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オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第1章 落っこちて異世界
36/266

第36話 やちまたを探して

 

 

 結界に阻まれ、煙を吸った男達は麻痺の薬に痺れ、バタバタと倒れていく。


「へ、ヘルマ…ン…」


 デックは痺れた口から相棒の名を漏らし、女を睨みながら蹲る。浄化(クリーン)を掛けて煙を飛ばしてから、俺は男達に近づいて行く。


「あんたがデック?」


 聴かれたデックは痺れたまま顔を向ける。


「その痺れた手で何するの?」

 握った手の中には先程の魔道具。内容は()()()()の刻印。


()()()()()()

 言われたデックは意味が分からなかった。だがチャンスだと思った。


「シィ・・にぇえ!」

 そう言って魔道具に魔力を注ぐ…。


「…ぅあ?」

 痺れていたせいで自身の身体に気づかなかった。

「あぅ…おりぇにょ…ぅえぇ」


 両手が魔道具を握ったまま足元を転がっていく。


「…ノートさん…貴方は…」


「…()()()、何だ…()()だ?」


 まるで、()()のような足取りで()()()()()、無表情で何の呵責(かしゃく)もなく腕を切り落とす。そんな人間をコンクランとキャロルはただ、遠巻きに見ていた。


「これは()()…はい、こっちに腕出して…ハイ・ヒール」


「「治したぁぁ!」」

「うひゃぁ!? なに? なに?」


 吃驚(ビックリ)して周りを見ると皆が目を見開いて固まっている。


「なになに?…皆、怖いよ…」

 言いながらヘルマンにも同じ事をする。


「「またぁ!」」


「ノートさん!」

 そこで、キャロルが駆け寄ってくる。


「ん? どしたの?」

「どしたも、こしたも無いですよ! あ、貴方! 光属性の()()()()まで使()()()んですか!?」


「あ! あぁ…それは‥ごにょごーー」

「ごにょごにょ言わない!」

「むごっ!」

 口をむぎゅってされる。


「…まぁ、()()()()()()()()()()()よ。それに俺、こいつ等を殺す気は無いですから。其処までの事されてないし。ただ、痛い思いはしてもらいましたけど。そのくらいは怒ってますからね」


「…貴方って人は」

「あ。デックとヘルマンはシェリーさんとキャロさんが()()()()んでしょ?」

「へ?…何でそれを…誰に聞いたんです?」

「シェリーさんです」

「…そうですか…はい、私達はこの二人に()()()()()()

「…はい。じゃあ、コンクランさん! 他の兵の皆さん! ()()を捕縛しましょう!」


「おい、ノート。あの二人は…」


 残って痺れて動けない賊を兵達が捕縛する中、コンクランがキャロルとデック達の事を聞いて来る。


「あぁ。()()()()に関しては冒険者ギルド経由で。()()は必ずお渡ししますので」


 ()()()()とは言えないけど…


「……そうか。()()()()()()()んだな?」

「…多分?」

「……ふぅ。わかった」


 コンクランは仕方ないといった表情で、残りの賊を拘束して兵達と一緒に戻っていった。


「キャロさん」

「…はい?」

「そいつら、一度ギルドの牢に連れて行きましょう。セーリスさんとも話したいし」

「そう…ですね。分かりました」


 二人を拘束しギルドへ向かった。



*******************************



「…そうですか。宿の方は()()と…」

「は!‥‥申し訳ございません」


 無表情のまま、マキャベリは報告を聞く。


(…フム。ジードの()()()()()を上回る…皇室魔術師並みか)


「…少し、()()()()が出ましたねぇ。まぁ、今は人手が足りません…ジード、()()はどの様に?」


「…は! ()()()()()です」

「クッ…ハハハハ!そうですか。()()()は仕込んで来たのですね」


(フフッ…虹の目。鑑定の時に起こる魔力の()()()()。そして、園。彼等の右手に施した()()()()()()による()()()()。我等へ辿り着く事はない…まぁ、手数は減りますが今回は仕方なしですか…)


「さて。我等も動きましょうか…子爵の方が上手く行って頂けると、有難いですね」

「…は! 娘に関しては…」

「…今は、()()()()()()…いずれ、また機会は()()()()()()。それまでは、大切に育てて頂きましょう」


「…御意…」


 (うやうや)しく頭を下げながらジードは(ほぞ)を噛んでいた。



*******************************



 その頃、子爵邸の厨房では、大将が声を出し、女将が()()()()動き回っていた。


「──そうです。まず、下処理にこの香草を…」

「…はい、此方の鍋を、お願いします──」


 子爵邸のシェフは、黙ってその様子を離れた所で見ていた。


(フム…手際が良い…()()()()()()も、問題ない。家の者達に物怖じせずキチンと話せている…はぁ~。其れだけに惜しい)


 シェフは自身のポケットに忍ばせた小瓶を掴む。


(俺も…昔は…料理の事だけを考えて…)


 そんな忸怩(じくじ)たる思いをしながら、小瓶の液体を少量、鍋に入れる。


(…済まん…俺の家族の為だ…すまん)


「…この鍋を」

「…あ、有難うございます」

 女将はシェフからその鍋を受け取り大将の元へ。


 ──その様子を、厨房の入り口からヘンドリクセンが見ていた。

「それでよいのです」



*******************************



『…で? お前()()()()()?』


 ギルドマスターの部屋で、仁王立ちのセレス様。俺は、絶賛ちびっ子精霊に()()()()()にされながら、詰問中。


「…あ、いひゃ、あにょれ‥」


 …なんで()()()()なんだよ! ハカセ! これってドユ事?

