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学園アルカナディストピア  作者: 石田空
学園抗争編

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偽りのアルカナ・2

 スピカとスカトが、どうにか襲撃してきた少女を撃退していた、その頃。

 ふたりがやり合った階の下。アレスは目を細めて、ズベンとシェラタンと対峙していた。


「もう、なんなんすか。この間やり合ったでしょ。もう俺らに関わるの止めてくださいよ。先輩」

「ほんっとう超可愛くないっ、また下僕ちゃんにしてあげようか!?」

「勘弁してください、もう尻尾生やしたくないっす」


 アレスはちらちらとシェラタンを警戒しつつも、やる気満々なズベンにがっくりと肩を落としていた。


(なんでよりによってひとりのときに、【悪魔】と対峙してんだよ……しかもあっちの先輩はアルカナすらわかんねえのに……のぼーっとしてるけど、ゾーン使いだってこと以外情報ねえんだよなあ……)


 アレスは自身のカードフォルダーに触れる。

 既に【悪魔】の能力は割れているが、【悪魔】に近付かれたらその時点で詰む。距離を置いてやり合うしかない。

 汎用性が高い【恋人たち】の能力をコピーし、そのままかまいたちをつくり出し、ズベンとシェラタンを牽制した。


「ああっ、あーたこの間は風使ってなかったのにぃっ、さては【恋人たち】ねっ!?」

「いや、あの有名人カップルとは違うっすわ」


 よほど強いアルカナでない限りは、アルカナを割られた時点で詰む。

 一番数が多い故に対策が立てられやすい【愚者】は、基本的に自身のアルカナを明かしたがらないセオリーがあるが、ズベンは本気でわかっていないようだった。

 かまいたちは羽を出して飛ばれたことで難なく回避され、火を竜巻のようにして浴びせられるのを、慌ててアレスは風のカーテンをつくり出して対抗する。

 魔力がガリガリ削られるのに、アレスは「ぐうう……」と歯噛みする。


(ほんっと、スピカとスカトに格好つけてる手前、ひとりでアルカナ奪われる訳にはいかないだろっ……!)


 魔力量は特訓で増やせるが、使う力が強ければ強いほど、特訓だけでは追いつかなくなる。だからこそ、前にナブーが見せた精密魔法を思い起こしながら、風のカーテンを薄く、それでいて火の竜巻を切るイメージを持って、消火を試みる。


(……ナブー先輩、スピカを助けたとき、あからさまに俺を意識してた。俺が【愚者】のアルカナだから、俺に能力の使い方を教えるために、わざと精密魔法を使ったんだ)


