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オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第7章 世界
232/266

05



「――サンドワーム!」


 シェリーの叫んだ声に、目の前に現れたクソでかいミミズのようなモンスターの名が知れる。その声を合図に、左右に割れて飛び退ると、その場にワームが飛び込んできた。


「――クッ!」

「何で()()()がこんな場所に!?」


 俺とシェリーは左右へ、セリスは飛ぶように後ろに向かって飛び退ると、誰もいなくなった地面にソイツは頭から突っ込む。


 ――ドコォォォォ! グシャグシャグシャ!


 あわや自滅かと思ったそれは、地面にその口が触れた瞬間、思いもよらぬ結果を引き起こす。口腔内にあったはずのすり鉢状に並んだ歯が、まるでドリルのように口から飛び出すと、その名の通りに地面を抉り、掘り込んでいく。そうしてその掘られた土は、そのまま奴の体内へ。


「――あ、アレどうなってんだ?!」

《マスター! そんな事を言ってる場合じゃありません! 説明は後です! まずは戦闘準備を!》


 あまりの光景に、思わず呆けて見とれている俺に、シスから叱責が飛ぶ。ハッとなって身構えるが、見る見るうちにワームは地中へ没してしまう。


「あぁ! 面倒くさいのぉ! 地中じゃと思うように狙いがつかん! ノート! 探査(サーチ)しろ!」


 俺達の後方に跳んだセリスが喚くように、サーチを使えと言われ、慌ててミニマップを展開し、範囲に地中も含めてみる。途端マップは変形、立体構造化して、地中に居る真っ赤なマーカーを見つける。


「……居た! 地中五メートル! 場所は……シェリーの真下!!」

「――え?!」


 ――ボココココココ!! ギャシャァァァァァ!!


「……しまっ――! きゃあぁぁぁ!」


 俺の声に反応が一瞬遅れたシェリーは、跳び上がろうと踏ん張る。しかしその瞬間に、地面が大きく陥没し、すり鉢状に展開された大きな口が、シェリーを飲み込もうと迫り上がる。咄嗟に俺はその場を蹴って跳び上がり、そのままシェリーを小脇に抱きかかえると、その通り過ぎざまに口腔内へサン・レイを撃ち込む。


「サン・レイ!!」


 ――バジュゥゥゥ! ギュシャァァァァァッァア!


 獲物が口に入ると思っていたワームは、まさか口の中を焼かれる等とは夢にも思っていなかっただろう。そのあまりの激痛に、噴水のように口から自身の中身を吐瀉し、地面に舞い戻ることも出来ずに、その場でのたうち回って暴れ出す。


 ――あ! 


 ……バシャバシャ! 「ぎゃあ!」「いやぁああ!」


 ……カッコよく助けたつもりが、盛大にワームのゲロを浴びてしまう。


「グハ! くっせぇ!」

「……早く向こうへ!」


 なんとかその場を離脱した先で二人、クリーンアップで汚れと匂いを落としていると、セリスが俺達を見て爆笑しながら、ワームを惨殺していた。


「ギャハハハハ! レーザーカットで、デストロイじゃ~!」


 ――ピ! バシュウ! バシュ! ギャアアアシャアアァァァァ……。


 ゴーレムに空中からレーザービームで三等分にされ、バラけた後に頭部をレーザーで焼かれたサンドワームは、そのまま絶命。地中に戻ることなく、無惨な亡骸をその地面に晒した。


