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オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第1章 落っこちて異世界
32/266

第32話 踊れや踊れ



 宿の自室に戻って一息つく。少し間を置いてから小机に向かい、アクセサリーの部品を手元に出したところでふとメニューに気づく。


「…ン?」

 見るとメールが一通届いていた……エギルからだ。


 報告

 * 前回報告分の不具合状況については解消

 ①データベースのメンテナンスは終了

 ②君の魔力保有力は現状維持

 ③現在の知識等はその世界で摺合(すりあわ)せを行った方が良いと判断された


 * 新規スキルについての考察


 * 新規スキルについては、折衝の末、ノートのみの限定スキルに決定

 * スキル名は 【ビーム】 【サン・レイ】

 * 今回のスキル作成に於いて非常に能力が高い事が証明された。故に、パッシブスキルとして【スキル能力出力調整】の創造を推奨する

 * 【透明化(ステルス)】のスキル化については検討中。


 以上


 補足 今回は君の能力使用効率が良い事が判明した。錬金に関しても、その発想力でこの世界に刺激を起こせる事を願う。但し、くれぐれも悪用無き事を望む。


 エギル   



 …相変わらず、この…異世界感()()()()の報告書…まぁ、判り易いから良いんだけど…悪用って何だよ。


《……覗きだな》

 限定的! そして的確なご意見ありがとう!! …ふぅ、大体()()()()のに、どないせえと言うんじゃ。


 …発想力かぁ…ハカセぇ、俺ってそんなに()()()()考え方してる?

《…まず、常識が通用していない…いい意味でな》


 …ファ?

《我ら自由な精霊であっても、()()()()(いじ)るなどと言う()()()()、先ず考えない》


 …ほう。

《光にしてもそうだ。光はひかり。明るく照らすものであって、()()()()()()()? そんな事、分からない。熱は火や炎の()()だからな》


 …なるほどなぁ。熱力学? だったっけ? ()()()()()をその正反対の()()が理解するってのもおかしな話だよな。


《…お前の()()()()、物理学…()()()のかもな。》


 等と雑談をしながら、手を止める事無く、錬金を進めて行った。


「ノート兄ぃ! 夕飯だぞぉ!」

「…ん? おぅ、もうそんな時間か。今行く!」


 …あの後、残った部品で二つ追加できたアクセサリーとポーション類を異界庫に放り込み、部屋を後にした。


「お! 今夜はステーキか!」

「今日は、フォレスト・ボアの良いのが入ったんですよ」


 女将さんはそう言いながら、皿を置く。

「へぇ、ボア(いのしし)ですか?」

「はい。()()らしいんですけど、肉質はイイですからね、人気の品の一つですよ」


「そうなんだぁ。あ! 女将さん、()()()()で話があるんでお店、終わったらまた集まってもらっても?」


「分かりました。皆にも伝えておきます。場所はここで?」

「構いません。すぐに終わりますし」

「はい。ではごゆっくり」


 さて! この()()()! 堪りませんな!


 ステーキなんて何年ぶりだろ? 社畜時代には…いかん! 涙が。


 そんなほろ苦い思い出を振り払う様に肉を口へ運ぶ。


「…‥‥ンまぁーい!」

 牛肉とは違い、噛み応えはある。だが! この赤身! ()()など一切なく。油の()()()もない! まさにオッサン向け! 途中に野菜やスープで油を誤魔化す必要もなく、一気に肉を食いきる。


「女将さん! ステーキお替り!」


 その後、二度ほど肉のみお替りをしたのだった…。



「うぇっぷ…調子に乗って食べ過ぎた…」

 お腹を摩りながら、食後の珈琲を楽しむ。……はぁ…至福。


「ふふ。ノートさん、すっごい食べてたですぅ」

「お? サラちゃん。いやぁ、ンまかったよ。お替りなんてひっさびさだったよ」


「良かったですぅ。このお皿さげますねぇ」

「ありがと」


 下がっていく彼女を見ながら、マップを見やる…今日は外に二人…か。

 店の向かいの路地に二人、じっと動かない赤点。


《…いつもの奴らだ》

 そっか。デックとヘルマンだったか…赤に色が変わったってことは完全に敵対したんだな……そんな事をぼうっと思いながら店じまいを待った。



「…さて、皆に話す前に、ちょっと待ってね」

 閉店後の食堂。集まった面々に一言断りを入れる。


──【遮断】を発呪する。


 新スキル()()を使い、食堂を()()()に外界と切り離す。()()()()は視覚的にはそのままという事。結界と違うのは、本来気を付けてみると薄い膜の様なモノが見える。言わば蚊帳(かや)を張ったような状態だ。蚊の代わりに、魔術や物理的衝撃を中に入れなくする。


 だが今回俺が張った遮断は、外界と接点がない。つまり、目には見えるが、触れた瞬間に、結界の反対側に通り抜けてしまうのだ。

 

「な、なにを?」

「大丈夫。結界みたいなものを張っただけですから」


「「「スゲェ! ノート兄ぃ、すげぇ!」」」


 皆が落ち着くのを待ってから、話し始める。


「じゃあ、いいかな? 明日の事についてと──」



***************************



「…ジードさん、明日じゃ無かったんですか?」

()()()()()だ。今夜は()()()だ」


 時刻は深夜を過ぎた頃、監視役の二人の下にジードが一人の男を連れて来た。


「…ソイツは?」

 デックが訝しむ様にその男を睨む。


「…あぁ。アンタらと()()()()()()()か。俺はジグ。よろしくな」


「【千顔(せんがん)】のジグか?!」

 その名を聞いたヘルマンが驚き、堪らず声を上げる。


「おい。時間を考えろ」

 ジードの鋭い声に押し黙るヘルマン。…デックはヘルマンの声に思い出していた。…千顔のジグ!…変装スキルの()()()()()()持ちか?!


