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オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第1章 落っこちて異世界
35/266

第35話 園は虹の目



 少し時間が経った頃、宿に冒険者が集まってきた。


「おぉい! シェリー。入口の穴ぼこはなんだ?」

「あ! アマンダさん」

「お?! ノート! 大丈夫か? マスターに聞いて来たんだが、えらい騒ぎだなぁ」

「えぇ。なんか賊が暴れて…」

「そっかぁ。もう大丈夫だ! ()()()()が居るしな」

「はい! じゃあ、シェリーさん後は()()()()()()!」


「え? おい、ノート?」


 アマンダの疑問には答えず、そのまま宿を飛び出す。…キャロルさんは…これか! マーカーの詳細情報で名前サーチで確認後、走り出す。


(…マズイ。ジグが近づいてる)


 速度を調整しながら%表示をメニューに追加…マジ、便利。エギルサンキュ!



 南の路地から西の宿へ、キャロルは頭の地図を思い出しながら、気配を薄くし、駆ける。


「あ! キャロちゃん!」



 ──…ノートさん?



 路地から出て、幾つかの通りを抜け丁度半分ほど来た所で、ノートが居た。ノートは笑いかけながら、キャロルに近づいて来る。


「こんちわ。今日はどうしたんです? …外で会うなんて」

「あ、あはは、いえ。ちょっと野暮用で」

「へぇ。そうなんだ。あ! 丁度良かったあのねキャロちゃん──」



 …違和感はあった。最初に声を掛けてきた時と今。


 彼は私を()()()なんて呼んだことはない。()()()()()と初めて呼んでくれた時はちょっと嬉しかったのを覚えてる。


 でも身体が()()()()できなかった。


 眼では()()()()()のに。


 迫るナイフの切っ先が見えた。


 ()()は確実に正中(せいちゅう)を狙っていた。


 クソ! 何で!? コイツは一体()()だ?


 あぁ、シェリー。私駄目だったみたい──。


「こなくそぉ~~!!」


 “バキャァアッ!”

「グバァッ…」



 ──え? 目の前を凄まじい勢いで()()()()()()姿()()()()()()()()。横を見ると錐もみ状態で()()()()()()()。頭がフリーズする…()()()()


 間に合ったぁ~~。あ、キャロルさん固まっとる。


「ダイジョブ? ()()()()()


 そう言った瞬間、彼女の目からぶわっと涙が溢れる。


「ファ? 何? どっか怪我したの?」

「の、ノートさ~~ん!」


 瞬間がばっと抱き着かれる。んっはぁ! なんじゃこれは? 天国か!?


《ノート! 奴が起きた!》


 ”ビーム!” ”バジュッ”

「ぐがぁっ…あ、足ぃ、俺の足がぁっ」

()()()()()だ」

「がぁっ…はぁ?…グッ…何を」

「テメェ…()()()()しやがって」

「…お、お前、何で?」

「はぁ!? もう一本足は有るんだ。そっちも焼くか?」

「ま、待て!()()()()()()こいつは誰だ? 俺の偽も──」

 ”ドコッ”

「グベェッ…」

「あんたこそ()()よ。ノートさんは()()()なんて言い方で私を呼ばないわよ」


「コイツは()()だよ。()()はジェラルド・ホートマンって言う奴」


「な! なんでお前がその名を…」

「ん? あぁ。朝鑑定したから」

「はぁ~~?! ジェラルド・ホートマン!!」

「うはぁ! なに? どしたの」

「こ、こいつ、()()()()()ですよ。()()()!」

「そうなの?」

「貴族専門の()()()で、国中から、手配されてます!」

「あぁ、()()()なら出来るな。()()()()()持ちだもんな」


 ”バシン“

「ったい。何すんの?」

「もう、もう! 聞いてました? 今の話! コイツ賞金首!!」

「あ? あぁはい」

「国中からの懸賞金が出ます」

「…へ?」

「確か…今は…()()()()()()…くらい?」

「ファ?!」


 …って、え~と一セム十円換算で…い、一億え~ん!




*******************************



 なんやかんやで、キャロルさんを助ける事が出来た。街の衛兵を野次馬に呼んで貰い、ジグを引き渡して現場での軽い職質を受け、詰所にと言われた所で、キャロルさんが言う。


「すみません。こちらも、依頼遂行中なんです」


 カードを衛兵に見せて、後から出頭すると言って現在。絶賛小走り移動中という変な状況。


「…それにしても」

「な、なんですか?…」


「いや、いつも見てるキャロさんはこう、()()()()()? みたいな感じだったから」


「から?」

「うん! ()()()()()()()! エロかわ──」


 ”バチン!”

「いだい!」

「バカ! 女性にその言い方はダメですよ! 何ですか()()って!」


 そんな事を言うが、ずっと尻尾は()()()()してんだよなぁ…顔も()()()()()し。


「はぁい。でもそれって、キャロさんの戦闘用の着衣なんですよね?」

「…はい。私は魔力適性が身体能力側に()()なんです。まぁ、()()()()()には結構いるんですけど。なので、最大限に活用する為に特殊加工されてるんですこれ。すっごく伸縮性が有って対刃、耐衝撃等の(もん)()()()()()()ます」


