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オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第6章 井の中の蛙大海を知らず
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第40話 繋がっていく線と糸(意図)




 スレイヤーズの面々が、皆の居る会議室の隣の部屋で、打ち合わせを行っている間に、カーライル達は宰相と依頼の書類を作成していた。そんな中、ドアのノックと共に表に居た近衛を押し退けるように入ってきた人物は、国軍である騎士団、団長を務めるドレファス・フェルナンデス。


「えぇい! この非常時に何を杓子定規(しゃくしじょうぎ)なことを抜かしておるのか! 儂はこの国の騎士団長だ! 国王様に呼ばれて罷り越したのに何が鑑定だ! 馬鹿者が! ──おお! ここにおられましたか! 昨日の賊の件に引き続き、なにやら火急の件と伺い、このドレファス、馳せ参じました」


 その図体に見合った大声を出しながら、ズカズカと部屋にいるカーライルの下まで歩み寄って臣下の礼を取るドレファスに、周りに居た者達は冷えた視線を送るが、当の本人は全く気付かずに居る。それを見たカーライルも小さく息を吐き、集まってきた兵に良いと手を挙げ、下がらせてからドレファスに向かい声を掛ける。


「わざわざ済まんな。今朝方、元ダリア領にて緊急魔導通信が上がったと連絡を受けてな。ブルミア、話してやれ」


「はい、陛下。その通信により、我が騎士団へ救援要請が来たのだ。精鋭指揮者を三名、騎士を五名すぐに送ってやらねばならん。準備できるか」


 その言葉を聞いたドレファスは膝を折ったまま顔を上げ、すぐさま口角を上げて返答する。


「勿論でございます! 指揮者であれば我が第一団副長と、千人長がおります。騎士ならば、各隊の上級騎士であればすぐに」


「……ウム、それは重畳。早速で悪いが其の者達を城へ集めてくれ。ドレファス卿はこのまま作戦に加わってもらう故、この場に残られよ」


「御意。……おい! すぐに本部へ戻り、オコーネルとリズモンドを呼べ! 奴らと人選を行う」


 ドレファスはそう言って、ドアの外に立っていた彼の部下に命令する。その命を受けた部下が走って行くのを見届けると、周りを見ながら机に広がった地図を覗くようにして、傍に立つキース達に質問していく。


「それで、現状は如何様に──」




******************************




「……旦那、指示が来ましたぜ。決行はどうやら二、三日後らしいです」



 王都の外れにある安宿に居たコルテボーナの下に、戻った斥候役の一人がそう言って、部屋に入ってくる。


「らしいとは、えらく曖昧だな。どう言う事だ?」


「それがどうも、先に娘達を攫おうとした人間が居たようで、今城内は、厳戒体制らしいんです。そこへ来て何やら問題が起きたようで、どこかの領に向けて、遠征軍が派遣されるらしいんです。そのドサクサに紛れるらしいので、時間がまだはっきりしないそうです」


「……遠征軍?」


「……はい。詳しくは聞けませんでしたが、確かにそう言ってましたぜ」


 ──コレは一体どう言う事だ? 軍が動く事態が起きている? 先見(さきみ)からそんな話は聞いていない。いいのか? この状況は大きく動く()()ではないのか? しかし、逆に考えれば最大の好機とも言える……。


 斥候の話を聞いて、コルテボーナ枢機卿は逡巡していた。猊下(スイベール)からの指示を(たが)えるという気は勿論ない。が、先見から貰っている指南書には、王国軍が動く程の事は書かれていなかった。王城でのいざこざは書いてあったにも関わらずだ。どう言う状況なんだ? 何故こんなに大きな出来事を先見は見逃した? ……いや、視えなかったのか? だとするならば、ここから先は間違いなく先見の視ていない事象だという事。猊下、私のような者にこれは、荷が勝ちすぎるやもしれません……。


