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オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第1章 落っこちて異世界
30/266

第30話 果たして役者は 



「これを私たちに?」


「うん。…これはサラに。…こっちとこれは大将と女将さん。残りは皆同じ意匠(いしょう)だから、4人に」


 サラに手渡したブローチはシルバーの台座で意匠は(つばさ)。包み込むように廻り込み、青紫の魔石を覗かせている。


 大将と女将さんにはシルバーの台座で意匠は(つた)。絡むように包み込んで赤緑色の魔石が嵌まっている。


 4人にはシルバーの台座で意匠は妖精(フェアリー)。抱える様に魔石を支えている。色は琥珀(こはく)色。


 それぞれに渡したが、皆一様に目を見張り、固まっている。


「あ、あの、どうしたの?」

「ノートしゃん!!」

吃驚(びっくり)したぁ! なに? サラちゃん」

「あ、あにょ。こ、こんにゃ、高価そうな…」


 皆が同意見の様で、こくこく頷きながらこちらを見ていた。


「ファ? あ、あぁ。大丈夫、全部俺が作った奴だから。気にしないで──」


「「「作ったぁ?!」」」

 キ───ン!

「な、なに? 煩いよ? ってか徹夜だったから頭に響くんで…」


「こ、こんな凄い物、貰えないよ!」

「駄目! 必ず付けてね。皆も。服の中でも()()でもいいから」


 それでも皆は固辞してきたが、何度かの押し問答の末、なんとか納得させた。このアクセサリーは()()がしてある()()()だ。絶対つけて貰わないと俺が困る。


「じゃあ、朝ご飯貰ったら少し寝るよ。ユマ、()()()()()()ね」


 まだ、アクセサリーをぼうっと眺めるユマに言って食堂で飯を食って部屋へと戻った。部屋に入るなりベッドへ飛び込む。


「間に合った~~…ZZZ]

《…眠ったか。…セレス様…はい。…だいじょ──》

 そこまではハカセの声が聞こえていた。



***************************



 俺が眠りについた頃、衛兵詰所は()()()だった。


 朝一で住民から通報があり、兵が向かうと路地に二人の死体が見つかったのだ。お互い、争った形跡はないが、一人は胸を一突き。そして、もう一人は苦悶の表情で胸を()(むし)る様に(うずくま)って死んでいた。


「クソ!…結局こうなったか」

「…ハミル」

 カークマンは死体を見て毒吐く。コンクランは苦渋の顔をしていた。


「この男は?」

 カークマンが周りの兵に聞く。

「は! ジェラルドと言う冒険者だそうです。昨晩、()使()として来たと張り番が」


「勅使?! 誰の?」

「は! ()()()()()()()()()()と聞いております」

「ドエル?…聞いた事が無いな。どこの家の騎士だ?」

「フィル・セスタ子爵様の様です。紋章付きの手紙を(たずさ)えて居たと」


「何?! この事、子爵は?」

「先程、知らせに向かいました」


「……クソ! どうなっている?」

「……。」


 カークマン隊長はコンクラン副隊長と二人、顔を見合わせ、その場に立ち尽くすしかなかった。



***************************



(シルバー)ランクの冒険者が街中で殺された?」


 セーリスは朝一でけたたましいドアノックの音と共に、入ってきたキャロルからその知らせを受けていた。


「はい。今しがた、衛兵の方がカードをお持ちになって。此方の方でも確認が取れました。…名前はジェラルド。()()()()()()の銀ランク。主に()()()()()の依頼を(こな)していたそうです。」


()()()か…他に判っている事は?」

「…はい。詳細については確認中ですが、衛兵の方の話しでは、()使()でこの街に昨夜遅くに来たとの事です。荷は不明。宛先はドエル・ゲイブ騎士様。どうやら、フィル・セスタ子爵様の騎士爵だそうです」


「フィル・セスタ子爵…()()()()なってきたな。」

「…それと」

「まだあるのか?」


「…どうやら、このギルドで待ち合わせして居たという事なのですが…」

「は? 騎士が? こんな所に?」

「…えぇ。勿論、()()()()()、来られては居ませんし、連絡も聞いていません」


 執務机の椅子に深く腰掛け、セーリスは黙考する。


 …なんだ? どういう意図が? 大体、()()()()は騒いでいなかった。街で()()なぞ、それこそ、シルフがすぐに教えてくれるはず。


 何か見落としが…存在が()()な攫い屋と闇奴隷商人…子爵への()使()。殺された冒険者…違和感は何処に…。


 シルフ達すら()()()()()()…闇精霊!? ──…まさか?



「こんちゃ~っす」

 間延びした挨拶をしながら、ギルドのドアを潜ると何とも言えない雰囲気が漂っていた。


 …な、なに? どしたの?


《…冒険者が今朝、街中で死体で発見されたらしい》

 え? なにそれ!? 俺が寝てる間に何が有ったの?


「ノートさん!」

「みぎゃ!…なに? あ、キャロさん」


 真横からいきなり声を掛けられて思わず、変な声が出た。


「さぁ。行きますよ」


 俺のキャロ呼びに全く無反応で、腕を脇に抱えてズンズンと進む。


 …あ! ()()()()ってなった!! ()()()()って!


 受付の横を抜ける時、シェリーさんが横目で睨んでいたが、俺の()()()()()は腕に有るので気にならなかった。


「…フンっ!」


 ──…あ! なんか、怒ってた?


