第2話 話す黒猫と名前
刻花と申します、よろしくお願いします!
誤字チェックは自分ではしましたが…残っているかもしれません
でも、ずっと誤字チェックしてても進まない…
その木の下には、一匹の黒猫がいた。
月明かりに照らされて、真っ黒な毛並みが少し光っている。神秘的で、それでいてどこか、親近感が湧いてくる。
その黒猫は僕に気が付くと、顔をこちらに向け、口を開いた。
『……誰?』
すると、前の方から声が聞こえてきた。透き通った、男とも女とも言えないような中世的な声で、聴いているだけで心地よくなってくる。
「えっ?今の声は…?」
突然声が聞こえてきて、動揺する。猫が話したのではと一瞬考えたが、常識的に考えておかしいためすぐに脳内で否定した。
『……もしかして、私の言葉がわかるの?』
「言葉がわかる…?も、もしかして――君が話しているの?」
黒猫に問いかける。一度は否定したが、周囲から黒猫以外の気配は感じないため、嫌でもその考えが浮かび上がってきたのだ。
『……うん、私は君の前にいる黒猫』
「え!?ホントに!?何で話せるの!?」
『それは私にもわからない…今までこんなことはなかったし…。でも折角話せるのなら、もう少し話していかない?』
そう誘う黒猫には、どこか色気のようなものあるように感じた。人の言葉を話す黒猫、不思議ではあったが興味もあったし、帰り道を教えてくれるかもしれないので、話すことにした。
「うん、いいよ!僕ちょっと迷ってて、困ってたところだったし」
『迷ってた…あ、ならここに来てみなよ。多分帰る場所が見えるから』
黒猫はそう言って、首をチョイと動かす。猫のディスチャーなんて見たことがなかったが、「来て」ということだとすぐにわかる。
「帰る場所が見える…?」
言われた通り僕は丘の上に登る。そして、黒猫の隣まで来た時、さっきの言葉の意味が分かった。
「うわぁ……。綺麗……」
美しい光景に、思わず息をのんだ。
丘から見えたのは、僕の住むリーノ村。そして、沢山の星が浮ぶ夜空。どうやら迷っているうちにかなり高い所にまで来ていたらしく、村の全体を見回すことができる。
『ふふっ、でしょ?ここは私のお気に入りの場所なんだ!』
嬉しそうに話す黒猫の横顔には、人を惹きつける魅力がある気がした。
『…あっ、そうだ!君、名前は?』
「あ、名前を言ってなかったね…。僕はフェリ、よろしくね!」
『フェリ…うん!覚えやすくて、いい名前だね!』
「ははっ、ありがとう!ところで、君のことは何て呼べばいいのかな?」
『私…?うーん……私に名前とかないからさ、折角だし君がつけてよ!』
「え!?僕が!?そんなあっさり僕がつけることにしていいの…!?」
突然の事に、僕は少し動揺していた。名前というのは一度決めたら変えることができず、つけた人との繋がりを表すものだと、村の神父さんに言われていたから。そんなあっさり決めるものではないと思っていたから。
(まぁ、猫に人間の常識を押し付けるのもあれだろうけれども…)
『うん、もちろん!でも、カッコイイ名前で頼むよ?』
「えぇ…、しょうがない…。じゃあ何だろう…」
僕はしばらく、腕を組んで考え込む。名前とは一生を共にするもので、変なのを付けたら責任は僕にある。そんなネガティブな思考に傾きかけていた時、名前の参考にしようと黒猫の方を見た。
暗くなった中で金色に輝く目、常に動いている可愛らしい尻尾。そして何より、月光が反射してうっすらと輝いている、真っ黒な毛。かわいらしくて、美しかった。
(金色の目だからキン…?いや、なんか違うな…。何かいい名前……)
「あっ、思いついた!」
『思いついた?一体どんな名前?』
「君の名前は――クロ。綺麗な真っ黒の毛だから、クロ」
この時に決めた名前と、これから何年間も付き合うことになるとは、まだ僕は知らなかったし考えてもいなかった。でも、自分でいうのはあれだが、いい名前だと思っている。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
よろしければアドバイスなんかを頂けると幸いです。
それでは、またいつか