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オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第5章 その国の名は
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第44話 思惑




「──…エルデン・フリージア王国が動いた?」

「は! どうやら国王が直々(じきじき)にカデクスに()()()()()()で赴いたとの事」

「カデクスに停泊場(ていはくじょう)は無かったと思いますが?」

「……北側の緩衝林を利用したそうです」

「──は? …ははは! 面白いことをするものですねぇ」


 ──…となれば、カーライル王は気づいたと見ていいでしょう。…やっと()()()()になれましたか…。


「……猊下、次の手は如何致しましょう?」

「…ふむ。カデクスは抑えられたと考えていいでしょう。ヒストリアは既に解放済み…」



 聖教会教皇であるスイベールは、モノトーンの部屋で大きな執務机の椅子に腰掛けたまま、報告者の方を見ず、大きな窓に目線を向けたまま暫し考え込んでいた。報告者であるカイエン大司教はその横顔をチラと見た後、頭を垂れて次の言葉を待っていた。


(……ジェレミア大司教は、聖女様に()()()()()のだろうか。…このまま行けば派閥の()()()はどんどん進むだろうに)


 彼は政敵であるジェレミアの事で、頭が一杯であった。教皇派と聖女派の二極化はこの教会にとって由々しき問題ではある。しかし今回の神前審問によってはどう盤面が変わるかは予想できない。……最近の教皇の言動が全く読めないからだが、もしこちらの派閥が減ずる様な結果になれば…。



「……カイエン大司教。コルテボーナ枢機卿はどこに?」

「──…は?! コルテボーナ枢機卿でございますか? 枢機卿ならば、数日前に審問委員の調()()()()()とハマナスの()()()()へ出向かれましたが」


「──フム。……ではそろそろハマナスにも()()()もらいましょう。あそこのギルドマスターはなんと仰っしゃりましたかね」


「は! 【ハマナス・ギルド】ならば、ジップ・ニールセンと言う名前です」


「分かりました。…書状を作りますので、それを送っていただけますか。…()()に」


「御意…」


 

 ──…その後、書状を携えたカイエン大司教は、急いで事務等へと向かっていった。





*******************************





「ジェレミア大司教様、オッペンハイマー枢機卿がお呼びです」

「枢機卿が? 分かりました。準備して向かいます」


 事務塔の奥にある彼の執務室に来た使いに返事をして、彼は扉を閉める。目線を机の向こうにある窓へ向け、逡巡の後に机に向かい一枚の紙にペンを走らせると、封をして魔石の粉末が混ざった封蝋をして、術式印を押す。


「──…これが私の出来る()()()()()かもしれません。…聖女様。どうか、健やかにお過ごしなされることを…ジェレミア心より願っております」


 そうして部屋を後にした彼は、廊下を進んでいる途中でカイエン大司教を目にする。


「…これはカイエン殿、お久しぶりです」

「……ム、あ、あぁジェレミア殿…お久しぶりですな。どちらかへお出かけか?」


「…えぇ、なにやらオッペンハイマー枢機卿に呼ばれまして」

「オッペンハイマー枢機卿? これはまた珍しいですな、()()()()()()の彼が貴方を呼びつけるとは」


「…えぇ、私もそう思います。そちらはなにか?」

「あぁ、()()()の封書がありましてな」

「…そうですか。…では」

「…あぁ、では」


(…早届け、ですか。教皇様も()()のでしょうな)


 事務塔を離れる際に使いを頼み、ジェレミア大司教はその足でオッペンハイマーの居る大聖堂へと向かっていった。





*******************************





「──…移動する? どこにだよ? やっとこの拠点も使()()()ようになったってのによ」


「……ここはあくまで仮拠点だ。設備が心許ない。心配はいらん、持って行く物はない。貴族共(スポンサー)が向こうに()()()()してくれている」


「はっ、くそだりぃな。じゃあここに()()()はどうすんだよ?」


「ここの()()()が使うから問題ない」



 ゲールがベイルズにそう言って説明していると、奥の機械の向こうにある寝台に横たわった男が身体を起こす。


「──…気分はどうですか、デスカ?」

「……あぁ、身体中が()()()()だ…」

「そうですか、スキルは()()()()ですかね、カネ」


 そう言われたネヴィルが虚空を見つめ、自分のスキルボードの確認をしていた。


「…ネヴィルも()()()()ようだな。リビエラ、ここに残していく従者たちは問題ないのか?」


「ん~。あぁ、彼らなら問題ないですよ、デスヨ。彼らは私の言うことを忠実に熟すことしか()()()()()からね、カラネ」


 そう言った彼の周りには、屈強な身体に小さなエルフやビーシアンの子供の頭が付いた、人型のような者たちが黙々と魔獣や獣達を、ケージや作業台に連れ、なにかの()()をしていた。


