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オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第1章 落っこちて異世界
34/266

第34話 何をか言わんや



「ジードさん、あ、あのゼスは?」

「ん? 先に出たが? 居ないのか?」

「は、はい、まだ来ていません」


 おかしい…奴は時間通りに出発させた…何かあったか?

「…おい、お前とお前、ゼスを()()

「「…。」」コク。

 言われた二人は無言で来た道を戻っていく。


「…ゼスはアイツらに任せる。で、こっちは?」

「問題ありません。」

手筈(てはず)通りに」

「そうか。ではノートも」

「はい。()()()()()()()()


「ではお前たちは裏口へ。俺達は入口を()()


 そう言って、ジードは堂々と宿に向かって歩き出す。


「良し…俺達も行こうぜデック」

 ヘルマンはそう言って、歩き出そうとしたが、デックは動かずそこにいる。


「…どうした?」

「変だ。ゼスが時間を間違(たが)えるはずが無い」

「おい! 今は裏口に行かないと!」

「そうじゃない! なんで()()()()()()()()? 俺達が襲う事に気づいて──」


 ”ドカァァン!”


 突然の爆発音に吃驚(ビックリ)して振り向くと、()()()()()の連中が吹き飛ばされていた。


 ”何だぁ!?” ”クソ! いってぇ” ”うぅ…”


「…何だ?!」

「爆発?!」


 突然の爆発に、周りの人も出て来て、何事かと騒ぎになり始める。


 ”なんだ?” ”おい!何が有った?!” ”きゃ!人が倒れてる!”

 ”大丈夫か?” ”おい!衛兵を呼べ!”


「…おいおい、こりゃ何だ? ()()()んじゃないか?」

「見つけた! やっぱり! …()()()だ! ()()()がやったんだ!」


 そう言いながら、デックが声を張り上げて、宿を見上げる。


「な、何が? 誰の事を……」

 ヘルマンがデックの視線を追うと、三階の窓に人影を見つける。


「──…ノート!」



 …おをふ。

 サン・レイって、地面に撃つと()()()()()爆発しちゃうのね…。


《…お、お前、そのスキルは()()()()とか言ってなかったか?》

 …てへ。()()()()()()だ~いせ~いこう! みたいな?


《……いや、なんの事か判らんぞ》


 ──もう! ()()()()()()()がおじさん辛い!



 なんだ? 何が起きた? デックがなにやら、ノートが()()()と喚いているが…まさか()()()のスキルか? 何のスキルだ? 前触れも、兆候も感じなかったぞ。クソ! 厄介だ。そう考えたジードは、一瞬で考えを改めて行動する。



「おい、変更だ! 一旦、()()()()()ぞ!」


 路地の二人に声を掛け、自身もその陰へと逃げ込んで来る。ヘルマンが、逃げ遅れた連中の事を聞くが、ジードは振り向きもせずに言う。


「捨ておけ!」


 一言でそう切り捨てて、ジードはそのまま姿を消す。


《アイツが(かしら)の様だな》

 ノートの横で冷静に戦況を見ていたハカセが呟く。


 …みたいだな。上司に()()()()()()()()よ。成功は自分に、失敗は部下に。…あれはその典型だな。胸糞(むなくそ)だ、呆れて物が言えない。怪我した奴らを放っていきやがった。


《……すまん。例えが()()()()()()



 ──宿の前には()()()()()が集まり始めていた。



「「(あに)ぃ…」」


 あ! 皆居たんだった…

「あの──」


「「スゲェ!」」


 …ファ?!


 ”なんだ今の?!” “手出しただけだった” ”ドカァン!”って。

 ”み~んな逃げてった”


「皆! 落ち着いて! 騒がない!」


 ワイのワイのと騒ぐ子供たちを落ち着かせ、今一度言い聞かせる。


「良いか? あんな事は何時でもできる事じゃない。言わば奇襲だ。だから、()()()奴も居る。()()()()奴も居る。全部終わるまで()()()()んじゃない」


 そう言うと、さすがは()()()()()。一瞬で切り替える。


「「分かった」」


 …よし。ハカセ。セーリスさんとこの精霊に話し通してる?

《あぁ。逐一(ちくいち)報告している。現在()()()()って受付嬢がこっちに向かってるそうだ》


 …へ? シェリーさんが、何故?

《さぁ? 俺には役職の事は分からん。だが、かなりの速度でこちらに向かってーー》


「ノート君!」

「うひゃぁ!」


 ハカセの念話をぶった切って窓の(へり)に突然シェリーさんが現れた。


「「うわあぁ!!」」

 ちびっ子パニック!