「おほほほ~! コイツの表皮は魔鋼(まこう)じゃないか! こんな大きさでレアな「異常種」とはラッキーじゃのぅ!」


 そんな事をにこにこ顔で言いながら、セリスがバラしたワームを異界庫に仕舞っていると、シェリーが思い出したように声を上げる。


「……ミネルバさんは?!」


言われて周りを見回してみると、彼女は最初にワームが現れた地点の少し先に、ぺたんと座り込んだまま、呆けた表情をしてこちらを見ていた。




◇  ◇  ◇



「……も、申し訳ございません。あ、余りにも急過ぎて、何がなにやら……」

「まぁ、怪我もなく無事だったなら、良かったです」

「じゃな。……にしても、こんな場所にサンドワームとはなぁ」


 セリスとワームの後片付けを終わらせた後、シェリーに任せたミネルバさんの元へ行く。彼女が謝ってきたので、それは良いと断って居るとセリスがそんな事を言う。


「……ん? こんな場所ってどういう事? あのモンスターってこの辺には出ないの?」

《マスター、あのモンスターは地中を移動します。本来はもっと砂地の場所に生息しています。例えばガデスドワーフ帝国のような砂漠地帯に――》


 シスの長い説明によると、本来モンスターはその生態とともに、生息地域も大体決まっているらしい。サンドワーム等は地中深くに潜る性質が有り、また鉱物を摂取しているモンスターの為、こんな海の近くに生息することはまず無いということらしい。


「……ふ~ん。じゃあ何であいつは――」

使役(テイム)されていたんじゃろうな」

「……モンスターテイム?!」


 セリスの言葉に反応したのはミネルバさんだった。彼女はそう言うと突然ブツブツ何かをつぶやいたかと思うと、ハッとした表情で俺たちを見つめ、急に饒舌に話し始める。


「だから爆発したように、地面が抉れていたんですね! 残滓が無いのはそれが理由。そうか! 使役獣があの村を襲った……だから、あそこまで破壊されて――」


「……せ、セリス、ミネルバさんどうしたの?」


「はぁ? 今の話、聞いたじゃろう。ダミー村はこのサンドワームと、それ以外のモンスターが襲ったんじゃろう。……で、()()まで儂等を呼ぶために、兵をわざわざ荷車に積んで運んだんじゃ、()()()()ためにな」


 言いながらセリスは、サンドワームが作った「穴」を睨みつけている。



「――クックックッ。流石に気付きますか。……お久しぶりですねぇ、デスネ」





*****************************




「まさか、あいつが直々に出ていくとはなぁ」


 地下施設に残ったベイルズはそう言いながら、リゲルの異界鞄から吐き出されるものを眺めていた。


「……お前は行かないのか?」

「あぁ、これから帝国に逆戻りだよ。……何でも「監獄城」だっけ? それが見つかったらしいから、「インキュバス」を送ったらしい。ソイツのとこへ行って「ブツ」を引き上げてこいってさ」


 ベイルズの言葉に、リゲルは「あぁ、あの変な服装の魔族か」と応え、作業に戻る。幾人かの死体を床に並べた後、大柄な男の遺体だけは、寝台に乗せる。右腕はなく、かっと開いた目は未だ敵に向かわんとする表情だったが、その命はすでに事切れ、無情にただ虚空を見つめていた。


「へぇ。ソイツがオリハルコンランク……の?」

「らしいな。ヘイムス・コーネリア……エルデン・フリージア王国唯一の国家認定冒険者だそうだ」


「お、それがカードか。見せてくれ……ふ~ん、これって強いのか?」

「さあな。何が基準かわからん」

「確かにな。まぁいいや、ゲールがお前にも、どこかに向かってほしいって言ってたぜ。どうやらもうすぐ色々動き出すらしい」

「……そうか。で、ゲールは?」

「あぁ、あいつなら――」




*****************************





「……どうやら今夜か明日辺りに決行するらしいですぜ」


 コルテボーナのいる部屋に入ってきた男がそう言いながら、被っていたフードを下ろす。チラとそちらを見てから枢機卿は小さく息を吐き、「……間に合わなかったか」と心の中で呟いて、一度目を閉じてから周りにいる二人に目配せをする。


「……じゃあ、決行と言うことで」

「うしっ! ……いっちょ、気合い入れていきますか!」


 部屋の隅に置かれた椅子で待機していた二人は、枢機卿の合図によって立ち上がって伸びをする。


「城の警備状態はどうなっている?」

「……相変わらずですが、逆にそれで気が緩み始めているそうです」


「はは。城勤めの連中ってのは良くも悪くも、型に嵌まっちまってるからな。繰り返しが続けば、形式だけになっちまうものさ」


 そんな話をしながら、三人の平凡な顔つきの男たちは、各々フードを被って部屋を出ていく。


「――……」


 最後にコルテボーナ枢機卿も同じフードを目深に被ると、一度部屋を見回した後、扉を締めて三人の後に続いた。





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