第14話 セレス・フィリア
結界によって守られ、俺と彼女だけになった部屋。…あくまでも人間という縛りでだが──、
フヨフヨ…フワフワ。キャッキャウフフ。キャイキャイ。
半透明の羽のついた正に妖精やら、どう見ても愛玩動物みたいな四足獣、果ては光の球までが、部屋を埋め尽くさんと飛び交っている。
そんな超絶ファンシーで、カオスな部屋の中で対峙して座る、俺とセレス・フィリア様。
バインバインなお胸を持ち上げるように腕を組み、スカートの三角窓がチラチラする様に足を組み替えて、絶妙に精霊をフラフラさせて、真面目に座ってピクピクしてる。
「こ、こら、ソコに入るんじゃないって!い、痛い、いひゃい、くっ口をそっひにや…あうをっ!でぁきゃりゃぁ・・」
俺は体中に纏わりつくちびっこたちと、格闘中。話しなんてとてもじゃないが出来る状態じゃない。
『フム…ふ、プフぅ。ブッ…ブフォッ!アハハハハハ!』
コイツ…なに笑ろてんねん。
「ぅあ、あにょぅ…しぇりぇしゅ──むがっ!入っちゃらめぇ!そこはちぃがうのぉ!」
『だぁはははは!!ヒーヒヒヒヒッヒ!何言ってんだお前は!あははは!らめぇって!違う!とか、ヒーヒハハハッ!死ぬ!死んでしまうぅ』
コ、コイツ…。
『アハハハ…ハァハァハァ。はぁ、ふぅ…ふぅ。…んんっ。皆、もういい。その辺にしておいてやれ、我が笑い死ぬ』
お前がかよ!
彼女がそう言うと、フワッと風がそよいだと思った瞬間、ちびっこたちは名残惜しそうに溶けるように消えて行った。
──ふぅ。顎が疲れたぁ、なんか体中こそばかったし。
『さて。お主には一つ聴いておきたいのだが。』
「そんな急にシリアスしても、さっきの事忘れませんからね。…それで、なんですか?」
『我が最初に言った事、覚えておるか?』
──ん?
『お主はこの世界イリステリアを、征服するのか?』
へ?何言ってんだこの人。その質問に俺は即座に否と答えると。無言でこちらをじっと見つめて来る。な、何なんだ一体。そのまま対峙する事数秒間…。
『うむ。嘘はついておらんの』
セレス様はそう呟くと、初めてソファに寄りかかった。は?…あ!もしかして、俺の本心を看破してたのか?
『ふぅ。話には聴いておったが、実際のお前を視た時は肝が冷えたからな』
「そんなにですか?」
『あぁ。そんなにだ。恐らく地上の民ではお前に勝てん』
はぁ。あの筋肉達磨の野郎。好き勝手に弄くり回しやがって。
『どうせエリオスのことだ、暴走したんだろ?』
「えぇ、あの筋肉達磨。そりゃ、イリス様もブチ切れるわ。体の構造聴いた瞬間、ぶちかまされて吹っ飛んで行きましたから」
『ははは。そうか、あの管理者イリス様がか』
「えぇ。そりゃ凄かったですよ。そのあと──」
暫く神様談義で、盛り上がり、俺の話しを聴いてもらい、ついでにこれからの生活についても話した。
『──ふむ。それで、金策も兼ねてあの魔道具オタクの娘っ子の所で、電池とやらをやりたいので登録に来たと?』
「はいそうなんです。それで、セリスさん──…あれ?セレス?セーリス?」
『ん?名がどうかしたのか?』
「いや、やけにセで始まるし、似すぎてるなと・・」
『当たり前だろう。全員、我の血縁なのだから。因みにこの身体の持ち主セーリスはあの魔道具オタクの実の孫だぞ』
──うっそん!?