「大丈夫だ。今日()()はやらない。コイツの()()()に来ただけだ」


「はは。そういう事で一つよろしくな」

 ジグは軽薄そうな笑顔で言うと、ジードと共に宿の裏口へと向かった。


「…あれが、千顔。」

「顔は忘れろ。アイツの素顔は無いらしい」

「は?」

(アイツ)は昔、スキルの為に素顔を自分で()()()そうだ。それ以来、奴の顔は()()()()()()()()()様になったと聞いた」


 …そこまでしてスキルを…恐ろしい奴も居たもんだ。


◇  ◇  ◇


《…だ、そうだ。》

 …は~~。おっそろしい人だねぇ…自身の顔を焼くなんて。マーカーが増えた時にアラームが鳴った。黄色一つに赤一つ。


 そして、ハカセが聞いた情報。


 ()()()()()()()…。変装って言ってたから千顔かな? なんか、この世界、二つ名持ち多くね? 流行りか? ま、いいけど。


 で、その二人が現在、俺の部屋の前あたりに居るわけだ。……まぁ、開かないけどね。()()()()だし。


「…開かないぜ?」

「フム。」


 どんな仕掛けだ?…魔道具の()()は無い…精霊も…違うようだな。


 そこでジードは考える。ここで、自身のスキルで押し入ったら計画は破綻する。しかし…。


「…仕方ない。朝一でお前はノートを()()しろ。それまではあの二人と行動だ。俺は少し()()()()をする」


 そう言って二人は宿を出ていく。


《一人は監視の所へ戻った…もう一人は…クソ、()()()しやがった。追えん》

 …大丈夫。マーカーしたから。んじゃ、明日の事が有るし俺は寝るよ。

《…わかった》



 チチ…チ…

 …ン…ンぁ…あさ?

《朝だ…》

 …はぁ。起きますか…ふわぁぁ~。


「やぁ。おはよう! 勤労ちびっ子たちよ!」

「「「おはよう!」」」

 ”ちびって言うなよ~” ”ノート兄ぃ髪の毛変だ!”

「お! ユマもおはよう。」

「おはよ。兄ぃは元気だね…」

「ん? どした?」

「昨日の話し…やっぱ怖くてさ」


 そう言うユマの頭を優しくなでる。


「大丈夫。その為にちゃんと準備もしたし、()()も付いてる」

 腰のあたりに付いたブローチを指す。


「後は俺を信じろ」


 そう言って笑いかけるとユマは顔を上げてはにかむ。


「わかった! 兄ぃを信じる! サラ達の事お願いね」

「おう!」

 気付くと三人も側にいた。


 …頑張らないとな。



《おい、気をつけろ。昨日の男がこっちに来るぞ》

 食堂の入り口でハカセが声を掛けてきた。


「おはようさん。アンタも今から飯かい?」

 そう言ってソイツは俺の肩に触れる。


「…あぁ。そうだけど?」

 マーカーは黄色のまま。


「一緒にどうだ?」

「…別に構わないよ」

《おい!本気か?》

 …まぁまぁ。こっちも()()()()()()()は嫌だからさ。それに()()したいし。


「おお! そうかい。じゃあ座ろうぜ! おぉい!朝飯こっち二つ!」


「あ! 俺の名前はジグ。あんたは?」

 二人席に座りながら話しかけて来るジグ。


「俺はノート。この街に出て来たばっかの田舎者冒険者だよ」


「へぇ。そうかい? にしては堂に入ってるぜ? 修羅場()()()()って雰囲気だ」


「ん~。どうだろ? 田舎じゃ、周りに魔獣は当たり前だったしね」

 等と、適当に相槌を打ちながら鑑定を掛ける。


 Name ジグ(ジェラルド・ホートマン)

 Age  28

 Sex  ヒューム 男

 賞罰  殺人 恐喝 詐欺 etc…


 おうおう…犯罪のオンパレードですな。ってか()()かよ。スキルは…


 所持スキル

 身体強化 風属性 

 ユニークスキル

 変化(へんげ)(身体含む)


 ん? 身体含む? コイツ、変化じゃなくて変身スキルじゃんか?!


「ん? どうした? 俺の顔、何かついてるか?」

「あぁいや、なんかどっかで見た様な顔だなぁと」

「ははは! そうかいそうかい。でも俺はアンタとは()()()だ」


「そうか。()()()()()って奴かもな」

「…へぇ。俺に似てる奴が居るんだ…」

 突然、声のトーンが変わった。


「ん~まぁ、うろ覚えだから自信は無いけどね」

「…そか。」


 そんなやり取りをしながら食事が終わる。

「ふぅ。食った食った。じゃあ俺はそろそろ行くよ。縁が有ったらまたなノート」


 そう言ってジグは手をひらひらさせて食堂を出て行った。

「さて、俺も支度してーー」

「あ、ノートさん!」

「なに? サラちゃん」

「あ、あのさっきの男の人、食事代を…」

「…あ!…俺が出すよ」

「…はい。35セムですぅ」


 …あの野郎! 許すまじ!







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