 マスターの部屋ではソファで()()()()()()セーリスさんが居た。


「ん? おぉ。来たか」

 俺が対面のソファに腰掛けると、キャロルさんは奥の茶器に向かう。


「あの、冒険者が街で死んだって…」

「あぁ。今朝、街の路地で兵の一人と共にな…」


 ”かちゃ、かちゃ”

 とカップをテーブルに置き、キャロルさんが説明してくれた。



「成る程~”ずずっ”」

 返事をしながら紅茶を啜り、一息つく。


「それで? 容疑者に心当たりは?」

「まだ何も…」

《…どうやら、精霊も解らなかったそうだ》


 そっかぁ…なら、その冒険者、()()()()()()()()()()んじゃない? 兵の方は分んないけど。


「何だと!」

「ふぁ?! どうしたんすか、急に」

「そうか!…入れ替わりか!」

「はい?」


 セーリスさんが一人で突然納得したようにブツブツ言いだしたせいで、俺とキャロルさんは置いてけぼりを喰らってしまう。


「キャロ! すまんが、ノートと出る。カークマンと話がしたい、後を頼む」

「へ? あ、あぁ、はい解りました」

「行くぞ!」

「来たばっかり! お茶くらい飲みた~い。せっかくキャロさんが淹れてくれたのに~」

「フフっ…また何時でも淹れますよ」


 …いや、違うの! そうじゃなくて! そのピコピコと、ふわふわをね…


《…お前はブレないな》

 何故かセーリスさんが俺の(えり)を掴んで引き摺る様に部屋を出て行く。


◇  ◇  ◇



「何ですって? 死体を運んだ別人?」

「多分な。何しろ()()()から来た冒険者だ。(かお)は判らんからな」


「だが、カードはどうする?本人が居ないとーー」

()()()にでも死体を()()()おけば問題ない」

「…!そうか。」


「…だが、ハミルは? 彼は何故?」

「うむ。そこはまだ、私にも判らんが…」


 そう言って俺を見るセーリスさん…はいはい。ハカセ。お願い。


《…分かった、少し待て…***》

「因みに彼は街にずっと居たんですよね?」

「…多分、スラム街だと思う」

「あぁ。なるほど…」


《ノート。判ったぞ。》

 …ありがと。どんな感じ?


《やはり、冒険者の死体については判らんそうだ。初めから其処に在ったらしい。その後男が来て、その死体を見ていきなり苦しみ出したそうだ。ただ…》


 …ん? なに?

《いや、そのシルフが言うにはその男の名は()()()と言って居たらしいぞ》


「ドエロ? なんじゃそれ?」

《ド・エ・ル!》


「「なに!?」」

「うひゃ! 何ですか! もう…」


「今、ドエルと言ったか?」

「え、えぇ。ドエロじゃないですよ、ドエル! ですよ」

「…お前が間違ったんだろうが」

 …てへ。


「……。」


 お願いです。懇願します。哀しい目をしないで下さい。


「…では、ドエルとは」

「あぁ。間違いなく、ハミルは()()()に使われたな」


 セーリスが()()をしながら話す…あぁ。スルーも()()()()


「…子爵は何を考えている? 何でここまで大事(おおごと)にする?」

 カークマンが机を叩きながら吐き出すように言う。


「待て隊長。よく考えろ、今の証言は精霊の物だ。言質が取れん。なら、いくら私たちが言い募った処で意味がない。()()使()()の私であってもだ」


「そうだった…クソ! 部下が殺されたのに…分かっていても何もできないなんて!」


 “ガン”と机を蹴るカークマン。


 ”コンコンコン”

「なんだ!?」

「エクス代官様の使者より()()()()()が届きました!」

「入れ!」


 封蝋された大きな書類みたいな物と確認書を受け取り、サインをして兵に受領書を渡した隊長が封を解く。


「…こ、これは」

「ん? どうした?」


 セーリスさんが一緒にその書類に目を通す。



***************************



 ”コンコンコン”


「はい?」

「ハンス様、フィル・セスタ子爵様がお見えになりました。応接の間にてお待ち頂いております」


「ふむ。分かりましたすぐ向かいます」


 総合ギルドの最上階。


 ハンス・コルゲン代官は執務机の引き出しを開け、小箱の中から指輪を取り出し嵌める。


使()()()()()を祈りましょう」


 彼はそう呟いて、部屋を出て階段を一階分降り、一番大きな応接間へ向かうと、入口に彼の私兵らしき姿が目に入る。


(ふぅ。中にも何人侍らせているんでしょうね)


 心の中で愚痴りながらも爽やかな笑顔を私兵に見せ、ご苦労様ですと声を掛けて、会釈をする。


 私兵はちらと代官を見ると、返事もせずに振り返って背にしていた扉を叩く。


「お見えになりました」

 部屋の中の者に伝えた後、ドアを開いてから、初めてハンスに振り返り、一言。

「主がお待ちです」

「有難う」


 部屋の上座の席にさも当然の如く。


 その大きな腹を見せびらかす様にソファに腰掛け。後ろに2人、ドア横にそれぞれ私兵。ソファの傍には家令のヘンドリクセンがにこやかに立っていた。


「これは、子爵様。ご機嫌麗しゅう。本日はわざわざ、この様な下々の場所へのご足労、誠に申し訳なく存じます」


 そう言って貴族らしい立礼をして、子爵の言葉を待つ。まぁ、彼が直接話はしないが。


「それには及びません。()()殿()。本日はこちらの用向き。こちらが、顔を見せるのが当然でしょう」


 やはりヘンドリクセンが当たり前のように答える。


()()()、男爵と呼ぶか…困った御仁(おひと)ですね)

「これは、有りがたき。」


 まだ、本題はおろか、座っても居ない。笑顔でほんの少し顔を上げるふりをする。


「おや。これはいけません。男爵殿を立たせたままでした。どうぞ、お掛け下さい」


 ()()()()()頭を再度下げてから。


「ご配慮痛み入ります」


(ふぅ…やっと、話せますね)









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