閑話 セリスと魔道具と時々おかん(精霊王)
章間の箸休め的な
これはまだ、ノートがこの世界に来るずっとずっと昔の話し。
此処はユーグドラシルの森。
その森は世界の始まりに創られ、世界の中心にと定められた樹があった。
世界の理とされる、精霊の産まれるその樹には、精霊の祖であり、王を名乗るセレス・フィリア様の御座所がある。
「セリ~~~ス!! どこじゃぁ~!」
「「セリスさまぁ!!」」
その樹の周りには幾つもの大きな木が有り、林立し森を形成していた。
その森の木は高く、中心に聳える【世界樹】は雲を貫き樹上を窺う事は出来ない。
其処には、セレス・フィリアの直系の子供達、精霊種と呼ばれる一般のエルフとは異なる種エルダーエルフの集落があった。その中で最も若く、セレスの最後の直系、セリスは世界樹の枝の一か所にへばり付いていた。
「…グぬぬ…後すこ…し…で」
枝の先、葉に隠れる様に小さく実った其れは【世界樹の実】
数千年の時を掛け、世界樹が付けるたった一つの自身の次代。永い時を掛け、実るその実の種は世界樹の総ての力を内包すると言われる至宝。
「…クッ…あ!…ヨシッ! とれ──!」
果たしてその実は見事セリスの手の中へ。同時にセリスは樹上から空の只中へと落ちていく。
「ふぎゃ~~~!!」
《か、風よ! 我を彼方の地へ!》
斯くして彼女は世界樹の実を携え、ヒュームの街エクスへと旅立った。
「どうだ? 我が孫娘は見つかったか?」
《そ…それが。》
「なんじゃ?」
《見つけはしたのですが…》
「えぇい! はっきり言え!」
《ど、どうやら、ヒュームの街へと向かった様子でして…》
「…な、なんじゃと~~!」
《そ、それと…》
「まだあるのか?」
《ど、どうやら…をですね……》
「…なに?聞こえないぞ?」
《せ、世界樹の…実を…》
「……。」
《持ち去ったようです…》
セレスはこの後1週間寝込んだ。
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「ぬフフフ! よしよし。このフードの認識阻害は素晴らしい! さすが私! あんな、材料の乏しい国で此処までの魔道具を作るとは。才能が怖い! 自身のあふれる才能が!」
街道を独り独白しながらセリスは歩いていた。ヒュームの国に入ってから数週間。自身をエルフと偽り、国境を越え、集落を渡り歩いてやっと目的の街まで近づいてきた。
《セリスちゃん、この先に盗賊が居るよ~》
精霊が道々そんな事を教えてくれる。
「あ、そ。じゃあ、今夜はご馳走食べれるかな? へへへ」
そう、彼女はエルダーエルフ。魔法ならば、エルフは勿論ヒュームなど、足元にも及ばないのだ。彼女の通った街道の賊は漏れなく彼女の餌食だった。
「ぐわっ!…なんなんだ? このエルフ! ばけも──」
”ぎゃー!” ”ぐぎゃ” “タスケげッ”
「ほいほいのほい!」
”ドカン!”と岩が落ち。
”ズバシャァ”と濁流で押し流し。
”ビシャァン!”と稲妻にその身を焦がされて。
──…気の毒な賊は全滅必死なのであった。
「ぬはははは! 今日の食料も大豊作じゃぁ! あひゃひゃひゃ!」
続くかどうかは…。