93 いい夢、見ろよ
「アレク、起きなさい」
テントの中、多分まだ外は暗い。寝起きの良いのが自慢の俺だけど、それでも少々眠いくらいの早朝だ。こうやって起こしてくれるルーもテント内では全身鎧は装着してないよ。いつものかわいいルーです。
「起きたら結婚してくれる?」
「はいはい。するから起きなさい」
早起きは三文の徳。
夜討ち朝駆けは襲撃のお約束。
まだ半分脳が寝てる俺だったけれど、モゾモゾとテントから出て背筋を伸ばした。周りを見れば既に『赤い粉砕者』の面々も準備をしている。
ほんの少しだけ東の方の空が明るくなってきたけど、まだ世界は夜だ。そんな暗闇の中、焚き火の灯りだけでテントをお片付け。慣れないと設営より片付けの方が時間がかかるけど、昨日と違ってセシルも居るから少しは楽だ。相変わらずモタモタしながらも撤収完了。少しはテント設営に慣れてきたけど俺達だって手際が良い方じゃないからなぁ。
そして朝食を作る……んだけど襲撃前なので急いで軽く済ませよう。予め作っておいたサンドイッチの出番だっ。これは収納魔法で持ってきたけど……ギリで再現可能じゃないでしょうか。事前に作って持ってくりゃいいんだから。ダメか?ギリギリセーフと言って欲しい。それをみんなに配って、もう春だけどまだまだ冷える時期だから熱い紅茶をたっぷり淹れて身体を温めよう。最後に丁寧に焚き火を消して……よし準備完了。
さぁ、野蛮なお仕事に行こう。
夜明け前の月がほんの少しだけ大地を照らしている。
ガタゴトと呑気な音を立てながら馬車が進むが、目的は襲撃だからね。このまま近づいたらグッスリと寝てるオーク達も起きるだろうから念のため1キロ程度離れた所に馬車を置いて、ここからは徒歩ですよ。セシル達の偵察によると、集落には街道から見て反対側……南側には防御柵らしいものが無く、ほとんど無警戒らしい。
今だけはセシルを先頭に、目指すはオークの集落。暗く冷たい森の中を歩くこと10〜20分くらいだろうか。やがて闇の中に見えてきた集落は……いつかの盗賊のアジトよりも更に粗末だった。一見して見張りは居ない。
……昔、何度かオークの肉が美味いって話を何かで読んだ気がする。この世界でもオーク肉は食肉として流通していて、実際食べた人に言わせると上質な肉でお好きな人には堪らない味だそうだ。
そうなんだよ、俺はまだ食べた事がないんだよ。今までも何度かオークの討伐はしている。なので食べる機会はあったと言えばあったんだけど……オークなぁ。こいつら……亜人だろ?魔物だけど亜人じゃないか?豚と人、どっちに近いかと言われたら……微妙じゃない?今、目の前の集落は確かに粗末だ。こんなもん、俺が3匹の子豚を襲う狼なら失笑しちゃうだろう。でも豚にこれが作れるかと言ったら絶対に無理だよ。
オークは魔物で、人の天敵だ。隙があれば人間を襲ってくるような連中なので仲良く共生しようというのも難しいと思うけど………食うとなると、一線を越えちゃう気がする。猿を食うようなものかな?でも野生の猿も防具を身につけて武器を持ったりしないでしょ。粗末であっても小屋を作れない。オークは猿よりも人寄りだ。
それでも食うか?いや、ダメだなんて言わないよ。俺自身が食うにはもう少し時間と勇気が必要だって話だ……ってことを延々とルーとセシルに説明したことがある。ええ、かなり昔に。
すると2人から心底呆れた、という眼差しと共に「本当に意外だけど時々繊細なんだね」という言葉をいただいた。ジェネレーションギャップってあったけど世代間ギャップならぬ異世界間ギャップなのかな。
ふと、そんなことを思い出したけど目の前の現実に集中しよう。
「確かに、昨日は居なかった1体が居るね」
マジかよ。俺の勘はあまり当たらないんだけどな。こんな時にこんなことは当たるとは……せめて強すぎる上位種ではありませんように。いや、強くてもいいや。誰も怪我しませんように。頼むよ、神様。お義父さん。そのうち結婚の挨拶にも行きますので。スーツ着て手土産持って行きますので。
幸い、ここまでは想定の範囲内だから。
やることは変わらんよ。
よし、いくか。
「―…―《極灼炎砲》」
