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オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第7章 世界
228/266

01

お待たせしました。

新章開始です。




 イリステリア中央大陸の真南に存在し、大森林地帯に覆われた国、シンデリス共和国。


 そこは、ビーシアンが国の大半を占め、彼等は見た目の種族違いから、氏族単位で形成され、集落を形成し、各々の土地で生活している。故に国家と言うには、あまり纏まりがなく、またそれらの王も不在だった為、永きにわたり小さな戦が、絶えず続いていた。しかし、俗に言われるシンデリス内紛、元はシンデリス内で起きた種族間の小さないざこざが、とあるヒュームの介入により、大きな内紛へと激化。最終的にヒューム対ビーシアンという、違った種族間戦争へとその形を変え、ビーシアン達は初めて結束を見せる。氏族長達が一同に会し、この大森林を一つの国とし、氏族事に領地を分け、氏族長を頂点とした疑似国家を形成。王政を取らず、評議会という形で、共和国制とした。これらは全て、東に国境を接していた唯一の友好ヒューム国家、エルデン・フリージア王国が尽力し、また精霊王もそれに寄与したとも言われている。とかく武力で優劣を決しようとする彼等に対し、知力の狡猾さを説き、文武両道でないと真の強者にはなれぬと知らしめた。種によっては力の弱い者達もそうする事で、政に参加できるようにとの為政者達の考えからだった。


 こうして国家という形を持ち、外交手段としては、エルデン・フリージア王国の後ろ盾を得て、中央のハマナス商業連邦評議共和国にも参画できるようになっていた。国としての成り立ちはそういった経緯から五年程度と若かったが、元の形としての評議や氏族長などは、以前のものを国家単位に繰り上げただけだったために、其処までの混乱もなく、すぐに受け入れられた。エルデン・フリージア王国はそこに国としての体面的な、所謂、箱物行政を行い、外交使節団の受け入れ施設や、評議達の集まる場所を造っただけとも言える。


 そんな建物の一つである、会議堂の中で氏族長の主要メンバーである、十二席が一堂に会し、とある会議の真っ最中であった。


「――その話は真か?」


 テーブルは上下の無いように円卓とされ、等間隔に並んだ椅子の一つに座った、熊の耳を持つ大柄な男、オルデン・ディープが、対面に座った小柄な狐耳の女性、マイア・メルストリープに、まさかと言った面持ちで聞き返す。


「はい。イリス聖教会からの通信により、予てよりの懸念事項とされていた「監獄城」の特徴と一致しました」


「そ、それが確認されたのはいつの話だ?」


 マイアの言葉にトラの特徴を持ったネイサン・マートンが口を挟む。それを聞いた彼女は、手に持った資料を何度かめくり、当該の箇所を見つけて、かみ殺すように苦い顔をして吐き捨てた。


「ひと月以上前と……」

「……な! そんな前に――」

「どうやら、先住していた者が隠蔽していたようで」

「何処のどいつだ! あれほど徹底したはずであるのに!」

「少数種族の齧歯(げっし)族だ……。どうやら彼等が、逃げ延びた先だったらしい。故に報告すれば、彼等の住処が無くなってしまうと考えたのだろう」


 激昂するネイサンに、落ち着けと言いながら、事情を知っている、人狼族の長マイク・ケントリッジが内情を話す。そんな言葉を聞かされ、言い募ることが出来なくなってしまった彼は、それでも憤懣やるかたないと、肩を怒らせ、思わずテーブルを叩く。



 ――齧歯族。

 地球観点で言うところの齧歯目に分類される種族。彼等はいわゆる、鼠や、リスなどと言った小動物に分類される。最も大きな物で地球ではカピバラが現存する世界最大のげっ歯類ではあるが、此処イリステリアでは少し様相が違った。


 この世界、イリステリアでは人類の言葉を相互理解し、言語を持って互いにコミュニケーションを取れる存在を「人間」と定義している。勿論例外は存在し、それらは精霊、聖獣など、念話と呼ばれる特殊な方法を持って、人間と話すことが出来る者達もいる。


 しかしながら、此処で言う人間と定義されている者達はそうではなく、「ビーシアン」内での定義とした場合、その姿がより人型に近いか、そうではないかで、また別の判断が行われていた。その理由は只一つ。


