表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第5章 その国の名は
152/266

第12話 細く絡んだ糸と糸



『──…何だと!』


「…せ、セレス様?!」


 突然雰囲気が変わり、周囲に()()()()()()()()()()コンクランが差し出した資料を()()()に掴み取ると、食い入るようにそれを読んでいく。俺達は彼女の行動を黙って見るしかなかった。感情が(あふ)れているのか不機嫌な()()()()()()()()ように感じられたからだ。


「───…あ、あの隊長、合成強化体(ホムンクルス)って?」


 彼女が黙って資料を読み進めていたので、俺はカークマンに耳打ちするようにして話しかける。


「ん? あぁ、リビエラについてはさっき彼が話した()()だ。奴が錬金術と薬師の()()()()()()だったと言うのは知っているか? 元々はその道で有名だったんだが……()()()()を求めて、エルフの国(ユーグドラシルの森)に行ってから様子が()()()()()()()らしくてな。長寿がどうとか、不老が何だと言い出して。大方(おおかた)エルダー・エルフにでも会って、自分も長命に憧れたんだろうと話していたんだが……。どうやら()()()()に行っちまった。奴の研究所からは大量のキマイラの()()()()()と、人体実験の犠牲者が発見された。それらは特に頭や心臓部分が(いじく)りまわした跡が見つかってな。国家調査団はそこから奴の()()と合わせてそう結論付けたらしい。キマイラは新たな肉体(うつわ)として。そして人間のどこかにある(たましい)を、その身体に()()()()()()()を行っていたんだろうとな」


 カークマンの話を聞いて、()()とした。──…合成強化体への魂の換装(かんそう)…それこそ、俺がこの世界に()()()()に行われた事だ。神が()()()()()肉体に俺の魂魄(こんぱく)は換装され、この世界の人間として()()している。…それをこの世界の人間が()()しようとした? そんな考えがどうして浮かんだ? 合成強化体を造って、不死(アンデッド)の軍団を使役して()()目論(もくろ)むってなら、まだ理解できる。だけど()()()()を移動させて()()()()で生き続けるって……それじゃまるで──。


『クソがぁぁぁああ!! おい! ここに書かれている最後のこれは()()なのか!?』


 セレスが激高(げきこう)と共に、資料をテーブルに叩き付けてカークマンたちに詰め寄る。彼女が示していたのは最後のページに載っていた部分。


「お、お待ちください! わ、我らもその件については資料でしか()()できていません。何しろその資料が書かれたのはもう()()()()()()()の話です。なので…この()()をお(うかが)いしたくて、お呼びしたのです。聞きたかったのは()()()()なのです」


『グッ…そうか。だがしかし我はあの時、セリスと共に()()()()()で奴の魂ごと葬ったはずだ…』


「せ、セリス様……あ、あのですな」


 彼女が言い切った後に、申し訳なさそうに口を挟んで来たのはゼストだった。


『……なんだ?』


「い、いや、あの()()()()()奴が言った言葉…の事です。アレは最後に()()()()()()()()



 ────…フ…はぁ……魂魄(こんぱく)()()()()()()…。



「最後の部分は特に小声だったんですが、そう言っていました。当時の儂には意味がさっぱりだったんですが…」


 それを聞いたセレスは、記憶を呼び戻さんと目を閉じうんうんと唸り出す。


「…あ、あの時です。わ、儂がセリス様の()()()()()時です。あれは、奴の声が聞こえたのでつい近寄ってしまったんです。途中で奴は灰になりましたが、儂はセリス様より近かったので聞こえたんです」


『──…! お前が()()()()()()ときか!?』


 部屋中の人間が()()()()()()になってゼストを見やる。ジジイ…お前って奴は…勇者か!


「あははは!…そこは()()()欲しかったのですがな…まぁ、そうですじゃ」


 ゼストという名の勇者が薄くなった頭を掻きながら照れているとドアが乱暴にノックされ、慌てた様子の兵が飛び込んできた。



 ───…商店通りで、スレイヤーズの方々と、賊が交戦中です!



