第15話 初依頼
「コチラがノートさんのライセンスカードになります」
トレーを持ったキャロルさんがコチラへ近付いて、テーブルの上にクレジットカードの様な金属板が置かれる。へぇ、これがライセンスカードか…金属製?じゃないのか?繁々とカードを見ているとキャロルさんが説明を始めた。
「ではまず、このカードにノートさんの魔紋を登録しますので、右下の枠内に指を付けて、魔力を少し流してください」
言われて、カードを手に取り、魔力を意識するとカードに一瞬波紋が走り、文様が浮き出てくる。
「はい。これでこのカードはノートさんにしか使えなくなりました。魔紋は個人特有なので、その人でしか反応しません。利用する際は都度、魔力を意識してカードを使用してくださいね。」
「はい」
「では、登録は完了しましたのでカードについて説明していきます。まず、冒険者としては最下級の1つ上のランク銅級となります。これはマスター権限での優遇措置だそうです。それ以外の魔技師、薬師、錬金師については、最下級の鉄級ですので頑張ってランクアップしてください。尚、総てのランクアップの内容は、実績及び信用度に寄っています。薬師や、錬金師は納品数や品質に寄って。魔技師は、加工技術や、依頼達成率。冒険者は依頼達成率と社会信頼度等が考慮されますので、普段の生活態度なんかも、気をつけてくださいね。」
ここで一度説明を止め、ニコリとコチラを見るキャロルさん。
「はい。頑張ります」
「はい。では次です。このカードにはライセンスの登録証だけではなく、様々な機能が付帯されています。身分証明機能、銀行口座機能、依頼受注機能等が代表的なものです。身分証明機能はその名前通りです。自身のカードの代わりに使えます。また、自身のライセンス証明にもなります。そして銀行口座機能は依頼の達成金は勿論、自身の金銭もギルドに持ってきて頂ければ、入出金が出来ます。魔導器が設置されている、店舗各所での支払い機能なども付いていますので、現金を持ち出さずに利用できますから便利ですよ。依頼受注機能は依頼を受注されるとそのカードに依頼内容がコピーされますので、内容確認や、どうしても達成できない時に、破棄する機能があります。勿論、達成率が低いとランクに関わってきますので注意して下さい。ただ、忘れないで欲しいのは、生還する事が何よりです。ですので、依頼内容がランク違いだったり、悪意の有る依頼だったりする時は躊躇しないでください。以上がこのカードの基本説明となります。何か分からない事とかありますか?」
す、スゲェ…完璧な説明!少し長い気がしないでもないが……。
「いえ、凄く分かりやすかったです!有難う御座います」
「いえいえ、これも仕事のうちですから。ノートさんには私、期待していますからね。何かあれば、何時でも声を掛けて下さい。頑張ってくださいね」
そう言って最後に綺麗な笑顔を見せてくれながら部屋を出ていった。
「──…いいなぁ、あのフワフワシッポ」
『触るなよ絶対』
「やだなぁ、解かってますよ。其処まで節操なしじゃないっすよ」
はい、ジト目のセレス様頂きました~。
『ふん…まぁ良い。さて、お前の為人も大体把握出来たし、さっきからセーリスも煩いんでのそろそろ引き継ごうかの』
セレス様はそう言って立ち上がると突然彼女を風が包んだ。
「うをっ、なんだ?」
「ふぅ。やっと戻れた」
──ん?
じっとコチラを見るセレス様。
「セーリスだ」
「ファ?」
「この体の本来の持ち主であり、エクス冒険者ギルド、ギルドマスターセーリスだ」
「あ、あぁ!そうか。は、はじめまし──」
「いや、良い。私もずっと一緒に見ていたから」
「──え?」
「憑依されていても別に私の意識は失っていないから。全部、解かっている」
「そ、そうなんすか…」
「フム。しかし君が…。まぁ、始祖様があそこまで言うのだしな。それで、どうする?早速依頼でも受けるか?あぁ、待て。その前に連中に、紹介と通達せねばな」
うはぁ。ノリが違いすぎて、訳わかんねぇ。
「付いて来なさい」
「は、はいぃ」
◇ ◇ ◇
「皆に紹介しておく。彼が今日から冒険者となったノートだ。因みに、私の審査結果で銅級になるマジック・キャスターだ。他に魔技師、薬師、錬金師でも有る。伝えておくが彼には当分私からの個別依頼を熟して貰うので、パーティ等には入れない。留意するように。以上だ」
ギルドの受付前にギルマスと並んで立ち、紹介される。モノノフ達は皆、直立不動である。
怖ぇ~のか?ギルマスって怖い人なのか?!
