表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第5章 その国の名は
150/266

第10話 その国の名は


 ──エルデン・フリージア王国。

 

 中央大陸の南東部に位置し、北にガデス・ドワーフ洞窟帝国、北西にハマナス商業連邦、西側をシンデリス連邦共和国と、三国(さんごく)と国境を有するヒュームの国で最も様々な()()との接点がある国だ。その為、どの国よりも種に対する偏見(へんけん)や差別がなく、様々な種族が流入(るにゅう)して、生活を共にしている。特に奴隷制度については厳しい規制があり、犯罪者だけにしか適用されない。その為、所謂(いわゆる)()()()()等と言った制度は無く、そう言った者にはギルド管理による()()()()()()に就く。言わば()()()()の労働者となるのだ。その為金銭の管理や衣食住の保証はギルドが行う為、安全確実なものになっていた。これらすべては先々代に当たる国王が、精霊王との邂逅(かいこう)によって取り決めた制度の一つである。


 王都は国の最も北西側に位置しており、最もハマナス商業連邦に近い場所に有った。国土はとても温暖な気候で肥沃(ひよく)な土地であり、様々な作物が各領(かくりょう)()()()として作られていた。それらは王都を中継してハマナスに持ち込まれるため、エルデン・フリージア王国の王都は()()()としても有名であった。また、その温暖な気候を利用しての花の栽培にも力を入れており、年間を通して様々な種類の色とりどりの花の産地でもあった。王城には七色に染まった花園があり、まるで(にじ)のように見える事から、虹の王城(レインボーキャッスル)とも呼ばれ、とてもきれいな白亜(はくあ)の城が、まるで虹の上に建って居る様に見える、()()()な城であった。


 そんな王城の中にも至る場所に花が飾られ、敷き詰められた絨毯や壁にもそんな柄の意匠がふんだんに使われ、王城の外観の白亜とはまた違い、とても華やかな雰囲気を漂わせたいた。そんな華やかな雰囲気も、その奥にある特別な個室には()()()()()()。その区画は大扉を近衛騎士が城内にもかかわらず()()()()()()()、その威容(いよう)を離れた通路からも(うかが)える。部屋には防音と魔術結界が張られ、()()()()の為の魔道具が至る所に設置されていた。



「──……それで、団長(オズモンド)は何と言って来ているのだ?」


 部屋にある長机の頂点で意匠のこった椅子に腰掛けて、周りに座った者達を睥睨(へいげい)するように見回しながら聞く、一際豪奢な衣装を見に纏った偉丈夫。


  ──カーライル・バイス・フォン・エルデンⅤ世(ごせい)


 現エルデン・フリージア王国の国王である。 


「は! 現地からの()()()()によるところでは、現地到着後、速やかに現場確認の任に着いたとの報。()()()には間諜(スパイ)の調査開始と現場の調査を開始したとの事でございます」


 国王の質問にすぐさま席を立ち、手元にある資料を淀みなく読み上げたのは、宰相を務めるブルミア・フォン・ドミニオン。


 それを聞いた国王が小さく一つ頷くと、宰相は椅子に腰掛ける。彼が座ったのを見届けると同時に彼の隣に座っていた偉丈夫が声を上げ、王を見ながら立ち上がった。


「今回の調査に()いての件で一つ()()が御座いますれば、発言の許可を」


「……なんだ、言って見よ。ドレファス」


 ()()()()()()()()おいて今更許可とは……。と、心の中で愚痴りながらその素振りを一切見せる事無く先を促す。


「は! 今回の遠征に関しまして、()()()()()()()()と聞いております。それ故、魔導士筆頭が出向かれたことにつきましては問題は有りません。……ですが! その護衛として任される者達がなぜ、我等、王国騎士団ではなく、国王様直属の近衛隊が任されたのでしょうか。この王都内に出向くのならば分かります。ですが向かった先は辺境の地、なれば国威(こくい)を示すは我等、王国騎士団の勤めでは無いのでしょうか。まさか、魔導士副団長が、王の()()()であられるミスリア様だからという理由であれば、彼女の魔導師としての資質そのものに対する侮辱とも取れますが如何か?」