 変人な上に生徒会執行部からも革命組織からも関わられたがらない人物だが、何故か自分たち新入生には親切な人物だ。

 貴族も金持ちも嫌いなアレスではあるが、彼は因果応報というものをよく知っている。

 与えられた恩には報いるのが肝心だ。

 やがて、火の竜巻に風のカーテンを絡ませることに成功する。

 いくら【悪魔】の能力とはいえど、火は塞き止められて燃やす燃料がなかったら消えてしまう。


「ああっ……!」

「消火、完了……!!」


 だんだん弱まる火の竜巻をかき消すように、アレスは手で火を薙ぎ払った。とうとう火は完全に鎮火した。


「もう! もうもうもう! 【世界】ちゃんが困ってるから性的に慰めてあげようとアルカナ集めにリーチかけたかったのに!」

「あんたの色恋沙汰に後輩巻き込むの止めてもらえます!?」

「うるさい! うるさいうるさいうるさい! ああ、もう!!」


 ズベンが癇癪を起こしている中、本当に見ているだけだったシェラタンが「ズベン、もういいよね……」と弱々しく声をかけた。


「まだ終わってにゃいのに、なによ!?」

「生徒会執行部、来てるよ?」

「えっ!?」

「はあっ!?」


 シェラタンのぬぼーっとした問題発言に、ズベンは慌てて羽を出すと、そのままシェラタンを抱えた。


「ズベンちゃんは逃げる! あとはよろしくっ!」

「はあ!? ちょっと待ってくださいよ……」

「ズベンちゃん生徒会きらーい! ズベンちゃんのこと猥褻物扱いしてくるんだもんっ!」

「それ多分下ネタばっかり飛ばすせいじゃないっすか?」

「しーらない!」


 そのまま窓から勢いよく飛んでいってしまったのと、アレスがとりあえず自分も逃げようかと窓縁に手をかけようとしたところで、窓はいきなり土壁で塞がれてしまった。


「げっ」

「ごめんなさいね。あなたに少々聞きたいことがあるんです」

「アルカナ集めしてる子たちから、事情聴取してるから、授業までには解放するからちょっと大人しくしててねー」


 錫杖を携えて凜としたまなざしで土壁を消し去る女性と、にこやかに笑って手を振る青年の姿に、アレスはがっくりと肩を落とした。


(しゃーねえか。今はスピカがいないから、まだマシだということにしておこう)


【運命の輪】は、見つかり次第処刑される。

 ここが治外法権とはいえど、幼い頃から犯罪者も同然に扱われてきた【運命の輪】に関しては、貴族階級だらけの生徒会執行部も同じ反応を示すだろうから、彼女がいないことをよしとすることしか、今のアレスにはできなかった。


「ごめんね。たしか君は新入生だよね。僕はエルナト。そちらはイシス。じゃあちゃちゃっと話を済ませちゃうから」


 そう言いながら、軽い調子でエルナトは手を広げた。そこから出る薄い膜に、アレスは目を瞬かせる。


「え、ゾーン……?」

「おお、もうゾーン見たことあるんだねえ。今年は五貴人の気まぐれのせいで、いきなりアルカナ集めが開始されちゃったから、新入生の大概の子は巻き込まれ事故に遭うか、授業が終わり次第寮に引っ込むかのどちらかなんだけど、君はどちらかというと、前者のようだねえ。ちなみに僕のゾーンはちょっと違うんだあ」


 エルナトは軽口を叩きながら、さっさとゾーンを展開し終えた。

 それは木製の椅子、机。丸い会場。

 まるでそれは、裁判所のような様相となっていた。


「あの……事情聴取って聞いたんすけど、俺、もしかしなくっても裁判にかけられるんですか?」


 ゾーンは外からだったらともかく、中からだったら条件付けされないと、出ることが難しい。そんなに大量にゾーン使いに会ったことがないアレスではあるが、思ってもいなかった形のゾーンに突っ込まれて、困惑していた。

 それにイシスが小さく「ごめんなさいね、脅かしてしまって」と謝られる。


「私たちは調査のために、できる限りアルカナ集めに参加している生徒から事情聴取を取っているだけです。五貴人に不正な動きが見えますが、こちらから情報開示を申請してもなかなかしてもらえなくて、仕方がなく現場で調査しているんです」

「なるほど……つまりは、【世界】に勘付かれないようにと?」

「おお、ゾーンの特性まで知ってるんだ。今年の新入生は本当に優秀だねえ」

「エルナトくん、あまり茶化さないでください」


 イシスにやんわりと窘められて肩を竦めつつ、エルナトは「単刀直入に聞くけど」といつの間に持っていたガベルを手で弄びながら尋ねる。


「君のアルカナは本物だよね?」

「はい?」


 思ってもいなかった質問で、アレスの声は裏返る。それにエルナトは「『はい』か『いいえ』で答えてー」と言う。


(ゾーンは展開している人間にとって都合のいい空間をつくる場所……はっきり言って、わざわざ裁判所を形取っている意味がわかんねえ……それがエルナト先輩の能力って訳か? これは単純に五貴人や【世界】に聞かれたくないって意味だけじゃなくって……エルナト先輩の能力に関係するんじゃねえの?)


