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オッサンの異世界妄想奮闘記  作者: トム
第4章 天網恢恢疎にして漏らさず
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第15話 そして配役は決まって行く



 ──ファ?



 俺は言われた言葉が一瞬理解できず、変な声が出る。


『精神汚染というスキルじゃよ』

「何だよその物騒なスキルは!!」


 その名前を聞いて堪らず俺は憤慨する。


《マスター落ち着いて下さい! それしか名前が相当しないからでしょう》


 はぁ? 何じゃそれ? 余計に意味が分かんないですけど!


「余計にわからん! 何だよ汚染って!? 酷い事するのか!」

『いやいやいや! 待て待て待て! お主は何を勘違いしておるんじゃ!?』


 グスノフがそう言ってくるが、汚染と言われて思いつくのはネガティブなイメージしかない。大気汚染に環境破壊や、放射能汚染……。全てが良くない事のオンパレードしかない。何でそんな事を彼女にしなくちゃいけないんだ!


 俺がそんな事を考えて憤慨していると、グスノフが違う違うと言って来る。


「何がどう違うんです?! 汚染するって事は、そこの環境を変えてしまう事でしょう!」


『そうじゃよ! 眠った彼女の細胞を起こすために()()()()()()()()んじゃから』


「───は?」


 そこでまた俺は思考が止まる。意識を移す? ってなんだ?


『フゥ……。今からきちんと説明するからちゃんと聞いてくれ』


 グスノフはそこからスキルの内容について説明を始めた。


 現在マリアーベルのテロメアは封印されて眠った状態にある、それを覚醒させるにはどうするか。外的要因で起こす事は出来ない、なぜなら彼女の細胞全てに()()()()()()()必要があるからだ。


 ではどうするのか。


 先述したようにテロメアの情報は全て脳で管理最適化されている。


 故に彼女の脳、いわゆる記憶野に闇属性の魔術を使って干渉し、その情報源を直接書き換えるのだ。


 つまり、彼女の眠ったままの記憶を元の起きた情報に書き換える。精神を()()()()という事になる。


「……な、なるほど。確かに他の言い方がぱっとは出てこないな」

『まぁ、この際名前については問題ではないからの』

「…え? それはどうしてです?」

『言ったように、彼女の記憶部分に闇魔術で入るという事は、お主自身も干渉を受けると言う事だ。じゃからこの術は()()になっておるし、下手をするとお主自身が()()()()()


 そっちかよ!!


《…それについては大丈夫かと。私が()()()()()()()()()()ので》

『なるほど! そうか。シスが常に監視して居れば戻って来るのは()()じゃな』


 そうして、俺はグスノフ様から闇魔術である精神汚染の術式を聴き、()()()()()で完成させた。




********************************




「交渉できなかった?! どうしてですか?!」


 シュタイナー司教の叫ぶような叱責に、ロンデルはただ地に頭をこすりつけていた。


「も、申し訳ございません! 衛兵のニクラウスとやらが、ダラダラと話をしてしまい、どうにもセリス様の怒りを買ってしまいました。故に、マルクス殿に帰れと言われ……」


 小心者であるロンデルにとって嘘など付けるはずもなく…唯正直に顛末を話すだけだった。


「ニクラウス??」


 それを聞いた司教は考える。


 そもそも話を持ち掛けて来たのは衛兵隊長からだった。大体彼はなぜ()()のことを知っているのだ? 話が来たときはそこまで頭が回らなかった。まずは見つかったことに安堵したのだ。そこから何故か彼らが取り戻す手伝いをしてやると言い、話に乗ってここまで来た。


 だが、彼らに何のメリットがある?


