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オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第6章 井の中の蛙大海を知らず
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第11話 新たな火種?




「──長い間お世話になりました」

「いえいえとんでもございません! これからのご活躍、期待しております」


 ずらりと並んだ魔導車の最後尾に付けた俺達の前に来たロッテン男爵に、今までの礼を言うとそう返事が返ってくる。……期待か。色々こんがらがった現状で、まずはどうするかと考えた結果、俺達は国王の招待もあり、王都へ向かう魔導船に同乗させてもらう事に決めた。魔導車の中には転移陣も()()し、この街にも勿論設置済みだ。場所は男爵の迎賓館の一室を使わせてもらった。かなり驚かれたが、魔紋登録がないと通れないことや、俺の認識がないと往来できないことを告げて了承を得た。


 マリアーベルやサラ達も一度王都に連れていき、拠点を確保してからエクスに顔を出すことに決めた。アマンダさんに聞いた所、魔虫の駆除はカサンドラさんが戻ってきたらしく、彼女のお陰でスムーズに行ったらしい。ジゼルさんがかなり喜んでいたので、彼女も会わせてあげないとな。



 先頭車両は国家調査団。何台かが続いてオズモンドさんと国王が乗車する大きくて豪華な魔導車を中心にする様にして、後方にエリクスさん達が乗車する魔導車の後ろが俺達の魔導車。結局、シェリー達の専用車を造ることは出来なかったけど、部品や素材は結構集まったと言っていた。どうやらジゼルさんが鍛冶関連に造詣が深く、聞けば実家が鍛冶屋だと言っていた。通りでレストリアの町で鉱物問屋の案内をしてくれた訳だ。


「ノートさん、そろそろ私達も乗車しましょう」


 キャロルがそう言って、運転席のドアを開けてくれる。シェリーやセリス達は既にリビングルームに移動している。今回は移動距離がないのと、この行列に付かないといけないから、運転はしないと言って早々にリビングに行ってしまった。まぁセーリスや、ジゼルさんとチビ達もそっちに行かせたので、ある意味ちょうど良かったけど。


「あぁ、わかった。それじゃあロッテン男爵様、何かあれば魔導通信で。陣を使えば瞬時に来れますので」


「はは。有り難い申し出、痛み入ります。聖教会の件であればお任せ下さい」


 最後にそう言って笑いあった後、会釈を交わして魔導車に乗り込む。助手席にキャロル。後部席にはミスリア王女……。結局彼女はあれから事ある毎に俺達の方に付き、今回の移動ですらこっちの魔導車に乗り込んできた。


「お師様! この魔導車の魔導具は一体幾つ使われているのでしょ──」


 既に乗り込んで周りをこれでもかと言うほど見回っていた彼女が、俺が乗った途端に身を乗り出して聞いてくる。


「はいはい、急がないの。でもそんなに積んでは居ないよ。……さぁ、出発するからちゃんと座ってさっき教えたベルト着けて」


 ミスリア王女を座席に座らせてシートベルトをキャロに着けて貰っていると、魔導車が動き始める。




「──……迷い人にして御伽噺の異界の勇者様ですか。悪魔といい、新たな邪神といい……。どうかこの世界を救って下さい。お頼み申しますぞノート殿」


 綺麗に並んで出発していく魔導車を眺めながら、そばに居る家令にも聞こえないほどの小さな声でロッテン男爵は呟きながら、小さくなっていく車列を見続けていた。




「──……世界を、か。果たしてノートはそれを()()のかのう」

「なにか言いました?」


 後部に設けられたリビングルームで、後方に消えていく代官屋敷を見つめていたセリスがそんな言葉を零すが、誰にも聞かせる気はなかったようで、シェリーの問いかけになんでも無いと言って、外に出していたゴーレムを魔導車に追従させるように切り替えた。


 


◇  ◇  ◇




 車列が北の入街門に近づくと衛兵部隊が門脇に並び、門外まで一直線に道が開けていた。門前で一度停車して調査団の一人が声をかけると、最後尾に付いた俺の車に衛兵が三人近づいてくる。


