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オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第5章 その国の名は
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第40話 古代技術



 結局、俺達はそのまま辺境伯達の元へは向かわずに、自分たちの迎賓館でエリーさん達と共に夕方まで色々と話し合った。彼女は俺達とこのまま行動を共にして、出来ればハマナスに向かいたいとの事だった。


「──…それは難しいかな。まずこの国の王と会わないといけないし、今回の事件の捜査協力の約束も有るからね」


「……そう…ですよね、分かりました。ですが、これだけは知っておいてください。聖女様…いえ、オフィリア様は、ノート様を一日千秋(いちじつせんしゅう)の思いで()()()を待ち続けております。…どうか、どうかこの事だけは……」


「分かりました、その事は約束します。【()()()()()()()】彼女にはそう伝えてください」


『エリーよ、案じなくても良いぞ。既に聞いておろう…此奴(こやつ)()()を』



 ──…どうしても救いたい人がこの世界に居ます──。



「…はい。あの言葉を、オフィリア様にお聞かせしたかったです。…()()()()()()()ような気がします」


『ならば、今はそれを彼女に伝えてやれ』


 ”コンコンコン”


 しんみりとした空気が漂う中、申し訳無さそうなノックの音が響く。キャロルが扉を開けると、その向こうには先程のメイドが俯き加減に小声でどうしても、辺境伯が来てほしいと言ってくる。


「──…貴女が悪いのではないので、そんな顔をしないでください。向こうには分かりましたと、お伝え下さい。準備してから伺います」


 彼女にそう言うと、余程きつく言われて来ていたのか、安堵したのだろう。目に薄っすらと涙を浮かべながら、下がっていった。


「……ったく、そんなに来て欲しいなら、自分で迎えに来ればいいのに」

「…そう言うてやるな。アレでも上に立つ指導者たちじゃ。そんな事をすれば、()()がつかんわい」


「……ん? なんだ、セリスさんに替わったのか?」

「あぁ。……それこそ()()じゃと言うてな」

「……ダメじゃん」


 その後エリーさん達と分かれて、セーリスたちの元へ向かって説明をする。


「──…一応、スレイヤーズ全員で行きたいんだ。だから、彼女達は別室になるけど一緒に連れて行こうと思うんだけど、いいかな?」


「ハイですぅ!」

「行くぅ!」

「お供します」

《フハハハ! よいぞ!》

《……面倒は見ておく》

《サラなら私が付いているから》

《わ、我もいるぞ! クロ!》


 ──…違う意味でちょっと心配だけど、念話で繋いでおけばいいな。シス、バックアップよろしく。


《了解しました》




◇  ◇  ◇




「──…それで、何用でしょうか?」


 ……そう、俺達はここが現在、どのような状況なのかは知っている。だが、それはあくまでハカセとシスによる、情報取得によって得ているものだ。当然ながら、辺境伯たちからはまだ何も知らされていない。だから休日に突然、意味もわからず呼び出されたと言う(てい)でここに来た。……そして同時に思い出したのだ。女性陣達の()()()()っぷりを。なのでここは俺が、全部仕切らないといけないのだ。


「…お休みの所、急な申し出になってしまった事、大変恐縮であります……が、なにか()()()なのでしょうか?」


「はイ?! な、にゃんのことでしゅ?」


 ──…シェリー……。普段あんなにクールなのに、何故君はオドオドしているのかね…。


「ンンッ! すまない、少し色々有ったのでな。シェリーとキャロル、お祖母様と一緒にそこへ座っても宜しいか?」


 …おお! セーリス! 君は流石だ! ギルマスとして鉄面皮をして来ただけの事は有る! よし、これで行ける。


「どういう事ですか? 何か有ったんですか?」


 間髪入れずに突っ込まれる前にこちらから話を振ると、辺境伯達は思い出したかのように一様に影のある表情になり、まずは着席をと言ってきた。


「──…実は先程、魔導通信が来まして……。申し上げにくいのですが明日、国王がこの街に到着するのです」


「「「ええ──!」」

 …表情! そんな真顔で言っても驚いてるようには見えねぇよ!


