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オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第5章 その国の名は
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第39話 過去からの声



 セレスの()()が混じった声音(こわね)に、思わずエリー達は()()()()が、彼女の後ろに居た一人の女性が、なんとかセレスに答える。


「──…これは聖女様から()()()()()()()()紋です。()()()()からは私達には分かりません。そもそもエリー隊長が何を話したのか、()()()()()()()()()()()()()()


『……チッ、貴様らにも()()()か』


 忌々しげに吐き捨てるセレスの横で、俺はぽかんとしてしまっていた。それに気づいたシェリーが、耳元で小さく補足してくれる。


「…前に捕縛した賊達が呪文の付いた紋で、自我崩壊させてたでしょ。原理は()()と同じよ。恐らくは話した瞬間に、その時の()()()()()()()()()()()わ。だから、話した()()も、彼女の部下たちも、さっきの()()()()()()()()しまったのよ」


「……え? でもその言葉を俺がまた話せば分かるんじゃ…ってか、皆も今()()()()()()()じゃん!」


 俺がそう言うが、エリーさん達()()()()()が何故か、難しい顔をする。


『……()()()()()()()()()()()。我とお前だけに()()()()()だ。……お前には()()()()()()()に聞こえたのか?』


 セレスの言葉で余計にこんがらがる。…はい? 意味のある言葉って──。


《──…マスター、エリーさんが話した言語は【()()()】です》




 ──…日本語!?




「シス! それってホントか!? え、日本語…なんで?」

『…おい! ニホンゴってなんだ?! それがさっきの言葉の意味か!』


「い、いや、そうじゃなくて言語だよ。精霊たちにも有るでしょ、俺たちに理解できない言葉。その種類のひとつなんだけど…」


『けど何だ?! 我はこの世界の言語なら、総て()()できるんだぞ! それが出来ないってどういう──』


「俺が居た世界の、()()()()()()なんだよ。日本語ってのは」


『──…は?』

「…シス! 今すぐイリス様にメールしてくれ! どう言う事なのか知りたい!」

《…了解しました──…送信完了》


 一体どうゆう事なんだ? なんで日本語なんてものが、この世界に伝わっている? ──…まさか、ケンジか?! ケンジが聖女に教えたってのか? だとしたら、どう言う意味だ? 何故日本語にする理由が……知ってた…のか。悪魔たちの事を…。


 皆が、黙り込んで俺とシスを見守る中、セレスにハカセから念話が届く。


《セレス様……なにやら、男爵邸に()()()()()()()があります。魔導通信が届いたようなのですが…家令が慌てて、迎賓館に()()()いきました》




◇  ◇  ◇




「──…この(こよみ)は…聖歴(せいれき)ではありませんな」


 オズモンド達が逗留している迎賓館の大広間は、現在カデクスの教会から引き上げてきた様々な品が並べられ、検分作業の真っ最中だった。特に書類関係の分別作業が(はかど)らず、指揮を執っているオズモンド自らも分別作業を行っていた。


 そんな中、あの編纂室で見つかった膨大な遺体名簿を調べていると、古い本の年代がおかしなことに気が付いた。


「聖歴ではない? それは一体どういう事なのですか?」


 オズモンドの呟きが聞こえたミスリアは、訳が分からず彼に聞く。


「…いや、例えばこの暦、459年とは書かれているんですが、聖歴459年と言えば、()()()()()()()()だと史実に記載されていたので、村や町単位で死者が発生し、()()()もの犠牲者が居たのに、この本ではそんな事は何も書かれていない。ただ、妙な事に死者の数は全ての本でほぼ()()()されている。人数を合わせるのは判りますが、年代ごとに同じになるというのは、()()()()()()()でしょう」


