表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第1章 落っこちて異世界
42/266

第41話 一つの決着とフラグの乱立

 


 エクスの街から既に遠い場所に一台の魔導車が止まっていた。


「…ジードは戻って来ませんか」

「どう致しましょうか?」


 運転席に座る侍従が尋ねる。


「フム。今回の視察では()()を使い過ぎました。()()()()()一度戻って、陛下に報告しましょう。…愉しみも増えましたしね」


「は! では、出発します」


 魔導モーターを唸らせ、その魔導車は街道を静かに進んでいった。



*******************************



「報告します! 冒険者ギルドより容疑者二名、身柄引き渡しに来られました」

「生死は?!」


 カークマンは、真っ先にその事を聞く。


「…は? い、生きておりますが…」


 何故そんな事を聞くんだと、兵は訝しがりながらも生存報告をする。

「…隊長、兵が困惑します…分かった! 書類記入はこちらでする故、容疑者は地下牢へ!」

「は! 了解いたしました。」


 どさりと音を立てながら隊長はソファに座る。

「ふぅ、すまん。気が()いてしまった」

「…いえ、現状、生きているのは()()ですので」


 コンクランはちらとハンス代官を見ながら言う。


「そうですね。其れに聞くとその二人は内紛時の生き残りとか。聴きたいことは山積(さんせき)でしょうから、正に僥倖ですね」



*******************************



「…良かったの? 生かして引き渡すなんて」


 キャロルは幾分、不機嫌に言う。


「…良いのよ、私達の欲しかった情報は手に入ったし。それに向こうの被疑者、全員()()()()して、死んだらしいわ。一応の()()も出来るし、面倒事はあちらに任せられる。どうせ、国が主体になって奴らは調べられる。一石二鳥じゃない。其れに奴らはこれから正に、生き地獄が始まるわ」


 シェリーは事も無げにそんな話をする。


「あんた、偶にゾッとすること平気で言うわね」

「実行しているキャロに言われるのは心外」

「な!? ちょっと! そんな言い方しなくても良いじゃない!」

「…そんな事よりも。もっと大事な事が有る」

「何よ! どんな事がアタシの事より大事なの!?」

「…ノート君」

「──…っ!!」

「精霊王の知り合いなんて…セリス様以来、しかも()()()()

「そう…よね。()()()()()()()()()にあの強さ…」


「キャロ…顔赤いわよ…」

「フェ?! は? な、何言ってんのよ!」

「…はぁ。まぁ、アンタの()()()()だし、分からなくもないけど…苦労するかもよ」

「だ、だだからぁ! にゃにゃ、にゃにをいってててるのぉぉぉ!」

「受付業務、引継ぎはちゃんとやってね。私も状況次第では…」

「な! シェリーまで彼の事ぉ! 好きになったの?!」

「…違う。私は興味が出たの。ってか()()してどうすんの」


「…は?! し、しまったぁ! シェリーのバカぁ」

「はぁ~。兎に角、ギルマスにきちんと聞いてからね」


 その後もシェリーになんやかんやと、キャロルはからかわれ続けていた。




*******************************



「…で。何故ここに戻ってきた?」

 セーリスさんは大分飲んだようで、目が座っている。


「何故って…ここ、俺の定宿ですよ」


 ”ドン!”とエールの入ったコップを、乱暴にテーブルに置き、睨むセーリス。

「…ふん! 私が知らんと思っているのか? 攫い屋の首魁を()()()()()おいて」


「……あはは。そうですよね。…知ってますよね‥‥」


「プはぁ~~。なんだ? 辛気臭くなりたいのか?」

「いえ、そうじゃないです。ただ…」

「…何だ?! はっきり言え!おねーさんが聞いてやる!」

《…おい、こりゃ多分ダメな感じだ》

 だな。自分の事、おねーさんって言っちゃってるし…

「おい、ね・ん・わ・聞こえてるの判ってて言ってるよな」

 あ!? やべぇ。


 セーリスは振り返り、サラを見つけると声をかける。


「お~~いサラ! こっちにエール二つ!」

「はいですぅ!」


「ぬフフフ! こってりたっぷり、きっちり聞かせてもらおうじゃない…」

「…はぁ~。分かりましたよ。愚痴りますけど、聞いてくださいね」

「やだ!!」

「は?」

「何で愚痴など聞かなきゃならん!? それならアタシが愚痴る! 始祖様のせいで!」


 …そんなこんなで、朝まで皆と()()()となり、俺はずうっとセーリスの愚痴を聞かされていた。


「…さん!…ですぅ! 朝ですぅ! ノートしゃぁん!」

 ん?! 何やら、揺さぶられて…

「ぐわぁぁぁ! あ、頭がぁ! 痛いぃぃぃ!」

「うひゃぁ!」”ドテン!”