作戦はいつも通り。クリスによる開幕の火炎魔法が炸裂した。魔法が直撃したオーク達の粗末な小屋は派手に燃え出して、周りを明るく照らしている。
さぁ、走れ剣士達。クリスは……まぁテキトーに頑張れ。怪我にだけは気をつけて。俺は後輩たちをフォローします。
ええ、数も決して多くなく、しかも寝ていたオークを不意打ちしたのだ。ほとんど戦闘になることすらなく一方的に倒していく。『赤き粉砕者』の3人で4体のオークを倒して、俺は2体を倒した。あと4体はどこだ?俺の気配察知では、もう残り1体しか確認出来ない。その1体と戦うクリスのところに走る途中に3体のオークが倒してあった。流石はクリスくん、お強いね。どうやら、あれが最後の1体のようだ。
「大丈夫か!?」
クリスが最後のオークと打ち合っていた。
意外と苦戦してる……のか?そんなに強い相手?
相手はさっきまでのオークより一回り以上に大きい赤毛混じりのオークだった。確か…これはハイオークって言うんだったかな。えと、オークの上位種で高い知能と戦闘力を持つそうだ。しかし俺が助太刀するまでもなく、クリスが放った火炎魔法に全身を包まれてハイオークが悲鳴と怒声と共に転げ回っている。
「彼等に少しでも上位種を見せてやろうと思ってね」
すぐ倒せるところを後輩達の勉強の為にオークの上位種相手に時間稼ぎをしていてくれたらしい。
「これがハイオークだ。覚えておくと良いよ」
それだけ言うと目的は達成した、と言わんばかりにハイオークをあっさり斬り倒した。なんかまた王子に美味しいとこを持っていかれた気がする…!リーダーの面目が!
全部で10体の集落……ちょっとした大家族レベルだろうか。問題無く倒せたけど、それでもキチンと確認だ。そしていつもなら収納魔法に倒したオークを全部入れてとっとと帰るんだけど……今回はそうはいかない。なるべく『赤き粉砕者』の今後に役立つ様に事後処理を済ませる必要がある。
明け方の襲撃だったので、しばらく待っていたら森の中も徐々に明るくなってくる。さぁ朝日を待つ間に馬車と馬を可能な限り近くまで連れてこよう。重い素材を持って森の中を歩きたくないしな。
まぁね、10体のオーク素材は馬車一台ではとても収まりきらないから、結局は収納魔法の出番になるけども。それでも手順は確認してもらわないとな。ちゃんと指導してるでしょ?俺達もこうやって教えてもらったんですよ。
さぁ、解体すっぞ!
まずはオークの討伐証明の耳。そしてゴブリンと違ってオークは様々な部位が有用だ。今回の講師は解体スキル持ちのセシルだよ。後輩4人はセシルの周りを取り囲んで、まず解体の手順と確保すべき部位を確認している。前述したように肉も当然売れるから切り分けるよ。一通り、オークの解体を解説付きで見学したら次は実践だ。数は十分にあるので1人1体解体しよう。
『赤き粉砕者』のメンバーが苦労しながらオークを解体している間に俺とクリスも残りの5体を解体。結構、手際が良いでしょ?これも経験ですよ。慣れってすごい。処理した素材の俺達の分はさっさと収納魔法に収めたよ。
さて後輩たちはどうかな……まだ少し苦戦していた。セシルも手は出さずに助言だけしている。実際に自分でやらないと上手くならないもんね、俺達もルーに何度も言われたわ。決して放任主義ではない。俺とクリスも手分けして助言だ。後はもう少しだからみんな頑張れ。
肉や皮、使えそうな部位を採取して残った内臓等もこのままポイは良くない。内臓も食べられない訳じゃないし利用法はあるらしいけど今回は穴を掘って埋めておいた。解体が終わったら馬車の荷台に積めるだけ素材を積んで、さぁ帰るよ。
帰りは馬車の馭者もセシルから『赤き粉砕者』のメンバーに交代。横でセシルが助言はするけど実際に手綱を握るのは後輩たちだよ。ローテーションで担当してもらおう。当然、ペースは落ちる。更に荷台に大量の素材を積み込んだし、行きよりも相当時間がかかるだろう。これも予定通りだ、焦るこたぁない。帰りもゆっくり一泊予定だ。依頼達成からの解放感なのか、『赤き粉砕者』の面々にも笑顔が見えだした。むむ。まだまだ、家に帰るまでが依頼ですよ?