 ――肉を食べるからである。


 現に、ボア(猪)は動物に分類され、狩りの標的になる。熊にしてもそうだ。だが、耳や尻尾にのみ、その特徴があり、他はヒュームの様な出で立ちをしていれば、途端彼等は人間と扱われるのだ。……祖は同じとしても。


 そんな歪とも言える、ビーシアンの生態系の中で、特に齧歯族や、小型動物種の扱いは難しかった。彼等は見た目の違いが乏しかった為だ。犬種はコボルドと間違われ、既に絶滅してしまったし、猫種はケットシーと呼ばれ、幻想種になっている。そんな中で齧歯類にあたる、鼠種は二足歩行が出来ず、道具すらうまく扱えなかったのだ。それは身体的特性から見てわかるように、手が非常に脆弱で、腕力というものが絶望的に弱かった為、齧るという行為でしか彼等は力を発揮できなかったのである。故に言葉を話せても片言でうまく通じず、長い間、動物に分類されて狩りの対象になってしまった。当然彼等独自の文化も築けず、ただ逃げ惑い、闇に紛れて隠れ暮らすことを長年続けていた為に、祖先たちとほぼ変わらぬ生活をし続け、未だ進化には程遠い種になっている。


「――マイク殿の言いたい事は分かる! そなたらの縁者が絶滅して久しいのでな。だが今はそんな悠長な話をしている場合ではないと言う事くらい、理解できよう?! もし、その場所が奴らに露見すれば、一つや二つ程度の種族が消えるなどという温いことでは収まらんのだぞ! それこそ我等ビーシアンの存在が危ういものとなってしまうのだ!」


 ネイサンはそう言って、ぶつけどころを見失った怒りを、さも皆の意見のようにすり替えてマイクに言い放つが、言われた当人はネイサンを見ることなく、その隣に座り、目を瞑ったままの男に視線を固定していた。


「……評議長、いい加減、決を採ったらどうだ? 貴様が話を纏めないと、いつまで経っても堂々巡りだぞ」


 マイクの固定した視線の先に座っているのは今代の評議会長である、ライオネット族、ライオン種のマイソン・デイル。体躯の大きさは、その横に居るグリズリル族の熊種、オルデン・ディープ程ではないが、引き締まった身体を持ち、その相貌は精悍で、髪はライオン独特の(たてがみ)のように髭と重なり、ぐるりと顔を覆っている。彼は会議が始まって以来、その瞳を未だ一度も開くことはなく、黙したままずっと皆の意見を聞いていたが、ここで初めてマイクの放った言葉に応えるべく、金に輝くその双眼をカッと開いて言い放つ。



「――速やかに監獄城へ派兵の準備を。先住民に対しては、巫女様より退避勧告をお願いする。尚、巫女様の護衛にはアリシエール不在のため、マイク・ケントリッジ。貴様が部隊を編成し、長となってその勤めを果たせ」





***********************





「――何だよこれ」


 

 俺達がその現場に到着した時にはもう、何もなかった。


 聞いていた話では、そこには賊が造ったというダミーの村が存在し、捕縛される前に放棄されて間もない為に、防護柵や住居もそのまま残されており、一見するとまだ人が居そうだと勘違いする程だったと聞いている。だが実際現場に来て見た感想はそうはならなかった。


「なんじゃ? 魔術で爆破でもされたのか?」


 柵が在ったであろう場所から少し、中央部に見える場所が大きく陥没し、セリスが言ったように爆破でもされたのか、建物は尽く粉砕されて、瓦礫の山と化していた。戦闘痕は幾つか見つかったが、そこに遺体は一つも見当たらず、幾らかの大きな血溜まりと、粉々になった武具や魔導車が見つかった。


「……通信があってから、ここに来るまで丁度丸一日。魔導車は全部で五台、指揮車も見つかったそうよ」


 現場に散っていった、王国騎士団の様子を見ていたシェリーが、苦り切った顔で俺達のところへ戻ってきて、そう報告してくれる。


「一体どんな敵が……」

「ん? ノートよ、呼んでおるぞ」


 セリスの声に視線を向けると、村の入口に陣を置いた、騎士の一人が、こちらに手を振っていた。



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