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オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第6章 井の中の蛙大海を知らず
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第24話 子孫



「──こ、こんな高価な物を(いただ)いてしまっても宜しいので?」


 ブルミア宰相やカストル第一王子の話を聞いた後、俺は王族と主要な人員にパーティに持たせているものと同じアクセサリーを渡した。付けているだけで魔法攻撃や物理攻撃は勿論、精神攻撃や毒攻撃なども防いでくれる、スグレモノだ。魔力補充は本人から漏れるものを絶えず充填するので常に付けていられる。そんな説明をすると「遺失魔導具(アーティファクト)!!」と騒ぎ出し、複数差し上げると言った事で更に皆は喚いたが。


「いや、俺にとっては()()()感覚で作れるのでそんな大袈裟にしないで下さい」


「「「……こぴ?」」」


「あぁ、まぁ簡単に作れるってことですから、気にしないで下さい。それにそれを付けている人が信用できる人ってこちらも見分けが付きますから」


 俺がそう言った事で王族や宰相が成る程と言って頷く。


「……そうか、これを付けていれば名は分からなくとも、皆さんにとっては一目瞭然となるわけですな」


「あぁ、そういう事か。ノートにしては機転が利くのぉ」


 セリスが嫌味半分でそう言ってくるが、実はシスの提案だという事は絶対言わないでおこうと思った。


「ンンッ! それで、貴族派の中で要注意人物はだれなんですか?」


 まずはこの場にいる全員にそのアクセサリーを付けさせてから、話題を本題へと変えていく。カストルの危惧が当たっていれば、これから厄介事が増えるのは目に見えているからだ。そうして皆がソファに座って話を始めようとした時、オズモンドが目を覚ます。


「──うぅ、顔が痛い……は! ここは?! あ、皆様方」


 ようやっと正気を取り戻したのか、オズモンドは腫れた顔を恥ずかしそうに俯かせ、先程の行為を謝罪し、改めて話をさせてくれと頼んできた。


「で。主らは今、席次会議の只中ではなかったのか?」

「は。いかにも。その中で話をしていた最中、魔神様のご神託がございまして。それで慌ててこちらに参上致しました」

「……なるほど、アレを貴様も聞いたのか。であるならあの慌てようも致し方なしとなるか……」


 彼が飛び込んできた理由を改めて聞くと、セリスがそう言って腕を組んでウンウンと頷いた。確かに神の神託をこの世界の人間はそう簡単に聞くことはない。しかも内容が内容なだけに、彼にとっては青天(せいてん)霹靂(へきれき)に近いものも有っただろう。自分の弟子だった者に魔神の加護が付いたのだ。日々研鑽を積み重ねている者にとって、これほどの理不尽を感じる事は無かっただろう。俺という迷い人の弟子に成った途端、魔神様の加護付き等になれるなんて、ならば自分もセリス様にとなる考えも分からなくはないからな。


「しかしオズモンドよ。では現状会議はどうなっておるのだ? まさか放り出してきたのか」

「いえ、そこはハッセルとミネルバに預けてまいりましたが……」


《……扉越しに一人、ずっとこちらを窺おうとしている者が居ますね》


 その言葉を聞いたシェリーがすっとドアに近づき一気にドアを開くと、結界の向こうでこちらに必死に耳を向けているハッセル・ヤング第二魔導師団長が居た。



◇  ◇  ◇



「……まさかお前までここに来るとは。ミネルバは?」

「心配いらねぇって。あのミネルバだぞ、オズモンドや姫殿下ならわかるだろう?」


 そんな事を言いながら、部屋の床に正座させられているのはこの国の宮廷魔導師の第二席次であり、第二魔導師団を率いる団長のハッセル・ヤング。彼はどうしても俺に聞きたい事があって、この場に来たらしい。


「──アンタが『迷い人』のノートで間違いないんだな」

「え、えぇそうです」

 俺の返事を聞いた途端、彼は立ち上がって直ぐ側まで来て必死な目をして聞いてきた。



 ──ならば教えてくれ! 次元マドウとは一体何だ?!