気を引き締めるように一言、と思ったが……良いタイミングでセシルが叫んだ。
「右前方!ゴブリン5体!」
油断していた後輩達がアタフタと武器を手にして戦闘態勢をとるまでの間に、騎馬で走っていた俺とクリスが全て始末した。行きでは魔物との遭遇はゼロだったのにな……もしかしたら、既にあのハイオークが居なくなったことを察知しているのかも。だとしたら野生の本能なのか。すごいな、本能。
「すごい…!あっという間に、ですね」
カミーユが褒めてくれるけど、ここはキチンと言わないといけない。
「今のは、俺達が早いんじゃないよ………君達が遅いんだ」
瞬間、少年たち3人の顔が赤くなった。恥じたんだろうな。さらにお小言を言いたくなるが反省した相手には無用だろう。それに反応が遅かったのも事実だけど俺とクリスは馬に乗ってたから早いのは当然なんだよ。
それでも、これ以降の彼等は行き程の無駄な緊張は無いものの周囲の様子を油断なく窺うようになった。そうだ、それで良い。少年と少女は成功と失敗を繰り返して成長するもんだよ。今も日々失敗を繰り返している俺が言うんだから間違いない。うん、こう見えても成長してる……つもりだよ?
これ以降は、再び平和で穏やかな1日に戻った。ゴブリン程度であっても出てこないのが1番だよ。しかし俺が平和な気持ちでいられた時間はアクセルの一言で終わった。
「アレクシスさん、今日の夕飯にオークの肉を食っても良いっスか?」
ほほぅ。
セシルとルーがこっちを見ているのがわかる。
何気に俺の心臓を掴まれたような、ドキリとする質問ですわ。
「討伐証明の耳は食べられたら困るけど……肉は構わないよ。換金額が少し減るけどね」
例えば中国や韓国では犬を食べるそうじゃん。美味いか美味くないかはさておいて、食えと言われたら……それはちょっと待って欲しいが、そういう文化にケチを付けるべきじゃないと思うんだ。それなりの事情と歴史と文化があるのだから当然ながらそれは尊重すべきでしょ。そして、オーク食いたいっス!と言うのもアクセルの自由である。俺にダメだ!という資格も権利もあろう筈がない。
「やったぜ!こんなに大量にあるんだぞ、食おうぜ!俺、前に食べたことがあるけどめっちゃくちゃ美味いんだよ!」
アクセルがカミーユ相手に力説している。
そうかぁ……そんなに美味いのかぁ。
どうしよう。
彼等が食うのに、俺達は…いや俺は食わないってのは変だろ。菜食主義なんで、とか言おうにも昨日バクバク干し肉シチューを食っとるし。
どうしよう!
食うか?食ってもいいのか?俺よ。
「ボクもトマトを何度も食べてるしね」
うっさい!子供が!
そんな好き嫌いと一緒にするんじゃない!
倫理観の問題よ。多分、食ったら美味いんだろうよ。ほら例えば魚は魚でも人面魚とか抵抗あるだろ?何か論点が違うような気もするけど。むしろ人魚の方か?人魚も食べたら不老不死になれる伝説があるくらいだから食うんだよな。いや、それも話が違うな。その辺はまた今度考えよう。
俺の脳内会議は大いに紛糾した。脳内会議は踊る、されど進まず。財布を拾った訳でもないのに天使と悪魔まで脳内会議に参加して甚だカオスだ。時間がもっと欲しいけど、今朝は早起きして戦闘・解体までやってるから皆も疲れている。昨日よりも早めにキャンプすべきだ。
さぁ、どうしよう?