『…セーリスが泣きついて来たのだ!』


「…ファッツ? ()()()()? ナゼニ?」


『我も聞いて呆れたわ! 貴様! 結界と次元を()()()()にして弄っただと! この世界の人間にそんな(ことわり)、通用せんわ!』


 ンキャァー! 何で怒るんですかぁ。

『あのなぁ…そんな事、出来るのは、か・み・さ・ま・だけだ!』


 ………エギルぅ!!


「セレス様! 違うんすよ! 絶対エギル様のせいですぅ!」


『………ふぅ。兎に角。そんな()()()()()、幾つ造った?』


「…え? あ、あのスキルって等級有るんですか?」


『そこからか…いいか、スキルにはベース、ユニーク、個有。三種、在るのは知っているな?』


 …はい。


『で、ベースは基本スキルに分類されているから等級などは無い。固有は逆に数が無いから等級の付けようがない。だが、ユニークは違う。ベースの()()()()()()()()。それは個々によって、()()()()で世界に与える影響に多寡(たか)が生じるからだ』


『低級、中級、上級、超級、伝説級、神級まで分類が有る。因みに魔術にも同様な等級があるぞ、低級、中級、上級、上級高等、超級、ロスト・マジック、神級。これらが、魔力保有力や適性等によって変わる』


 …はぇ~こまけぇ~。


『当然だ! 低級であっても()()()()()とは異なるんだぞ。そこは厳密、厳格に管理しないと()()()()()が崩壊する』


 …あれ? でもちょっと内容が違うんですね。


『ん? あぁ。ユニークは過去に存在したスキルが現存できたりするからな。ただ、魔術については、その規模や、術式自体が分からない物や扱えなくなった物が有る。それらは総じてロスト(失われた)マジック(魔術)になるのだ。あぁ、後、上級高等と言うのは治癒術だけにある区分だ』

 …なるほど~~。セレス様! すっごい判り易いです!


『…(おだ)てられても嬉しくない。さっさと教えろ!』


◇  ◇  ◇


 キャロルはギルドの拘束牢の前で、二人の男を睨んでいた。


「ふぅ…やっと痺れがましになって来やがった」

「…。」

 ヘルマンはそう言って首を回しながら愚痴るが、デックは黙ったまま。


「…で? テメェはやっぱ、()()()()()()()()なんだよな?」


 ヘルマンが思い出したように話し始める。

「…あれは戦争だ…個人的に攻められる所以は無いと思うんだが…」


 そう言って、デックが静かに抗議する。


「フッ…()()…か。…お前達にはそう見えたんだろう。シンデリスは元々小国家の集まり。国としての(まとま)りは無かった。種族による集落程度だったからな。…だから、お互いの生活圏のぶつかり合いによる小競り合いはあった。長い間な。……でもそれが、貴様達、ヒュームの国に何か不都合があったか?」


「「…」」

 言われて二人は黙る。


「そうだ。そんなものはない。無かったんだ。お前たちが()()()()等とふざけた事をしなければな! お前たちが侵略したんだ! 最初に! 勝手に! お前たちの理由で! お前たちの()()で!!」


 ”ガン!ガン!”

 喚き、怒鳴りつけるようにしながら、キャロルは檻の鉄格子を蹴る。


「ハンっ! 何が地獄耳だ! 鷹の目! 猟犬だ! 貴様らはハイエナだ! 死肉を漁り、周りをいつもびくびくと怯えながら逃げ回る! だが、もう逃がさない! さっさと全てを吐くんだな。そうすれば慈悲(じひ)で地獄耳の所へ()()()()()


「貴様らのせいで…どれだけの同胞(はらから)が…幼い子供が…意味も解らず、声も出せず…唯、唯、死んでいったと…」


 そう言いながら、涙と共に抑え込んでいた感情が溢れ出す。


「我等、解放部隊は()()()()()()。故に貴様らの()()()()()。直にもう一人が()()。覚悟しておけ」



*******************************



 カークマンは一度、衛兵詰所へと戻って来ていた。


「状況は?」


「は! 現在、スラムに於いて発見した賊は捕縛し、地下牢へ収監しております。各手続きの為、現在鑑定人、及び、審議官を招集中です」


「そうか、で、何人捕縛できた?」


「現在、攫い屋()()()と思しき賊は十二名。潜伏場所は総てスラムにて発見。ただ…」

「ン? なんだ?」

「は! 潜伏場所に指示書や紙類と言ったものは発見できず、実行犯もスラム住人で構成されていまして」

「主要メンバーが()()と言う訳か」


「は! それと、二つ名持ちの【鷹の目】【猟犬】【地獄耳】ですが」

「奴らがどうした?」

 そこで応答していた兵は、コンクランを見る。


「なんだ?」

 カークマンがコンクランに聞く。


「は! 地獄耳については先程、()()()で発見されました。鷹の目、猟犬は現在、冒険者ギルドで()()()となっています」


(…惨殺体…キャロル達か…ふぅ。どうした物か)

「あの、隊長…」

「ん? なんだ」

「この事は()()()だと()()()()から言われました。そして、()()は必ずこちらに引き渡すとも」


「ふぅ…。そうか。その件については了解した。以降、確認は()()()()







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