***************************



「──…も、申し訳ございませんが、現在この教会の責任者が不在でして…ふぇ!? わ、私ですか? わ、私はこの教会の一司祭に過ぎません。ですので、()()()()()()()など、私の()()()()()などとてもとても…」


 カデクスに有る聖教会本部に衛兵を伴い、訪れたオズモンド一行に対する返答は()()だった。そもそもこの教会には現在責任者が不在だと言う。事件が有ってから既に()()()()()()()()()()()にも係わらずだ。


「フム。失礼だが、ロンデル司祭殿? だったか。貴方は元々ここの司祭ではないのですか?」


「は、はい。私は元々カデクスの東にある小さな町、エイシャにある教会を預かっている者です」


「その方が何故()()()もこのカデクス教会に?」


「──…そ、それは…()()()()と言いますか、何と言いますか…()だ、こちらへ来られる司教様が()()()()()()()ので…」


 ロンデルはそう言った後、激しく後悔した。この街に派遣される司教が(いま)だに決まっていないなど、外部の人間に漏らすようなことでは無かったからだ。まして、目の前にいる者達はエルデン・フリージア王国の直轄の調査団だと名乗って来て居る。下手な事を言えばそれこそ国相手の外交問題になってしまうのだ。にもかかわらず自分は何と迂闊(うかつ)な事を言ってしまったのだ…。そう考えると彼の額からは暑くも無いのに噴き出すように汗が(したた)っていた。


「そうですか……分かりました。では()()に総本部へ依頼しましょう。その書類を持って来れば()()()()()でしょうから」


 オズモンドの言葉に、意図せず()()()()()しまう。…それは非常にまずいのではなかろうか? この教会は言わば、()()であり()()に等しい。もし、()()()()が露見すれば、()()()()()に追及されることは自明の理だ。総本部が許可など出す事は万に一つも考えられないが、そうなれば、増々この教会に疑念の目が向く事もまた必定(ひつじょう)。何時しか彼は、意識せずに蒼白となり、瞳が(せわ)しなく()()()いた。


「──…どうかなされたか? 顔色が()()()()()が」

「……へ? い、いえいえ…大丈夫です、はい大丈夫です問題ありません!」


「…そうですか。分かりました、では我々はこれで失礼いたします」

「…は、はい。お役に立てず誠に申し訳ございません」



◇  ◇  ◇



「宜しいので?」


 馬車に乗り込んだ途端、ミスリアがオズモンドに確認する。先程の彼の異常なまでの慌てぶりは誰がどう見てもおかしかったのだ。なのに団長はすんなり引き下がった。策はあると思うが聞かずにはいられなかった。


「──構いませんよ。教会には既に()()()()()()()()。それに、無理に()()()()()必ず反感を買ってしまう。宗教を相手にする場合、絶対にしてはいけない行為がそれです。考えても見て下さい、聖教会は【聖イリス教】です。国教なのです、それに歯向かうという事が知られ、教会側に我らが()()()()()()()()()を行ったと言われればどうなるか。だから()()()にはどんなことがあっても()()()でしか話を進めるしかないのです」


「なるほど……国民すべてが信じている教えを国自体が否定すれば…味方が居なくなってしまうと」


 彼女の言葉に彼は首肯(うなづ)きながらも、思考は既に別の事を考えていた。


 ──…恐らくはこれで、()()()()()は見えてくるでしょう…聖女様との確執(かくしつ)…異端審問官の動向…悪魔種……何かがどこかで()()()()()()気がする。まずは、カデクスの()()を見せてもらおうか。




「エリクス様…オズモンド卿は何をなさろうとしているのでしょうか?」


 国家調査団とは別の馬車に乗り込んだ辺境伯とマルクスやロッテン男爵は、先程のあっさり引いた彼に少なからず違和感を感じていた。あの様にあからさまな態度をとっている司祭に対し言質(げんち)も取らずに引くなどと。智謀(ちぼう)()けた彼にしては些か肩透かしを食らった気分だった。


「──…この度の件、やはり()()()()()()()()ようだな。オズモンド殿は多分、全てがどこかで()()()()()()と考えているのだろう」


 そう言われて、二人の頭に浮かんだのは一言だった。


 ────…何が?





最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、


『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!




評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!

ランキングタグを設定しています。

良かったらポチって下さい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