 彼が言い放った言葉に瞬時に場が凍りついていく。それはそうだろう。王族は元より、俺のパーティ以外のすべての人間が次元と言う魔術のことを知らないのだ。下手をすれば禁忌になるかもしれない事柄をハッセルは軽々しくも俺に聞いたのだと考えた。


「おい! ハッセル! 貴様いきなり何を──」

「え? 空間魔術の一種ですよ」


「「…………」」


 オズモンドが(たしな)めようと大きな声でハッセルに物言いをし始めた所で俺が普通に答えると、また全員が固まった。


「──、おいノートよ。そんな軽々に言っても良いことなのかそれ?」


 後ろでソファに座ったセリスが、大きな溜息と共に聞いてくるが、何を今更である。


「何言ってんだよ。オズモンドさんや国王、辺境伯たちだってもう見てるじゃんか。今現在も、シスが使っているのに今更何いってんだって感じだ──」


「え? えぇ! わ、私達が見ている?! い、今も? 何処で見ました!?」





*****************************





「聖女様……先のお約束がございました、ロブ商会の御方たちがお見えになりました」


 執務室の扉を開けたメアリの言葉に、執務机でジェレミアと共に行っていた書類作業から顔を上げて振り返る。


「……もうそんな時間でしたか。ではジェレミア大司教、この先はおまかせします」


「畏まりました。オフィリア様」


 その言葉を聞きながら聖女オフィリアが立ち上がって扉へ近付くと、護衛騎士である、ケルビンがさっと後ろにつく。チラとその様子を見たメアリはその体を横に寄せ、二人が扉を潜ってから、室内に残ったジェレミアに会釈をしてからその扉を静かに閉じる。


「──行ってらっしゃいませ。オフィリア様」


 閉じられた扉を見やり、誰に聞こえるでもないような小さな声でそれだけを呟くと、静かな部屋で書類を捲る音だけが響き始めた。


 聖教会最上階は全て聖女が使うための部屋である。部屋は幾つかに別れており、彼女は生活の殆どをこの最上階で過ごしている。ケルビンはそんな彼女を思うと『籠の鳥』と憂いてしまう。このプライベートな空間でさえ自分や他の従者に囲まれ、常に誰かの視線の中で生活しているのだ。故に彼女の視界に入らぬよう、気配を極力悟らせぬよう気を使っている。そんな思いの中、毛足の長い絨毯に足を取られぬようにゆっくり彼女の後に続いていると、先に見えてきたドアの前にこのフロアに似つかわしくない物々しい風体の者達が二人立っていた。


「──お久しぶりです、オフィリア様」


 扉の前に立つ一人の偉丈夫がそう言って、彼女に会釈する。オフィリアも知った仲なのか、そう言った男に目線を合わせて微笑むと、会釈を返して返答する。


「えぇ、お久しぶりです。残りの方たちは、中に?」

「えぇ。リーダーとお嬢は中でお待ちです。私達はここで護衛を」

「そうですか。何か聞こえましたか」

「……ジェレミア殿は相変わらずだなと」

「フフ。そうですか、彼の心配性は治りませんからね」


 オフィリアの言葉を背に聞きながら、メアリはドアをノックしてノブを捻る。


「お待たせ致しました、ロブ殿」



 室内は清楚な雰囲気の家具で設えられていた。色は白か薄い水色で目に優しく、ソファは革張りでありながらもベージュに染められ木目は全て白木で作られていた。窓は大きく作られており、陽の光が心地よく、少し開いた場所からは涼しい風が階下の花の香を運んできている。調度品にも花瓶が置かれ、淡い色合いの花が咲いており、この部屋の主の品の良さを如実に表していた。


「いえいえ、お久しぶりですメアリさんにケルビン殿。──聖女オフィリア様」


 そう言って、ロブ商会長はソファから立ち上がり、彼女の前で膝を折る。彼は所謂彼女の間諜(くさ)、長い年月をかけてその地に根を張り、商売を通じてエルデン・フリージア王国に鉱物問屋として名実ともに大店に成った商人である。彼のおかげで彼の国への出入りはかなり融通が効く様になった。ただ、唯一の欠点は魔導車オタクな点があるのだが。そんな商会長が跪いて、聖女オフィリアに奏上する。




 ──勇者の仲間、ニンジャマスター、セスタ殿の子孫、アリシエール嬢をお連れ致しました。







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