第4話 朝とクロの実験
今日はちょっと短め。
話が切り替わるのがここだったので…
「フェリを探しに森に行ったお父さんには、後で私から伝えておくから。フェリはご飯を食べて、早く寝なさい」
「……うん!ありがとう!お母さん!」
その後僕は、言われた通りご飯を食べて、自分のベッドに入った。いつもは温められて出されるパンは、少し冷めてしまっていたが、美味しかった。クロは僕の掛け布団の上に乗っかって寝ていた。
◆◇◆◇◆
隣の家の、鶏の鳴き声で目が覚める。まだ眠い目をこすりながら、起き上がり、前を見る。そこには、一匹の黒猫――クロがいた。
「クロー!起きてー!」
お父さんとお母さんに聞こえないように、小さな声で呼ぶ。それを何度か繰り返していると、クロがもぞもぞと動き始めて、起き上がる。
『ふわぁ……、久しぶりにぐっすり寝れた……。おはよう!』
「やっと起きた?はぁ…おはよう、クロ」
呆れながら、朝の挨拶をする。その後、家のカーテンを開けて太陽の光を家に取り込む。お父さんとお母さんは、僕がクロを起こしている間に外に出て、農作業を始めているようだった。
リーノ村のある国では、村に領主や税は無く、自分たちで村長を決めて治めさせている。しかし、もし魔物や盗賊に襲われても、村を助けるために国が動くことはない。あるとしたら、名高い盗賊団を捕まえるため、などだろう。
また、村には冒険者ギルド作ることができないため、冒険者の力を借りるには近くの町にまで依頼を出しに行く必要がある。
リーノ村の村長は世襲制で代々村長となる家が決まっていて、今はそれなりに年を取った人が村長だ。その人が死んだら、現村長――ウィル村長の子供のヴィレお兄さんが村長になるということだ。
「そういえば今更だけどさ、クロの声って僕以外の人には聞けないのかな?」
本当に今更だけども、気になったので聞いてみる。
『どうなんだろう…でも、前に出会った人には僕の言葉がわからなかったみたいだよ』
「じゃあやっぱり、僕だけが聞けるのかなぁ…?」
『気になるなら、試してみようよ!』
「そうだね!試してみよう!」
というわけで、お父さんの前でクロに話してもらって、クロの言葉が僕だけに聞こえるのか試してみることにした。
家の扉を開けて、外に出る。太陽の光が眩しく、心地いい。そのまま家の前の畑にいるお父さんの方に向かう。畑の植物を踏まないよう、気を付けながら歩いていき、お父さんに話しかける。
「ねぇ、お父さん!」
「フェリに…おっ、その子が飼うことになったっていう黒猫か!」
「うん!かわいいでしょ!」
「あぁ、そうだな。しっかりお世話するんだぞ?」
「もちろん!」
ある程度話した後、クロに目で「何か話して!」という合図を送る。クロはその合図を受け取ってくれて、口を開く。
『あー、えっと…よろしくお願いします!』
(どうなるんだ…!)
ドキドキしながらお父さんを見ているが――特に驚いた様子はない。この時点でなんとなくわかるが、一応もう一度、クロに合図を送る。
『え!?また!?なんて言えば…お、おはようございます!』
さっきと同じで、驚いた様子はない。つまり、お父さんにはクロの言葉がわからないということだ。
「おぉ、可愛い鳴き声だなぁ。きっと、俺のことをカッコイイ!とか言ってるんだろうな!」
(……悪いけど全然違う…。で、でもまぁ、これでお父さんにはクロの言葉が、ただの猫の鳴き声に聞こえているということがわかったぞ!)
その後、お母さんや他の人にも同じことをしたが、誰もクロの言葉をわかる人はいなかった。これにより、少なくともこの村でクロの言葉を理解できるのは僕だけだとわかった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
よろしければアドバイスなんかを頂けると幸いです。
それでは、またいつか