『ははは。驚いたか。まぁそんな訳もあってこの娘には入りやすいのだ。…まぁその事はいい。それなら監視も楽だからな。魔技師と冒険者。ん~、あ!薬師と錬金師も取っておけ』
「え?そんなに?多いですよ、二個で充分ですよ。」
『どうせ後で必要になるんだから。申請はこっちで全部やってやる』
そう言うとセレス様は机に戻り、何通かの書類を作成した。そして机にあるベルを一振りすると、間もなくドアがノックされ、キャロルさんが入って来る。
『あぁ、まだ面談中なんだが適正は測れた。これを持って各所での手続きをしてきて欲しい』
受け取った書類の枚数にキャロルは一瞬目を剥き、慌てて礼をした。
「失礼しました。では此等を持って廻ってきます。総て統合しても?」
『ふむ。その方が彼も使いやすいだろう。任せる。』
「はい。では失礼いたします」
彼女はそう言ってまた、部屋を出ていった。
──***。
ふわりと風が舞う。部屋にまた漂う数の減った精霊たち。
『一応念のためにな。結界だ。それよりも…ライセンスの意味。解るな』
綺麗な笑顔で問掛けて来るセレス様。薬師に錬金。はぁ…。恐らくはポーションの類が手に入りにくいか、高騰してるってとこか…。でもなんでだ?ギルドは上で繋がっているんじゃないのか?
「ポーション関係ですか。」
『判っておるなら良い。』
「でも何故です?それこそギルド内で融通出来るでしょう?」
──ここの冒険者ギルドの建物の件と良い、何か有るんだな。
『はぁ。組織ってものはな、何でも纏めれば良いって物でも無いんだ。人が集まれば、上下が出来る。上下が出来れば、蹴落とし合いが始まる。取れる果実の量は決まっているからな。……組織って物は怪物だ。派閥という神輿を作らせ、頭をすげ替えながらドンドン膨れていく。ふぅ、人の欲と業の何と度し難い事か』
──うわぁ。超嫌なこと聴いちゃったぁ…。そう思った時、何かが急に胸を締め付けて来た。どうしようもない感情に涙が溢れ、それはとめどなく、頬を伝い流れて行く。
『お、おい、どうした?大丈夫か?』
「いやだよ…う。折角、せっかく異世界にきたのにぃ…こんな所に来てまで、そんな生々しい現実…聞きたくないぃ」
『な…すまない。本当のトラウマを刺激してしまったようだな。安心しろ。別にノルマを課す気はない。それに、お前には秘密が多すぎるから簡単にパーティも組ませられない。当分は1人で仕事をしてもらうから。』
うぅ。そんな、そんな優しい顔で微笑みながら飼い殺し宣言しないでようぅ。
「グスっ…うぅ。…解りましたよ。でもそれなら一つお願いがあります」
『なんだ?エロいのはダメだぞ。この身体は我のものではないからな』
あ!ちくせう!先手を打たれた。
「違います。確認したいんです、自分の最大を──」
『それは駄目だ!この世界が壊れるやも知れんから最大は絶対ダメだ!』
「ナニソレ怖いんですけど!じゃ、じゃあ、どの位なら良いんですか?」
『正直、判らん。お前の中で%区切りのように出来んのか?確か…創造?とやらのギフト持ってただろう?』
「アレってそんな事出来るんですか?」
『お前…。ギフトの内容、聞いておらんのか?』
「…はい。なんか、常識やらは全部インストしたから記憶を自分で参照しろって言われて──…あぁ!!」
『なんだ!急に。』
「メニューに、メールが来てる」
『はぁ?なん──。』
”コンコンコン”
「「ビクッ!」」
『なんですか?』
「…あの、カードをお持ちしました」
『あ、あぁ。入って』
「失礼いたします」
ドアが開く寸前、精霊たちは消えていく。あ、手振ってる。バイバイ…。しかし、その振った手はキャロルさんに向かって振っていた。
「──?あ、あの」
「さっきぶりです!」
「…は?はぁ」
ここは誤魔化し一択!はいソコ!セレス様!呆れない──。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、
『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!
評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!
ランキングタグを設定しています。
良かったらポチって下さい。




