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オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第2章 王都への道は遠く
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第4話 初めての武器屋

エブリスタ様版とは展開が異なります

 


 ギルドマスターの部屋で、思わぬダメージを受けていると、ドアをノックする音が聞こえてきた。

 

「ん?」

「セーリス! ノートは来とるか?」


 返事も聞かずに、ドアを開けて入って来たのは、セリスさん。


「…おばあ様、()()()()は、止めてくださいとあれほど…」

「おお、居たか。…セーリスは()()()のぉ。それよりノート、ほれ」


 セリスはセーリスの小言を、聞き流して、俺に袋を渡してくる。


「これは?」

「ん? あぁ、店の()()じゃ。それには、()()やら()()()が入っとる。お主、武具も防具も持っておらんだろ? せっかく()()()()()んだから作ればよいと思ってな」


「おお! マジでか! キャロさんの着てる、スーツとか作りたかったんだぁ! 武器、武器かぁ…確かに今、素手だしなぁ、手甲? ガントレット? あぁ。悩むなぁ」


「ぬフフフ。安心せい、大概の入手可能な物は、入れておいた。先ずは()()()でも見てこい」


「どこに?」


「武具、防具店じゃろうに」

「あ! あはは、そうね、()()()()だった。キャロさん、良い所知って…ん?」


 キャロさんを見ると、プーとほっぺを膨らませて、尻尾だけ少し揺れている。


「…キャロです…キャロ!」

「あ!…そか…ンンッお願いしていいかな、キャロ?」

「はい!! 行きましょう!!」わっさわっさ!


 …ふへぇ、こっぱずかしいぞ!


「…何じゃ? 何、真っ赤になっとるんじゃ、アイツ」


 キャロに腕を掴まれ、出て行く俺を、変な顔でセリスは見送っていた。



*******************************



 東工房街の、更に奥に鍛冶工房が、集まっていた。


「この先に()()()()の鍛冶屋さんが有ります」

「へぇ、武具専門…」

「はい。ガントさんと同じ()()()()()()なんですけど、そちらは女性なんです。なので、裁縫も得意で、武器に合わせた防具を作っているんです」


「そうなんだ。それで()()なんだ」


「らしいです。彼女自身も冒険者ですから、そう言った事に精通しているんだと思います」


 話を聞きながら、鍛冶工房街に入ると、何処からともなく響く、槌の音。

 ”カーン、カーン” ”カン! カン!”甲高い音が響き、見ると煙を吐く、煙突付きの工房が見えて来る。


「あぁ。やっぱり、鍛冶工房は、独特の()()()だねぇ」

「ですね、鉄を打つ音や匂い。炉を使っているから温度も心なし高いような」

「…キャロって、もしかして()()()()()なの?」


「いえ、そう言う訳ではないです。まぁ、仕事柄、こう言う所の出入りが、多かったのも有りますけど、やっぱり、こう、仕事に打ち込んでる時の顔とか、真剣な感じ、ああ言うの、憧れますね」


「へぇ…そうなんだ」

「あ! ここです!」


 言われてそちらに向くと、間口は1間程の、小さな店があった。


「ずいぶん、()()()()()してんだね」

「フフ、()()はね、中へどうぞ」


 なにやら、変な笑顔のキャロに言われるまま、扉を引き、中へ足を踏み入れる。


「これは…拡張空間か!」

「あははは! やったぁ! やっぱりノートさん、凄いです!」

「…は? え、なにが?」


 キャロが騒ぎ、俺が、ぽかんとしていると、後ろから声が掛かる。


「…へぇ、()()()がキャロの()()()()か。こりゃまいったね」

「はへ? 何が?」


「…アンタの()()()さ、ほれ、そこに魔道具が有るだろ。それで選別してるんだよ。うちは、()()な魔剣や防具も扱うからね。キャロに言われてたんだよ、すげー奴が居るって」


「はぁ…。」


「だから! 目一杯強力な隠蔽魔術を掛けてたんです! このお店の中。私には、今も()()()()()()()()の店にしか、見えません」


「済まないね、()()()な事しちまってさ。アタシはヘイス、アンタがノートで良いのかい?」


 そう言って、ヘイスはにこやかに、挨拶をしてきた。一見すると、ちょっと背の低い、ヒュームの女性に見えるが、髪の毛が多いのか、きつくお団子状にしてある、二つの毛玉は硬そうで、頭の動きについて行かず、一瞬ずれる。特徴的な、違いは、其の位だった。


「いえ、別に良いですけど、何か()()が?」


「あぁ。さっきも言ったように、ここは特殊な武具、防具を扱う店だ。だから勿論、それを扱えるだけの、()()()()()って事で、あの魔道具で()()するのさ。中には分不相応な()()も居るからね。特に()()()には、良い()()()になってるよ」


「あぁ。すっごく納得しました!」


「はは、アンタも貴族様と()()()()()口だね。しっかし、凄いね。この魔道具が、全く意味をなしていないよ。あんた、ホントに()()()()かい?」


「あ、あはははは! 当たり前っすよ。ねぇキャロ?!」

「はい! 私のご主人様です!」わっさわっさわっさ!!