「早く答えてー」

「あー、はいはい。はい、ですっ!」

「うん」


 エルナトのガベルがカンカン、と叩かれる。


「嘘はないみたいだね」

「あのー、俺、いきなりおっかない先輩に襲われるわ、その人たち逃げたのに俺だけ捕まって尋問とか、全然フェアじゃないんですけどー。これが生徒会執行部のやり方って奴っすかー?」


 アレスが挑発するように、そう尋ねる。

 エルナトは「んー……」と困った顔で髪を引っ掻きながらイシスを見る。イシスは「そうですね」と困った顔をしてみせた。


「ごめんなさいね、新入生の……ええっと?」

「アレスくんでーす。アレス・キュリオンティ」

「ではアレスくんですね。あなたは学園アルカナに入学してから、どれだけアルカナ集めに遭遇しましたか?」

「……結構開始早々から巻き込まれてますんで、数はちょっと覚えてないです」

「ありがとうございます。おそらく、新入生だからアルカナ集めに積極的に参加している生徒の鴨にされてしまっているんですね」


 普段であったら貴族嫌いのアレスは「お貴族様でも鴨とか言うんですねー、お下品」と皮肉のひとつでも飛ばすだろうが、さすがに警戒している相手のゾーンの中に入っているために、「そうみたいですね」だけで言葉を濁す。

 それにしてもイシスの言葉に脈絡がないように思える。


「あのー、それと俺が尋問受けてる理由となにが関係あるんすかー?」

「ごめんなさいね、説明がまどろっこしくって。あなたが偽装アルカナによるアルカナ集めに関与してないかの調査をしていました」

「……はあ?」


 思ってもいない話に、アレスは目を見開いた。

 偽装アルカナ。そんなものが実在しているなら、小アルカナはもっと積極的に大アルカナに偽装するし、そもそもスピカがステルス決め込む必要だってない。それ以前に、ひとりに一枚のアルカナカードを、そう易々と偽装なんてできない。

 一見万能に見えるコピー能力を持つアレスだって、自分の魔力量より上のアルカナ能力はコピーできないし、最悪魔力枯渇で死に至る。強いアルカナ能力を使うということは、常に魔力量との戦いになるのだから。

 そんなものを、そう易々と偽装されたら、日頃から無茶をやっているアレスからしてみればたまったもんじゃない。

 イシスは悲しげに目を伏せる。


「ごめんなさいね、本当に久しぶりに我が学園に全てのアルカナが揃いました。しかし、一部のアルカナは稀少価値が高過ぎたり、支配者会層が独占したりしている関係で、生徒会側でも能力が開示されていないものがあるんです」

「あー……だから偽装アルカナについての情報を、五貴人に開示しろと言って、拒否られてるっつうことですかあ……」


 前にスピカが「変だ」と言っていた【恋人たち】の襲撃。観察眼の鋭いスピカが「使い方がおかしい」と言っていたが、それが偽装アルカナだとしたら。


「あのう、質問です。偽装アルカナの使用者がいた場合は、どうなるんですか?」

「ここは大アルカナのための学び舎です。当然ながら、退学処分となります」

「なるほど……」

「うん、本当にごめんね、こちらの都合に巻き込んじゃって。君もいきなり偽装アルカナに襲撃されないように、気を付けてね」


 ようやくエルナトがゾーンを解き、ふたりに何度も何度も謝れてからやっとアレスは解放された。


「なんというか……俺とんでもないこと聞いちゃったんじゃ……?」


 このことをどこに流すべきか。そもそもスピカたちに教えるべきか。考えながらもひとまずはアレスは授業へと急いだ。

****


【女帝】

・錫杖の召喚

・土の操作

・×××


【教皇】

・ゾーンの展開

・ゾーンに入った人間を強制的に裁判にかけることができる。裁判中は【教皇】に一切攻撃することはできず、裁判を終わらせる以外にゾーンを出ることはできない

・ガベルの召喚。ガベルにより裁判にかけた人間の嘘を判定することができる

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