「──………。あ、あのぉ。もしやご存知なのでしょうか?」


「「「いえいえいえいえいえいえいえ! なにもしりま()()()ん!」」」


 はぁぁぁぁぁ~~~~。ダメだこりゃ。


「…すみません。ご存知かと思いますが、我らの側には精霊が常に居ます。ですから身の回りで()()()()()があれば、すぐに彼らが教えてくれるのです。今回も、お屋敷で家令さんが慌てて迎賓館に向かったと言う話が有ったので、彼らが調べて総て教えてくれました」


「──…な! そ、そうでしたか。…それで皆さん、ソワソワと…」


「え!? 私、ソワソワしてないわよ。キャロでしょ?」

「な、違うわよ! セリスさんが変な声で話すから!」

「ムキャ──! 儂は完璧じゃったわい! ノートじゃ! 此奴がキョロキョロするからバレ──」


「アンタら全員だよ! もう…なんで小芝居一つ出来ないんだよ。戦闘時なら出来るくせに…」

「…根が正直すぎるビーシアンだからなぁ。…しかしお祖母様までとは、流石に悲しいです」

「え?! ビーシアンって、そんな感じなの?!」


 結局、ぎゃあぎゃあと言い合いになってしまい、辺境伯達が仲裁に入ってなんとか場は収まったが、国王が来る事については、セリスが「来るものは仕方ないじゃろう」と言い、調査を中断して、出迎えるということに決まった。


 そこからは辺境伯や男爵達は大変そうだった。既に衛兵たちには手配していたのだろう、直後に続々と各方面へと使いを出し、王女やオズモンドさん達も慌てた様子で、近衛の人たちに指示を出していった。俺達は出迎えの時ではなく、この屋敷で会うということだけを決め、解散となった。



◇  ◇  ◇



 昨夜、突如としてロッテン男爵からの指示により、街は大騒ぎになっていた。路のあちこちに衛兵がフル装備で立ち、入門口には規制がかかり、結構な混乱が起きていた。特に魔導船が到着するとされた北側門は、一般人は出入り禁止となり、迂回させるために非常用の西側口へと誘導されていた。


 北側入り口から屋敷までの路は封鎖され、そこにあった店舗は急遽閉めるという無理を強いられていた。


「なんで、いきなり封鎖なんだよ! 聞いてないぞ! 食材だって仕入れたのによ、責任取ってくれんのかよ!」


「…その事については、後日領主様から沙汰がある! これは決定事項なのだ、今日はすまんが閉めてくれ」


「…チッ! お貴族様はいい御身分だな! 一言で済むんだからよ! おい、今日は店開けるなってよ」


 通りのあちこちでは、そんな問答が繰り返されていた。


◇  ◇  ◇


 時間にして朝の十時を過ぎた頃。それは唐突に聞こえてきた。


  

 ──…ゴウン…ゴウン…ゴウン…。


 

 北の空を見上げると、初めは黒い点だった。やがてそれは響く轟音と共にその巨体を見せつける様に現れる。


「──…あれが魔導船か」


 それは確かに言われてみれば船だった。巨大な船体は舟形構造をしており、その大きな船底を見せつけている。竜骨と呼ばれる船の中心部を通るメインフレームは加工された金属のようなもので出来ており、船首にまで伸びて船首像まで飾られていた。しかし、マストや帆等は見当たらず、上部はまるで近代船のような形をしていた。代わりに有ったのは船の左右に張り出す羽根のようなもの。どのような原理で飛んでいるかは分からないが、まさに巨大な船が飛んできていた。


「──…あれが前に話した、()()()()の一つだ。船の中心部に、見たことも無い大きな魔道具が設置されている」


 ふと横に居たセーリスがそんな事を教えてくれた。


「…古代技術?」

「ああ、前にお前が聞いてきただろう? 異界の勇者以外に()()()は居ないのかって。()()を作ったのがそうだと()()()()()()。現存している魔導船は何隻も無いはずだ。この国にはもう一隻だけだったはず。どちらも()()だがな」



 ──…俺以外にも異界の迷い人が居た!








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