 ──王国騎士団騎士団長ドレファス・フェルナンデス。


 エルデン・フリージア王国の国軍としての最高責任者であり、軍部のトップである。但し実力はと問われると、(いささ)か首をひねらざるを得ない。なぜなら彼は先代王国騎士団長の息子であり、就任したのも去年だからだ。彼は体格には恵まれていた故、一兵士と考えたならば、確かに戦力としては申し分なかった。だが、軍の指揮権を持つトップがそれだけで務まる訳がない。()()は当然ながら、ある時は()()さえも(こな)さなければならないのだ。それがために、騎士団では第二軍の副団長止まりだったのだ。そんな彼が何故、騎士団長となったかと言えば、先代である父親のフィリップ・フェルナンデスが次期団長を指名せずにこの世を去ってしまったがために、周りの貴族連中が彼を担ぎ上げた結果だ。その為士気は下がり、先代の片腕とも言われ、騎士団副団長だったオーティスまでもが、()()()()()しまった。今の騎士団は()()()()()()の腐った連中の手に落ちてしまったのだ。


 その為宰相は手を尽くし、現在も()()()でこいつ等の裏を探すのに必死だ。


 ──エルデン・フリージア王国、宰相ブルミア・フォン・ドミニオン。


 長年に渡り、我が王家に仕える侯爵家(こうしゃくけ)の人間。唯一無二の信頼できる臣下だ。元々は王家の弟の家系であり、公爵家(こうしゃくけ)でもあったが、子供に恵まれず、娘しか生まれない時代があった。その為当時伯爵家であったドミニオン家を侯爵に陞爵(しょうしゃく)させ、降嫁(こうか)させることによって興した家だ。



 国王はそんな()()が並んで座るテーブルの対面側に目を向ける。ドレファスの正面には彼ほどの体格は無いがそれでも十二分に鍛え上げられた()()を持った()()()()が無言で座り、ブルミアの対面には痩身で鬱々(うつうつ)とした表情ながら、豪奢な魔導師の礼装を纏った男が座っていた。


 壮年の男はエルデン・フリージア王国、王国近衛騎士団長キース・ボードウィン。瘦身の方は宮廷魔導士第二団長ハッセル・ヤング。二人はドレファスの言った事などまるで意に介さず、キースは真正面から涼しげな顔で彼を見つめ、ハッセルは()()()()()なのか手元の資料に何かをずっと書き留めていた。


 そんな二人をやれやれと思いながら奥に目を向けると、財務大臣のミダス・ニールセンや、諜報部長のパット・エルネスと言った国の重要ポストの人間達だけが座っている。


「──…パットよ、すまんがこ奴に()()()説明をしてやってくれ」


 言われたパットは一礼をして立ち上がると、議場に聞こえるほどの大きなため息を一つ漏らし、ドレファスに向かって話し始める。


「……宜しいかなドレファス卿。()()()調()()()()()()()()()()()()()()のですが、卿の()()により再度ご説明差し上げる。今回の調査に際し、エリクス辺境伯からの()()()()において、事件当事者の後ろに帝国の影が()()()()との知らせが入った。更にその件に絡んだ()()に於いては、聖教会が動いているとの情報が別の筋から確実な物として入手できたのです。故に今回の件は国内外ともに一定の()()()()()をした上での機敏な初動が()()()()と判断が下された。となれば、現状外に向かう我が国の(ほこ)はどなたですか? ドレファス卿、貴方が団長を務める()()()()()ではないのですか? 故にこちらとしても()()()()()の結果、事件の捜査に於いては魔導士筆頭を。護りについては()()()()()()()()()を持った近衛にしたのですぞ? 散々会議でもお話しましたし、資料も議事録も全て特秘術式(とくひじゅつしき)書類としてお渡ししていますが、お忘れか?」


 パット・エルネスの言葉にドレファスは返す言葉を持てなかった。当然である、彼が言った言葉は初めの調査団の人員調整時に散々議論され、結果も既に出ていた事柄なのだから。彼の顔は見る間に紅潮し、珠のような汗が額に浮き上がっていた。


「……グッ、そ、それは」

「もう良い。()()忘れていたのだろう、誰にでもある事だ。気にするな、それよりも貴様は()()()()()だという事を忘れずに頼むぞ」


 仕方なく王が、わざわざフォローの様に声を挟むが、掻かされた恥と狭量さが邪魔をし、渋面のまま()()と言って俯いてしまう。



 ──()()()()()……か、それ以前の問題だな。肝心な話が全く出来ん。



 



最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、


ブックマークなどしていただければ喜びます!


評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!


ランキングタグを設定しています。

良かったらポチって下さい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