「…はぁはぁ…ん? どこだ此処? いてて」

「…もう! 痛いですぅ!」

「ふぇ? あ、サラちゃん。ん? ここって食堂?」

 立ち上がり、服を叩きながら、サラがプリプリしながら言う。


「…もう、ノートさんが一番遅いですぅ。皆さん朝ご飯食べて行きましたよ」


 言われて周りを見回すと、昨夜あんなに騒いでいた連中は誰もおらず、静かな朝の風景だった。


「ホントだ、誰も居ねぇ…いつつ」

「頭、痛いんです?」

「ん? あぁ、二日酔いっぽいね…」

「はい、これどうぞです」

 そう言ってサラは水を差し出す。


「有難う。…あれ? これ…」

「ギルドマスターさんが、ノートさんが起きたらこれ飲ませてシャキッとさせろって」

 ポーションって二日酔いにも効くんだ…。

「朝ご飯どうします?」

「…いや、ゴメン。まだ無理っぽい…」

「そうですか…スープだけでも大丈夫かなと思ったです」

「…じゃぁ、顔洗ってきてからそれだけ、貰うよ」

「はいですぅ!」


 そうして、洗顔を済ませ、席に戻ると大将と女将さんに昨日の礼を言われ、()()だから、問題ないと言って、食事をして宿を出た。


《…で?どこへ向かうんだ?》

 …ギルド、行かなきゃね。


 俺が起きたのはもう朝も大分経っていたらしく、日は高い位置にあった。


「あ! ノート兄ぃ! やぁっと起きたんだ」


 見るとユマが宿の前を掃除していた。


「おう! おそよう! 今日も精が出てるねぇ!」

「…おそようって、()()()()じゃん」

「ん~? 別に俺は真面目な人って訳じゃないぞぉ」

「嘘も下手だし」

「…察しのいい子は嫌いだぁ」

「はいはい、マスターがギルドで待ってるって」


 ──とぼとぼ、歩いてギルドへ向かった。


 ふぅ、と一息吐いてから、冒険者ギルドの扉を景気よく開く。


「おそようござぁ~~ス!」


 ”なんだ?” ”お、やっと来たか” ”おせぇぞ”

「おう! やっと起きたか、マスターが部屋でお待ちかねだってよ」


「…アマンダさん、俺、()()()()()初心者なんすけど…」

「…は? お前、頭、大丈夫か? まだ酔ってんのか?」


「なんだ、その扱い! 依頼だってお使いすら終わってないのに!」


「あははは! 聴いてるぜ! 千顔潰したんだってな?! そんな()()()()聞いた事ねぇよ」


 …なんだって?!


 驚愕の表情で固まっているとシェリーさんが歩いて来た。


「…あれだけ、大立ち回りしておいて、バレない方が変。さ、行く」

 そして、当たり前の様に襟を掴まれ引き摺られていく…。


 ギルドマスターの部屋に入ると、幾人もの人が居た。

「遅かったな。ポーションは()()()か」

「は、はぁ。まぁ。で、()()()()は?」


 俺の知っている面々は、カークマン隊長とコンクラン副隊長、キャロルとシェリーとセーリス、そしてソファに腰掛けたハンス代官。

 

 代官以外の知り合いは全員立って居る。だが、ソファにはまだ、座っている人がいる。私兵と侍従を従えて。


「…初めまして。私はエルデン・フリージア王国、辺境領を預かるフィヨルド・フォン・エリクス辺境伯だ」


 立ち上がり、鷹揚(おうよう)に自己紹介をする。それを聴いた俺はすぐさま、跪き頭を垂れる。


「…これは、大変失礼を致しました。私めは一介の冒険者の粗忽者(そこつもの)。辺境伯様への御目通り、誠に恐悦至極、先のご無礼、誠にご容赦、平に伏してお願い申し上げます」


「…はは。君は本当に()()()()の若者なのかね? そのような言い回し、貴族にもなかなか居ないぞ。良い、楽にしなさい。責めに来たのではないのだから」


「は! 寛容なるお言葉、感謝申し上げます。」


 何とか、場を繕い、顔を上げると、辺境伯以外の顔がおかしい。


「あ、あの皆さん?」

「い、いや、すまん。貴様があまりに()()()()()ので頭が追い付かなんだ」


 …失礼な! これでも元五十歳のれっきとしたサラリーマン人生だったのですよ!…


「ははは。まぁ良いではないかカークマン隊長。そんな事より、これで全員揃った。セーリス殿、頼む」


「…はい…******」

 精霊結界…なんか、嫌な予感…。


「では。…先ずは密命完遂、よくぞ成してくれた。領主として感謝する」


 カークマンとコンクランに対して、辺境伯が言う。


「…その際の最も優れた協力と助力、誠に感謝を」

 セーリスさんに向けて。


「…最後に。…その全ての作戦に於いての協力、更には()()()()の捕縛、無辜(むこ)なる市民の救助、辺境伯として、謝意と感謝を」


 …へ? 俺?


「…あぁ。ノートで良かったのかな? 君の知らせが発端となって今回の事は成せたのだ、感謝している。千顔の賞金については既に口座に振り込んだ。他の件についても色々決めて行かねばならん。先ずはこの場では此処までとさせて貰うよ」


「は! 有りがたきお言葉。謹んでお受けいたします」


「ウム。…では、再度招集有るまで、この街に滞在する様に。では」


 そう言って辺境伯と代官達は部屋を出て行く。その間、俺は頭を下げたまま。


「もういいぞ。」

「よくないです。()()()()()に良くない()()()()、ねぇキャロさ──!」


 ”ガバッ”

「むはぁ~~! なんですか?! 天国ですか!」

「…すっごいです! ノートさん! もう! もう! すっごいです!」

「キャロ…()()()()()()

「はぁ~。お前達、まぁ座れ…結界はまだ解いていない」


 ──…残ったのはギルドの面々…はぁ…



最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、


ブックマークなどしていただければ喜びます!


評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!


ランキングタグを設定しています。

良かったらポチって下さい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