュン!”

 それはあっという間に、阿鼻叫喚の世界が広がる。ある者は、一瞬で首を消し飛ばされ、また別の者は腸を撒き散らしながら、足と言わず、腕であろうが、胴体であっても。全ての、身体が、等しく蹂躙されていく。


 セリスは、その様子に可笑しくてたまらず、絶叫するように笑いながら、緑色の肌を見た瞬間に、ビームを打ち出していく。


「あははははは! 何じゃこの快感は! ゴブリンが、紙切れの様じゃあ! あははは!」


「…うわぁ、セリスさんって、マジで()()()だったんだ」


 …聞こえとるぞ! キャロ! 石を狙ってるか?!…


 念話でシッカリ、文句も言ってくる。()()()()しながら、キャロは魔銃を構える。


 …ちゃんと狙って…ますよ!…


 ”ビシュン!!” ”バカァアァン!”


 彼女の撃ったビームは狙い違わず命中し、大きな音を立てて、石が砕け散る。


「おほお! やるの~! 後は殲滅じゃぁ!!」


 そうしてゴブリンたちは、生まれて間もなく、何もすることなく殲滅された。




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