「今日はここに泊まろうか」
街道沿いに、道行く人々が何度かキャンプしたであろう空き地があったので、そこで我々もキャンプすることにした。「ここをキャンプ地とする!」の一言を忘れる程度にはまだ悩んでいるんだよ。まぁ忘れてても全く構わない一言なんだけども…。
今日のお料理担当はセシルとカミーユ。他のメンバーは全員でテントを組み立てよう。今回はジャックが初めてテント設営をやるので、昨日同様に説明しながら組み立てるので少々時間がかかった。しかし料理の方も時間がかかったので、ちょうど良かったのかもしれない。
本日のメニューは香辛料と塩を刷り込んだオークの塊肉を棒にブッ刺して、焚き火の上でくるくる、くるくると……じっくりしっかり焼いたオーク肉のローストだよ。
ここへきて、俺も結論を出した。
オークは人を襲うし人を食う。なら人が食ってもおあいこではないか……オークのレベルに落ちてどうする、という脳内意見もあったが。うん、食おう。食っちまおう。皆が肉にかぶりつくのを見て俺も覚悟を決めた。見た目はもう普通に肉。美味そうな肉。ほんの少しレアなオーク肉のローストをガブリと噛みちぎって咀嚼してみる。
「なっ!美味いだろ!すげー美味いんだよ」
アクセルがカミーユに得意げに自慢するだけあって……確かに美味い。豚型の魔物としてはパイアってのもいる。パイアは見た目、猪というか豚。もう普通の豚と違いがよくわからんレベルに豚で、肉もかなり豚肉。それでも十分に美味しかったけど……オークはそれを随分超えてくるねぇ。皮は香ばしくパリッとしていて、肉は噛めば噛むほどにジューシィな肉汁が溢れ出してくる。なんでだろ、その理論はわからないが高位の魔物ほど肉が美味しかったりする。魔力だの魔素だのが作用しているのか……実に謎だ。
「確かに美味いな。それにカミーユが上手に焼いてくれたから更に美味しいよ。ありがとう、カミーユ」
オーク肉の美味さにはしゃぐアクセルを尻目に、ダニエルがカミーユの好感度を稼いでいる!アクセルめ、詰めが甘かったな。
「そ、そう?まだまだあるからおかわりが欲しかったら言ってね」
おーっと、ダニエルがカミーユを照れさせた!ピコーンと好感度が1ポイント加算されたのが見える様だ。これはアクセル、油断したな!カミーユに美味い肉を食わせて喜ばせようとしたけど、文字通り美味しいところを持っていかれた!はぁ~これはこれで見てて楽しい。
「俺にも肉くれよ!おかわり!」
ナニカを察したのかアクセルが2人に割り込むが、違う!そうじゃない!そんなこんなで今晩のMVPはダニエルで間違いないね。そういえば彼等は昨日の夜のテント内ではどうだったんだろうか、そして今夜のテント内の様子はどうなるんだろうか。テント内でテント立ててないか?……まさか夜這いはないよな、同じテント内で抜け駆けは無理だろ。やれる?やってもいいけど少年達は3人共童貞だろ?そんな器用な真似は出来ないだろ?
これは常にカメラを回しておいて欲しいね。まさに恋愛ドキュメンタリーだよなぁ。そうだ、カミーユを賢者達の女子会に放り込んでみようか。そうすれば色んなことを吹き込まれて帰ってくるだろうな。いかん、余計な台本を用意するより自然に任せよう。ヤラセと言われては困る。演出は良いけどヤラセはダメ。
今夜は色々と俺の頭を悩ませたオーク肉と、そして少年少女達の淡い恋で腹一杯ですわ。はい、ご馳走様でした。
いっそ今夜の見張り番をカミーユとダニエルに任せようか、とか考えちゃったけどディレクターが余計なことはしちゃいかん。演出の範囲内とは思うけど、自然の成り行きにまかせよう。
「いい夢、見ろよ」彼等に聞こえないように呟いて、俺も寝るとしよう。本日も良き日でありました。さぁ、おやすみなさい。
「待って」
珍しくルーに引き留められた。どした?少年少女の青春にあてられた?ムラムラしちゃった?まいったなー、じゃあ一緒に寝る?これも自然の成り行きですよね!