「旦那?」

「いや、少し思案していただけだ。了解した、ギリギリまで見極めたい。皆もそのつもりで」


「「了解」」




******************************




 白く、(やや)もすれば、顔が映り込みそうなほどに磨かれた大理石の廊下を、コツコツと小気味いい音を立て、一人の白い法衣に包まれた男が、真っ直ぐに前を見つめて歩いている。周りは見上げるほどに高い天井、等間隔に並んだ柱に至るまで、全てが廊下と同じ石造り。壁に設けられた窓は縦に長く、そこからは溢れんばかりの陽の光が差し込んでいる。まるで、天上の回廊かと思われるほどに静謐で荘厳。だが、男は一切の感情を持ち合わせていないのか、その状況に全く興味を示すことなく、ただ黙々と同じリズムで歩いている。やがて、目的の場所に着いたのか、大きな両開きの扉の前で立ち止まると、懐からタリスマンを取り出した。


「*******……」


 ”ガコン”

 男がそのタリスマンを握りしめて、文言を静かに呟くと、ロックが外れ、扉が音もなく開いていく。人一人が通れるほど開いた所で扉は止まり、男はそこに飲み込まれるように消えて行く。


「──エドモンド聖下。ドレメル、只今帰参致しました」


 そう言って男は部屋の中央にある玉座に向かい膝を折る。


「……良い、面をあげよ。して、『魔国』の長老衆、『永久の長久(とわのちょうきゅう)』の面々は何と言っておるのだ?」


「は。ヒストリアに於いて顕現しました『エオスフェル』の欠片は紛うことなき核であるとの事。後は「腕」「足」「首」を揃えれば、世はたちどころに『戻せる』との事です」


「……そうか。監獄城については見当がついている。一つは何やら封印されたようだが、「アレ」を使えば問題あるまい。戻って早々では有るが、大罪(怠惰)と合流してくれ。帝国のリットンに向かっていると聞いておるでな」


「仰せのままに」



 ──ヒストリア教皇国。

 それはアナディエル教皇国の正統後継国。先の勇者の功績により、その数は確実に減じたが、未だその教団の真意は不明であり、イリステリア中央大陸すべての国から監視対象とされている。なにより、信者は全て狂信者で構成されており、教皇エドモンド・デ・ヒストリアⅩⅡ世を筆頭に、すべての民が秘密主義で他国に一切出て来ない。にも関わらず、全ての国に間諜が存在し、一部の者達と常に繋がっている。国はゼクス・ハイドン帝国の北方に所在し、更に北は不帰の森と接している。帝国との境界は深い峡谷で分断されている為に、彼等は中央にあるハマナス商業連邦評議国を介してしか、どの国にもいけない。故に国の実情は誰にも知られず、現在も何を行っているのか、実態は未だ不明な秘密国家なのである。



「歴史は我等が正道に戻す……。聖イリスなどという紛い物の神に何が出来るというのか。あの様な人形が神を名乗るなど、筆舌に尽くし難いわ。この世界はこの世界に生まれ落ちた者達の物だ! それを後から出てきて管理だ、亜人だなどと、巫山戯(ふざけ)た生き物を増やしおって! この世界に生まれたのは『人間(ヒューマン)』だけだ!」


「聖下、悲願は必ずや成されましょう。我等ヒューマンの子孫、それこそが証です。事は確実に、正確に動いております」


「……スイベールはどうしておる?」


「彼の者なれば、「迷い人」いえ、忘却の勇者ノートの連れている聖女、サラを」


「そうか、『鍵』の娘か。だが、もう一人帝国の娘も居たな」


「は。そちらの方には「嫉妬」に根付かせております故」


「……大罪か。暴食と色欲は見つけたのか?」


「はい。既に魔国で復活しております。器が無いため、身動きは取れていないようですが」


「成る程、その為のリビエラか」



 ──オリハルコン級の者達の器ならば事足りるでしょう。



 ヒストリア教皇の居る大きな玉座の間。──其れはこの国に有る最大の大聖堂。彼の背に掲げられた大きな像はノートもどこかで見たことが有る像だった。



 



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