「こ、ここ二階ですよ!」

 何とか声を出してシェリーに話す。


「ん? あ、そうだった。」

 いやいや、え? 今気づいたの? ()()()()()だよ。…再度ちび達を落ち着かせ、階下の食堂でシェリーと話をする。


「いきなりで、ごめんなさい」


「い、いえ、それはもういいです。でもなぜシェリーさんが?」


「…()()()は後で。私とキャロルはセーリスの元パーティメンバー。だから、ランクは()()()()()ミスリル。」


「ファ──? え? そんなに強いって事?」

 コクリと頷くシェリー。


「とにかく今は状況整理が先、表の惨状は君?」

「え? あ、はい」

「…そう。()()()()()()?」

「いえ、デックとヘルマン、それと()()()って奴と何人かは逃げました」

「デックとヘルマン!」

「え? 知ってるんですかあの二人」

「…不俱戴天(ふぐたいてん)(かたき)。…まぁ、今は置いておく。ジードって言うのは?」

「恐らく()()()()()かと」

「そう。じゃあ、表のは()()だけね」


 そう言って、彼女は少し間を開けてから聞いてくる。


「貴方はマジック・キャスターで()()()()()?」

「い、()()は」

「それじゃダメ。戦力把握は()()()としたい。他には何が出来るの?」


 どう言えばいいんだ…

《セーリス様は()()()()()()と言ってる》


 そうか。…ならいいか。


「あ、あの()()()ならほぼ()()()()

「……。」


 そう聞いた瞬間、パチクリと目を(またた)かせ、シェリーはきょとんとする。

「…ほんとに?」

「ま、まぁ今()()()()()()じゃないし」


「…そうよね。セーリスの()()だし」

 え? そんな立ち位置なの俺?


「ねぇ。聞いたんだけど、貴方、連中の位置が()()にわかるってほんと?」

「はい。()()()()()()んで」

「聞いた事ないわ、そんなスキル。まぁ良い、此処(ここ)は私が守るから、貴方は連中を追って」


「え? 一人で大丈夫なんですか?」

「もうすぐ、他の冒険者も来る。私が()()しただけ。それに…」

「…?」


()()()()()()()


「どういう事だ!?」


 ──思わず怒鳴ってしまっていた。




*******************************




「副隊長! 西街の外れの宿付近で()()()()が起こったと」

「何?! どの場所だ?」


 コンクランは詰所で各隊の指揮連絡を受けていた。壁にある地図に目をやり隊員の話を聞く。


「…サラの宿か!?」

「何人向かった?」

「は! 一班です」

「…六人か」

「予備でもう二班廻せ! 連絡を密に! ()()()()()なら最優先だ!」

「は!」


 …奴ら、ここに来て()()()()()か? それとも何かの陽動か? サラの宿での爆破…サラ自体は宿に居ると聞いている。冒険者ギルドがバックアップに入っているはずだが…。


「報告します!」

「何だ!?」

「は! 南街スラム付近にて、()()()()()()を発見との(しらせ)です。」

「…撲殺斬首(ぼくさつざんしゅ)?!」

「は! 目撃者が()()()()でして、現在詳細確認中です」


 えぇい、こんな時に次から次へと…。

「分かり次第こちらに回せ! 捜索には何人出た?」

「は! 確認併せて三班です」

「…よし。そちらも、攫い屋関連なら最優先で連絡を!」


「報告します!」






「これはこれは。カークマン隊長。本日はどの様な()()()()で」


 中心街の富裕層向けの宿の一軒に、カークマンは三人の隊員を連れて、訪問していた。


「あぁ。少し、話がしたくてな。支配人を呼んで欲しい」

 フロントの男は慇懃に頭を下げてから答える。


「…少々お待ちを」


 ()()()、宿の支配人が現れる。


「これはカークマン隊長殿。何やら話と聞きましたが」

「あぁ。ここでも良いが、そちらは構わないか」

 そう言って、懐からちらと筒状の手紙の一部を見せる。

「…!! これは失礼。すぐに部屋を用意します。こちらへ」


 支配人は冷や汗を見せぬようにこやかに頭を下げ、フロントマンたちに指示を出す。



「…して、その書状は?」

 奥の防音魔術のかかった部屋で支配人は小声で話し始める。


「辺境伯様の勅令(ちょくれい)だ。貴様の情報は伏せる故、全て話せ」

「…すべて…ですか」

「そうだ。ここには()()はずの()()()()()()()()()宿()()()簿()を見せてもらおう」


 支配人は逡巡(しゅんじゅん)する。

 あの()()()()は正に辺境伯の物。だが、この街で長年()()()()()()宿()として、やってきたプライドもある。


 此処には()()()()()()()()も宿泊される。その宿が宿泊名簿を外部に見せたと()()()()()どうなるか。


 解っている。


 断ればこの街どころか、辺境にある全ての街で()()()()()()()。だが、それは見せても結局同じ事。そういう輩は耳が早い。

 

 背中をじっとりした汗が伝う。


「どうした? 出せぬか? では、代わりに()()()()()()。正直に答えるならばよし。違えば。分かるな」


 ──其処(そこ)で支配人の頭は思考停止してしまった。()()()はここだと、思ってしまった。















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