「あはははは! キャロには違う意味で聞こえたみたいだね。しかし、男っ気ゼロだった、あの()()()()()()がねぇ」


「そうなんです! もう、ノートさんは別格です! 魔術もすごいけど、あの、スピードと腕力! 千顔を、()()()()()()()()()()んです。後は、なんか、ピカーってなって、足、()()()でした」


「あ、あぁ…そうなんだ。…なぁ、ノート。キャロ、アホになってない?」


「ハハハ…。何かねぇ。最近語彙が、なくなっちゃうみたいです」

「ふうん。まぁ、いいや。それで? 何が見たいんだい?」


 そう言って彼女は、両手を広げて店の商品を、紹介してくれた。



「…フムフム、それじゃぁ、()()()はショートソードか、()()()()()()()がお勧めだよ。体術主体(メイン)でも、刃物は有って邪魔にはならないからね、こう言う小振りなら、携帯も簡単だ。キャロも元々はククリナイフだったんだけど、魔力量の配分をもっと()()()()にってんで、ダガーナイフに換えて振込みを最小限に、殺傷力を最大にするために、替えたんだ」


「なるほど~。ククリ刀か、()()にも使えるなぁ。」

「お! ()()()に考えるのかい? じゃあ、コイツが良いよ」


 そう言ってヘイスが出してきたのはククリ刀より小さく薄い、持ち手の部分も、剥き出しになった、()()()()()()()()()


「コイツは唯の投げナイフじゃない。この持ち手に穴が有るだろ? ここに、持ち主の魔紋を込めた魔石を嵌めるのさ。すると…フッ」


 彼女は魔石を嵌めたそのナイフを壁に向かって投げると、()()()と小気味よく壁に刺さったナイフは、次の瞬間、消える。


「ほい! こんな具合に手元に戻ってくる。便利だろ?」


 …スゲエ! グングニルだ! ククリのグングニル!


「はは、まぁ、コイツはあくまで()()だよ。これ以上デカいと、魔力消費もだけど、手元に戻った時の反動も、大きくなるからね。アンタならイケるかもだけどさ」


 そんな感じで武器を物色した後、防具の話をする。


「あぁ、キャロのスーツはアタシの()()()モンさ。気に入ったのかい? 嬉しいねぇ。アンタになら、()()()()()付けられそうだから、もっと()()()()()()()だけど」


 それを聴いた瞬間に即答でお願いする。すぐに採寸、手持ちの素材で、使えそうなものを次々渡す。


「お、おいおい、マジか。こんな()()、アタシでもめったに見ないよ。ホントに使っていいのかい?」


「モチロンすよ! さっき言ってた、オプションのガントレットと収納暗器、オネシャス!」


「あいよ! ブーツは、鉄鋼入りになるから重いけど、大丈夫だね?」

「OK!」

「おーけ? まぁ、よく解んないけど良いて事だね。じゃぁ、五日頂戴。魔紋は自分で出来るんだろ?」

「はい。術式だけ()()()()()くれればいいです」

「あいよ。」

「じゃぁ、お願いします! 五日後に!」

「あいよ~」


 そう言って店を後にした。


「良かったですね! スーツ、作ってもらえる事になって」

「あぁ! 後は外套ぐらいだな。手持ち武器も良い感じだし」

「ですね! 外套は余程でなければ、裁縫職人さんに頼めば素材持ち込みで安いですよ」

「おお! じゃあ、それで!」



*******************************



「こりゃあ…やべぇ。」


 ガントは独り、ほぼ完成した魔導車の前で呟く。ノートと言う、迷い人の知識で、作り上げた設計図を見た時は、正直、意味が半分も理解できなかった。軸重配分に衝突時衝撃軽減システム。果ては、スプリング機構に、エアショックダンパー。

 

 何より、奇怪だったのは、動力部を、前部に配置しておきながら、駆動部は後方から。何故、そんな力を分散させるのか、と思った。

 

 だが。その全てとは、まだ言えないが、片鱗は理解できた。

 ()()()()()()の両立。全ての力を一部でなく、全部に余すことなく、伝える。そうする事で、馬力を上げても、壊れにくくなり、部品の軽量化も出来る。


 また、パーツを区分化、ユニット化する事によって、メンテナンスの簡略化。こんなのが世に出れば、誰でも、部品を集めるだけで、一台組めてしまう。


「…これが、アイツの居た()()()()()か…」



 ガントは寝食も忘れて、設計図を見ては唸っていた。


最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!


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