 衛兵隊長が聖教会の熱心な信者であるのは承知している。だがそれは一信徒としての彼でしかない。そう考えると、なにかがずれて来て見えた。


 そうだ。彼らはこの領の一衛兵部隊。辺境伯様直属の騎士団副団長に物言える訳がない。それに聞いた話では彼らはキチンとこちらで()()()()と言っていたのだ。


 どうして誘拐嫌疑などと持ち掛けてきた? ……何かがおかしい。


 この施設は教皇とこのカデクス教会の人間、後は限られた者しか知らないはず。審問官はもうすぐこの街に入る。


 処断の通知の文を持って。


 次々出てくる疑問に司教はロンデルのことを忘れ、その場で一人黙考してしまう。


 ──コワイデス……顔をあげられません……司教様……聖女様ぁ。



 その後ロンデルはシュタイナーが振り返って、間違えて踏んづけるまで、気付かれなかった。




********************************




「ふむ…侵入は叶わなかったと…」

「は! 申し訳ございません。寸でのところで彼奴が裏口に荷物をと言い出しまして」


 ニクラウスは、作戦失敗の内容を隊長に説明していた。


「なるほど。……探知系のスキルでも持っていたのか、あるいは……」

 

 その言葉を聞き、ハッとする。そうか奴らは確か冒険者だ、ならばそう言ったスキルを持っている事も充分考えられる。奴らは高ランク冒険者。スキルも複数持ちの可能性がある。


 次はその点も考慮しなければと思いを新たに隊長へと進言する。


「次はスキル関係を考慮した、作戦を──」

「いや、それはもういい。監視任務のみ続行してくれ」

「…え?」


 隊長は今なんとおっしゃった?

 監視のみ続行??


「あ、あの…」

「ん? なんだ」

「い、いえ、あの監視任務のみとは?」


 その言葉を聞いた隊長は、ニクラウスの顔を見つめて話す。

「既に()()()()を発動した。よってお前は男爵邸の出入りを監視報告するだけで良い」


 苛ついた表情を隠しもせず、隊長はそう言ってニクラウスに退出を命じた。


 二の句が継げず、ニクラウスは茫然自失のまま部屋を出て行く。


 閉じたドアを見つめ、隊長は小声でぼそりと呟いた。

「……お前は生真面目だからな。精々暴発せぬようにな」


 そう言った彼の顔には嫌な笑みが張り付いていた。




********************************




 ───陛下。(シャドー)、ここに。


「うむ。…先程の件如何に思う?」

「…おそらくは、()()()の事でありましょう」

「…例の()()()か」

「は!」


 皇帝カルロスⅧ世はそう言って考える。東に産まれると言われる異界の人間。千年前は勇者として顕現し、見事邪神を退けた。


 それから既に千年経った。


 世界を脅かすような存在を誰も知らないこの世の中で、なぜ今またそんな人間が? それとも何かが起こる前兆なのか?


 懸念は幾らでも考えつく。


 あの時は人類にとっての脅威だった。だが今は……。


 もしや……いや、まさかな。


「まずは、探れ。娘であるならば───」



◇  ◇  ◇  



「はぁ~~()()()()()()なぁ。やっとゲールに言われた仕事が終わったってのに、またこんなこすっかれぇ仕事廻してきやがって…ん? なんだぁ? おいおいおい、ここの皇帝って奴は鬼か畜生か? テメェの娘を……はぁ~めんどくせぇなぁ」


「貴様は仮にも傭兵であろう。ならば雇い主の内情に口を挟むな。言われたことを熟せばよいのだ」


 ベイルズは「へいへい、了解です~」と叱責を軽くいなし、部屋を出て行く。


「ルクス公の推薦とは言え、アレを連れて行くとは……信用ならんな。おい、奴の行動は逐一報告しろ」


「は!」



 その声は聞こえるが部屋には誰もおらず、気配も既に消えていた。




********************************




「先ずは人払いを」

 オフィリアはジェレミアに頼み、通信室の人払いを頼む。


「はい、暫しお待ちを」


 エリーの部隊はカデクスにもいるはず。先ずは審問官の足を止めてもらいましょう。そして彼らの移動を早めて貰えば──。


 通信室に入るまでの間、彼女は部隊の立ち回りを考える。


 どこに誰を向かわせるのか。エリー自体は顔を合わせているらしい。


 ならば、他の誰を──。




 







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