ギルマスが奥に引っ込むと皆、一気に脱力する。
”こえー” ”やっぱ迫力パネェな” ”でもアイツもいきなり銅ってことは” ”さぁ?でもミスリルのギルマスのお墨付きだしな”
一気に聞こえる話し声。そして近づく人影
「あ、あのさノート?だっけ?」
「いやぁ、さっきは悪かったな。知らなかったんだ、だから。な!」
そんな事を言いながら近づいて来たのは、アマゾネスさん…じゃねぇ。アマンダさん。一体なにを…って、あぁ。ギルマスが後ろ盾だと思ってるのか。
「いえ。良いですよ。気にしないで下さい。ええとアマンダさん」
「おを!名前覚えてくれてたんだ!おう!アタイはアマンダだ。なにか困ったら何でも言ってくれ、手伝うぜ!」
ある意味、テンプレな手のひらクルーってやつだな。俺の実力じゃないけど。まぁ結果オーライだね。
──ふぅ。
正直疲れた。登録初日にいきなり精霊王に出くわすとは。今日は宿に戻って明日から、頑張る。
「ただいま帰りました」
「お、おきゃえりなさい!」
「あ、今はサラちゃんが受付なんだ。」
「お…おかぁさんは厨房です」
相変わらず、オドオドしながら俺に部屋の鍵を渡してくる。
「あのさ、サラちゃん」
「はぃ?」
「もしかして、俺が怖いの?」
一瞬キョトンとした後、ブルブルと左右に首を振る。
「い、いいえ…いいえ!違いますぅ!」
「そう?なんかずっと怯えてるみたいだから」
何故か真っ赤な顔で俯くサラ。…え?変なフラグ立てた?いやいや、事案になるし。
「ぁ…ぁの」
「ん?なに?」
「ノ、ノートさんの──」
「俺の?」
「サラぁ!チョットこっちお願い!」
彼女が続きを話そうとした瞬間に、厨房から女将さんの声が聞こえた。
「あ、行かないと」
そう言ってペコリと頭を下げてから、彼女は奥へ行ってしまった。
──俺の何!?俺が何!?………ふぅ、行こ。
次の朝、女将さんにギルド登録と宿泊延長を伝えると、ライセンスカードで長期宿泊されると割引しますよ。と言われた。
「んじゃ、行ってきます!」
◇ ◇ ◇
冒険者ギルドに着き、早速依頼票でもと思った所へ声がかかる。
「ノートさん。マスターがお待ちです」
──むぅ。
「おはよう御座いますぅ」
マスターは相変わらず書類を書いていた。
「ん?あぁ。ノートか。えぇと、これだ」
そう言いながらマスターから手渡されるペラ紙3枚。なにこれ?な顔をしてると。
「それが依頼票だ。お前の最初の仕事」
「おをっ!初クエ!キタ──!って、3枚もありますやん」
「2件は常時依頼だ。納品業務だから問題ない。残りの1件はセリスお祖母様のものだ」
「…え?何時彼女から?だって俺昨日とうろ──」
「あぁ。いや、前から入ってる依頼だ。ちと要求が厳しくてな。こなせる人が居なかったんだよ」
そう言われて依頼票を見る。
トリプル以上の魔技師求む。魔力量は有れば有るだけ良い。
作業手伝い。主に魔力充填作業。
「ハードル高ぇ!あの人バカなの!?」
「言わないでくれ。一応祖母だ」
「……えぇと。残りは」
薬師ギルド
常時依頼 ポーション類納品
下級は5本から。それ以上は1本から受付
錬金ギルド
常時依頼 魔道具もしくはその素材
魔道具の納品は審査後1点から受付
素材は各種魔石充填したものを5個から受付
「あのぅ。納品用の素材なんかは何処で手に入れるんです?」
「ん?森に行けば、薬草が有るし、奥に行けば魔獣だって居る。取り放題だ。嫌なら、ギルドで素材は買えるが結構するぞ」
あぁ。派閥関連のやつか。…そんなことまで嫌がらせ受けてんだ。
「察しのいい子は好かれるぞ」
「でしたっけ?」
普通逆だろ…はぁ。まぁいいや…。
「あ!そう言えばここって、書庫みたいな所あります?」
「ん?書架のことか?あるぞ。受付に言えば案内してくれる」
「了解です。では行ってきます!」
「おい!受付で受注するの忘れるなよ」
はぁ~いと答えて部屋を出る。いざ!モフモフへ!
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