「──…ではこの本の書かれた年代は…まさか、()()()の?」

「……恐らく()()なんでしょう。…ほぼ毎日のように同じ数の死者が出続けるなどと……まさに()()()()()ですね」


 それを聞いたミスリアは、思わず身震いするような悪寒が走った。歴史上は聞いている。ヒューム以外を(しいた)げ、奴隷以下の扱いを行った非道な時代。ヒュームにしても併合された者たちは、酷い扱いをされたと話だけでは聞いている。同じ人間なのに何故と、何度も歴史学者に聞いたことも有る。彼らは一様に【()()】のせいで()()()()()のだと答えていたが…。今なら自分はどう答えるだろう……。欲を知り、業を見て来た自分なら、()()()()()()()と言い切れるだろうか? そんな事を思いながら、また一冊の本を取ろうとした時だった。


「…し、失礼いたします! だ、旦那様! た、たった今魔導通信がございました!」


 ロッテン男爵の家令が()()()()()()、大広間に響く声で伝えてきた。


「なんだ。一体どうしたのだ、その様に慌てて。まずは落ち着け、なんの魔導通信が来たのだ?」



 ──…お、王が、()()この街に()()()なされます。



 少しの静寂の後に巻き起こるのは、意味不明の怒号合戦。男爵と辺境伯は真っ青になって抱き合うように喚き出し、オズモンドは持っていた本を取り落として、思考停止。ミスリアに至っては、なんですって! を繰り返す。集まった調査員達も、どうしていいか分からず、右往左往している。やがて落ち着きを少し取り戻した辺境伯は、家令に向かって叫ぶ。


「ノート殿達は今何をしている!?」




◇  ◇  ◇




《──…早速、こちらに侍従が向かってきますね》


 ハカセの念話の後、シスに頼んでサーチを行ってもらった結果、そう言ってきた。


『……あの王は、一体()()()()()()()なんだ?』

「…あれから()()…位しか経ってないのに、どうやって来たんだ?」


《…領都から、魔導船を無理やり飛ばしたそうです。それが、明日この街の北側に到着すると、魔導通信で知らせて来たみたいですね》


「「「魔導船で来たぁ?!」」」


「こ、この街に魔導船の発着場なんて無いのにどうするのでしょうか?」


 キャロが何故か変な部分の心配をしていると、侍従が屋敷に来たとメイドさんが伝えてくる。皆が一斉に俺の方を振り返って、どう返事をするのかと見てくるが、俺のメニュー画面には、ピコピコ光が()()していた。


「今すぐには、行けないとお答えください。こちらも決めないといけない事があるので」


 俺の返答に、「え? 主の呼びかけに行かないの?」という顔をしながらも、彼女は頭を下げて部屋を出ていく。


『……良かったのか?』

()()()()からの返事が先」


 その言葉を聞いた瞬間に、その場に居た全員が固まり、首肯する。


 ……さて、どんな返事が来たんだ?



  質問の件について。


 久しいの、グスノフじゃ。標記の件についてだが、正直に言えば儂らも混乱を極めておる。先に断言しておくが、地球人である、異界の人間を召喚したのは、後にも先にもお主…と言えば良いか難しいが、()()()()()ただ一人じゃ。故に考えられるとすれば、健二くんがその世界に残した()()なのかも知れん。オフィリア嬢は、既に儂らの(ことわり)である輪廻(りんね)から()()()()()()故に、彼女を視ることは()()()()のじゃよ。前にも話したが、儂ら神もまだ()()()()()()のだ。悪魔に関してはもう完全に()()()なのじゃよ。もしかすると、アナディエルが()()をしたのかも知れんが……こんな事に巻き込んでしまい、申し訳ない。


 イリス様も現在、必死で原因を探っておるために、儂が代理として返答させてもらった。



「──…はぁ?! これじゃ何にも解んないって事じゃん! ってか、回りくどい! ()()()()()()()じゃねえんだから! スパッと書いて!」


『びっくりしたぁ! な、なんて返事が来たのだ?』


 虚空を眺めていた俺が、突然大きな声で喚いたから部屋に居た連中は、全員がもれなく()()()と跳ね上がった。なんとか持ち直したセレスが俺に聞いてきたが、返事をするのも億劫になり、項垂(うなだ)れて唯、首を横に振った。



 ──…なぁ、もしかして…こうなる事が()()()()()()から、お前は俺をこの世界に()()()のか……ケンジ…──。

 








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