「はぇ~。かっけぇ! 俺もなんかそんなの自分で作ってみよう!」

「な? え?! は? つ、作るんですか? 自分で?」

「…あ!…まぁいいか。シェリーさんにも()()()()話したし」

「何でシェリーが()()()()()()!!」

「みぎゃ! いきなり()()()()()ぇ!」


 そんな感じで二人で路地を進んでいった。



「この先ですか?」


 小声で彼女が聞いて来る。

 無言でコクリと頷き、前方の廃墟のような小屋を見る。この場所に来る前に衛兵には話をつけて現在応援待ちだ。


 現在二つのマーカーは、この中で数人の人間と一緒に居る。間違いなくデックとヘルマンだろう。


 まずは実行部隊の攫い屋たちを潰す。


 それが、()()で話し合った打ち合わせの一つ。末端から切り崩す。()()には隊長やギルマスが動いて行動制限する。そうして、身動きさせずに一気に捕縛と言うのが概要だ。


 後方から何人かの気配がしたのでそちらを見やると()()()()()が先頭に居た。


「コンクランさん?」

「あぁ。そうだ。此処に()()()の実行部隊の()()()が有ると聞いてな」


 まさか、副隊長自ら来るとは思って無かったよ。


「えぇ。あの小屋に。今六、七人ってところですかね」

「フム…やけに少ないな」

「多分、何カ所かに分散しているんでしょう。ただ、此処には俺の事を()()していた奴が居るので」


「あぁ。それで逆に尾行して、見つけたわけか」

「えぇ」…まぁ、そういう事にしておこう…。


 幾つかの打ち合わせの後、各々持ち場に散っている時だった。


 ”バタンッ!”

 小屋の扉が勢いよく開くと同時に何かがばら撒かれる。


 ”伏せろ!”

 声と同時にそれは炸裂(さくれつ)し、発火発煙する。

「クソ! 煙幕か! 気をつけろ! 煙に何か仕込んでいるかもしれん!」

 コンクランが叫び、隊員たちが散り散りになった瞬間、一斉に人が飛び出してきた。


「バラけろ!…【園】は【虹】の【目】だ! 行け!」


 先頭の男が何やら暗号のような文言を喚き散らして、猛烈なスピードでこちらに向かって来た。


「…ノートぉぉぉぉ!!」


 ヘルマンは既に覚悟していた。ジード達とアジトへ向かっている時に一人の男が合流してきた時の事。


「ジードさん!」

 その男はゼスと共に俺達と監視を交代するはずだった男。


「…何だ? ゼスは?」

()()()()に捕まった。恐らくゼスは()()だ。足をやられた」

「…女?」

「あぁ、全身黒ずくめの()()使()()()()()()()()だ!ありゃ多分内紛の時の…」


 …そこまで聞いて思い当たる。奴らだ!…俺達の部隊が壊滅させられた、ビーシアンの戦闘特殊部隊…その生き残りだ。


「そうか。で? お前はどうやってここへ?」

「は? そりゃ、奴が戦闘している間に逃げて──」

 其処まで言って、男は喉を切り裂かれて、その場に倒れ込む。

「ゼスに()()()()()


「…デック」

 デックは大振りのナイフの血を払いながら、事切れた男に吐き捨てる。


 ジードは男の喉笛を切り裂いたデックを平然と見ながら言う。

「お前たちは路地の三のアジトへ向かえ。恐らく、何かしらが動いてる。俺は()()()()()に行ってから合流する。【園】は【虹】、合図は【目】だ。」


 ジードと別れ、小屋に入るとすぐさま、デックが反応した。

「クソ!…何でだ? 何でもう見つかるんだ!」

「何だ? おい? 何を言ってる?」


 聴いた指示を()()()()()()、ノートが()()()()()()()()と共に現れたことを告げて来た。


 そのアジトに居たのは五人、皆名も知らない男達。

「クソったれ…おい、いいか、俺が先頭で出る。この煙幕を使ってな。()()()には神経系の麻痺薬が()()()()()()()()吸うなよ。その煙幕と俺の攪乱の間に()()()()逃げろ」


 …せめて! せめてノート! 貴様だけでも!


 ”キィン!”

「…は?」


 確実に機先を制していたはずだ。現に女は対応できずに目を見開いているし、でかい図体の衛兵は固まっている。ノートに至ってはこちらを見ても居ない。


 なのに…なのに何で俺の腕が無いんだ? さっきの金属音はなんだ?


 あっけに取られて足を止めたヘルマンが、自分のすぐ傍に落ちているナイフを握った腕に気づく。


「落ちた腕のナイフが地面に弾かれた音?」


「何言ってんだ? お前?」


 …ビビったぁ~。コイツ、急に飛んできたぞ今! これがホントの()()()()って奴か?…

《…いや、俺はお前が何したかの方が気になるんだが》

 …え? あぁ、()()だよ、物理遮断。俺の前とコイツの間、空間が無いの。だから、そこの部分が()()()()()()コイツの傍に落ちただけだよ。


《……いや、怖いわ! なにそれ!》

 …え? 大丈夫。もう無いから。

《違う! そうじゃない!》

「…あ、あのノートさん…今、なにを?」

「へ? あ、あぁぇぇと…()()()()()()…」

「…いや、ごにょごにょってはっきり()()()()()くださいね」


「がぁあっ!…クソったれぇえ! テメェ! ノートォ!」


 腕をなくした男が、目を血走らせながら、喚き散らす。


《おい! 奴の後ろ!》


 ”ガンっ”

 ”痛っ” ”なんだ? 壁?” ”おい! 馬鹿喋るな! うぐっ”


「…な、何が?…おい! 皆! デックぅ!…がはっ…」


「だから、喚くなよ。あっちも結界だ。もう奴らは動けない」

《…周りの俺達もだよ》


 ──…え? 仲間にそんな事しないよ。





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