閑話
短いです
「のぉ、あ奴、性格変わって来ておらんか?」
「…まさか、いきなり悪意に触れてしまうとは…」
ノードとグスノフの二人は心配そうに彼を見つめる。
「ノート君…」
「フム、無意識下で、スキルを最適化して使っているが、心理負荷が効いておるな」
マリネラは悲し気に、エギルは現実的に。
「フッ…やはり、身体的にもっと、つよく──」
”ボカン!” ”キュー!”
エリオスは場外に。
イリスは黙ってノートを見詰める。
その顔には憐憫とも、悲哀とも言えぬ、唯、愛し子を憂い、言えぬ想いを込めて。
『…ざざ、…マリネラ姉様ぁ!』
それはセレス・フィリアからの祈り、と言うか愚痴? の様な魂の叫びだった。
「…どうしたの? セレスちゃん」
『どうしたじゃないですぅ! 何なんですか? あれ! 精霊が怯えて、泣いて報告してきましたよ! 人一人を、一撃で殴り潰したって! 潰すって何? そんな表現聞いた事ない!』
「あ、あぁそれね、うんうん。どうやら彼、逃げる賊を見つけたの。ソイツと戦闘になったんだけどぉ、グーパン一撃で頭パーンて」
『…は?! 姉様、何言ってんの? 頭パーンて? パーンてなに?』
「そのままの意味。殴って破裂させちゃった」
『………ねぇ。怖いんですけど! そんな人怖いです!』
「大丈夫! スキルがちょ~っと強く掛かっただけだから。それに、彼自身もその事でかなり動揺しちゃって後悔してる。今、悲しんでるの、彼自身」
『…え? 見てるんですか?』
「…うん。…ねぇ、セレスちゃん、私達は安易に地上に干渉できない。だからお願い、彼を守って」
『え? 最強に強い奴をどうやって?』
「もう、確かに身体やスキルは強いかもだけど、中身は違うの! ホントにホントに優しい、いい子なの! だから、心と体にギャップが出来てしまう。お願い、彼の心が擦り切れてしまったら、それこそ取り返しがつかなくなる。セレスちゃん。彼に心の安寧を。これは、地母神としてのお願い。ね」
『…神託じゃないんですね。』
「そんな事はしない…彼には楽しく生きて欲しいだけだから」
『はぁ~~~~~~。…分かりました。考えます。その代わり! 愚痴は聴いてくださいね! お~い! エールじゃんじゃん持ってき…ブツッ』
──そう言って、通信は切れた。
「セレスには苦労掛けてしまいますね…」
「イリス様…」
「…いずれ、彼自身で、気づくでしょう。でも今はまだ…その時私は…」
「その時は私も! 私も一緒に居ますから」
「マリネラ…ありがとう」
二柱の女神が話す後ろ姿を、残った男神たちはただ、黙って見ているだけしかできなかった。