「こちらが調査団の最後尾でしょうか?」

「はい。そうですが」

「……えぇ、冒険者『スレイヤーズ』の方々で宜しいですか」

「はい、これがカードです」


 そう言って俺の冒険者カードを見せると、それを確認した兵士が敬礼をして二人残して門に戻っていく。


「ありがとうございます。後方警護しますのでお進み下さい」

「了解しました。ご苦労さまです」


 残った彼らにそう返事をして前を見ると、ゆっくり車列が進み始める。やがて門を抜けると眼前にはあの巨大な魔導船が木々を揺らすように、出港準備をして待っていた。前回と同じ様に後部ハッチが開き、そこから伸びた路板に次々に魔導車が進んでいく。順に進んでいくと、俺の魔導車を見た整備員のような人たちが、目を皿のようにしてガン見していたが、そこはあえてスルーした。



 後部から乗り込んだ魔導船内部は正に貨物室だった。木造かと思われたが殆どの部分が鉄材のような物で構成され、天井からはクレーンのような物まで下がっている。床部分も何らかの塗装が施されているようで、剥き出しの鉄の感じはしない。そんな中を物珍しげに先導されながら進んでいると、不意に声が掛かる。


「その魔導車! それはこっちに停めろ!」


 言われてそちらを見ると、整備室のような場所に何人もの人間が集まって俺を呼んでいた。


「なんだあれ? なんで整備室みたいな所に」

「もしかして、この車を解体して調べようと考えているのかも」

「はぁ?! なんでそんな事されなくちゃいけないんだ?」

 

 キャロの言葉に俺が切れかけていると、ミスリア王女が声をかけてくる。


「お師様、車を停めて下さい。私が話してきます」


 俺は魔導車を停車させ、念話でリビングに居た連中を呼んで全員で下車する。


「おい! そこじゃない! こっち……ミスリア様!」


 降車した人間の中に王女が居たことに気づいた大声を出していた男が固まる。慌ててその連中は跪くとそこへ向かって王女はつかつかと歩いていく。


「なんじゃ? 一体何が有ったんじゃ?」


 チビ達と一緒に降りてきたセリスが俺に聞いてきたので説明していると、いきなりがなり声が船倉内に響き渡る。


「えぇぇぇぇぇええ! セリス様が乗っているぅ?!」


 何だと思って振り返ると、大声で騒いでいるのはドワーフの男。


「……セリスの知り合い?」

「はぁ? 儂はガントしか知らん。大体髭モジャで顔の区別もつかんしの。面倒になる前に車は異界庫に仕舞え」


「あぁ、その方がいいな」


 そう言って俺が異界庫に収納するとまた騒ぎ始めるが、王女が何かを言ったようですぐに収まった。しかし、その大声は船倉内に響いていたので、すぐにオズモンドさんやマルクスさん達が近づいてきた。


「どうかしましたか?」

「え、あぁ。なんだか魔導車をこちらに停めろと命令されまして」


 それを聞いたオズモンドさんや辺境伯が整備場を見ると、顔色をなくした整備員達が何やら言い訳のようなものをグチグチ言い出した。


「あの魔導車が聞いていた新型でしょう? なら解体して確認しないと」

「そうだ。ここは王城と同じなんだ、たかが冒険者にそんな物を持たせておく必要なんて無い」

「献上させれば良いんだ!」


「お、おいもう良い。やめろ」


 若い整備士達がワイワイ言う中、先程のドワーフだけは急に威勢がなくなる。


「──何言ってるんですか親方! せっかくの現物ですよ! 大体──」




 ──やめなさい!



 親方を囲んでぎゃあぎゃあ言い出した整備士達を歩いて近づいていったミスリアが大声を上げて怒鳴りつけた。その声に騒いでいた連中も流石に黙り、王女を見つめると彼女ははっきりとした口調で話し始める。


「ここに居るお方々を唯の冒険者と言った者は貴方ですか。……ここに居る整備の全員を城に戻り次第、解雇いたします。我が師を侮辱した者を許しません」



「「「──……へ?」」」







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