「……暇だ。暇すぎる」
それはまいったなー………ほら、今回の依頼はテーマがね?ルーに頼らずやらないと意味が無かったから。あなたが普段通りにするだけで『赤き粉砕者』のメンバーの人生を狂わせてしまうかもしれないじゃん。最初に最高級の快適を覚えてしまったら、もう忘れられないよ。
「1000年間、迷宮に閉じ込められていた私が少し不機嫌になる程に……暇で退屈だ。君は、君の大好きな私が不機嫌なままで良いと言うの?」
良くないけどさ。そんなにか。そんなにも暇だったのか。確かに昨日から、あんまり構ってあげられていなかった。お陰で魔神も、ほんのりヤンデレな事を言う程度にはストレスが溜まっているようだ。
「甘いもの、食べる?」
「………不機嫌な女には甘いものを与えれば良い、と考えるのはダメ男の典型だぞ」
随分昔に、似たような事を言われた気がする。
でも、この魔神には非常に効果的なんだよな。
「それはそれで後で頂くとして……その前に素手の組手をしましょう」
組手かぁ……くんずほぐれつの夜の組手、なら大歓迎なんだけどな。エロエロな意味で。もちろん、そんな嬉しいサプライズは無いよ!これは修行という名のルーのストレス解消だよ!つくづく、まいったなー……いや本当に。
ただでさえ、組手というよりサンドバッグかな?というほど殴られ蹴られるのに、夜だから碌にルーの攻撃が見えない。心眼で見なさい、と言われても!熱源感知、振動感知、気流感知、魔力感知、気配察知……俺が使えるセンサーを全て発動。ええぃ、避けるので精一杯だよ!ルーの拳や蹴りが空気を切り裂く音が耳にうるさい。泣くなビビるな止まるな祈るな、常に動き続けろ。
なるほど、闇の中で逆に相手の動きが分かるって事もあるんだな。いつもより上手く避けられるのが面白くなってきた。見えるぞ! 私にも魔神の攻撃が見える!
「昔よりも動きが良くなったね」
ええ、なんと言っても師匠が良いのでね。
「そうね、私も誇らしいわ。だからご褒美に、もう一段難易度を上げましょうか」
意味が、わから、ない。この世界での褒美って言葉には俺の知らない意味でもあるのかな。俺が異論を唱える前に、魔神が怒涛の勢いで襲いかかってきた。いきなり目を狙う?!あなた、俺の婚約者ですよね?なんとかスウェーして躱したところを更に鳩尾に肘が。ルーの攻撃速度が大幅に上がった。絶対、これ一段階じゃないよね。俺のギアで言うなら4速から6速に上がったわ。これって訓練?かなりマジで命を獲りに来ているよね。
こんなもん、半分予知でもしない限り避けられるかぁ!そして俺には予知に近い能力、ゾーンがある。それも駆使して呼吸する間も無い乱撃を躱し続けたが………。
「……グッ!!」
しまった!上に意識がいってたところを右のローキックで刈られた。魔神のローで、足が痛いと思う前に俺の身体が反転してた。天地が入れ替わるって、どんな威力の蹴りだよ。
「油断しちゃダメだよ」
油断したつもりはないんだけど……やられた。大地から足が離れた隙に、思う存分連撃をもらってしまった。ああ、全身の骨が軋む。これは折れたか、もしくはヒビくらい入ってるのかも。これは龍○乱舞かな?瞬獄◯の方かな?ええ、本日も最愛の彼女に容赦なくボコボコにされました。
今回、料理係以外では暇だったカミーユの一番大変な仕事は、ボコボコにされた俺の治癒だった。なんでこんな事に!?ってカミーユに聞かれたけど……さぁ、なんでだろうね。俺にもよくわかんないよ。