「……おい、ありゃァ一体何なんだ?」

 ベイルズがぼそっとゲールにだけ聞こえるように聞く。


「……さぁな。元の世界で言う所の、【ヒューマノイド】か【オートマタ】…って言う所だな」


「はぁ? そりゃオメェ()()()()()だろうが。()()()()()()()()()のに、なんでこっちで出来んだよ」


「フフ、簡単だ。この世界に()()は無いからだ」


「──…は? あ、あぁなるほど! ぎゃははははは! 確かにな! 実験し放題ってか!! あははは!」


 ゲールの言った意味を理解したベイルズが大きな声で笑い出す。その声を聞いたリビエラとネヴィルが、不思議そうな顔で笑っている彼を見ていた。





*******************************





「──…そうか、アルフレヒドが。……それで巫女は伝えたのか」

「恐らくは。手の者によりますと慌てた様子が伺えたと話しておりました」


「…フム。アレは少し()()なところがあるからな。それで? スイベールはどう動いているのだ?」


「はい、あちらはどうやらハマナスを使う模様です」

「…成る程」


 

 ヒストリア教皇国の大聖堂の奥に有る教皇の謁見室。天井は遥かに高く部屋自体も広い。脇には柱が林立し、その間を大きな垂れ幕が掛かっていた。幕にはヒストリアの象徴とされる主神を象った紋章が描かれており、そのカラーは濃紫。脇を金糸で縁取ったそれは高い天井部から吊るされ、柱の隙間を埋めていた。


 ヒュージ枢機卿は、ヒストリア教皇刻の最高指導者である、エドモンド・デ・ヒストリアⅩⅡ世と謁見していた。


「──…ハマナス商業連邦…守銭奴(しゅせんど)と欲の皮の突っ張った下衆(ゲス)の国を使うか…クフフフ」


「…()()()()()()()…でしょうな」

「あぁ、あの()()()か…。使()()()()()には持って来いだからな。」


「──…ところで猊下、帝国はどう考えておるのでしょうや?」


 ヒュージの発言にそれまで機嫌よく笑っていたエドモンドの片眉が跳ねる。俯き加減に一つ息を吐いてから、遠くを見つめるようにして話し始める。



「──…どうやら、レイシア皇妃にすり寄る()鹿()()()が居るようだ。…皇帝はルクスを使ってあぶり出すつもりらしいが、国堕としが何やら動き出すようだな」


「帝国の監獄城でしょうか?」


「…さぁな。まだなんとも言えん」




 ──…その後も二人の話は続いていくが、結界に阻まれて彼らの周囲に声が全く漏れることはなかった。






*******************************





「──ギルマス! ランクを上げてください! もう限界です!」


 ドアをノックもせずに飛び込んできた受付嬢チーフのセシルが騒ぐ。


「…お前、ノックくらいしろよ……。はぁ、それで? ()()()だ?」


「何の話じゃないですよ! 分かりきったこと聞かないでくださいよ! 駆除です! ノートさんの屋敷の魔虫駆除! 今日もルーキーが一チーム脱落しました。これで、送った五チームのうち三つが脱落です。これじゃぁ、常設の()()()すら危うくなりますよ?」


 エクスの街にある冒険者ギルドでは、現在常設依頼と並行してノートが買い取った屋敷の庭にある、魔虫の駆除依頼がルーキーたちの主な仕事になっていた。屋敷の庭で確認された魔虫は、キラービーと痺れ蜘蛛の二種。単体では最低ランクだが二種共に厄介な毒が在った。単独では致死量はないものの、キラービーの毒は呼吸器系の麻痺を起こし、痺れ蜘蛛はその名の通り、軽度の麻痺状態を起こしてしまう。対策をしていけば問題なく駆除できるのだが、ルーキーにはその為の金がなかった。


 同じ討伐依頼でも、屋敷で出されていた物の方が金額が高かったので、始めは新人が押し寄せたが、装備の足りない彼らは直ぐに治癒院送りとなった。ランクを上げるとその金額だと割に合わないとブロンズに言われたため、仕方なくアイアンにしたのだが…。


「…はぁ~。未だに()()辿()()()()()冒険者が居ないとは、ホントに()()()()()()()なのか? なぁセシル…。キャロやシェリーはお前の先輩だろ? 彼女らの推薦でエリシア村からわざわざ来たんだ。何かいい案はないのか?」


「そんな事言われても……。私は受付で呼ばれてきただけで──」


「困っているようですねぇ~。…あ! 本当にギルドマスターになっているんですね」


 アマンダとセリスがウンウン唸っていると、空いた扉の向こうから大きな背の人物が、綺麗な声をさせながら入ってきた。聞き覚えのある声にアマンダがそちらを見やると、そこには背の高い偉丈夫のような女性が立っていた。



「お久しぶりねアマンダ。…ちょっと見ないうちに()()()()()ようね」




 ──そこには背負い袋を肩に下げ、冒険者然とした格好のカサンドラが、にこやかに特殊な義手を見せるように手を上げて挨拶してきた。









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